立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

アスパラガスやソラマメ、カボチャなどで発生する立枯病は、水やりや降雨の後に感染が広がりやすく、土壌伝染性のため連作によって多発します。感染しやすい時期や病原菌の種類、また土壌消毒などの防除方法やおすすめの薬剤(農薬)について詳しく説明します。


フザリウムが原因で発症した立枯病

出典:wikimedia
立枯(たちがれ)病とは、植物が萎(しお)れてしまう「根」から感染する病気です。多犯性の病害で多くの植物の根を侵します。そんな立枯病の発見のポイントを押さえて予防と早期発見、防除を心がけましょう。
※多犯性とは限られた種類の植物だけではなく、多くの植物に感染すること。

立枯病の症状

リゾクトニア 豆
出典:wikimedia
「葉が下から黄化してきた」「株が萎れている」「根が傷んでいる」などの症状が現れたときは立枯病を疑いましょう。

感染部位

立枯病は根に感染する病気です。感染すると根は褐色に腐敗し、下葉から黄化して葉は枯れ上がります。
地際部に近い茎を切断すると、維管束が褐色になっています。
※維管束とは植物の内部組織のひとつで、水や養分を運ぶ通路機能の他に、葉・茎・根など植物の各器官をつなぎ支える組織。

▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

立枯病の発症原因

リゾクトニア菌におかされた植物の根
出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
立枯病とはカビ(糸状菌)が原因で発生する病気で、土壌に生息しているさまざまな種類の病原菌が立枯病を引き起こします。
 名前 立枯病
 菌名Fusarium属菌
・Rhizoctonia属菌
・Pythium属菌など
 
 分類 糸状菌
 発生適温 25~30℃

立枯病は土壌伝染性病害

立枯病に感染した植物の残渣(ざんさ)に菌糸が生存している場合や、胞子が土壌に残っていることがあります。
フザリウム属菌の場合は、長期生存が可能な厚膜胞子という形で土壌に残ります。この厚膜胞子は乾燥に強く、土壌中で10年以上も生存することができます。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
菌名ピシウムリゾクトニアフザリウム
 主な感染植物 レタス、シュンギク、ホウレンソウ、スミレ類

 キク、コスモス、ゼラニウム

 アスパラガス、エンドウ、オクラ、カーネーション、ソラマメ、トルコギキョウ
 根・地際部の症状・地際部がくびれて腐る
・根が褐色腐敗
・白色綿毛状のカビ
・根や地際部が茶褐色~黒色に変色
・地際部に白色~褐色のクモの巣状カビ
・根や地際部が褐変腐敗
・病斑部に白色のカビ
 伝染源・土壌中の卵胞子
・罹病残渣中の菌糸
・土壌中の卵胞子
・罹病残渣中の菌糸や菌核
・土壌中の厚膜胞子
▼シュンギクやホウレンソウ、オクラの育て方ならこちらをご覧ください。

立枯病が発生しやすい条件

立枯病は主に春、夏、秋の気温がやや高い時期に発生します。

発生適温

発生適温は25~30℃です(作物、条件により異なります)。

湿潤土壌

水分を好み、湿度が高い土壌で発生が多くなります。水はけが悪く、降雨が続く時期は要注意です。

根傷み

土壌多湿や移植による根傷み、根にセンチュウなどによる傷口があることで病原菌が侵入しやすくなります。
※センチュウとは主に土壌に生息し、植物の根を侵す害虫です。体長は0.5~3mmで紡錘形(ぼうすいけい)をしており、口に槍(やり)状の口針を持ちます。

▼センチュウのことならこちらをご覧ください。

立枯病に感染する主な植物

立枯病はアスパラガスやソラマメ、カボチャなど多くの野菜や草花に感染しますが、植物によってやや症状が異なります。

▼ソラマメやカボチャの育て方ならこちらをご覧ください。

エンドウ

収穫期ごろから発生します。
下葉から株全体が黄化し、病状が進むと枯死します。
地際部の茎を切断すると褐変しています。

▼サヤエンドウの育て方ならこちらをご覧ください。

レタス

定植後一カ月ごろに発生し、下葉から黄化して株全体が萎れ枯死します。
根が褐変して水に浸したように腐敗します。
茎の地際部はくびれます。

▼レタスの育て方ならこちらをご覧ください。

キク

直に挿した苗や定植して間もない苗で被害が多くみられますが、生育中期から後期の株でも発症します。
茎の地際部は褐変し、根は褐色~黒色に変色します。湿度が高い場合、地際部のあたりにクモの巣のような菌糸がみられます。
※キクはリゾクトニア属菌による感染のほかに、フザリウム属菌、ピシウム属菌にも感染します。外見上判断するのは困難ですので、全ての菌に対して予防的に希釈した農薬を土に染み込ませることをおすすめします。


立枯病に有効な防除方法

立枯病に有効な防除は圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と農薬の使用で行います。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所。

立枯病を発症させない管理方法

農薬を使わずに行う立枯病の予防方法について説明します。

1. 植物残渣の処理

前作の植物や落ちた葉に立枯病菌が感染している可能性があります。残渣は圃場外に持ち出して処理しましょう。

2. 土壌の入れ替え、消毒

前作に立枯病が発生した圃場、また発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。
太陽熱消毒は、一年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水(かんすい)した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、20~30日程度放置してください。

▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。

プランター栽培では新しい土と入れ替えるか、立枯病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。

▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。

3. 水はけの良い圃場づくり

土壌の水分が多いことで根傷みを起こし、病原菌に感染しやすくなるほか、病原菌自体も活発になり感染が増えます。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、水はけの良い土づくりをしましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

4. 根傷みの予防

根に傷口があると病原菌が侵入しやすくなります。傷口を作るセンチュウなどの対策を行いましょう。
センチュウ対策には、えん麦やマリーゴールドなどの緑肥作物を栽培すると効果があるほか、椿油粕を土壌に混ぜるとサポニンという成分がセンチュウを抑制します。

▼緑肥のことならこちらをご覧ください。

▼椿油粕のことならこちらもご覧ください。

5. 連作の防止

同じ作物を続けて栽培すると、土壌中の菌密度が年々高まり病気の発生が増えます。
作物が病気にかかったら、ほかの作物を栽培することをおすすめします。

▼連作障害のことならこちらをご覧ください。

土づくりの味方、放線菌を増やして、病原菌を撲滅!

土壌には放線菌という菌がもともと生息しています。放線菌は土壌をふかふかにする効果があり、この菌を増やすことによって水はけの良い病原菌の住みにくい環境にすることができます。
また、放線菌はキチン質をエサとするため、病原菌が増殖する前にキチン質の資材を入れて放線菌を増やすことで病気の予防になります。

カニ殻で放線菌を増やす

ITEM
カニ殻
カニ殻のキチン質が放線菌のエサとなり、放線菌が増殖します。
カニ殻はホームセンターなどでも販売されています。肥料と一緒に土壌に混ぜて、放線菌を増やしましょう。

・容量:1.2L
・有効成分:キチン質

漢方かすの肥料、ツムランド

ITEM
ツムランド
漢方を作るときにできる残渣を発酵させて作られた堆肥です。
微生物を多く含んでおり、特に放線菌が多いため、病気の予防に効果があります。
微生物が土壌の団粒化を促進して土壌環境を改善するため、根張りが良くなる効果もあります。

・内容量:15kg
・含有成分:窒素2.4%、リン酸1.0%、カリ1.0%(C/N比7.5)
・形状:粉末

立枯病の防除に効果的な農薬

農薬(殺菌剤)を使用してより効果的に立枯病を防除しましょう。立枯病は発生してからの薬剤防除は難しいため、予防的に使用することをおすすめします。
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
薬品名ピシウム属リゾクトニア属フザリウム属菌
 リゾレックス粉剤(土壌使用)
 タチガレン液剤
 オーソサイド水和剤80
 リゾレックス水和剤
 ベンレート水和剤
▼殺菌剤のことならこちらをご覧ください。

▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。

植え付け前の土壌に

ITEM
リゾレックス粉剤
植え付け前に土とよく混ぜ合わせて使用します。

・内容量:3kg
・有効成分:トルクロホスメチル(5.0%)

土壌灌注処理で発根促進も

ITEM
タチガレン液剤
土壌灌注(かんちゅう)処理で効果があります(時期は作物によって異なります)。

・内容量:100ml
・有効成分:ヒドロキシイソキサゾール(30.0%)

生育期でも使用可能

ITEM
オーソサイド水和剤80
生育期に散布します。
多くの病害、作物に効果があり、ほかの病害の同時防除も可能です。

・内容量:250g
・有効成分:キャプタン(80.0%)

家庭菜園サイズには

ITEM
オーソサイド水和剤80
花や庭木、野菜類などに使用しても、比較的薬害が少ない殺菌剤です。

・内容量:50g
・有効成分:キャプタン

リゾクトニア属菌に

ITEM
リゾレックス水和剤
散布や、株元・土壌灌注で効果があります(時期は作物によって異なります)。

・内容量:500g
・有効成分:トルクロホスメチル(5.0%)

広範囲の病害に効果

ITEM
ベンレート水和剤
散布や、灌注で効果があります(時期は作物によって異なります)。
広範囲の病害に効果があるため、同時防除にもおすすめです。

・内容量:100g
・有効成分:ベノミル(50.0%)


▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。

▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。

立枯病発症後の対策

病原菌を持ち込まないために長靴をきれいに洗う
出典:写真AC
立枯病の発生がみられたら、病原菌が土に残らないように周辺の土ごと株を取り去ります。土壌にすき込むと病原菌を放出してしまうので、圃場の外に持ち出して処分してください。
これ以上被害が広がらないために農薬を散布する場合は、株の周囲にたっぷりとかけるようにします。
圃場で使用した道具や土のついた靴は、病原菌が付着しているため丁寧に洗い、ほかの圃場へ持ち込まないようにしましょう。

立枯病対策に何より大事なのは土づくり

立枯病は発病してからの防除は難しいため、発症しないための環境づくり、土づくりが大切です。立枯病が発生した圃場、発症が懸念される圃場では、土壌の消毒をしてください。
また、根傷みを起こさないよう、多湿にならない土壌づくりを心がけ、土壌に良いとされる放射菌を増やして、病原菌が住みにくい環境にすることも効果的です。

紹介されたアイテム

リゾレックス粉剤
タチガレン液剤
オーソサイド水和剤80
オーソサイド水和剤80
リゾレックス水和剤
ベンレート水和剤

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。

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