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症状から診断する植物が病気にかかる原因と予防対策


植物の根や茎、葉などの状態から推測して、病気であるかどうか判断できるように、生長が思わしくない主な植物の症状から病気と診断するポイントを紹介します。また、植物が病気になる主な原因「病原菌」についてや病気にかからないための予防対策について説明します。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。…続きを読む

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パパイヤうどん粉病

出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
植物はどうして病気になってしまうでしょうか?その原因として病原体と植物の関係性、植物を栽培する環境があります。
植物が病気になる原因と病気にかからないためにできる対策について説明します。

症状から病気を判断

植物の生長が思わしくない原因は、病気や害虫、水や養分(窒素やリン酸、カリウムのほかに鉄やマンガンなど生長に欠かせない微量要素)の過不足などの生理障害も疑われます。その中でも症状として「植物が萎(しお)れる」「葉に斑点ができている」「葉に白っぽい粉のようなものがふいている」などが現れたら、植物が病気にかかっているかもしれません。

主な植物の症状から推測

植物の症状から推測してどんな病気であるか診断することができます。主な植物の症状から原因が病気と判断するポイントを紹介します。

症状その1:植物の萎れ

  1. 維管束が褐色になっている
  2. 地際部に白いカビが生えている
  3. 根が真っ黒
※維管束とは水や養分を運ぶ通路機能以外にも、葉・茎・根など植物の各器官をつなぐ柱となる組織。

植物が萎れている場合、一株抜き取り、根や地際部に近い茎を切断して観察してみて、以上のような状態は病気が原因で水分や養分を吸収できていない可能性があります。
※根にコブがある場合は、病気のほかにセンチュウによる被害の可能性もあります。

症状その2:葉の斑点

葉に現れる斑点は、主に細菌やカビ(糸状菌)が原因の病気ですが、そのほかに生理障害(マグネシウム欠乏などの微量要素障害)の可能性もありますので、少し判断が難しいかもしれません。

症状その3:白や黒のカビ

白や黒、灰色のカビが生えている場合は、カビ(糸状菌)による病気と考えます。
花がらや古い葉に生えているカビは、腐生(ふせい)菌といって腐っている物に生える日常菌ということが多いようです。

病気にかかる3つの要因

発病の条件
Illustrationrinko
病気にかかる要因は「病原体」「植物」「環境」、この3つの関係性にあります。

1. 病原体

病原体とは植物を病気にするものです。菌やセンチュウなどの生き物が病原体となります。

2. 植物(遺伝的素因)

世界にはたくさんの植物と病原体が存在していますが、全ての植物があらゆる病気に感染するというわけではありません。植物と病原体の寄生の関係は「遺伝子」によってあらかじめ決まっているからです。
例えば、イネの病害である「いもち病」はキュウリには感染することはありません。
つまり、植物が病気にかかる遺伝子と病原菌の遺伝子が適合しなければ、植物は病気にかかることはないのです。
また、病原体に感染する遺伝子を持っていたとしても、環境が伴わなければ、発病しない場合もあります。

3. 環境

病気が発生するには、植物が生育している環境が大きく影響します。
冷涼な気候や風雨が続くなど、菌にとって好条件な環境下において、植物が軟弱に生育した際に病気の発症が増加します。


植物を病気にする病原体

植物を病気にする病原体の80%はカビ(糸状菌)によるものです。10%は細菌など、残り10%はウイルスなどが原因となっています。

カビ(糸状菌)

うどんこ病菌
出典:Flickr(Photo by :Björn S…)
カビ(糸状菌)とは酵母やきのこも含む仲間で、確認されているものだけで8万種類以上も存在します。
その中で、ほとんどは物を腐らせる菌(腐生菌)で、植物に寄生し病気にさせるカビ(糸状菌など)は約1万種と考えられています。

カビ(糸状菌)の病気の特徴

主に湿度の高い環境でカビ(糸状菌)の勢力が増し、植物に病気が発生します。
胞子(ほうし)とよばれる菌の元が植物に付着すると、糸状の菌糸を植物内外に伸ばし、栄養を奪います。私たちが目にする白や黒のカビは、この植物の菌糸の束が見えているものです。
また、鞭毛(べんもう)というしっぽのような構造の菌が泳いで植物にたどり着いたり、菌糸そのものが分裂して感染を広げていくタイプもいます。

カビ(糸状菌)が原因となる病気

・うどんこ病
・灰色かび病
・菌核病
・べと病
・苗立枯病
・さび病
・白さび病
・炭疽病
・黒斑病
・輪紋病
・つる割病
・萎黄病
・白斑病
・白絹病
・根腐病
・褐斑病
・疫病
・立枯病
・半身萎凋病


細菌(バクテリア)

