萎黄病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

同じ萎黄病でも「イチゴ」「キャベツ・小松菜・カリフラワー」「大根」など作物によって発病させる菌の系統が異なる「萎黄病」の病原菌の種類や感染しやすい時期、土壌消毒などの防除方法やおすすめの薬剤(農薬)を詳しく説明します。


萎黄病、イチゴ

撮影:AGRI PICK編集部
萎黄(いおう)病とは、主にイチゴやキャベツ、ダイコンなどで多く発生し、発症すると葉が黄化し萎(しお)れるなどの症状が現れる病気です。そんな萎黄病の発見のポイントを押さえて予防と早期発見、防除を心がけましょう。

萎黄病の症状は葉の黄化、奇形化

「葉が下から黄化してきた」「株が萎れている」「新葉が奇形になる」などの症状が現れたときは萎黄病を疑いましょう。
萎黄病は土壌から感染する病気で、根は褐色に腐敗し、地際部に近い茎は腐敗します。下葉から黄化し萎れ、新しく出てくる葉はよじれて奇形になります。
イチゴの地際部に近い茎やクラウンを切断すると、維管束が褐色になっているのがわかります。
※維管束とは水や養分を運ぶ通路機能以外にも、葉・茎・根など植物の植物の各器官をつなぎ、支える組織。

萎黄病の発症原因

フザリウム 萎黄病とはカビ(糸状菌)やファイトプラズマ(細菌)が原因で発症する病気です。
名前  萎黄病
菌名  Fusarium oxysporum
分類  糸状菌
発生適温  28℃前後

ファイトプラズマが原因となる萎黄病

ネギやタマネギ、ニンジン、ホウレンソウ、レタスなどが萎黄病に感染するのは、ファイトプラズマ(細菌)が原因によるものです。
萎黄病の病原菌は「ヒメフタテンヨコバイ」というヨコバイ類の害虫によって拡散されていきます。「ヒメフタテンヨコバイ」は7月下旬から10月にかけて発生が見られるため、忘れずに防除を行いましょう。
これ以降、本記事では主にカビが原因となる萎黄病について説明します。
▼病原体のことならこちらをご覧ください。

萎黄病は土壌伝染性病害

カビ(糸状菌)が原因で発症する萎黄病菌は、土壌中や枯れた植物(残渣/ざんさ)で、主に長期生存が可能な厚膜胞子(こうまくほうし)という形で存在します。この厚膜胞子は土壌中で5年以上も生存することができます。

萎黄病の病原菌が存在する土壌で新たに植物が植え付けられると、根で反応して病原菌が発芽し、根の表面や傷口から侵入して植物体内で菌糸(きんし)を蔓延させます。
維管束で胞子を多数作って増殖し、道管を閉塞させ、植物は水や養分を送ることができずに生長が抑制されます。
維管束の一部が閉塞するため、茎の片側が萎れたり、葉の一部が黄化するなどの症状が出ます。
※道管(または導管)とは、水分や養分を運ぶ維管束の構成要素のひとつ。

萎黄病が発生しやすい条件とは

萎黄病が発生しやすい環境や土壌について説明します。

◆発生時期、気温

春~秋の、気温が高い時期に発生します。
気温28℃前後、地温は25~30℃で発病が多くなります。

◆湿潤、乾燥土壌

土壌が極端な湿潤状態、もしくは乾燥状態で発生が多くなります。

◆酸性土壌

土壌pHが酸性に傾くと発生しやすくなり、中性~アルカリ性で発生が抑えられます。

◆根傷み

多湿、乾燥や移植による根傷みやセンチュウなどによる傷口があると、病原菌が侵入しやすくなります。
※センチュウとは主に土壌に生息し、植物の根を侵す。体長は0.5~3mmで紡錘形(ぼうすいけい)をしており、口に槍(やり)状の口針を持つ害虫。

萎黄病に感染する主な植物

萎黄病はイチゴやキャベツ、カブ、コマツナ、セロリ、ダイコン、ホウレンソウなどの野菜、ハボタンやミヤコワスレなどの草花に感染します。
萎黄病は菌の種類が細かく分かれており、寄生する植物も菌の種類によって違います。
例えば、イチゴに感染する萎黄病の病原菌(Fusarium oxysporum f. sp. fragariae)はキャベツには感染しません。一方、キャベツ、コマツナ、ブロッコリーなどのアブラナ科類は病原菌(Fusarium oxysporum f. sp. conglutinans)が共通している場合が多いため、アブラナ科類での輪作には注意が必要です。

イチゴ

新葉が黄緑色になって、葉が表側にまくようにねじれ、新葉1~2枚が小さくなります。
発病株のクラウン部を切断すると、維管束が褐変しています。
収穫期には果実が少なくなり、肥大が悪くなります。
親株に発生するとランナーの数が少なくなり、子株にも同じ症状がみられるようになるので、親株は無病の苗を厳選しましょう。

キャベツ

下葉から黄化し、症状が進むと枯れ落ちます。
黄化は葉や株の片側に現れる場合があり、うまく葉が展開できずに奇形となります。感染した株の維菅束は変色します。
高温期に発生が多く、育苗期から結球期まで発生します。

ダイコン

下葉から黄化して、症状が進むと落葉して根は肥大不足となります。
生育初期に発病すると株ごと枯死することがあります。
根部では維管束が環状に茶色~黒褐色に変色します。
種子伝染するため、無病の種子を用いましょう。


萎黄病に有効な防除方法

萎黄病に有効な防除は圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬」の使用で行います。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所。

