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作物や作型、土質によって異なる元肥や追肥など施肥の量やタイミング

作物ごとに肥料を必要とするタイミングについて、また同じ作物であっても作型によって元肥の量や追肥のタイミングも違うということ、それに加えて地域や土壌ごとに施肥の分量を加減することなど、土壌の状態の確認から施肥までの流れを説明します。


施用

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農作物を栽培する際に必要不可欠な「施肥」は、育てる作物によって、どれくらいの量の肥料が、どのタイミングで必要なのか把握しなければ上手くいかないものです。また、必要な元肥の量・追肥のタイミングというのは、同じ作物であっても時期や期間、地域ごとに異なります。
本記事では、土壌の状態の確認から施肥までの流れや、どうして作物ごとに肥料を必要とするタイミングが異なるのか、同じ作物であっても作型によって元肥の量や追肥のタイミングが違うのか、また地域や土壌ごとに施肥の分量を加減しなければならないのかについて説明します。

本記事は、現在「伝統農法文化研究所」で代表を務め、数多くの栽培方法や農業技術の書籍を執筆されている農学博士の木嶋先生に監修いただきました。

木嶋利男さんプロフィール

木嶋先生
提供:木嶋利男

主な経歴:
・1987年 農学博士(東京大学)
・1993~1999年 栃木県農業試験場 生物工学部長
・1999~2004年 自然農法大学校 校長
・2004~2010年 WSAA 日本本部 専務理事
・2006~2013年(財)環境科学総合研究所 所長
・2015~2019年(公財)農業・環境・健康研究所 代表理事

上記以外の主な役職:
一般社団法人MOA自然農法文化事業団 理事
伝統農法文化研究所 代表

主な著書:
『プロに教わる安心!はじめての野菜づくり』(学研プラス)
『「育つ土」を作る家庭菜園の科学 』(講談社)
『コンテナでつくる家庭菜園[新版]』(マイナビ出版)

土壌の状態の確認から施肥までの流れ

施肥
出典:写真AC
土壌診断で土壌の状態を確認し、地域の施肥基準などをもとに、肥料をどれくらい投入すべきなのか判断してから、施肥を行うまでの大まかな流れをみてみましょう。

土壌の状態の確認から施肥までの流れ

  1. 生産者が圃場の土を採取する
  2. 分析機関に採取した土を送り、土壌診断をしてもらう
  3. 土壌診断の分析結果をもとに生産者が施肥設計を立てる
  4. 施肥設計をもとに元肥・追肥などの施肥を行う
※分析機関によっては、施肥設計まで行ってくれるところもあります。

1. 圃場の土の採取

土の採取
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圃場の対角線状5地点くらいから、ほぼ同量の土を集めて採取します。

土の採取のポイント

土の表面はさまざまな物質があるので、移植ゴテで1〜2cmくらいの表層を取り除いてから、作土層(15~20cm)あたりの土を300〜500g程度採取します。
※土の採取方法や量などは、土壌分析を行う機関によって異なるので必ず確認してください。

ハウスなどの施設栽培での土の採取の注意点
露地栽培の圃場とは環境が異なり、土の乾湿が土壌診断の結果を左右してしまうので、過度に乾燥しているときや、灌水直後の採取は避けましょう。


2. 土壌診断

土壌診断を私たちの暮らしで例えるなら、年に一回行われる健康診断のようなものです。私たちが健康診断の受診を怠ると、知らず知らずのうちに血糖値や中性脂肪の数値が上がってしまい、病気を未然に防ぐことができなくなってしまいます。
同じように圃場の土壌診断を怠ると、特定の肥料成分が過剰に蓄積してしまい、それが作物への土壌病害の発生を助長する原因となるので、定期的に土壌診断(化学性診断)を行うことは農業生産にとって重要なことです。

化学性診断

土壌診断には、化学性診断、物理性診断、微生物性診断があり、その中でも化学性診断はもっとも一般的な診断方法です。
この化学性診断は、土壌にどれくらい養分が含まれているかを化学的に分析するもので、分析項目にはpH、EC(電気伝導度)、有効態リン酸、交換性塩基(カリウム、苦土、石灰)、陽イオン交換容量(CEC)などがあります
※有効態リン酸とは植物が実際に吸収できるリン酸、交換性塩基(カリウム、苦土、石灰)とは土壌に吸着されている塩基(カリウム、苦土、石灰)、陽イオン交換量(CEC)は陽イオンを保持できる量(養分を蓄えられる量)のことです。

