苗立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

広く土壌中に生息するため、作物の育苗中に発病しやすい「苗立枯病」の原因や病原菌の種類、感染しやすい時期や防除方法、感染後の治療対策やおすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


ピシウム、コーン

出典:flickr(Photo by Scot Nelson
苗立枯病とは幼苗が立ち枯れたり、発芽不良を起こす糸状菌(カビ)による病気です。イネをはじめキャベツ、ネギ、ホウレンソウ等多くの植物苗で発生する苗立枯病の症状と発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。

苗立枯病の症状は地際部の腐れとしおれ

「苗の地際部が、くびれて黒くなっている」「茎がとろけるように腐ってしおれている」「苗がしおれて育たない」などの症状が現れたときは、苗立枯病を疑いましょう。
地際部に水浸状の病斑ができたり、褐色~黒色に変色し、くびれる場合があります。その部分で腐敗すると、水を上げることができずに生育が止まり枯死します。

苗立枯病の発症原因

ピシウム コーン
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
苗立枯病は、糸状菌(カビ)が原因となる病気です。数種類のカビが、多くの植物の苗(主に地際部)に発生します。雨や曇天が続き、気温がやや高い時期(25~30℃付近)に発生しやすくなります

原因は数種類のカビ

苗立枯病の原因として、ピシウム属菌、リゾクトニア属菌、フザリウム属菌、リゾプス属菌等が知られています。いずれも土壌病原菌です。
菌名 ピシウム属 リゾクトニア属菌 フザリウム属菌 リゾプス属菌
(主にイネに発生)
症状 ・地際部がくびれ、やがてとろけるように腐る。
・根は茶褐色に変色し腐る。
・白色綿毛状のカビが見られることもある。
・根や地際部が茶褐色~黒色に変色。
・地際部には白色~褐色のクモの巣状のカビが見られることもある。
・根や地際部が褐変腐敗し、黄化して枯死。
・病斑部に白色のカビが生えることもある。
・種籾あるいは出芽中の芽の周囲から、白いくもの巣状のカビが広がり床土表面を覆う。
伝染経路 ・卵胞子や罹病残さ中の菌糸で土壌中に残る。
・多湿条件で遊走子を形成して伝染。
・土中の感染した植物上で菌糸の状態で残り伝染。
・菌核をつくることもある。
・土壌中の厚膜胞子が気温や多湿な環境で発芽して伝染。 ・土壌や育苗施設・器材等の汚染が伝染源となる。

苗立枯病に感染する主な植物

イネ、キャベツ、ブロッコリー、コマツナ、ネギ、ホウレンソウ、トマト、ミニトマト、メロンなど多くの植物の苗に感染します。

◆キャベツ、ブロッコリー

播種後、土壌中で感染すると出芽不良となり地上部に芽を出さずに枯れ、幼苗で感染した場合、地際部が褐変してくびれてしおれ、立枯れます。
多湿の場合被害部には白色~褐色のカビが生えることがあります。
※似ている病気として「根朽(ねくち)病」があります。幼苗の地際部がくびれ立枯れます。根朽病の場合、くびれた病斑部分に黒色の粒が見えます。

◆ネギ

播種後土壌中で病原菌に侵されると発芽不良となり、地上部に芽を出さずに枯れ、幼苗で感染した場合地際部が腐り、くびれて倒伏し枯死します。
多湿の場合被害部には白色~褐色のカビが生えることがあります。


苗立枯病に有効な予防方法

苗立枯病は、発生してから治療をすることは困難な病気です。発生させない、予防対策を行いましょう。
苗立枯病に有効な予防は、「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬の使用」で行います。さまざまな方法を組み合わせて、適切な苗立枯病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

苗立枯病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行う苗立枯病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣(ざんさ)の処理

病気が感染した植物上に菌が残り、感染源となります。前作の植物残渣はなるべく圃場外に持ち出して処理します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

2. 未熟有機物を使用しない

生藁(なまわら)等の完全に分解されていない有機物は、病原菌を増殖させるので使用しないでください。

3. 無病土壌を使う

育苗する際の苗床や土壌は、新しいもの、消毒したものを使用しましょう。圃場にたっぷり潅水した後、透明のポリマルチを被せて、太陽熱消毒を行うのも効果的です。
プランター栽培の土の消毒は、水をたっぷり含ませ、透明のビニール袋で包み、真夏の太陽の熱を利用して消毒します。


4. 育苗ポット、トレイの消毒

前作で使用した育苗ポットやトレイに病原菌の胞子が残っていると、伝染源となる場合があります。使用する前には消毒することをおすすめします。
ケミクロンGの1000倍処理が有効です。
ITEM
ケミクロンG
あらゆる病原菌に対し強い殺菌力を持っており、農業用資材や用水からくる色々な病害の予防に素晴らしい効果を発揮します。
使用方法が簡単でしかも薬剤は速やかに分解消失します。

・内容量:500g
・有効成分:カルシウムハイポクロライト(70.0%)

5. 健全な苗を育成する

病気にかかりにくい、根張りの良い健全な苗を育成しましょう。
発根促進を促すペンタキープ等の肥料の使用も効果的です。
ITEM
ペンタキープ Hyper5000
植物の光合成を高める「5-アミノレブリン酸」を配合した液体肥料です。
5-アミノレブリン酸は、植物や動物の体内にある大切なアミノ酸で、葉緑素を増やし、光合成能力の向上に効果を発揮します。
ALAは根からの栄養吸収に関係する植物の体内酵素の働きを活性化させ、水や土中の肥料分の吸収を促進します。根の栄養吸収能力が高まると、より多くの栄養を取り込もうとするために根の生育が促進されます。

