ハウス栽培での3つの効果的な農薬散布のポイント
施設栽培での農薬散布における効果的な方法について説明します。▼農薬の種類のことならこちらをご覧ください。
1.発生予察
ハウス内に有色粘着板を設置して、害虫発生状況を確認します。前年の農薬使用記録や、発生時期の推察なども参考に防除のタイミングを逃さないようにしましょう。各県に設置された病害虫防除所において調査したものが、今後の発生予報として公表されています。
出典:都道府県病害虫防除所(農林水産省)
2.天候や季節に合わせた散布
ハウス内の湿度と温度は、施設栽培といえども天候や季節によって変動しやすいので、それに合わせた農薬散布が欠かせません。▼季節ごとのハウス栽培の管理方法ならこちらをご覧ください。
高温時の散布に注意!
夏場は施設内の温度が上昇しやすく、屋外に比べて高温になりがちです。高温環境のもとで農薬を散布すると、薬害が発生しやすくなるので注意が必要です。農薬散布は、できるだけ早朝など涼しい時間帯を選び、施設内の温度が上昇し過ぎないように遮光カーテンや遮光剤、循環扇などを有効に使いましょう。
▼ハウス栽培の温度管理のことならこちらをご覧ください。
降雨時の散布にも注意!
降雨時は施設内の湿度も高くなり、散布液が乾きにくくなります。薬剤が長時間乾かない状況が続くと、せっかく農薬を散布したにもかかわらず、逆に病気が発生しやすい状況をつくってしまいます。降雨時は農薬(液体)の使用を控えるか、どうしても必要な場合は循環扇などを使って空気を対流させ、作物に付着した散布液をできるだけ早く乾かすようにしましょう。
▼ハウス栽培の湿度管理のことならこちらをご覧ください。
3.農薬散布前のひと手間
農薬散布を行う前にあらかじめ下葉や古くなった葉を取り除きましょう。摘葉・摘花・摘果
生育に不要な葉や花、果実は、病害虫を発生、増殖させる原因となるので適宜取り除きましょう。不要な葉を取り除いてから散布することで作物に薬剤がかかりやすくなります。▼トマトやミニトマトの摘葉・摘花・摘果のことならこちらをご覧ください。
残渣(ざんさ)の処分
前作の枯れた植物の葉や茎に病原菌が寄生している可能性があります。残渣を圃場の外に持ち出すことで、病害虫の温床となるのを防ぎます。また、摘葉・摘花・摘果などの作業を行った後もそのままにしておかず、施設の外に出しましょう。
※残渣とは枯れた植物や落ち葉のこと。
▼植物に被害を与える病原菌のことならこちらをご覧ください。
ハウス栽培で使用できる省力散布法
殺菌剤や殺虫剤などの薬剤散布は病害虫防除には必要な作業ですが、時間も労力もかかる作業です。常温煙霧やくん煙といった散布方法によって、これらの負担を軽減することができます。▼殺菌剤や殺虫剤のことならこちらをご覧ください。
常温煙霧
「常温煙霧」と登録のある薬剤を、コンプレッサーの圧縮空気を利用して、細かな粒子にして散布します。※薬剤処理中のハウス内への入室は避け、処理後はハウスを開放して十分換気を行います。初めて使用する方は、常温煙霧装置の選定や使用について病害虫防除所等関係機関の指導を受けましょう。
処理方法に「常温煙霧」の登録がある薬剤
殺菌剤 ロブラール水和剤
幅広い作物の病害に使用することができる殺菌剤ですが、必ず適用作物の処理方法に「常温煙霧」と記載されているか確認しましょう。
内容量 | 500g |
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成分 | イプロジオン(50.0%) |
くん煙
加熱によって薬剤を煙状の粒子にして散布することです。液体の農薬と異なり施設内の湿度上昇を抑え、農薬の散布汚れを防ぎます。※農薬の処理方法に「くん煙」と登録のある薬剤を登録内容に従って使用しましょう。
自然式
自然式は発熱剤を混ぜた農薬に点火するタイプや、点火紙にマッチやライターで点火するもの、点火棒をこすって点火するものがあります。電熱式
硫黄くん煙器 アグリ・トップ
電気加熱式くん煙器の蒸発皿に硫黄粒剤を入れて使用します。
定格電圧 | AC100V |
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定格消費電力 | 24W |
ヒューズ | 2A |
ヒーター | セラミックヒーター |
サイズ | 140×140×140mm |
電源コード | 2m |
重量 | 810g |
▼農薬の登録内容など散布前の確認事項のことならこちらをご覧ください。
農薬散布以外で病害虫を防除
露地栽培と同様に、施設栽培も各種防除手段を組み合わせたIPMの実践を目指します。施設栽培の防除の順序として、まずは屋外からの害虫の侵入を防ぐこと、次に病害虫を発生させない施設環境をつくることが重要です。また、施設栽培は露地栽培に比べて作物の栽培期間が長くなるので、効果的に使用しなければ、栽培後半までに農薬使用回数の上限に達してしまうので注意が必要です。
※IPM(Integrated Pest Management)とは、総合的に病害虫や雑草管理を行うことです。
▼露地栽培での効果的な農薬散布のことならこちらをご覧ください。
1.害虫の侵入を防ぐ
屋外からの害虫の侵入を防ぐ5つの方法を紹介します。1-1. 光反射シート
施設の周囲に光反射シートを使用して太陽光を反射させ、害虫の方向感覚を狂わせ侵入を防ぐことができます。植物栽培 反射フィルム
太陽の乱反射によって害虫を忌避する効果が期待できます。
材質 | PETP(ポリエチレングリコールテレフタレート)フィルム |
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カラー | シルバー |
サイズ | 約210×120cm |
1-2. UVカットフィルム
施設の被覆資材にUVカットフィルム(近紫外線除去フィルム)を使用することで、害虫が施設内の作物を認識できなくなり侵入を防ぐことができます。注意!
