炭疽病(炭そ病)の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

いちごや柿などに多大な被害をもたらす「炭疽(たんそ)病」は、コーヒーの木にも壊滅的なダメージを与えることで有名です。そんな、炭そ病に感染する原因や時期、防除方法、感染後の対策やおすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


炭疽病

出典:Flickr(Photo by:Scot Nelson
炭疽病とは、茎や枝に灰褐色~黒色の病斑、サーモンピンク色の胞子塊をつくる、糸状菌(カビ)による病気です。多犯性の病害で、多くの植物のほとんどの部位に感染します。特にイチゴ、カキでは重大な被害を及ぼします。多湿で一気に感染が広がり、防除が難しい炭疽病の発見のポイントを押さえて、予防と早期発見を心がけましょう。

炭疽病の症状は灰白色~黒色の病斑、サーモンピンク色の菌塊

「葉や茎に、黒いアザのようなものができている」「全身が萎れて、株元が黒っぽい」「黒い病斑の中に、サーモンピンク色の粒が見える」などの症状が現れたときは、炭疽病を疑いましょう。
葉や果実には、円形~不整形の、灰白色~褐色の病斑を生じます。茎や枝には黒褐色のややくぼんだ紡錘形の病斑を形成します。湿度が高いと、病斑の中心部分に、黒い粒が見られたり、サーモンピンク色の粘質物(胞子塊)が生じることもあります。
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

炭疽病の発症原因

炭疽病は、糸状菌(カビ)です。多犯性で、野菜、果樹、多くの植物のさまざまな部位に発生します。雨や曇天が続く時期など、湿度が高く、やや気温が高い環境で発生しやすくなります。
病名 炭疽病
菌名 Colletotrichum
Glomerella
分類  糸状菌
発生時期 4月~9月
胞子形成適温 20~27℃
発病適温 28℃前後

主な感染源は罹病植物上の胞子

炭疽病に感染した落ち葉や、苗、枝などで越冬した病原菌は、4月ごろ気温が20℃を超え、湿度が高いと胞子をつくります(一次伝染源)。28℃前後になると胞子がよくつくられ、感染が要注意の時期となります。さらに、病斑部分につくられた胞子塊から胞子が飛び散り、周りに感染します(ニ次伝染源)。胞子は風雨や、灌水(かんすい)時の水はねで回りに飛び散ります。
※罹病(りびょう)植物とは、病気にかかった植物のこと。
※灌水(かんすい)とは、水を注ぐこと、植物に水を与えること。

炭疽病に感染する主な植物

炭疽病
出典:Flickr(Photo by:Scot Nelson
炭疽病は野菜類、花卉(かき)類など幅広く感染する病気です。ここでは、炭疽病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。

野菜類

野菜類では、イチゴ、キュウリ、エンドウマメ、ハクサイ、カブ、ニラなどに発生します。

◆イチゴ

葉柄やランナー等に黒色の紡錘形にややへこんだ病斑(赤黒く見える事もある)が発生します。葉には赤~黒い斑点や、円形~楕円形の不整形の病斑ができます。病斑部には小黒点状や、サーモンピンク色の粘質物(胞子塊)が生じます。クラウン部分が侵されると、株全体が萎れ枯死します。葉や葉柄で炭疽病か疑わしいときは、株元から葉をちぎりとり、表面を水で濡らしてビニール袋に入れて、2~3日室温に置くと、炭疽病の場合、サーモンピンク色の胞子が現れます。

草花

シクラメン、コスモス、トルコギキョウ、ベゴニア、シンビジウムなどに発生します。

◆シクラメン

葉では、円形~不整形の、やや大型の褐色の病斑を生じます。花蕾や花柄は黒くなり、病斑部がくびれ、枯死します。湿度が高いと、病斑部分にサーモンピンク色の胞子塊をつくることがあります。

果樹・樹木

カキ、リンゴ、ナシ、コーヒー、マンゴーなどに発生します。

◆カキ(柿)

新梢では、緑枝に4月~5月に、くぼんだ紡錘形の黒色病斑が見られます。果実では、6~7月に幼果に、黒色の病斑を生じ、落果します。9月~10月の着色果では、ややくぼんだ円形で黒色の病斑が形成され、早く着色し、熟果となって落果します。湿度が高い新梢や果実の病斑部分にサーモンピンク色の胞子塊がつくられます。


炭疽病に有効な予防方法

炭疽病に有効な予防は、「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と、「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて、適切な炭疽病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

炭疽病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行う炭疽病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣(ざんさ)の処理