バクテリア
出典:wikimedia
細菌とは、植物のほかに人や動物にも病気を引き起こす微生物の一種で、大きさはカビ(糸状菌)より小さく、栄養源があれば自分で増殖することができます。
身近なところでは、納豆を作る際に使用される納豆菌も細菌の仲間です。

細菌の病気の特徴

風や雨、灌水(かんすい)による水滴で運ばれた細菌が、葉の気孔や風雨でできた傷口から侵入します。
収穫や剪定(せんてい)など人の手による管理作業でも細菌が植物に付着したり、作業でできた傷口から同じように植物内部に入っていきます。
葉に感染すると円形〜不整形の斑点を形成し、維管束内部で増殖すると詰まりを起こして植物が萎れます。地際部ではとろけるように腐り、異臭を放つ病気を引き起こすことがあります。
また、保存、輸送中に感染して腐らせることもあるので収穫後も注意が必要です。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。

細菌が原因となる病気

・黒腐病
・軟腐病
・斑点細菌病
・青枯病
・そうか病

ウイルス

熱帯のイネおよび豆のウイルス病
出典:Flickr(Photo by :JIRCAS Library)
ウイルスはカビ(糸状菌)や細菌よりもさらに小さい微生物の一種です(植物とは別に、人や動物に病気を引き起こす、例えばインフルエンザなどもウィルスと呼ばれます)。
自ら増殖したり感染することはできないため、ほかの生物を利用して増殖、伝染します。
また、種子や苗木によって次の世代にも伝染します。

ウイルスの病気の特徴

ウイルスはアブラムシ類やアザミウマ類、コナジラミ類、ウンカ、ヨコバイなどの昆虫やハダニ類などによって伝染します。
また、植物どうしが擦(す)れたり、人の手による管理作業で伝染するウィルスもあります。
病気に感染すると早いスピードで全身にウイルスが移行し、芽先が萎縮(いしゅく)して生長が止まる、葉がモザイク状に退緑するなどの症状が現れることが多い病気です。

ウイルス病に効果のある農薬は無い!?
現在ウイルス病に効果のある農薬は開発されていません。ウイルス病は主に虫によって伝搬されるので、虫の予防をしっかりと行いましょう。

▼アブラムシ類やアザミウマ類、コナジラミ類、ダニ類のことならこちらをご覧ください。

ウイルスが原因となる病気

・モザイク病
・黄化えそ病
・黄化葉巻病

そのほかの植物を病気にする病原体

センチュウ
出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
<センチュウ類>
主に土壌に生息し、植物の根を侵します。体長は0.5〜3mmで紡錘形(ぼうすいけい)をしており、口に槍(やり)状の口針を持ち植物細胞を貫通します。
根に寄生し根こぶを形成するもの(ネコブセンチュウ)や、根をかじりとり根腐れを起こすもの(ネグサレセンチュウ)などがいます。
松に被害を及ぼすマツノザイセンチュウは、マツノマダラカミキリ(昆虫)によって伝搬されます。

▼センチュウ類のことならこちらをご覧ください。
<ファイトプラズマ>
細菌の仲間で、ウイルスほどの大きさしかなく、ヨコバイなどの虫が媒介します。
植物を黄化、萎縮させるなどの被害をもたらします。
※ファイトプラズマによる主な病気:イネ萎黄病、クワ萎縮病など

<ウイロイド>
ウイルスに似た形状の菌ですが、ウイルスのように媒介昆虫によって伝染せず苗木による伝染や接触伝染が主で、生育が抑制される、葉が凸凹と縮れるなどの症状が出ます。
果樹や草花で発生しやすく、果樹の剪定や接ぎ木の際には要注意です。
※ウイロイドによる主な病気:カンキツエクソコーティス病、キク矮化病、リンゴさび果病など


病気を引き起こす栽培環境

植物が病気を引き起こすのは、いったいどのような栽培環境なのでしょうか。

土壌環境

劣悪な土壌状態は病気を引き起こす大きな要因となります。

水分が過剰な土壌

水はけが悪く、灌水や雨の後しばらく湿っているような土壌は植物が根傷みを起こしやすくなります。
また、多湿状態で病原体自体も活発になって勢力が増すことで病気を引き起こしやすくなります。

養分が過剰または過少

養分が多すぎる、または少なすぎる際に植物が生育異常となって(特に窒素分と水分が多い場合)軟弱徒長してしまい、病原体に感染しやすくなります。
※軟弱徒長とは、植物の葉厚や葉の色が薄くなり、茎や葉柄および葉身が弱々しく間延びした状態。

多湿環境

多湿な環境を招く要因は、気象によるものと人為的ミスによるものがあります。

気象による多湿環境

雨が続く梅雨時期や台風、朝夕に冷え込み葉露(はつゆ)がつく、霧が出るなど湿度が高い状況で病気が発生しやすくなります。特に湿度の高い時期は病気が発生していないか、注意して圃場を見回りましょう。

