ハダニ類を駆除・防除する方法

作物全般に寄生して、植物の汁を吸うハダニの生態や卵・幼虫・成虫の特徴、早期発見するためのポイントを紹介します。農作物に多大な被害を及ぼさないために未然に防ぐ予防方法や有効な農薬など駆除対策をしっかりおさえましょう!


ハダニ被害
出典:wikimedia
育てている野菜の葉や果実が、かすり状に食害されている場合、ハダニ類が潜んでいるかもしれません。
多くの野菜や草花に害を与えるハダニ類の発見のポイントや予防対策、使用する薬剤について初心者の方にもわかりやすいように紹介します。

ハダニ類とは

葉の上のハダニと卵
出典:wikimedia
「葉が茶色くかすり状に変色している」「クモの巣のような糸が張っている」このような被害が見られたら、ハダニ類が寄生しているかもしれません。
ハダニ類は主に葉裏に生息していて、葉に口針を刺して吸汁します。その跡が黄白色や褐色の斑点として残り、増殖すると葉が枯れ植物の生育を抑制します。また、クモのような糸を出して葉や花を覆うことがあります。
葉裏に潜んでいることが多いため発見が遅れますが、早期に防除を行わなければ大量発生してしまいます。

ハダニ類の特徴

葉の上のハダニと卵
出典:Flickr(photo by K-State Research and Extension)
ハダニ類とは、ダニ目ハダニ科に属する草食性のダニの一種で、農作物に被害をもたらします。ダニは足が8本あり、大きい分類では節足動物のクモの仲間で、昆虫とは異なる生態をしています。
全長0.5mmほどで注意して見れば肉眼でも観察することができます。
名前  ハダニ
分類  ダニ目ハダニ科
発生時期  3~11月(施設では周年)
発生適温  20~25℃
1世代期間  10日〜20日
年間発生回数  10〜15回
食害部  生長点、新葉など

ハダニ類の生態

ハダニ類は卵からふ化すると幼虫の間に2〜3回の脱皮をし、成虫になります。卵から成虫に発育するまでの発育期間は、温度によって左右されます。
冬は、植物残渣(ざんさ)や落ち葉の下、樹皮の割れ目などに集合して越冬します。
圃場への侵入は、苗や人の衣服に付着している場合や、周囲の雑草から歩いて移動したり、自分で吐いた糸で風にのって遠くから移動してくる場合があります。
※残渣とは、畑などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
※圃場とは田や畑のような農作物を育てる場所のこと。

休眠と越冬

ハダニ類が冬期(短日条件)に活動を休止することを「休眠」と言います。成虫で休眠する種類と卵で休眠をする種類があり、例えばカンザワハダニやナミハダニ(黄緑色型)の成虫は短日、低温条件下で休眠しますが、休眠をせずに活動したまま越冬するナミハダニも存在し、体色は赤色をしています。休眠しない種類は1年を通して害を与えます。

卵の特徴

 円形
大きさ  0.1~0.2mm
 透明〜白〜赤色
産卵個数  約100〜150個
産卵場所  葉裏

成虫の特徴

雄に比べて雌の方がやや大きい(0.1〜0.2mm程度の差)のが特徴です。
 球状、楕円形
大きさ  約0.3〜0.6mm
 黄色〜赤色(ダニの種類による)

ハダニ類が発生しやすい条件

ハダニ類が好む条件について説明します。

◆発生時期

3~10月に発生し、特に梅雨明けから9月ごろに繁殖が盛んになります。7~8月の盛夏期は高温(28℃以上)により増殖量がやや低下します。
冬も暖かい施設栽培では年中発生します。

◆高温乾燥

ハダニ類は乾燥を好み、雨の少ない年に発生しやすくなります。乾燥し、密閉されている施設栽培では大発生してしまう場合もあるため特に注意します。
また高温を好むナミハダニは25℃以上では約10日で生育を完了して、急激に増殖します。


主に問題となるハダニ類

農作物で大きな問題となるハダニ類について紹介します。

ナミハダニ

黄緑色型ナミハダニ
出典:wikimedia
学名  Tetranychus urticae Koch
 黄色〜黄緑色(体の両側に黒いシミ)
大きさ  雌成虫:約0.6mm  雄成虫:約0.45mm

生態

休眠するナミハダニのメス
出典:wikimedia
ナミハダニの成虫は黄色〜黄緑色をしていますが、雌の中には赤色をしているものがいます。赤色型のものは休眠せず、見た目ではカンザワハダニとほとんど見分けがつきません。
また、ナミハダニの増殖能力は非常に高く、25℃では約10日で1世代を繰り返します。