・内容量:800ml

6. 水はけの良い圃場造り

土壌中の水分が過剰な状態では、苗立枯病の病原菌が蔓延しやすくなります。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

7. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は、過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。

8. 灌水方法の見直し

苗立枯病は水の跳ね上がりで感染するので、頭上からの潅水は要注意です。株元潅水を心がけてください。
また、ポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。

▼マルチについてはこちらをご覧ください。

苗立枯病の予防に効果的な「農薬」

農薬散布
出典:写真AC
育苗期、植え付け時、定植後に農薬を使用して、より効果的に苗立枯病を予防しましょう。前述の通り、立ち枯れ病は菌の種類が多く、また似通った時期に発生するため、それぞれの菌に効果のある農薬をローテーションで使用することがおすすめです。
使用する薬剤に作物の登録があるか、必ずご確認ください。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
薬品名 ピシウム属 リゾクトニア属 フザリウム属菌 リゾプス属菌
 リゾレックス粉剤(土壌使用)
 タチガレン液剤(播種時、定植時)
 オーソサイド水和剤80(種子消毒、幼苗期)
 リゾレックス水和剤(種子消毒・育苗時)
 ダコニール1000(播種時または活着後)
 ベンレート水和剤(種子消毒、生育期)

◆リゾレックス粉剤

植え付け前に土壌混和処理します(種子消毒、育苗時には下記の「水和剤」を使用)。
リゾクトニア属菌に効果があります。
ITEM
リゾレックス粉剤
有機リン系の殺菌剤です。作用機作は未確認ですが、病原菌の運動機能や細胞分裂の制御機能に影響を与えて殺菌効果を発揮すると考えられています。
予防的な処理で効果があります。リゾクトニア属菌、コルティシウム属菌、ティフラー属菌などに対して効果があります。
優れた残効性を示し、安定した効き目があります。

・内容量:3kg
・有効成分:トルクロホスメチル(5.0%)

◆タチガレン液剤

播種時、定植時などに使用します。
ピシウム属菌、フザリウム属菌に効果がります。
ITEM
タチガレン液剤
稲の苗立枯病を的確に防ぎ、根の生育促進、ムレ苗防止など健苗が得られます。
播種時の処理に加えて、育苗中のかん注により移植時の発根及び活着促進が一層的確に発揮されます。

・内容量:500ml
・有効成分:ヒドロキシイソキサゾール(30.0%)

◆オーソサイド水和剤80

種子消毒、幼苗期に使用します。多くの病害、作物に効果があり、他の病害の同時防除も可能です。
ピシウム属菌、リゾクトニア属菌に効果があります。
ITEM
オーソサイド水和剤80
生育期散布のほか、種子消毒、幼苗期の土壌灌注(かんちゅう)などにより、腐敗病や苗立枯病などの土壌病害にも優れた効果を発揮します。
有効成分のキャプタンは、病原菌の多作用点を阻害するため薬剤耐性が発達するリスクが低く、耐性菌対策としても有効です。

・内容量:50g
・有効成分:キャプタン(80.0%)

◆リゾレックス水和剤

種子消毒、育苗時などに使用します(植え付け前の土壌には上記の「粉剤」を使用)。
リゾクトニア属菌に効果があります。
ITEM
リゾレックス水和剤
有機リン系の殺菌剤です。作用機作は未確認ですが、病原菌の運動機能や細胞分裂の制御機能に影響を与えて殺菌効果を発揮すると考えられています。
予防的な処理で効果があります。リゾクトニア属菌、コルティシウム属菌、ティフラー属菌などに対して効果があります。
優れた残効性を示し、安定した効き目があります。

・内容量:500g
・有効成分:トルクロホスメチル(5.0%)

◆ダコニール1000

播種時または活着後に使用します。広範囲の病害に効果があるため、同時防除にもおすすめです。
リゾクトニア菌、リゾプス属菌などに効果があります。
ITEM
ダコニール1000
広範囲の病気に防除効果をあらわす総合殺菌剤です。
長期間病気から植物を守る残効性にすぐれ、薬害もほとんどありません。
フロアブルタイプのため計量も手軽にでき、散布後の汚れも少ない薬剤です。

・内容量:30ml
・有効成分:TPN(テトラクロロイソフタロニトリル)(40%)

◆ベンレート水和剤

種子消毒、生育期に使用します。
フザリウム属菌に対して、高い予防効果、治療効果があります。
ITEM
ベンレート水和剤
水稲・野菜・果樹などの幅広い作物に使用でき、浸透移行性に優れ、予防・治療の2つの効果を示します。
茎葉の病害、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害など、多方面にわたり優れた効果を示します。
低濃度で使用できるので、作物を汚染することが少ない薬剤です。

・内容量: 0.5g×10袋
・有効成分:ベノミル(50.0%)

▼農薬についてはこちらをご覧ください。

苗立枯病発症後の対応は被害部分の除去

苗立枯病の発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは他に伝染しないようにビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。
次作植え付け前には、必ず土壌消毒を行ってください。

苗立枯病対策に何より大事なのは清潔な育苗環境

苗立枯病は土壌病害です。圃場は水はけの良い、病原菌の繁殖しにくい栽培環境に整え、土壌は新しいものか消毒した土を使用します。
また、育苗時に使用する資材の消毒も必要です。播種時、定植時には予防的に農薬を散布することもおすすめです。

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農協、農業資材メーカーにて、営農相談業務を約10年間行っていました。 現場に寄り添った記事を心がけていきます。