根腐病の症状
「植物が日中萎れるようになってきた」「株を抜くと根が腐ってきている」などの症状が現れたときは、根腐病を疑いましょう。病斑部の特徴
根腐病菌に感染すると根は茶褐色〜黒色に変色し枯死するため、水分を地上部へあげるのが困難になり葉が黄化して萎れます。地際部は褐変し、腐敗するなどの症状が現れることがあります。
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根が消失したときに現れる「気根」
根腐病などに感染して植物の根の機能が失われたときに、茎の基部から「気根(きこん)」と呼ばれる新しい根が生えてくることがあります。気根が見られたら根腐病(または水分過剰などによる根傷み)の可能性があります。根腐病の発症原因
根腐病は糸状菌(カビ)が原因で発生する病気です。数種類のカビが多くの植物の根に発生します。原因は数種類のカビ
根腐病の原因として「ピシウム属菌」「リゾクトニア属菌」「フザリウム属菌」「ファイトフソラ属菌」などが知られています。いずれも土壌病原菌です。菌名 | ピシウム属菌 | リゾクトニア属菌 | フザリウム属菌 | フィトフトラ属菌 |
植物 | キュウリ、トマト、ミツバ、バラ、カーネーション、チューリップ | ダイコン、カブ、ニンジン | インゲンマメ、エンドウ、レタス | イチゴ、ガーベラ |
根の状態 | あめ色、腐敗 | 茶褐色~黒色 | 赤褐色〜黒色 | 赤褐色〜褐色(根の中心)、軟腐敗 |
温度 | 25〜30℃ | 20〜30℃ | 25〜30℃ | 10℃前後の低温 |
条件 | 多湿土壌、養液・水耕栽培 | 多湿土壌 | 多湿土壌 | 多湿土壌 |
伝染経路 | 卵胞子や残渣の菌糸で土壌中に残る、多湿条件で遊走子を形成して伝染 | 土中の感染した植物上で菌糸の状態で残り伝染、菌核をつくることも | 土壌中の厚膜胞子が気温や多湿な環境で発芽して伝染 | 卵胞子の形で土壌中に残る、多湿条件で遊走子を形成して伝染 |
※遊走子とは水分を泳ぐことができる鞭毛(べんもう)を持つ病原体。
※フィトフトラ属菌またはファイトフソラ属菌。
根腐病に感染する主な植物
多くの作物が感染しますが、特に重症化しやすい作物について紹介します。トマト
はじめ日中だけ株が萎れますが、症状が進むと一日中萎れます。根の一部が褐変していたのが、後に根全体があめ色になり、やがて腐敗します。水耕栽培では、発病後一週間程度で病原菌が蔓延し全滅することもあります。
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ダイコン
【根】根の表面に円形や不整形、帯状の褐色の亀裂が入り、褐変する症状や横すじ状の褐変を生じることもあります。
【葉】
円形~不整形、灰色の破れやすい病斑を作ります。
主に根に発生しますが、葉や葉柄に発生することもあります。根や地表近くの病斑部にはくもの巣状の菌糸が見られることもあります。
また、アブラナ科作物に共通している病原菌なので、アブラナ科作物を連作すると、病原菌の密度が増して病気を引き起こしやすくなります。そのため、品種の選定には要注意です。
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インゲンマメ
はじめ、下葉から黄化し始めて株全体が萎れ枯死します。根の表面や茎の地際部には赤褐色〜黒褐色の線状または不整形の病斑が生じ、根の細根は腐って脱落します。
▼サヤインゲンの育て方ならこちらをご覧ください。
根腐病に有効な予防方法
根腐病は発生してから治療をすることは困難な病気です。発生させない予防対策を行いましょう。根腐病に有効な予防は「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬の使用」で行います。さまざまな方法を組み合わせて適切に根腐病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。
根腐病を発症させない「農薬を使わない」管理方法
農薬を使わずに行う根腐病対策です。1. 前作の残渣の処理
病気が感染した植物上に病原菌が残り感染源となるので、前作の植物残渣はなるべく圃場外に持ち出して処理します。2. 未熟有機物を使用しない
生藁(なまわら)などの完全に分解されていない有機物は、病原菌を増殖させるので使用しないでください。3. 土壌の入れ替え、消毒
前作に根腐病が発生した圃場また発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。太陽熱消毒は一年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水(かんすい)した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、20日から30日程度放置してください。
▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
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プランター栽培では新しい土と入れ替えるか、根腐病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。
4. 育苗ポット、トレイ、資材の消毒
前作で使用した育苗ポットやトレイ、水耕栽培の資材に病原菌の胞子が残っていると伝染源となる場合があります。5. 水はけの良い圃場造り
土壌中の水分が過剰な状態では、根腐病の病原菌が蔓延しやすくなります。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良資材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。
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6. 風通しを良くして、湿度を低く保つ
植え付け後は、過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。根腐病の予防に効果的な「農薬」
農薬(殺菌剤)を使用して、より効果的に根腐病を予防しましょう。前述の通り根腐病は菌の種類が多いため、それぞれの菌に効果のある農薬を使用することがおすすめです。使用する薬剤に作物の登録があるか、必ずご確認ください。※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
薬品名 | ピシウム属 | リゾクトニア属 | フザリウム属菌 | フィトフトラ属菌 |
リゾレックス粉剤 | ◯ | |||
タチガレン液剤 | ◯ | ◯ | ||
オーソサイド水和剤80 | ◯ | ◯ | ○ | |
リゾレックス水和剤 | ◯ | |||
ダコニール1000 | ◯ | ○ | ||
ベンレート水和剤 | ◯ |
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▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。
土壌混和で植え付け時から安心
リゾレックス粉剤
植え付け前に土壌混和処理します。
リゾクトニア属菌に効果があります。
・内容量:3kg
・有効成分:トルクロホスメチル(5.0%)
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・内容量:3kg
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稲作でも使われる高い効果
ほかの病気予防にも効果的
生育期のリゾクトニア対策に
多くの病気を予防します
ダコニール1000
広範囲の病害に効果があるため、同時防除にもおすすめです。
リゾクトニア菌、リゾプス属菌などに効果があります。
・内容量:250ml
・有効成分:TPN(テトラクロロイソフタロニトリル)(40%)
リゾクトニア菌、リゾプス属菌などに効果があります。
・内容量:250ml
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土壌病害に効果が高い
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▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。
根腐病発症後の対応は被害株の除去と消毒
根腐病の発生が確認された場合はただちに株を取り去りましょう。除去したものはほかに伝染しないようにビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。また、周辺の株に病気が広がらないよう農薬を散布しましょう。このとき、土壌にたっぷりとかかるようにします。
養液栽培の場合は養液の入れ替え、タンクやベンチ、灌水設備の消毒をおすすめします。
養液栽培の殺菌に「オクトクロス」
養液栽培や水耕栽培では、ピシウム菌が圃場全体に一気に広がることがあります。
水耕栽培で使える防除資材として「オクトクロス」があります。「オクトクロス」をタンクに入れておくと、銀イオンが放出されて植物の根を守る効果があります。
※オクトクロスの購入や使用方法は、JAや農業資材店にご相談ください。
根腐病対策に何より大事なのは土づくりと予防的な消毒
根腐病は土壌病害です。圃場は、水はけの良い病原菌の繁殖しにくい栽培環境に整えます。また、栽培に使用する資材の消毒も重要です。栽培はじめや栽培終わりには資材の消毒を行いましょう。