カンザワハダニ

学名  Tetranychus kanzawai Kishida
 濃赤色~朱色

生態

カンザワハダニの雌は、夏はくすんだ赤色をしていますが、真冬の野外(11月〜翌年2月ごろ)では鮮やかな朱色となり、摂食も産卵もせず休眠します。
施設栽培では一部休眠することもありますが、ほぼ周年で発生します。

ミカンハダニ

学名  Panonychus citri  (McGregor)
 赤色
寄生作物  カンキツ、ナシ、モモ、イヌツゲなど

生態

休眠はしないため、一年中木の上で生活し冬でも活動します。冬の活動量は少ないですが、春になると増殖を始めます。
1世代の所要日数は25℃で約2週間です。

リンゴハダニ

学名  Panonychus ulmi  (Koch)
 暗赤色
寄生作物  ナシ、モモ、リンゴなどバラ科果樹
 

生態

枝に産まれた卵で越冬します。ふ化は展葉期ごろ(4月中旬ごろ)から始まり開花中に完了します。ふ化幼虫は、6月中旬ごろから木全体に分散し、発生盛期は7~8月です。

ハダニ類の被害と発見のポイント

ハダニ被害
出典:wikimedia
葉表に小白斑が集まったかすり状の葉を見つけたら、葉裏をよく確認し小さな粒のような物に触れて動いているかどうかを確認します。2~10倍程度のルーペを使うとよく見えます。成虫や卵を確認しましょう。


ハダニ類に有効な対策

ハダニ類の被害が大きくなる前にできる対策について説明します。

1. 圃場周辺の環境整備

圃場の周辺の雑草(スベリヒユ、クローバ、カラスノエンドウなどのマメ科植物など)や樹木(チャ、サザンカなど)がハダニ類の発生源となるので、雑草は除去します。樹木は薬剤を散布して、発生を予防します。

2. 圃場内の残渣を捨てる

前作の残りの枯れ終えた植物や、落ち葉などにハダニ類が潜んでいる可能性があります。
栽培前には残渣は圃場外に持ち出して片付け、圃場は清潔に保ちます。

3. 湿度を保つ

ハダニ類は乾燥によって急激に繁殖し増加します。圃場の湿度を一定以上保つことも防除に効果があります。
また水を嫌う性質があるため、圃場の加湿の観点からも散水することもおすすめです。観葉植物などでは葉の表面を水で濡らした雑巾で拭くのも効果的です。
※湿度が高い圃場では、病気が発生する恐れがあるため加湿は控えてください。

4. 農薬(殺虫剤)で駆除

ハダニ類は最初、一部の株に被害が出て、その後一気に拡大していくので、初発時に注意して少発生のうちに防除を徹底します。葉裏、芽先部分などに隠れているので、農薬はたっぷりと散布します。
ハダニ類は薬剤抵抗性の発達しやすい害虫で、新規薬剤でも数年で防除効果が低下する事例があります。薬剤の系統を把握し、同系統の薬剤は連用を避けることが大切です。
※生産者の方は、地域の防除指導機関やJAなどが推奨する効果の高い薬剤を選定し使用基準を守って作物にあった薬剤を使用しましょう。
※家庭菜園の方は、駆除したい虫をしっかり把握したあと、必ず作物にあった薬剤を選びましょう。

殺ダニ剤系統参考:主な殺ダニ剤とその特性一覧(JA全農ちば)

デンプンでハダニ類の気門を封鎖(窒息)

デンプンを原料とした薬剤で、物理的にハダニ類を窒息死させます。なるべく間隔をあけず定期的に散布することをおすすめします。
殺効果:幼虫、成虫
ITEM
粘着くん液剤
野菜類、花き類など幅広い作物で収穫の前日まで使用できます。
本剤の殺虫効果は薬液が虫を被覆することによる『虫体の捕捉』と『呼吸阻害』の物理的作用に よるものです。このため比較的短時間で効果を発揮します。散布後、10〜20分(露地条件)の 短時間で散布薬液が乾き、薬液の十分かかった害虫は、乾くまでにすでに死亡しています。
本剤の作用性は物理的であるため、害虫類が抵抗性を発達させることはありません。既存の化学農薬に抵抗性を発達させた害虫にも有効です。


・容量:1L
・有効成分:ヒドロキシプロピルデンプン(5.0%)

