萎黄病の症状
「葉が下から黄化してきた」「株が萎れている」「新葉が奇形になる」などの症状が現れたときは萎黄病を疑いましょう。病斑部の特徴
萎黄病は土壌から感染する病気で、根は褐色に腐敗し、地際部に近い茎は腐敗します。下葉から黄化し萎れ、新しく出てくる葉はよじれて奇形になります。イチゴでは地際部に近い茎やクラウンを切断すると、維管束が褐色になっているのがわかります。
※維管束とは水や養分を運ぶ通路機能以外にも、葉・茎・根など植物の植物の各器官をつなぎ、支える組織。
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萎黄病の発症原因
萎黄病とはカビ(糸状菌)やファイトプラズマ(細菌)が原因で発症する病気です。※ファイトプラズマとは細菌の仲間で、ウイルスほどの大きさしかなく、ヨコバイなどの虫が媒介します。
ファイトプラズマが原因の萎黄病
ホウレンソウやネギ、タマネギ、ニンジン、レタスなどが萎黄病に感染するのは、ファイトプラズマ(細菌)が原因によるものです。
カビ(糸状菌)が原因の萎黄病
これ以降、本記事では主にカビ(糸状菌)が原因で発生する萎黄病について説明します。名前 | 萎黄病 |
菌名 | Fusarium oxysporum |
分類 | 糸状菌 |
発生適温 | 28℃前後 |
土壌伝染性
カビ(糸状菌)が原因で発症する萎黄病菌は、土壌中や枯れた植物(残渣/ざんさ)で、主に長期生存が可能な厚膜胞子(こうまくほうし)という形で存在します。この厚膜胞子は土壌中で5年以上も生存することができます。萎黄病の病原菌が存在する土壌で新たに植物が植え付けられると、根で反応して病原菌が発芽し、根の表面や傷口から侵入して植物体内で菌糸(きんし)を蔓延させます。
維管束で胞子を多数つくって増殖し、道管を閉塞させ、植物は水や養分を送ることができずに生長が抑制されます。維管束の一部が閉塞するため、茎の片側が萎れたり、葉の一部が黄化するなどの症状が出ます。
※道管(または導管)とは、水分や養分を運ぶ維管束の構成要素のひとつ。
新たな伝染源「ヒメフタテンヨコバイ」
萎黄病の病原菌はヒメフタテンヨコバイというヨコバイ類の害虫によって拡散されていきます。ヒメフタテンヨコバイは7月下旬〜10月にかけて発生が見られるため、忘れずに防除を行いましょう。萎黄病が発生しやすい条件とは
萎黄病が発生しやすい環境や土壌について説明します。発生時期
春~秋の気温の高い時期に発生します。気温
気温28℃前後、地温は25~30℃で発病が多くなります。土壌環境
土壌が極端な湿潤状態、もしくは乾燥状態で多発します。酸性土壌
土壌pHが酸性に傾くと発生しやすくなり、中性~アルカリ性で発生が抑えられます。根傷み
多湿、乾燥や移植による根傷みやセンチュウなどによる傷口があると、病原菌が侵入しやすくなります。※センチュウとは主に土壌に生息し、植物の根を侵す。体長は0.5~3mmで紡錘形(ぼうすいけい)をしており、口に槍(やり)状の口針を持つ害虫。
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萎黄病に感染する主な植物
萎黄病はイチゴやキャベツ、カブ、コマツナ、セロリ、ダイコン、ホウレンソウなどの野菜、ハボタンやミヤコワスレなどの草花に感染します。萎黄病は菌の種類が細かく分かれており、寄生する植物も菌の種類によって違います。
例えば、イチゴに感染する萎黄病の病原菌(Fusarium oxysporum f. sp. fragariae)はキャベツには感染しません。一方、キャベツ、コマツナ、ブロッコリーなどのアブラナ科類は病原菌(Fusarium oxysporum f. sp. conglutinans)が共通している場合が多いため、アブラナ科類での輪作には注意が必要です。
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イチゴ
新葉が黄緑色になって、葉が表側にまくようにねじれ、新葉1~2枚が小さくなります。発病株のクラウン部を切断すると、維管束が褐変しています。
収穫期には果実が少なくなり、肥大が悪くなります。
親株に発生するとランナーの数が少なくなり、子株にも同じ症状がみられるようになるので、親株は無病の苗を厳選しましょう。
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キャベツ
下葉から黄化し、症状が進むと枯れ落ちます。黄化は葉や株の片側に現れる場合があり、うまく葉が展開できずに奇形となります。感染した株の維菅束は変色します。
高温期に発生が多く、育苗期から結球期まで発生します。
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ダイコン
下葉から黄化して、症状が進むと落葉して根は肥大不足となります。生育初期に発病すると株ごと枯死することがあります。
根部では維管束が環状に茶色~黒褐色に変色します。
種子伝染するため、無病の種子を用いましょう。
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萎黄病に有効な防除方法
萎黄病に有効な防除は圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬」の使用で行います。※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所。
