センチュウ(線虫)類を駆除・防除する方法

作物が日中に萎れ、根菜類では商品価値を著しく低下さるセンチュウ類のなかでも、特に農作物に被害を及ぼすネコブセンチュウやネグサレセンチュウ、シストセンチュウの発見のポイントや防除対策、予防のために使用する薬剤について説明します。


ネコブセンチュウ

出典:flickr(photo by Scot Nelson)
野菜を育てていると、何となく生育が悪い、日中に萎(しお)れてしまうことはありませんか?もしかして、根にセンチュウ類が寄生しているかもしれません。
センチュウ類の中でも、特に農作物に被害を及ぼすネコブセンチュウやネグサレセンチュウ、シストセンチュウの発見のポイントや予防対策で使用する薬剤について初心者の方にもわかりやすく説明します。

センチュウ(線虫)類とは

植物に寄生するセンチュウ類(ネマトーダ)とは、主に土壌中に生息する微生物です。
世界で約3000種類、日本で約200種類が知られています。

センチュウ類の特徴

ネグサレセンチュウ
出典:wikimedia
体長は0.3〜1mmで、無色透明で紡錘形をしています。雌が成熟すると肥大して、球形の体形になる種類もいます。口には植物細胞を食害する口針を持っています。

主なセンチュウ類の生態や生存年数

センチュウの種類によって越冬や休眠状態は異なりますが、卵、成・幼虫いずれかの状態で、土中や植物残渣(ざんさ)上で過ごします。
多湿環境を好みますが、乾燥状態で数年から十数年生き延びるセンチュウ類も存在します。
卵からふ化した幼虫は、土中を移動して、根の中または根の外部から栄養を吸収して成長し、植物を萎れさせます。生育適温下で25〜35日ほどで1世代を過ごします。
※残渣とは、田や畑のような農作物を育てる場所に残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

センチュウ類が原因の病気

センチュウ類の被害を受けると、傷口からほかの植物病原菌が侵入して、立枯病や疫病、根腐病などを引き起こす原因となります。


▼そのほかの病原体のことならこちらをご覧ください。


農作物に被害をもたらすセンチュウ(線虫)類

農業で被害をもたらす植物寄生性センチュウは、根に寄生するネグサレセンチュウやネコブセンチュウ、シストセンチュウ、植物の葉や組織内に寄生するハガレセンチュウやクキセンチュウなどがいます。
なかでも農作物に大きな被害をもたらすネグサレセンチュウやネコブセンチュウ、シストセンチュウについて説明します。

ネグサレセンチュウ

ネグサレセンチュウ
出典:flickr(photo by Oregon State University)
鋭い口で根を食害し、植物に根腐れを起こさせます。寄主作物の範囲が広く、特にダイコンやジャガイモなどの根菜類では商品価値を著しく低下させ問題となります。

ネグサレセンチュウの被害の特徴

ネグサレセンチュウの影響で、根腐れを起こした植物は水分の吸収ができず、暑い日の日中に葉が萎れるようになり、葉は黄化します。
根がひどく崩壊しているために簡単に抜き取ることができますが、生育が悪くなったり落葉することがあっても、枯れることは少ないようです。

ネグサレセンチュウの生態

種類 ミナミネグサレセンチュウ キタネグサレセンチュウ
生育適温  25〜30℃  24〜25℃
1世代  約25〜35日  約25〜35日
※高温多湿の環境下。
成虫・幼虫、卵いずれの形でも越冬して、地温15℃前後から活動を始めます。
根の内部に産卵して、幼虫は根の中を移動しながら根を食害し成虫となります。

ネグサレセンチュウの種類

・ミナミネグサレセンチュウ(関東以南で多発)
・キタネグサレセンチュウ(全国)
・クルミネグサレセンチュウ
・ノコギリネグサレセンチュウ
・モロコシネグサレセンチュウなど

ネグサレセンチュウが好む植物

野菜  イチゴ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、レタス、ジャガイモ、コンニャク、サトイモなど
草花  キク、ダリア、ガーベラ、ユリ、センニチコウ、スミレ、ストック、スイセン、グラジオラスなど
果樹  モモなど
庭木  サクラ、バラなど

