発生後まん延すると防除が難しい、斑点細菌病の発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。
斑点細菌病の症状
「葉の表面に黄色い斑点ができた」「葉が縁から枯れてきた」「果実に水が染みたような斑点がある」などの症状が現れたときは、斑点細菌病を疑いましょう。斑点細菌病の症状
具体的にどのような症状になるのか説明します。葉・茎・果実での主な症状
葉や茎、果実に、水に浸したような病斑が現れます。最初は黄色から茶褐色の針の穴程度の小さな円形、または不整形の小斑点が現れ、徐々に拡大して、病斑が融合し、葉脈に沿った不整形の大型の病斑を形成します。進行すると葉が枯れたり、果実が腐ることがあります。
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください
斑点細菌病の発症原因
斑点細菌病とは細菌が原因となる病気です。多犯性の病害でキュウリなどウリ科の野菜やトマト、レタスなど多くの植物に感染します。名前 | 斑点細菌病 |
菌名 | Pseudomonas属 Xanthomonas属 |
分類 | 細菌 |
主な感染源
菌は前作の残りの植物(残渣/ざんさ)や、土壌、感染した種子で長期間生存し、伝染源となります。出芽時に土壌の菌と接触したり、灌水(かんすい)や雨の水の跳ね上がりで、土壌の菌が植物に付着すると、感染します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
※灌水(かんすい)とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。
斑点細菌病が発生する環境
病斑部分で増殖した菌は、風や雨、灌水の水滴でほかの部位や隣接する作物に運ばれ、気孔や傷口から侵入し感染します。発病適温
20~25℃発生時期
4~11月曇雨天が続き、湿度が高い時期に発生します。また、昼夜の温度差が激しく葉の結露をする時期も注意が必要です。
施設栽培では湿度が高い場合は冬でも発生します。
栽培管理
・水分過剰・土壌・種子感染
出芽時に土壌の菌と接触したり、病気に感染した種子を植え付けたりすることで病気が発生します。
・連作
・肥料
多過ぎる肥料によって引き起こされる軟弱徒長、もしくは肥料切れによって生育が弱ることも発生の原因となります。
※軟弱徒長とは、植物の葉厚や葉の色が薄くなり、茎や葉柄および葉身が弱々しく間延びした状態。
ほかの病気との見分け方
ハローの有無
細菌による斑点病は、病斑の周りが細菌のかたまりでぼんやり黄色くなっている(ハロー)が特徴です。光に葉を透かすと、ハローの有無が確認しやすくなります。斑点細菌病に感染する主な植物
斑点細菌病は野菜類、花き類など幅広く感染する病気です。ここでは斑点細菌病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。野菜類
野菜類ではキュウリやメロン、カボチャ、トマト、ミニトマト、ピーマン、ズッキーニ、レタス、大豆(またはエダマメ)などに発生します。▼カボチャやピーマン、ズッキーニ、レタス、エダマメの育て方ならこちらをご覧ください。
キュウリ
葉に水に浸したような小斑点が生じ、その後拡大して黄褐色の葉脈に囲まれた角張った病斑になります。その病斑部が乾燥すると灰白色に変わって破れてしまいます。子葉では水浸状のくぼんだ斑点が葉の縁や中央部に形成されます。果実ではややくぼんだ小斑点ができ、亀裂を作って白色のヤニを分泌します。
※べと病も葉に角型病斑を形成しますが、多湿時に葉裏に黒色すす状のカビを生じます。
▼キュウリの育て方ならこちらをご覧ください。
▼べと病のことならこちらをご覧ください。
トマト、ミニトマト
葉では暗褐色で水浸状の小斑点が生じ、その後拡大して円形から不整形の褐色病斑となります。果実では褐色水浸状の小斑点を生じてコルク化することもあります。
▼トマト・ミニトマトの育て方のことならこちらをご覧ください。
草花
ヒマワリ、ガーベラ、キク、デルフィニウムなどに発生します。▼スプレーマム(小菊)の育て方ならこちらをご覧ください。
ヒマワリ
針で刺したような褐点が葉に生じた後、水浸状の小斑点になります。斑点は次第に拡大して葉脈に仕切られた角型の病斑ができます。多発すると病斑は融合し、古くなると中心部から穴が開いて、最終的に葉が枯死します。激発すると株が枯れる場合もあります。
▼ヒマワリの育て方ならこちらをご覧ください。
果樹・樹木
ブドウ、アジサイなどに発生します。▼ブドウやアジサイの育て方ならこちらをご覧ください。
斑点細菌病発症後の対応
発生が確認された箇所は、ただちに取り去りましょう。除去したものはビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。また、発生が広がらないように圃場の環境を見直し、古い葉が残っている場合はさらなる伝染源となる可能性があるのでただちに取り去りましょう。
斑点細菌病に有効な防除方法
斑点細菌病に有効な防除は「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と、「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて、適切な斑点細菌病の防除を行いましょう。※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。
斑点細菌病を発症させない「農薬を使わない」管理方法
農薬を使わずに行う斑点細菌病の予防方法について説明します。1. 前作の残渣の処理
前作の植物残渣等に斑点細菌病菌が付着している可能性があります。残渣は、圃場外に持ち出して処理します。2. 土壌の入れ替え、消毒
前作に斑点細菌病が発生した圃場、また発生が心配される圃場は、古い土を深くすき込むか、新しい土を入れます。圃場にたっぷり灌水した後、透明のポリマルチを被せて、太陽熱消毒を行うのも効果的です。▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
プランター栽培も同じように、新しい土と入れ替えるか、斑点細菌病が発生した土に水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、真夏の太陽の熱を利用して消毒します。
▼プランターの土の再生のことならこちらをご覧ください。
3. 水はけの良い圃場づくり
土壌の水分が多いと、斑点細菌病に感染しやすくなるため、水はけの良い土づくりを目指します。畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。
4. 無病種子を使う
前述の通り斑点細菌病は種子に付着、伝染するので、種子消毒するか無病種子を使いましょう。育苗する場合は育苗ポットをよく洗って消毒し、汚染の可能性を防ぎます。圃場に移植する際は、苗が病気に感染していないかよく確認してから植えます。
5. 連作をしない
斑点細菌病が発生した場合は連作をやめましょう。6. 灌水方法の見直し
斑点細菌病は水の跳ね上がりで感染する場合が多いので、頭上からの灌水は要注意です。株元灌水を心がけてください。ポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。▼マルチについてはこちらをご覧ください。
7. 肥培管理、水管理の見直し
斑点細菌病は、軟弱徒長で発生しやすいため、作物が軟弱徒長になる主な原因「肥料」と「水」の管理を見直しましょう。元肥や追肥の量が多い、または時期が適切で無い場合や、灌水量が多過ぎることのないように適切な肥培・水管理を心がけましょう。8. 風通しを良くして、湿度を低く保つ
植え付け後は、過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物のまわりの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。斑点細菌病の防除に効果的な「農薬」
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。
オリゼメート粒剤
カッパーシン水和剤
ジーファイン水和剤
▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。
▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。
斑点細菌病は多発してからの防除は難しい
斑点細菌病は多発してからの薬剤防除は難しいため、発症しないための環境づくりが大切です。気温20~25℃付近で雨が長引く時期は斑点細菌病の兆候がないか圃場を注意して観察しましょう。斑点細菌病は多湿で発生しやすい土壌からの病気です。斑点細菌病が発生した圃場、発生が懸念される圃場では、土壌の消毒をすることもおすすめです。