黄化えそ病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

アザミウマを媒介にして発病する「黄化えそ病」は、ナス科、マメ科、キク科、ウリ科などの作物に大きな被害を与えています。一度かかると治療が不可能といわれている「黄化えそ病」の防除方法、アザミウマ対策におすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


トマト黄化えそ病

出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
黄化えそ病とは葉が黄化、枯死したり、茎に褐色のすじ条の病斑が現れるウイルスによる病気です。
この病原菌は、主にアザミウマ(スリップス)類によって媒介されます。一度発病してからの治療方法は無く、アザミウマ(スリップス)類の防除が必須です。
そんな黄化えそ病の症状と発見のポイントを押さえて予防と早期発見、防除を心がけましょう。

黄化えそ病の症状は葉の黄化、茎に褐色のすじ

黄化えそ病の主な症状は葉では色が抜けたような輪紋、または斑点を生じ、茎では褐色の筋が入る「えそ条斑」を生じます。やがて「葉が矮化する」「新芽がねじれる」など株の生長が抑制されるなどの症状が現れます。
果実ではまだらに黄化することがあります。
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

黄化えそ病の発症原因

黄化えそ病はウイルスが原因となる病気です。
ウイルスとは通常の顕微鏡では見ることのできないくらい小さな生き物です。ウイルスが植物に感染すると植物内で増殖し、その植物を虫が吸汁することでウイルスも一緒に虫の体内へ移動します。そして、虫が他の植物を吸汁する際に虫の口針を媒介してウィルスが伝染するのです。
名前  黄化えそ病
病原菌 ・トマト黄化えそウイルス:TSWV(Tomato spotted wilt virus)
・メロン黄化えそウイルス:MYSV(Melon yellow spot virus)
分類  ウイルス病
媒介昆虫  アザミウマ(スリップス)類
発生時期  5~10月

黄化えそ病は「アザミウマ(スリップス)類」が原因

黄化えそ病を媒介するのは主にアザミウマ(スリップス)類です。
アザミウマ(スリップス)類の幼虫が吸汁によってウイルスを保菌し、成虫になると他の植物に飛来し、病気を伝染させます(保毒した虫は死ぬまで伝染能力がありますが、経卵伝染はしない)。
そのため、黄化えそ病は種子伝染や土壌伝染はせず、人間の管理作業による汁液伝染もほとんどしないと考えられています。

▼アザミウマ(スリップス)類の生態、防除についてはこちらをご覧ください。


アザミウマ(スリップス)類が活発になる5~10月に要注意

病原菌の「TSWV(Tomato spotted wilt virus)」は、アザミウマ(スリップス)類の「ミカンキイロアザミウマ」、「ヒラズハナアザミウマ」、「ネギアザミウマ」などによって、「MYSV(Melon yellow spot virus)」は、「ミナミキイロアザミウマ」によって伝わり広がっていくので、アザミウマ(スリップス)類の動きが活発となる5月ごろから10月ごろに黄化えそ病の発病株も多くなります。

黄化えそ病の治療方法は無い

黄化えそ病は病気自体を治療する方法は無いため、アザミウマ(スリップス)類の対策を行い、予防することが重要です。

黄化えそ病に感染する主な植物

黄化えそ病は野菜類、花卉(かき)類、どんな植物にも感染する可能性がある病気です。黄化えそ病が問題となっている主要な作物と、その症状を紹介します。

トマト黄化えそウイルス(TSWV)が原因となる植物

TSWV(Tomato spotted wilt virus)は非常に多くの野菜に感染します。野菜類ではトマト、ナス、ピーマン、レタス、タバコ、トウガラシなどに、花卉類ではキク、ガーベラ、マリーゴールド、シクラメン、アルストロメリア、トルコギキョウなどに感染します。

トマト

トマト黄化えそ病
出典:Flickr(Photo by :Scot Nelson)
葉では不整形の褐色斑点または輪紋を生じます。芽は黄化して、細く奇形となります。茎は褐色の条斑を生じて、内部が空洞となります。果実はまだらに色抜けして、こぶ状に隆起します。
※似た病害に、黄化萎縮病、黄化葉巻病、生理障害などがあります。農業従事者の方は、詳しい診断を県やJAなど指導機関に依頼することをおすすめします。

キク(キクえそ病)

葉では不整形の褐色斑点または輪紋を生じ、葉の縁から黄化して枯れ込みます。茎は褐色~黒褐色の条斑を生じて、切断すると内部も黒く変色しています。気温が高くなってくると病状がはっきりとみられます。
親株から苗を増殖した場合、親株がえそ病に感染していると、定植苗にもえそ病の発生が見られます。
予防のためには、無病の苗を用いるか、親株でのアザミウマ(スリップス)類の防除を徹底することが重要です。

メロン黄化えそウイルス(MYSV)が原因となる植物

病原菌のMYSV(Melon yellow spot virus)は、野菜類ではキュウリ、メロンに感染します。

キュウリ

葉の葉脈にが透けるような症状が出ます。その後、葉が激しく黄化しえそ斑を生じます。
感染株は生育が抑制され、症状が激しい場合は枯死することがあります。果実にはほとんど症状が現れませんが、品種によってはモザイク症状や奇形を生じることもあります。
また、メロンではネット形成が異常になる場合があります。


