アザミウマ類(スリップス)とは
アザミウマ類の生態
アザミウマ類の成虫は細長く、体色は黄色〜黒褐色をしています。名前 | アザミウマ(薊馬) |
学名 | Thysanoptera |
英名 | Thrips |
生息範囲 | 日本全土 |
活動する時期 | 4~10月 |
体長 | 0.8~2.0mm |
生育サイクル | 2~7週間 |
生息場所
花粉を好む種類もありますが、農作物に被害を与えるアザミウマ類の成虫や幼虫は、作物の葉や花、果実などに寄生して吸汁加害します。また蛹(さなぎ)のときは地中に、卵は成虫が花やつぼみ、新しい葉の内部に潜り込んで産卵します。繁殖
高温で乾燥する気候を好むため、梅雨明けから8月にかけて大繁殖します。アザミウマ類は寄生する作物の種類が多いので、栽培施設周辺の雑草や、複数の作物、花を育てているとそこから飛来して繁殖します。
休眠
季節によっては一部生殖休眠するアザミウマもいますが、多くの種類は休眠することなく繁殖を続けます。アザミウマの被害の特徴
寄生した場所によって被害の様子は異なります。葉
葉が色あせて白い斑点が生じます。葉裏に沿ってかすり状の傷ができ、褐変したり、奇形葉または縮れ葉になったりします。
花
吸汁された部分または花全体の色が落ち、被害を受けた部分の茶色の染みが広がって枯れてしまいます。果実
へたの周りに白い斑点が生じたり、果皮が褐色のケロイド状になったりします。成虫が産卵した部分では果実の生育と共に白ぶくれ症状を発生させます。アザミウマが好む植物
果実が被害に遭うと商品価値が著しく低下してしまうので、防除には一層の注意を払いましょう。農作物
・ナス科:ナス、ピーマン、トウガラシ類、トマト・ミニトマトなど・ウリ科:キュウリ、スイカ、メロンなど
・アブラナ科:キャベツ、ブロッコリー、コマツナなど
・マメ科:エンドウなど
・アカザ科:ホウレンソウ
・キク科:レタス
・ヒガンバナ(ユリ)科:ネギ類
・キジカクシ科:アスパラガス
・バラ科:イチゴ
果樹
ミカン、カンキツ、カキ、ブドウ草花
バラ、キク農作物に被害を与える主なアザミウマ(スリップス)の種類
アザミウマ類(スリップス)の種類の見分け方
作物によっては、アザミウマ類の種類で殺虫剤の効果が異なるので、防除する目的のアザミウマをしっかり判別することが重要です。しかし、体長が0.8~2.0mmと小さなアザミウマ類の種類を肉眼で判別することは大変難しいです。1. 見た目で判別
アザミウマ類を発見したら、チャック付きポリ袋を用いて、葉や新芽ごとアザミウマ類の成虫を捕獲します。花の場合は袋を被せ、袋内で数回叩き、アザミウマの成虫を袋内に落下させ、ポリ袋のチャックを閉じて50~60%程度のエタノールに浸して持ち帰ります。エタノールをキッチンペーパーなどでろ過して、捕獲したアザミウマを高い倍率のルーペ(20倍以上)で観察しましょう。
ちなみに、アザミウマ類の成虫は青色に誘引される性質があるので、カラー粘着板を利用した捕獲も可能です。
※正確な診断は顕微鏡でなければ行うことはできません。
種類 | 雌の体長(mm) | 体色 | そのほかの特徴 |
ミカンキイロアザミウマ | 1.3〜1.7 | 黄色(夏)〜黒褐色(冬) | 体色が気温、季節で変化する |
ヒラズハナアザミウマ | 1.3〜1.7 | 褐色〜黒褐色 | 冬期の幼虫発生は少ない |
チャノキイロアザミウマ | 0.7〜1.0 | 黄色 | 翅の付け根がハの字 |
ミナミキイロアザミウマ | 1.2〜1.4 | 黄色 | 背中に黒い筋 |
ネギアザミウマ | 1.1〜1.6 | 黄色(夏)〜褐色(冬) | 体色が気温、季節で変化する |
2. 被害を及ぼす作物で判別
被害を受けた作物からアザミウマの種類を大まかに推測します。種類 | 加害する主な作物 |
ミカンキイロアザミウマ | ナス科、キク科、マメ科など |
ヒラズハナアザミウマ | ナス科、イチゴなど |
チャノキイロアザミウマ | ナス科、果樹、茶など |
ミナミキイロアザミウマ | ナス科、ウリ科など |
ネギアザミウマ | ナス科、キク科、マメ科、ネギ類など |
アザミウマが媒介する病原菌
アザミウマは作物を吸汁加害するだけでなく、病気の原因となるウイルスを媒介するのが問題になっています。トマト黄化えそウイルス(TSMV)
「ミカンキイロアザミウマ」「ヒラズハナアザミウマ」「ネギアザミウマ」によってトマト黄化えそウイルスが伝搬します。メロン黄化えそウイルス(MYSV)
「ミナミキイロアザミウマ」がメロン黄化えそウイルスを媒介します。▼黄化えそ病のことならこちらをご覧ください。
アザミウマ類の薬剤抵抗性
アザミウマ類は、農薬に対する耐性が強くなってきています。例えば、ネギアザミウマでは「有機リン」「カーバメイト」「合成ピレスロイド」「ネオニコチノイド・レピメクチン」などで薬剤抵抗性が報告されています。同じ作用性の農薬を続けて使用せず、アザミウマが薬剤抵抗性を持ちづらくなるように異なる作用性の農薬をローテーション散布しましょう。
▼薬剤抵抗性やローテーション散布のことならこちらをご覧ください。
アザミウマ類(スリップス)に有効な6つの対策
1. 除草