専門機関に依頼

土壌診断(化学性診断)には手軽に分析を行える簡易診断キットなどもありますが、正確な分析を行うためには専門機関に依頼するのが良いでしょう。土壌診断は各JAや肥料メーカーなどで行っており、土壌診断の結果と合わせて分析結果に対するコメントをしてもらえることが多いです。

土壌診断を行う時期

野菜など作物を栽培する圃場では、前作の収穫後、次作のための耕起を行う前のタイミングで土を採取して土壌診断を行います。

3. 施肥設計

土壌診断の結果をもとに、作物ごとの施肥基準を目安にどれだけの肥料が必要なのかを計算します。

施肥基準

都道府県ごとに作物や作型ごとに設定された施肥の目安のことです。施肥量や追肥のタイミングなどが示されています。
参考:都道府県施肥基準等(農林水産省)

施肥設計

施肥設計は、土壌分析結果を考慮して肥料の量を計算する知識や経験が必要なので、施肥設計まで行ってくれる土壌分析機関に依頼するのが安心です。
生産者が自分で施肥設計する場合は、土壌分析結果を入力して、必要な肥料の量を計算してくれるソフトを活用すると良いでしょう。神奈川県では土壌改良と元肥に必要な量を計算してくれるプログラムが一般公開されています。
出典:土壌診断・施肥設計プログラム(神奈川県)

4. 施肥を行う

投入する肥料の種類や量がわかったら実際に施肥を行います。肥料は成分や形態、肥効(肥料の効果)の速さなど何を基準にするかで分類は異なりますが、施肥の時期で分類すると「元肥(もとごえ)」と「追肥(ついひ)」に分かれます。

▼肥料取締法による肥料の分類についてはこちらをご覧ください。

元肥

元肥とは種をまいたり、苗を植え付けたりする前に施用する肥料のことで「基肥(きひ・もとごえ)」とも呼ばれます。
作物にもよりますが、元肥には土壌に施用するとゆっくり効果が現れる緩効性の肥料を用いることが多いようです。

▼緩効性など肥料の効き方についてはこちらをご覧ください。

緩効性肥料の中でも被覆肥料(コーティング肥料)は、水溶性の化学肥料を被覆資材でコーティングして溶け出す量や期間を調節することができるため、速効性と緩効性の両側面を活用することができる肥料として導入されています。
そのほかにも堆肥と肥料を合わせた「混合堆肥複合肥料」は、肥料と土壌改良の二つの側面を補う肥料として元肥に使用されはじめています。

▼被覆肥料など肥効調節型肥料や混合堆肥複合肥料についてはこちらをご覧ください。

追肥

追肥とは作物の生育状況に合わせて追加で施用する肥料のことで、生育していく上で元肥では補えなくなった栄養を補うための肥料です。そのため追肥には化学肥料や液体肥料のように、施用してすぐに効果を発揮する速効性の肥料が多く用いられています。

▼液体肥料についてはこちらをご覧ください。

追肥は施肥基準を目安にしたり、作物の葉などの汁に含まれる養分の状態を「硝酸イオンメータ」や「硝酸イオン試験紙」などの簡易の測定器具を用いて調べたりすることで施用のタイミングを判断します。
ITEM
コンパクト硝酸イオンメータ 作物用 LAQUAtwin-NO3-11C
少量(0.3mL~)のサンプルを直接滴下するだけで硝酸イオンを測定します。

・外形寸法:164×29×20mm (突起部を除く)
・質量:約50g(電池を除く)

ITEM
エムクァント分析試験紙 硝酸
試験紙をサンプルに浸し、必要時間が経過したのちに、パッケージの色と比較して硝酸イオンの濃度を判断します。
数秒から結果を得ることができ、迅速な測定ができます。