現場からの評価が高い!即効性の農薬

コナジラミ類などとの同時防除も可能です。
殺効果:卵、幼虫、成虫
ITEM
コロマイト乳剤
有効成分であるミルベメクチンは微生物が生産する天然物なので、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」において、化学合成農薬にはカウントされません。ただし、地方自治体が独自に定める農薬使用基準ではカウントされる場合がありますので、必ず地方自治体の関係機関に確認して下さい。

・容量:500ml
・有効成分:ミルベメクチン(1.0%)

速効性、残効性あり

残効性にとても優れています。

殺効果:幼・若虫と成虫
ITEM
ダニサラバフロアブル
既存の殺ダニ剤と異なる新規骨格を有する殺ダニ剤です。
ハダニの天敵であるカブリダニやその他の天敵、有用生物であるミツバチ、マメコバチ等に対して影響が小さくIPM(総合的病害虫管理)に適しています。

・容量:500ml
・有効成分:シフルメトフェン(20.0%)

▼農薬についてはこちらをご覧ください。



ハダニ類の天敵

ハダニ類を農薬で駆除しようとすると、何度も散布することになり経済的にも体力的にも大変なものです。また観光農園など、あまり農薬を使いたくない場面では、天敵の導入が進んでします。

天敵製剤

ハダニ類を捕食する天敵として、カブリダニや、捕食性のアザミウマ、テントウムシ、ハナカメムシなどが知られています。
その中で、ミヤコカブリダニ、チリカブリダニ、スワルスキーカブリダニといったカブリダニの仲間は製剤化されています。発生前に葉にまんべんなく撒いておくと、ハダニ類の大発生を防ぐことができます。
スワルスキーカブリダニはアザミウマ類やコナジラミ類の天敵でもあるので、同時防除も可能です。
天敵の名前 効果のあるハダニ   商品名(製薬メーカー)
 ミヤコカブリダニ  ハダニ類 ・ミヤコトップ
(アグリ総研)
・スパイカル
(アリスタライフサイエンス)
 チリカブリダニ  ハダニ類 ・チリトップ
(アグリ総研)
・スパイデックス
(アリスタライフサイエンス)
 スワルスキーカブリダニ  ミカンハダニ ・スワルスキー
(アリスタライフサイエンス)
ITEM
天敵製剤ミヤコトップ(ミヤコカブリダニ剤)
ハダニ類の捕食性天敵ミヤコカブリダニをボトルに封入した製剤です。
ミヤコカブリダニはハダニ類の卵から成虫までの全発育ステージを捕食します。
餌となるハダニ類がいないときは花粉などを餌として生活し、ハダニ類を待ち伏せします。
使用量は10aあたり約2,000〜6,000頭です。

含有量 : 2,000頭/250mlボトル

ITEM
天敵製剤チリトップ(チリカブリダニ剤)
ハダニ類の捕食性天敵チリカブリダニをボトルに封入した製剤です。
チリカブリダニはハダニ類の卵から成虫までの全発育ステージを捕食します。
ご使用にあたってチリカブリダニに影響を及ぼす農薬があります。これまで使用した農薬がチリカブリダニに影響しないか確認してください。
使用量は10aあたり6,000頭です。

・含有量 : 2,000頭/500mlボトル


※天敵はダニに影響のある農薬の使用で死亡してしまうこともあるため、農薬の種類に注意してください。
※ご購入、詳しい使用方法は、メーカーHP参照、JAまたは指導機関にご相談ください。
※使用方法参考HP アグリセクト天敵商品使い方説明

ハダニ類対策後の確認と作業

上記の農薬や天敵殺虫剤を使用して防除した後に行う確認と作業について紹介します。

ハダニ類駆除効果の確認

散布後2~4日し、息を吹きかけるなどして,ダニが動くかどうか反応をみます。卵が死んでいるかどうかは、散布後1週間程度の幼虫の発生状況で確認します。

蒸し込み

ハダニ類の被害にあった作物の栽培を終えたら、圃場の一箇所に集めてビニールをかけ太陽光をあてて1週間ほど放置して蒸し込み、卵、幼虫、成虫を殺虫しておくとさらに効果的です(夏期のみ)。
▼ハウス栽培では蒸し込みが効果的です

ハダニ類から作物を守るために

ハダニ類は、葉や果実をかすり状に食害し生育を悪くしたり、作物の商品価値を失わせてしまいます。主に葉裏に生息し発見が遅れる場合が多いため、作物の様子に注意して圃場を見回るようにします。また乾燥で多発するため、降雨が少ない場合、ハウスが乾燥している場合は特に注意します。農薬で効果的に予防しましょう。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。