黄化えそ病予防に有効な対策

黄化えそ病の予防は、主にアザミウマ(スリップス)類対策です。病気の蔓延を防ぐために、アザミウマ(スリップス)類を寄せ付けない圃場で行う方法と「農薬」の使用を行います。2つの方法を組み合わせて適切な黄化えそ病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

圃場での黄化えそ病対策

農薬を使わない、圃場で行う黄化えそ病対策です。

1.圃場や菜園周りの除草

アザミウマ(スリップス)類は圃場や菜園の外の雑草から飛来します。圃場や菜園周辺の除草を徹底して伝染源を根絶しましょう。

2. シルバーマルチ

アザミウマ(スリップス)類は下から光が当たると、上下の感覚がわからなくなるという性質があります。日光を反射させることでアザミウマ(スリップス)類の集団飛来を抑制するシルバーマルチを利用することがおすすめです。

▼マルチの選び方についてはこちらをご覧ください。

3. 赤色防虫ネット

作物の種をまいて苗を作る(苗床)段階から防虫網を使用し、アザミウマ(スリップス)類の侵入を防ぎましょう。
施設栽培においては、出入口や側窓等に防虫ネット(0.8mm以下)を張ることが効果的です。このとき使用する防虫ネットは赤色がおすすめです。アザミウマ(スリップス)類は赤色が認識できず、アザミウマ(スリップス)類の目には黒い壁に見えるので、より飛来を抑制でき効果的です。

▼防虫ネットの選び方についてはこちらをご覧ください。

アザミウマ(スリップス)類に効果的な「農薬」

農薬を使用してアザミウマ(スリップス)類を防除しましょう。作物ごとに使用する農薬にアザミウマ(スリップス)類の登録があるか必ず確認してください。
また、散布は1回だけではなく、定期的に農薬の種類を組み合わせてローテーション散布することがおすすめです。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆ボタニガードES

昆虫に寄生するカビ(糸状菌)を製剤化した微生物農薬です。JAS法に適合し、農薬散布回数にカウントされませんので、有機栽培・特別栽培農産物でも使用可能です。なるべく発生初期にご使用ください。
※糸状菌製剤は環境要因(温度・湿度)によって効果が大きく振れてしまいます。安定した効果を出すためには必ず複数回(2回以上)の散布を行ってください。
ITEM
ボタニガードES
微生物殺虫剤であり環境に優しい剤です。対象害虫に対し、従来の化学農薬と同等の高い防除効果を発揮します。
鉱物油を含んだ乳剤であり、湿度条件に影響されにくい為、施設だけではなく露地でも使用することができます。
コナジラミ類・アザミウマ類・アブラムシ類・コナガなど昆虫病原性糸状菌(ボーベリア バシアーナ)を利用した防除のため、薬剤抵抗性の発達した害虫に対しても優れた効果を発揮します。
ボタニガード散布後、好条件下では感染した死亡虫の体表面に白いかびが生えるので、効果が目で確認できます。

・内容量:500ml
・有効成分:ボーベリア・バシアーナ GHA株 分生子(Beauveria bassiana)1.6×1010個/ml

◆ダントツ水溶剤

浸透移行性に優れており、定植時の植穴処理、または生育期の株元処理で高い防除効果を発揮し、その効果は長期間持続します。
アザミウマ目の他に、カメムシ目、ハエ目、コウチュウ目、チョウ目、バッタ目の各種害虫に高い防除効果を発揮します。
ITEM
ダントツ水溶剤
幅広い殺虫スペクトラムを有し、野菜・茶・水稲の幅広い害虫に優れた効果を発揮します。
浸透移行性があるので、葉裏や次々と伸びる新梢に寄生するアブラムシ類やミカンハモグリ、ガに対しても高い効果を示します。
2000倍から4000倍の茎葉散布で、残効性に優れ、2〜3週間高い防除効果を示します。
顆粒タイプの水溶剤で粉立ちが少なく溶けやすいので、調製が簡単です。また、作物が汚れる心配もほとんどありまぜん。

・内容量:125g
・有効成分:クロチアニジン(16.0%)

◆ディアナSC

比較的新しい薬剤のため、高い効果が期待できます。収穫前日まで使用可能です。
ITEM
ディアナSC
アザミウマ目害虫、ハエ目害虫、チョウ目害虫に対して防除効果を発揮するので、幅広い害虫の防除が可能です。

・内容量:100ml
・有効成分:スピネトラム(11.7%)

黄化えそ病発症後の対応は被害部分の除去

黄化えそ病は一度発病してからの治療方法は無いため、黄化えそ病の発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。抜き取った被害植物が圃場に放置されていると、さらなる伝染源となる恐れがあるため、被害植物は圃場外に持ち出して、埋めるなどして処分します。

黄化えそ病対策に何より大事なのはアザミウマ対策

黄化えそ病はアザミウマ(スリップス)類によって媒介されるウイルス病ですので、アザミウマ(スリップス)類の対策を行いましょう。圃場回りの除草、防虫ネットの展張(赤色が効果的)、予防的な農薬散布が効果的です。

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rinko

農協、農業資材メーカーで農業技術指導をしていました。 現場目線の記事作成を心がけていきます。