ネコブセンチュウ

ネコブ
出典:wikimedia
寄生した植物の根に特徴的なコブを作るネコブセンチュウの寄生作物の範囲は広く、多くの葉菜類、果菜類、果樹、花き類を害します。

ネコブセンチュウ被害の特徴

ネコブセンチュウが感染すると生育が劣り、葉が少なく小さくなり黄化します。暑い日中には萎れるようになり、着花が減少したり、果実の品質や収量が低下します。生育は抑制されますが、ネグサレセンチュウと同じく枯れることは少ないようです。

ネコブセンチュウの生態

生育適温  25〜30℃
1世代  約25〜35日
※高温多湿の環境下。
卵や植物の根内部で成虫、幼虫の形で越冬して、地温10℃以上になると活動を始めます。
卵からふ化した幼虫は、土中を移動して根の生長点付近から根の中に侵入し、口針からある種の汁液を出しコブを作ります。

ネコブセンチュウの種類

・サツマイモネコブセンチュウ(関東以西)
・ジャワネコブセンチュウ(南西諸島)
・キタネコブセンチュウ(関東以北)
・アレナリアネコブセンチュウ(東北南部以西)など

ネコブセンチュウが好む植物

野菜  ナス、トマト、ピーマン、メロン、キュウリ、ホウレンソウ、ニンジン、ナガイモなど
草花  タバコ、アスター、ガーベラ、ダリア、カーネーション、ケイトウ、リンドウ、キク科など
果樹  モモなど
庭木  ヤナギ、アカシヤ、ナンテンなど

シストセンチュウ

ジャガイモシストセンチュウ
出典:wikimedia
根の周囲にシストと呼ばれる卵の入れ物を形成します。シストセンチュウはそれぞれ特定の植物にしか寄生しません。

シストセンチュウ被害の特徴

植物が植え付けられると卵がふ化して、幼虫が根に穴をあけて侵入し、栄養分を奪って生育を抑制します。
シストセンチュウが多数寄生すると茎葉が萎凋、黄化し枯死する場合もあり、農作物などは大幅な減収となります。

シストセンチュウの生態

種類 ジャガイモシストセンチュウ ダイズシストセンチュウ
生育適温  16〜22℃  21〜24℃
世代数  年1世代  年2〜4世代
卵を持ったメスは根に付着して卵を持った状態で死亡します。メスは白色から黄化して、やがて外皮が硬化した褐色のシストとなります。
このシストが翌年の伝染源となります。硬い殻に覆われているため環境変化に強く、数年から数十年生き延びることもできます。

シストセンチュウの種類と好む植物

種類 好む植物
ジャガイモシストセンチュウ  ジャガイモ、トマトなどナス科
ダイズシストセンチュウ  ダイズ、アズキ、インゲンマメ



センチュウ(線虫)類に有効な予防対策

トマト ネコブ
出典:flickr(photo by Scot Nelson)
センチュウ類が発生してから被害を抑える農薬や効果的な対応策はないので、被害が大きくなる前にできる防除方法について説明します。

1. 連作をしない

連作をすると同じセンチュウ類の密度が高まるので、連作は避けます。
多発地では水田に転換するなど、湛水(たんすい)して死滅させることができます。
※湛水とは水田のように水を張ってため続けること。

2. 土壌消毒

センチュウ被害が発生した圃場(ほじょう)、また発生が心配される圃場は、土壌を消毒するか新しい土を入れます。
太陽熱消毒は、一年で最も暑い時期(7月中旬から8月下旬くらいまで)に圃場にたっぷり灌水(かんすい)した後、透明のポリマルチを土の表面に隙間が無いように被せて、20〜30日程度放置してください。特に発生がひどい圃場は、テロンやD-Dなどの土壌消毒剤の使用が必要になります。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。
※圃場とは、田や畑のような農作物を育てる場所のこと
▼テロンやD-Dなど、土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
プランター栽培では、新しい土と入れ替えるか、センチュウ類が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの培土処理のことならこちらをご覧ください。

太陽熱消毒の効果を高める稲ワラと石灰窒素

稲ワラなどの有機物と石灰窒素を入れることで、太陽熱消毒の効果を高めることができます。
石灰窒素は窒素肥料としてだけでなくセンチュウ類など病害虫を死滅させる効果もあるため、農薬登録もされています。
ITEM
石灰窒素ペルカ
殺線虫、除草、土壌改良等の多機能な効果を兼ね備えた緩効性窒素質肥料です。
土中でアンモニア性窒素の効果が持続し、硝酸化がゆっくり進む、肥持ちの良い緩効性窒素質肥料です。
石灰を約11kg含むので、酸性土壌を矯正し、土壌微生物の増殖を盛んにします。
粒状ペルカは、硝酸性窒素を含んでいるので、作物の初期生育を高めます。
分解中に発生する成分が、センチュウ抑制や除草効果を示します。

