軟腐病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

ネギやニンジン、ジャガイモ、ハクサイでは結球時期から発病が始まる「軟腐病」は、軟化して腐れ、異臭を放つ症状が特徴的な病気です。そんな「軟腐病」の感染しやすい時期や防除方法、感染後の土壌消毒などの対策やおすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


キャベツ軟腐病

出典:flickr(Photo by JIRCAS Library
軟腐病とは地際に近い部分が腐り、異臭を放つ細菌(バクテリア)による病気です。多犯性の病害で、ハクサイ、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンなどの植物に感染します。発生し蔓延すると防除が難しい軟腐病の発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。

軟腐病の症状は腐り、異臭

「外葉がとろけるように腐ってきた」「腐った部分から異臭がする」などの症状が現れたときは軟腐病を疑いましょう。
軟腐病は葉、茎、果実、根、花などに水に浸したような病斑が現れ、拡大して軟化腐敗します。
病斑部に顔を近付けると独特の鼻をつくような悪臭がします。
貯蔵、輸送中にも発生して病状が進行し、切断部や病斑部から白く濁った液体が染み出る場合もあります。

軟腐病の発症原因

カリフラワー、軟腐病
出典:flickr(Photo by JIRCAS Library
軟腐病とは細菌が原因の病気です。多犯性で多くの植物のさまざまな部位に発生します。
名前  軟腐病
菌名  Erwinia carotovora
 (=Pectobacterium carotovorum)
分類  細菌
発生時期  4~11月
発病適温  25~30℃

主な感染源は前作の残りの植物や土壌

軟腐病の病原菌は、前作の残りの植物(残渣/ざんさ)や土壌、感染した種子で長期間生存し伝染源となります。
出芽時に土壌に生存している病原菌と接触したり、灌水(かんすい)や雨水の跳ね上がりで傷口や害虫の食害痕、気孔などから侵入し感染します。
その後、病斑部分で増殖した病原菌は風や雨、灌水の水滴で他の部位や隣接する作物に運ばれ、気孔や傷口から侵入し感染することでさらに被害が広がります。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。
※灌水(かんすい)とは、水を注ぐこと、植物に水を与えること。

発生しやすい時期や栽培環境

軟腐病の発病適温は25~30℃で、曇雨天が続き湿度が高い時期に発生します。台風、大雨、収穫後など、傷口ができている状態で病原菌が作物体に侵入・感染しやすくなります。
また、作物を育てる際の水分過剰や多過ぎる肥料によって引き起こされる軟弱徒長も発生の原因となります。
※軟弱徒長とは、植物の葉厚や葉の色が薄くなり、茎や葉柄および葉身が弱々しく間延びした状態。

軟腐病と他の病気の見分け方は「悪臭」

他の土壌病害と軟腐病の見分け方は「独特の悪臭があるかどうか」です。軟腐病の場合、病斑部に鼻を近付けると、思わず顔を背けてしまうくらい強い臭いがします。

軟腐病に感染する主な植物

軟腐病は野菜類、花卉(かき)類など幅広く感染する病気です。ここでは、軟腐病が問題となっている主要な作物とその症状をご紹介します。

野菜類

野菜類では、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、ダイコン、タマネギ、ジャガイモ、トマト、ピーマン、メロン、ニンジン、ネギなどに発生します。

◆アブラナ科類(キャベツ、ハクサイ、ダイコン、ブロッコリー)

ハクサイ、病害虫
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
生育中期以降や結球期に発生が多くみられます。根から侵入した場合、内部(芯)の部分まで被害が及び、台風や豪雨の後などに一気に病勢が進みます。
地際部に接している葉または頭部が水に浸されたような症状となり、褐変して軟化腐敗するため、病斑部からは独特の悪臭を放ちます。
作物の貯蔵中、輸送中にも発生することがあります。

◆タマネギ

軟腐病
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
葉、茎、地下部に発生します。地際部の茎葉が灰白色~淡褐色となり軟化して葉が倒れます。軟化はりん茎部(玉)に及び腐敗して独特の悪臭を放ちます。
作物の貯蔵中、輸送中にも発生することがあります。

草花

蘭軟腐病
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
洋ラン(君子蘭、胡蝶蘭など)、カトレア、シクラメン、カラー、ユリ、クリスマスローズなどに発生します。
地際部から、葉、葉柄、花柄などに水に浸したような暗褐色の病斑が広がり、軟化、腐敗して独特の悪臭を放ちます。
球根類は貯蔵中に腐敗することがあります。


軟腐病に有効な防除方法

軟腐病に有効な防除は「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて適切な軟腐病の防除を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