・測定範囲:10-25-50-100-250-500mg/L NO3-
・容量:100枚



作物の種類で異なる元肥や追肥など施肥のタイミング

作物
出典:写真AC
必要とされる肥料の種類や量は、作物の種類や作型などで異なります。ここからは作物の中でも主に野菜類において、養分(肥料)を必要とするタイミングがどのように違うのかみていきましょう。

栄養生長型

肥料 連続吸収
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グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプの作物は、収穫までほとんどの養分(主に窒素)を茎や根などの栄養器官を生長させる「栄養生長」に使います。品質を保つため収穫時に葉色を保持する必要があり、生育後半まで断続的に追肥する必要があります。

▼栄養生長型のホウレンソウやコマツナ、シュンギクの栽培、肥料の量やタイミングのことならこちらをご覧ください。

栄養生長と生殖生長が同時進行型の作物

同時進行型は「栄養生長」と「生殖生長」が同時に行われ、葉や茎を生長させるのと同時に花芽をつけたり、果実を肥大させたりしていきます。
※生殖生長とは花芽(生殖器官)を生長させることです。

同時進行型:弱抑制

肥料 連続吸収
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプの作物は茎や葉を生長させながら、花芽や果実を継続して充実させる必要があるため、栽培期間中は連続して肥料が必要となります。初期に栄養が多くなり過ぎると株の生育ばかりが良くなり(栄養生長)生殖生長がうまくいかず着果不良になることがあります。

▼同時進行型(弱抑制)のトマトやナス、キュウリの栽培、肥料の量のことならこちらをご覧ください。

同時進行型:強抑制

肥料 山型
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
栄養生長と生殖生長が同時に進行するタイプですが、弱抑制の作物とは異なり、果実の肥大する生育の後半に向けて肥料を多く必要とします。このタイプの作物も初期に栄養が多くなり過ぎると着果不良になることがあります。

▼同時進行型(強抑制)のスイカやカボチャの栽培、肥料のことならこちらをご覧ください。

栄養生長と生殖生長が転換する作物

栄養生長が停止した後、生殖生長に切変わるタイプです。

完全転換型

養分吸収
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプは、止葉が出現すると栄養生長が滞り、生殖生長に変ります。栽培初期の栄養生長がその後の生殖生長に影響を与えるため、元肥に重点を置きましょう。
※止葉とはイネ科作物の茎の一番上に出る葉のこと

▼完全転換型のトウモロコシやブロッコリー、カリフラワーの栽培や肥料のことならこちらをご覧ください。

不完全転換型:直接的結球

養分吸収
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプは鱗葉(りんよう)が作られると「栄養生長」から「生殖生長」に変わります。元肥に重点を置き、初期生長させ、球肥大開始時に肥料が効くようにする必要があります。
※鱗葉とは、葉身のみられない葉鞘だけの葉のこと

▼直接的結球のタマネギやニンニクの栽培や肥料のことならこちらをご覧ください。

不完全転換型:間接的結球

養分吸収
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプは外葉が生長した後、球葉が作られて「生殖生長」に変わります。元肥に重点をおいて、追肥によって玉を充実させましょう。

▼間接的結球のハクサイやレタス、キャベツの栽培や肥料のことならこちらをご覧ください。

不完全転換型:根肥大

養分吸収
llustration:umi
グラフ参考:平成23年野菜の栽培特性に合わせた土づくりと施肥管理(一般財団法人 ⽇本⼟壌協会)
このタイプは地上部を充実させた後、地下部分に栄養を移行します。元肥に重点をおいて、生育後期に窒素の肥効が切れる状態にする。