萎黄病を発症させない管理方法

農薬を使わずに行う萎黄病の予防方法について説明します。

1. 植物残渣の処理

前作の植物や落ちた葉に萎黄病が感染している可能性があります。残渣を鋤(す)き込むと萎黄病菌が増殖する恐れがあるため、圃場外に持ち出して処理しましょう。

2. 土壌の消毒、入れ替え

前作に萎黄病が発生した圃場、発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。
太陽熱消毒は、一年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水(かんすい)した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、20〜30日程度放置してください。

プランター栽培では新しい土と入れ替えるか、萎黄病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。

3. 土壌酸度の調整

萎黄病菌はpH値が低い酸性土壌で発生しやすいため、石灰質の肥料を入れて中性~アルカリ性へ調整することも効果的です。
▼土壌のpH測定のことならこちらをご覧ください。


4. 保水性の良い圃場づくり

水分が多過ぎる土壌や反対に乾燥し過ぎている土の状態は、根傷みを起こし病原菌が感染しやすくなります。
水はけを良くするには畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入します。
乾燥しやすい土には、水分の過剰な蒸発を防ぐポリマルチを使用することもおすすめです。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。▼マルチのことならこちらをご覧ください。

5. 根傷みの予防

根に傷口があると、その部分に病原菌が侵入しやすくなります。傷口を作るセンチュウの対策を行いましょう。
センチュウ対策には、えん麦やマリーゴールドなどの緑肥作物を栽培するのが効果的です。そのほかにも、サポニンという成分がセンチュウを抑制するので土壌にサポニンの成分を含む椿油粕を混ぜることで予防することができます。
▼緑肥のことならこちらをご覧ください。▼椿油粕のことならこちらもご覧ください。

6. 連作の防止

連作すると土壌中の菌密度が年々高まり発生が増えます。
また、アブラナ科野菜は菌の種類が共通している場合が多いため、アブラナ科野菜の輪作は要注意。イネ科などの作物と輪作を行うことをおすすめします。
▼連作のことならこちらをご覧ください。

土作りの味方「放線菌」を増やして病原菌を撲滅!

土壌には「放線菌」という菌がもともと生息しています。この放線菌は土壌をふかふかにする効果があり、この菌を増やすことによって水はけの良い、病原菌の住みにくい環境にすることができます。
また、放線菌はキチン質をエサとするため、病原菌が増殖する前にキチン質の資材を入れて放線菌を増やすことで病気の予防になります。

カニ殻で放線菌を増やす

カニ殻のキチン質が放線菌のエサとなり、放線菌が増殖します。
カニ殻はホームセンターなどでも販売されています。肥料と一緒に土壌に混ぜて、放線菌を増やしましょう。

ITEM
カニ殻
カニ殻のキチン質が植物の病気の原因のフザリウム菌の増殖を抑制します。
また、病気予防だけでなく土壌の微生物のバランスも改善してくれます。
キチン質は健康食品などにも使用されているため、身体にも安全なので安心して使用できます。
1坪あたり、本品1袋(1.2L)を混ぜ込んでください。 プランターでの使用は12~14Lの土に本品、大さじ1~2杯(約15~30ml)を混ぜ込んでください。

・容量:1.2L
・有効成分:キチン質

漢方かすの肥料、ツムランド

漢方を作る時にできる残渣を発酵させて作られ堆肥です。微生物を多く含んでおり、特に放線菌が多いため病気の予防に効果があります。
また、微生物が土壌の団粒化を促進して土壌環境を改善するため、根張りが良くなります。
ITEM
ツムランド
漢方薬の原料の各種生薬からエキス分を抽出した後の生薬かすを発酵させた、100%有機質原料の肥料です。
長期間好気発酵、完熟させたもので、一切の添加物はありません。
発酵期間のすべてを屋内で製造しています。

・内容量:15kg
・含有成分:窒素2.4%、リン酸1.0%、カリ1.0%(C/N比7.5)
・形状:粉末

萎黄病の防除に効果的な「農薬」

農薬を使用してより効果的に萎黄病を防除しましょう。萎黄病は発生してからの薬剤防除は難しいため、予防的に使用することをおすすめします。
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆フザリウム属菌に高い効果、ベンレート水和剤

散布や灌注で効果があります(時期は作物によって異なります)。
広範囲の病害に効果があるため、同時防除にもおすすめです。

ITEM
ベンレート水和剤
水稲・野菜・果樹などの幅広い作物に使用でき、浸透移行性に優れ、予防・治療の2つの効果を示します。
茎葉の病害、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害など、多方面にわたり優れた効果を示します。
低濃度で使用できるので、作物を汚染することが少ない薬剤です。

・内容量:100g
・有効成分:ベノミル(50.0%)


▼農薬についてはこちらをご覧ください。

萎黄病発症後の対策

萎黄病の発生が見られたら、菌が土に残らないように周辺の土ごと株を取り去ります。土壌に鋤き込むと病原菌を放出してしまうので、圃場の外に持ち出して処分してください。
予防的に農薬を散布する場合は、株の周囲にたっぷりとかけるようにします。
また、圃場で使用した道具や土のついた靴は病原菌が付着しているため丁寧に洗い、ほかの圃場へ持ち込まないようにしましょう。

萎黄病対策に何より大事なのは土づくり、品種選び

萎黄病は発病してからの防除は難しいため、発症しないための環境づくり、土づくりが大切です。
萎黄病が発生した圃場、発症が懸念される圃場では、土壌の消毒をしてください。また、根傷みを起こさないよう、多湿にならない土壌づくりを心がけましょう。土壌に良いとされる菌を増やして、病原菌が住みにくい環境にするのも効果的です。
また、アブラナ科野菜などの連作で病気が発生しやすくなるため、輪作を行うなど品種選びも重要です。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。