UVカットフィルムを使用する場合、イチゴなどの栽培で使用する訪花昆虫の活動やナスの着色に影響を与えるため注意が必要です。
ダイヤスターUVカットタイプ
紫外線をカットするのでスリップスやアブラムシ、オンシツコナジラミなどの害虫抑制するので農薬使用を減らす効果が期待できます。
厚さ | 0.15mm |
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幅 | 200cm |
1-3. 黄色灯
黄色灯を使用することで、夜行性であるハスモンヨトウやオオタバコガなどの害虫(成虫)に昼間だと勘違いさせ飛来や加害を抑制します。イエローバリアー MC-40YB
長方形のイエローフィルムを蛍光管に巻いて防蛾灯にします。
サイズ | 200×1190mm |
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数量 | 25本 |
素材 | ポリエステル |
熱特性 | 融点 250.8℃/引火点 240℃/発火点 500℃ |
▼光を利用した光防除のことならこちらをご覧ください。
1-4. 防虫ネット
ハウスの開口部分や天窓、入口に防虫ネットを設置して外部から害虫の侵入を防ぐことができます。▼防虫ネットのことならこちらをご覧ください。
1-5. 有色粘着板、有色粘着シート
色に対する誘引反応を利用した有色粘着板を施設内に設置し、害虫発生のモニタリングを兼ねた駆除を行います。駆除する害虫によって使い分けましょう。▼誘引反応を利用した誘引剤のことならこちらをご覧んください。
2.病害虫が発生しにくい環境づくり
病害虫が発生しにくい環境をつくる5つの方法で、農薬による防除回数を抑えることができます。2-1. 防草シート
施設の周りに雑草が生えっぱなしになっていると病害虫の温床となります。防草シートを敷いて雑草対策を行いましょう。▼防草シートのことならこちらをご覧ください。
2-2. 抵抗性、耐病性品種
病害虫の防除対策として、抵抗性品種(病原菌を接種しても病徴が出ない)や、耐病性品種(病原菌が少なければ発病しない、もしくは発病しても軽い、発病が遅い)を利用することも有効です。▼抵抗性、耐病性品種の接ぎ木苗のことならこちらをご覧ください。
2-3. 適切な株間
株間が近過ぎると日当たりが悪くなり、軟弱な株になるだけでなく、病害虫も発生しやすい環境をつくります。適切な間隔をあけて栽培しましょう。2-4. 循環扇の活用
循環扇を活用して、施設内でも風通しの良い環境をつくりましょう。▼循環扇についてはこちらをご覧ください。
2-5. ハウスの蒸しこみ
蒸しこみは、収穫後の高温期を利用して施設内を締め切って行います。太陽熱を利用し、高い室温で病害虫を死滅させ施設の外に出さないようにします。※蒸しこみをする場合、施設内が高温になるため機器類の故障やビニールの変形を防ぐ対策が必要です。
▼ハウスの蒸しこみについてはこちらをご覧ください。
3.害虫を増やさないようにする
害虫が発生しても人や環境に負担をかけずに、施設内の病害虫の蔓延を防ぐことができます。3-1. 天敵
対象とする害虫を捕食する土着天敵や天敵製剤を活用して防除を行います。▼天敵のことならこちらをご覧ください。
▼拮抗微生物や天敵の住処となるバンカープランツのことならこちらをご覧ください。
3-2. 微生物農薬
自然界にいる菌などの微生物を使用した病害虫防除を行うため、環境に負担をかけません。▼微生物農薬のことならこちらをご覧ください。