▼根肥大のダイコンやカブ、ジャガイモ、サトイモの栽培や肥料のことならこちらをご覧ください。


作型で異なる元肥や追肥など施肥の量とタイミング

作型
llustration:umi
同じ作物でも作型が違えば必要な肥料の量や追肥のタイミングは異なります。

トマトの場合:千葉県施肥基準

トマトの場合(千葉県施肥基準)のハウス促成短期栽培とハウス抑制栽培を比較してみてみましょう。
※露地栽培よりも収穫を早めるものを促成栽培、通常よりも収穫を遅くするものを抑制栽培といいます。
ハウス促成短期栽培
・定植8月下旬、栽培期間8月下旬~3月上旬、栽培期間6カ月半
ハウス抑制栽培
・定植7月中旬、栽培期間7月中旬~11月、栽培期間4カ月半
施用時期窒素リン酸加里肥料施用時期窒素リン酸加里肥料
元肥 8月中旬 24 2917 有機質肥料、緩効性肥料元肥7月上旬101510 有機質肥料、緩効性肥料
追肥 9月下旬 2 12 高度化成、液肥追肥8月中旬212 高度化成、液肥
 10月中旬 212 高度化成、液肥
 11月上旬 222 高度化成、液肥8月下旬212 高度化成、液肥
 12月上旬 222 高度化成、液肥
 1月上旬 222 高度化成、液肥9月中旬212 高度化成、液肥
 2月上旬 212 高度化成、液肥
合計 363829(kg/10a)合計161816(kg/10a)
※追肥を液肥で行う場合は1回あたり窒素成分で1kg/10aとする。
施肥基準引用:主要農作物等施肥基準(千葉県)

ハウス促成短期栽培とハウス抑制栽培

ハウス促成短期栽培の方が元肥として投入する量が多くなっており、ハウス抑制栽培と比べると追肥の回数が多くなっています。これは栽培期間が長いということが影響していることが考えられます。
同じ作物を同じ地域で栽培する場合でも、栽培を行う時期や期間で必要な肥料の量やタイミングが異なり、それらに合わせた元肥や追肥の施用を行う必要があります。

地域や土壌の種類で異なる元肥や追肥など施肥の量

土壌
出典:写真AC
地域や土壌によっても栽培に必要な肥料の量は異なります。

地域ごとの施肥基準

作物が同じ場合でも、温度などの環境条件や作型などが地域で異なるため、必要とする養分も地域によっても異なります。
都道府県ごとに作物や作型における施肥基準が定められているため参考にするとよいでしょう。
参考:「施肥基準利用にあたって」都道府県施肥基準等(農林水産省)

土壌による違い

土壌の性質を決めるものの中に「土性」というものがあり、「土性」は土壌中に砂や粘土がどれだけ含まれるかによって区分されます。「日本農学会法」において、「土性」は5つに区分されています。
※土性の区分はこの「国際土壌学会法」と「日本農学会法」によって区分の仕方が違いますが、本記事では日本農学会法における土性の区分について紹介します。
【日本農学会法における土性の区分と特徴】
土性記号指の感触水もち水はけ保肥力
 砂土 S ザラザラ××〇〇××
 砂壌土 SL 少しツルツル×○○×
 壌土 L ツルツルのなかにザラザラ〇〇○○〇〇
 埴壌土 CL 少しザラザラ○○×〇〇
 埴土 C ツルツル○○××○○
参考文献:渡辺和彦、後藤逸男、小川𠮷雄、六本木和夫『環境・資源・健康を考えた 土と施肥の新知識』一般社団法人 全国肥料商連合会、2012年

圃場の「土性」を知る

土壌の性質は各々で異なるため、同じ肥料を投入しても作物が栄養として利用できる肥料の量やタイミングは異なってきます。そのため圃場の「土性」を知ることが重要です。
正確に「土性」を調べるためには、土壌中に含まれる砂や粘土などの量を調べますが、指の感触で大まかに判定することもできるので、栽培を行う土壌の「土性」を把握しておきましょう。

保肥力に合った施肥

土壌の保肥力を考えると、保肥力を上げることも重要ですが、保肥力に合った施肥を行うことが大切です。
例えば、保肥力が低い(××)圃場では、土壌が肥料を保持しておくことができず、すぐに流亡してしまうため、施肥の回数をこまめに分けたり、緩効性肥料を活用したりする必要があります。一方、保肥力が高い圃場では、肥料が多くなり過ぎないような対応を心がけましょう。

栽培する作物や作型に合わせた施肥を行って施肥作業やコストの省力化!

環境
出典:写真AC
まずは土壌がどのような「土性」であるかを把握し、どれくらいの肥料成分が残っているのか土壌分析を行いましょう。そして栽培に必要な肥料の量やタイミングを知った上で、作物や作型にあった元肥や追肥、栽培する作物に合った肥料の選択を行い、施肥作業の省力化や肥料の利用効率向上することで、施肥にかかるコスト全体の削減につなげていきましょう。

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。

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