炭疽病菌は植物残渣上で越冬し、伝染源となります。残渣は土中深くに鋤き込むか、圃場外に持ち出して処理します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

2. 水はけの良い圃場づくり

湿度が高いと、炭疽病の胞子がつくられてしまいます。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

3. 無病苗の使用

イチゴ炭疽病は感染苗が発生の原因となります。 親株及び畑へ定植する苗は無病の株を使用します。

4. 灌水方法の見直し

炭疽病は水の跳ね上がりで感染するので、頭上からの灌水は要注意です。株元灌水を心がけてください。ドリップチューブ等の水はねの少ない灌水チューブの使用もおすすめです。またポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。

▼マルチについてはこちらをご覧ください。

5. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は、過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。

炭疽病の予防に効果的な「農薬」

農薬を使用して、より効果的に炭疽病を予防しましょう。1回だけではなく、定期的に散布することがおすすめです。耐性菌の発生を予防するためにも、薬剤を組み合わせてローテーションで散布することをおすすめします。使用する薬剤に作物の登録があるか、必ずご確認ください。
※耐性菌とは、薬剤(農薬)に含まれる抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

アントラコール顆粒水和剤

炭疽病に高い予防効果があります。イチゴは育苗時に使用しましょう。
ITEM
アントラコール顆粒水和剤
顆粒水和剤なので、粉立ちによる薬剤吸入の心配が少ない薬剤です。
イチゴの炭疽病、褐斑病をはじめ各種の病害に的確な効果を発揮します。
耐雨性に優れ、雨の多い日本では好適な薬剤です。
 
・内容量:500g
・有効成分:プロピネブ(70.0%)  

ジマンダイセン水和剤

さまざまな作物に登録がある保護殺菌剤です。胞子発芽を阻害し、高い予防効果があります。
ITEM
ジマンダイセン水和剤
付着性がよく、残効性にも優れた保護殺菌剤です。
リンゴ、ブドウ、カキ、カンキツ(柑橘)など、ほとんどの重要病害に有効な総合防除ができます。
メロン、キュウリなどの細菌病にも有効なので銅水和剤の連用をさけた散布体系が組めます。

・内容量:250g
・有効成分:マンゼブ(80.0%)

▼農薬についてはこちらをご覧ください。

炭疽病発見後の効果的な2つの対策

炭疽病を発見してしまった際にはどうすれば良いのか、その効果的な対策を紹介します。

1. 炭疽病発症後の被害部分の「除去」

発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは胞子が飛ばないように、ビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。
また、発生が広がらないように圃場の環境を見直しましょう。古い葉が残っている場合は、さらなる伝染源となる可能性があるので、ただちに取り去りましょう。

2. 炭疽病の治療に効果的な「農薬」

効果的な農薬を使用して、早期に炭疽病を治療しましょう。

ゲッター水和剤

予防効果と治療効果を併せ持ちます。予防から発生初期に使用すると効果的です。
ITEM
ゲッター水和剤
灰色かび病と混発する他病害との同時防除が期待されます。
人畜・魚介類に対する毒性は低く、ミツバチ・カイコなどの有用昆虫に対する影響も少なく、また作物に対する薬害も心配が少ない薬剤です。

・内容量:100g
・有効成分:ジエトフェンカルブ(12.5%)、チオファネートメチル (52.5%)

アミスター20フロアブル

浸透移行性による優れた治療効果があります。
ITEM
アミスター20フロアブル
天然生理活性物質 (ストロビルリン類)に由来する殺菌剤です。
各種野菜、畑作物、茶のさまざまな病害に高い効果。同時防除にも最適です。
収穫前使用日数が短く、散布適期は幅広く、使い勝手に優れています。
作物の汚れが少なく、使いやすいフロアブル剤です。

・内容量:250ml
・有効成分:アゾキシストロビン(20.0%)

炭疽病の、人体への影響は?

炭疽病の葉や果実を食べても、人間に炭疽病が伝染ることはありません。植物の炭疽病と、人間の病気である炭疽病は、全く違う菌によるものです。一方、炭疽病に激しく侵された農作物は、植物自体が病気に対抗して毒素を生成している可能性があるので(ファイトアレキシン、アレルギー原因タンパク質等)、人体に影響が無いとはいえず、食べるのはあまりおすすめしません。

炭疽病対策に何より大事なのは早期発見

炭疽病は多湿で発生しやすい病気です。まずは環境を見直しましょう。春、秋で雨が長引き、気温が高い時期は炭疽病の兆候がないか圃場を注意して観察しましょう。発病を確認したら、直ちに発病株を取り去ります。農薬の予防散布も効果的です。

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rinko
rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。