雑草はアザミウマが越冬するのに最適な場所です。こまめに除草することによって、ある程度被害を抑えることができます。▼除草剤のことならこちらをご覧ください。
2. 天敵
生物農薬として実用化されている「タイリクヒメハナカメムシ」などはアザミウマ類の防除に効果があります。▼天敵や生物農薬のことならこちらをご覧ください。
3. 防虫ネット
網目0.4~0.8mmくらいの赤や黒色の防虫ネットがアザミウマ類の防除に効果的です。夏のイチゴ生産も可能に!サンサンネット e-レッド
サンサンネット e-レッド SLR2700
アザミウマの特性を生かし、侵入に対して驚くべき効果を発揮します。
・長さ:100mロール巻き
・幅:180cm
・目合:0.8mm
・遮光率:約25%
・材質:ポリエチレン(UV剤入り)
・長さ:100mロール巻き
・幅:180cm
・目合:0.8mm
・遮光率:約25%
・材質:ポリエチレン(UV剤入り)
4. 光の反射
ワラのかわりシート
ワラのかわりシート シルバー
キラキラとした光を嫌うアザミウマの特性を利用した、防除シートです。
敷き藁やマルチの代わりにもなります。
・サイズ:1×10m
・材質:ポリプロピレン
敷き藁やマルチの代わりにもなります。
・サイズ:1×10m
・材質:ポリプロピレン
シルバーマルチ
国産オリジナル シルバーマルチ
春~秋に栽培する葉物野菜・根菜果菜の栽培に活躍するマルチングフィルム。
害虫避けのほかに、地中水分の確保、肥料の流亡を抑える効果などもあります。
・サイズ: 厚み0.02mm×幅95cm×長さ200m
害虫避けのほかに、地中水分の確保、肥料の流亡を抑える効果などもあります。
・サイズ: 厚み0.02mm×幅95cm×長さ200m
▼光防除のことならこちらをご覧ください。
5. 農薬(殺虫剤)
アザミウマの発生初期は生物農薬が有効です。生育初期には
ボタニガードES
微生物用の害虫駆除剤。害虫の天敵に対する影響が少なく、環境にも優しい剤です。鉱物油を含んだ乳剤で、湿度などの気候条件に左右されにくいため、露地でも使用可能!
・内容量:500ml
・有効成分:ボーベリア・バシアーナ GHA株 分生子(Beauveria bassiana)含有量:1.6×1010 個/ml
・内容量:500ml
・有効成分:ボーベリア・バシアーナ GHA株 分生子(Beauveria bassiana)含有量:1.6×1010 個/ml
ミカンキイロアザミウマにはコレ!
コテツフロアブル
コナガ、ミナミキイロアザミウマ、ナミハダニ、カンザワハダニなどの難防除害虫に対して高い防除効果があります。
・容量:100ml
・有効成分:クロルフェナピル(10.0%)
・容量:100ml
・有効成分:クロルフェナピル(10.0%)
ネオニコチノイド系
ネオニコチノイド系に対する耐性も一部のアザミウマでは出てきているため注意が必要です。
モスピラン粒剤
定植時の土壌処理により、コナガ、アオムシ、アブラムシ、アザミウマ(スリップス)の発生を長期間抑えます。
・容量:1kg
・有効成分:アセタミプリド(2.0%)
・容量:1kg
・有効成分:アセタミプリド(2.0%)
6. 発生株の処分
アザミウマ類(スリップス)類が発生した後の対策として、ウイルス病が発生してしまった株は全身に病原菌が蔓延しています。放置すると伝染源になるためただちに抜き取ります。取り除いた株は圃場内外に放置するとアザミウマ類の温床となるため、埋め込むかビニール袋に入れて処分してください。発生後の農薬
アザミウマが発生した後は「モベントフロアブル」「ディアナSC」が有効です。
モベントフロアブル
アザミウマだけでなく、アブラムシ類やコナジラミ類、ハダニ類、及びチャノホコリハダニにも効果があります。
効果が出るまでは遅いですが、持続性は高いので、前もって防除するときに使用してください。
・内容量:250ml
・有効成分:スピロテトラマト(22.4%)
効果が出るまでは遅いですが、持続性は高いので、前もって防除するときに使用してください。
・内容量:250ml
・有効成分:スピロテトラマト(22.4%)
ディアナSC
チョウ目害虫はもちろん、アザミウマ目害虫、ハエ目害虫に対しても防除効果を発揮します。
・容量:100ml
・有効成分:スピネトラム(11.7% )
・容量:100ml
・有効成分:スピネトラム(11.7% )
アザミウマ類(スリップス)には各種防除手段を組み合わせる
体長が小さく、ほとんどの種類で一年を通して繁殖するアザミウマ類は、多くの植物に寄生して葉や花、果実を吸汁加害する害虫です。生息場所にもなる栽培周辺の雑草はしっかり除草しましょう。また、薬剤抵抗性も報告される難防除害虫なので、農薬での防除はローテーション散布を心がけます。耕種的防除として、赤色の防虫ネットなどで飛来を抑えたり、光の反射を嫌う性質を利用してシルバーマルチを活用したりするなどの対応を行いましょう。紹介されたアイテム
サンサンネット e-レッド SLR270…
ワラのかわりシート シルバー
国産オリジナル シルバーマルチ
ボタニガードES
コテツフロアブル
モスピラン粒剤
モベントフロアブル
ディアナSC