萎黄病を発症させない管理方法
農薬を使わずに行う萎黄病の予防方法について説明します。1. 植物残渣の処理
前作の植物や落ちた葉に萎黄病が感染している可能性があります。残渣をすき込むと萎黄病菌が増殖する恐れがあるため、圃場外に持ち出して処理しましょう。2. 土壌の消毒、入れ替え
前作に萎黄病が発生した圃場、発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。太陽熱消毒は、一年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水(かんすい)した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、20〜30日程度放置してください。
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プランター栽培では新しい土と入れ替えるか、萎黄病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。
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3. 土壌酸度の調整
萎黄病菌はpH値が低い酸性土壌で発生しやすいため、石灰質の肥料を入れて中性~アルカリ性へ調整することも効果的です。▼土壌のpH測定のことならこちらをご覧ください。
4. 保水性の良い圃場づくり
水分が多過ぎる土壌や反対に乾燥し過ぎている土の状態は、根傷みを起こし病原菌が感染しやすくなります。水はけを良くするには畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入します。
乾燥しやすい土には、水分の過剰な蒸発を防ぐポリマルチを使用することもおすすめです。
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5. 根傷みの予防
根に傷口があると、その部分に病原菌が侵入しやすくなります。傷口を作るセンチュウの対策を行いましょう。センチュウ対策には、えん麦やマリーゴールドなどの緑肥作物を栽培するのが効果的です。そのほかにも、サポニンという成分がセンチュウを抑制するので土壌にサポニンの成分を含む椿油粕を混ぜることで予防することができます。
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▼椿油粕のことならこちらもご覧ください。
6. 連作の防止
連作すると土壌中の菌密度が年々高まり発生が増えます。また、アブラナ科野菜は菌の種類が共通している場合が多いため、アブラナ科野菜の輪作は要注意。イネ科などの作物と輪作を行うことをおすすめします。
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土づくりの味方「放線菌」を増やして病原菌を撲滅!
土壌には「放線菌」という菌がもともと生息しています。この放線菌は土壌をふかふかにする効果があり、この菌を増やすことによって水はけの良い、病原菌の住みにくい環境にすることができます。また、放線菌はキチン質をエサとするため、病原菌が増殖する前にキチン質の資材を入れて放線菌を増やすことで病気の予防になります。
カニ殻で放線菌を増やす
漢方かすの肥料、ツムランド
萎黄病の防除に効果的な「農薬」
農薬(殺菌剤)を使用してより効果的に萎黄病を防除しましょう。萎黄病は発生してからの薬剤防除は難しいため、予防的に使用することをおすすめします。※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
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▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。
フザリウム属菌に高い効果、ベンレート水和剤
▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。
▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。
萎黄病発症後の対策
萎黄病の発生が見られたら、菌が土に残らないように周辺の土ごと株を取り去ります。土壌にすき込むと病原菌を放出してしまうので、圃場の外に持ち出して処分してください。予防的に農薬を散布する場合は、株の周囲にたっぷりとかけるようにします。
また、圃場で使用した道具や土のついた靴は病原菌が付着しているため丁寧に洗い、ほかの圃場へ持ち込まないようにしましょう。
萎黄病対策に何より大事なのは土づくり、品種選び
萎黄病は発病してからの防除は難しいため、発症しないための環境づくり、土づくりが大切です。萎黄病が発生した圃場、発症が懸念される圃場では、土壌の消毒をしてください。また、根傷みを起こさないよう多湿にならない土壌づくりを心がけましょう。土壌に良いとされる菌を増やして、病原菌が住みにくい環境にするのも効果的です。また、アブラナ科野菜などの連作で病気が発生しやすくなるため、輪作を行うなど品種選びも重要です。