人為による多湿環境

株間が狭く、葉が多い環境は、植物の周りの湿度が上がり、病原体が活発になります。
ハウス栽培では、冬の換気不足など湿度が高い状況で病気が一斉に発生します。

▼季節に応じたハウス栽培の環境制御のことならこちらをご覧ください。

不衛生環境

前作の残りや葉かき後の残渣(ざんさ)は、そのまま放置すると病原体だけでなく虫の温床となります。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

病気から防除する有効な対策

「植物が健全に育つ環境」をいいかえるとすると「病原体が好まない環境」ということができます。栽培する植物にあった最適な環境を整えてあげましょう。

土質の改善

水はけの悪い圃場は、畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して土質改善を行いましょう。
肥料切れを起こしやすい圃場には、肥料持ちが良くなるゼオライトを含む資材の投入がおすすめです。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

▼パーライトやバーミキュライト、ゼオライトのことならこちらをご覧ください。

施肥量、灌水量の見直し

病原体が好みやすい軟弱徒長を予防するために、適切な施肥と灌水を行うことが大切です。
最初に施す元肥の量は、植え付け前に土壌分析を行い適切な施肥量を確認しましょう。

▼適切な施肥や元肥のことならこちらをご覧ください。
▼土壌分析のことならこちらをご覧ください。

圃場の衛生管理

植物残渣は圃場内には残さず、外に持ち出して適切に処分しましょう。

湿度を上げない管理

風通しを良くするため、株間は適切な距離をとります。
葉が込み合っていて光が当たっていない葉は、光合成ができないため残しておいても意味はありません。不要な葉は取り去ります。

▼光合成やハウス栽培の湿度管理のことならこちらをご覧ください。

農薬で防除

病気になるまで農薬は使いたくないと考えがちですが、農薬の使用は病気になる前の方が断然効果があります。
有機農業でも使えるような生物農薬や食品原料を使ったものなど、さまざまな種類の農薬が販売されていますので、定期的に予防散布しましょう。
雨が降るとわかっている場合は、降雨前後で予防的に農薬を散布することも効果的です。

▼農薬を使用するタイミングのことならこちらをご覧ください。

▼露地栽培やハウス栽培の農薬散布のことならこちらをご覧ください。

ハーモメイト水溶剤

重曹を原料とした農薬です。治療効果もあるため、予防から発生初期に使用すると効果的です。

ハーモメイト水溶剤

うどんこ病、灰色かび病、さび病に対して高い治療効果を示します。
JAS(日本農林規格)で定める有機農産物生産に使用することができます。
有効成分の炭酸水素ナトリウム(重曹)は古くから食品や医療品等に利用されており、人体に対して安全性が高い成分です。

・内容量:250g
・有効成分:炭酸水素ナトリウム(80.0%)

ボトキラー水和剤

有効成分バチルス菌は「納豆菌」の仲間です。
バチルス菌が作物の葉や花に棲(す)み着き、病原菌の繁殖を抑制してうどんこ病などの病気から作物を守ります。

ボトキラー水和剤

発病前に散布することにより、植物体上に先に定着し、病原菌の活動を抑制します。
JAS(日本農林規格)で定める有機農産物生産に使用することができます。
有効成分は生菌であるので、散布液調製後はできるだけ速やかに散布してください。
発病前から発病初期に7~10日間隔で散布がおすすめです。

・容量:100g
・有効成分:バチルス・ズブチリス芽胞1×10の11乗 CFU/g含有(1g当たり1000億個の生きた胞子を含有)

粘着くん液剤

ウイルス病を引き起こすアブラムシやコナジラミなどに使用します。有効成分はデンプンなので、環境や栽培者に優しい農薬です。

粘着くん液剤

本剤の作用性は薬液が虫を被覆することによる虫体の捕捉と呼吸阻害の物理的であるため、害虫類が抵抗性を発達させることはありません。
散布後、10〜20分(露地条件)の短時間で散布薬液が乾き、薬液が十分かかった害虫は、乾くまでにすでに死亡しています。
微小な害虫類に選択的に効果を示し、大型の天敵昆虫や有用昆虫に対する影響はほとんどありません。このため、ミツバチ、マルハナバチなどの花粉媒体昆虫を用いた栽培体系にも使用可能です。
デンプンは炭素、水素、酸素から構成されており、環境中ではすみやかに水と二酸化炭素に分解されます。

・内容量:1L
・有効成分:ヒドロキシプロピルデンプン(5.0%)

植物が病気にかからないために大切なこと

植物が病気にかかるのは、病原体・環境・植物の要因が揃うことで発生します。病原体はどこにでもいると考え、病気を引き起こさないように、水はけの良い、多湿にならない環境を心がけます。また、適切な施肥と水管理で強くて丈夫な植物を育てましょう。

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