・内容量 20kg
・肥料登録成分 窒素(19.5%(内硝酸性窒素1.5%))

3. 対抗植物の利用

マリーゴールド
出典:写真AC
対抗植物と呼ばれる作物を植え付けると、忌避効果のある化学物質を根から出すのでセンチュウ類を抑制することができます。
センチュウの種類によって効果のある作物の種類は異なります。
センチュウの種類 効果のある対抗植物(商品名)
ネコブセンチュウ ・フレンチマリーゴールド(プチイエロー)
・アフリカンマリーゴールド(アフリカントール)
・ソルゴー(つちたろう)
・スーダングラス(ねまへらそう)
・ギニアグラス(ナツカゼ、ソイルクリーン)
・クロラタリア(ネマキング)
ミナミネグサレセンチュウ ・フレンチマリーゴールド(プチイエローなど)
キタネグサレセンチュウ ・ アフリカンマリーゴールド(アフリカントール)
・フレンチマリーゴールド(プチイエロー)
・野生エンバク(ヘイオーツ)
・ギニアグラス(ナツカゼ、ソイルクリーン)
ダイズシストセンチュウ  ・クロタラリア、スペクタビリス(ネマキング)
・クローバー(はるかぜ、くれない)
ジャガイモシストセンチュウ ・トマト野生種(ポテモン)
▼緑肥のことならこちらをご覧ください。

4. 椿油粕がセンチュウ類を抑制する

椿油粕を混ぜると「サポニン」という有効成分が土壌に働き、センチュウ類を抑制します。
ITEM
椿油粕(顆粒)
病害虫対策、土壌改良に、畑の作物・根っこを害虫から守ります。
サポニン成分が最も多い椿科茶実を100%使用。
土壌に浸透した後は数日で自然分解されます。 芝生のミミズ駆除や庭のナメクジ退治・忌避にも。
※サポニンは化粧品や食品にも使われる成分です。  

・内容量 4.5kg
・成分 椿科茶実(100%)

▼椿油粕のことならこちらもご覧ください。

5.  農薬で駆除

あくまでネコブセンチュウやシストセンチュウなどの予防目的において、農薬の使用が有効です。
生産者の方は、地域の防除指導機関やJAなどが推奨する効果の高い薬剤を選定し使用基準を守って作物にあった薬剤を使用しましょう。
家庭菜園の方は、駆除したいセンチュウ類をしっかり把握したあと、必ず作物にあった薬剤を選びましょう。

土壌に混ぜて、発生を抑制

ITEM
ネマトリンエース粒剤
処理直後から播種、定植ができるので、くん蒸剤のようにガス抜き作業やガス抜き期間の必要がありません。
直接センチュウと接触することにより低濃度で運動を阻害し、かつ殺センチュウ力も有していることから、安定した高い効果があります。
手撒き散布のほか、機械散布もできます。
浸透移行性を有するため、根内に有効成分が吸収され、センチュウの根部への侵入の阻止、根内のセンチュウの発育抑制などの効果を発揮し、さらに、地上部害虫のハダニ、アザミウマ、コナジラミにも効果があります(ナス、ばれいしょ)。

・内容量 2kg
・有効成分 ホスチアゼート(1.5%)

それでもセンチュウ類が発生したら

センチュウ類が発生した株を抜き取り、周辺の土壌ごと圃場の外に持ち去り処分します。
また、農機具や足の裏などにセンチュウ類が付着している可能性もあるため、水で丁寧に洗い流し排水溝に流し、多発した圃場では栽培終了後に再度土壌消毒を行いましょう。

センチュウ(線虫)類から作物を守るために

センチュウ類は発生してしまうと発見しにくく、農薬も効きにくい害虫です。作物の根などに侵入し、根の機能を弱らせて植物の生育を阻害します。
収穫や抜き取り時には根を注意深く観察し、センチュウ被害の兆候がないか調べ、連作を避け、定期的に土壌消毒を行ったり、緑肥や椿油粕をすき込んでセンチュウ対策を行いましょう。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。