軟腐病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行う軟腐病の予防方法についてご説明します。

1. 前作の残渣の処理

前作の植物残渣等に軟腐病菌が付着している可能性があります。残渣は圃場外に持ち出して処理しましょう。

2. 水はけの良い圃場づくり

土壌の水分過剰で軟腐病に感染しやすくなるため、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して効果的な土質改善を行いましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

3. 抵抗性品種の利用

抵抗性品種や軟腐病に強いとされている品種を選定することも防除に効果的です。
※品種の例…タマネギ:七宝甘70(株式会社七宝)、ダイコン:福誉(みかど協和)など

4. 連作をしない

軟腐病が発生した場合は連作をやめましょう。
マメ科、イネ科は軟腐病には感染しないため、発生がみられた圃場ではマメ科、イネ科を栽培することをおすすめします。

5. 灌水方法の見直し

軟腐病は水の跳ね上がりで感染する場合が多いので、頭上からの灌水は要注意です。株元灌水を心がけてください。
ポリマルチで泥跳ねを予防することも効果的です。

▼マルチについてはこちらをご覧ください。

6. 肥培管理、水管理の見直し

軟腐病は軟弱徒長で発生しやすいため、作物が軟弱徒長になる主な原因「肥料」と「水」の管理を見直しましょう。元肥や追肥の量が多い、または時期が適切で無い場合や灌水量が多過ぎることのないよう適切な肥培管理、水管理を心がけましょう。

▼肥料のことならこちらをご覧ください。

7. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。

軟腐病の防除に効果的な「農薬」

農薬を使用してより効果的に軟腐病を防除しましょう。軟腐病は多発してからの薬剤防除は難しいため、予防、または発病初期に散布を徹底することが効果的です。台風や豪雨、収穫や管理作業を行った後など傷口ができている場合は入念に予防散布してください。
出荷後に発生することもあるので収穫前の散布もおすすめします。
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆オリゼメート粒剤

根から浸透移行性があり植物の病害抵抗性を誘導します。土壌混和で、効果の持続期間は約1カ月です。本圃での初期感染、初期発病の予防に有効です。
ITEM
オリゼメート粒剤
植物の病害抵抗性を誘導して高い効果を現す、ユニークな作用性の殺菌剤です。
キュウリ・レタス・キャベツ・ブロッコリー・ハクサイ・ネギ等の細菌性病害に有効です。
有効成分は根から速やかに吸収され、体内へ浸透移行します。

・内容量:3kg
・有効成分:プロベナゾール(8%)

◆バリダシン液剤5

軟腐病をはじめ、株腐病、黒腐病、苗立枯病にも効果が高く同時防除が可能です。
結球初期よりやや早めの散布をおすすめします。
ITEM
バリダシン液剤5
散布後茎葉に吸収され、導管内の細菌の増殖をユニークな作用機構(糖代謝系酸素阻害)で抑制します。
液剤タイプなので作物への汚れの心配がありません。
結球後期までの防除が可能です。ハクサイ・タマネギ防除では、収穫3日前まで使用できます。
高温時の散布でも薬害の心配がほとんどありません。

・内容量:500ml
・有効成分:バリダマイシンA(5.0%)

◆スターナ水和剤

軟腐病に効果が高い薬剤です。予防的に使用してください。カラーは球根吹付処理が可能です。
ITEM
スターナ水和剤
有機合成による細菌病専用防除剤で、既存剤とは異なる作用性を持つ化合物です。
稲のもみ枯細菌病、褐条病、苗立枯細菌病、葉鞘褐変病、内穎褐変病や園芸作物の軟腐病等に対して効果を発揮します。
基本作用性は病原細菌の増殖抑制効果です。

・内容量:100g
・有効成分:オキソリニック酸(20.0%)

◆ジーファイン水和剤

有効成分である炭酸水素ナトリウム、無水硫酸銅は食品添加物にも認可されており、有機農産物の日本農林規格に適合した薬剤です。
※キュウリ、スイカ、メロンに使用する場合、薬害が生じる恐れがあります。幼苗期の散布は避けて中期以降に散布してください。過度の連続散布は控え、高温時、極端な低温時及び湿潤状態が長時間続く場合の散布は症状が激しくなることがあるので避けてください。
ITEM
ジーファイン水和剤
有効成分が、植物及び病原菌に効率よく接触するように製剤化されているので従来の無機銅殺菌剤やボルドー液などと比べて低い銅濃度で効果を発揮します。
作用機作から耐性が付きにくく、EBI剤耐性菌にも有効です。    

・内容量:250g
・有効成分:炭酸水素ナトリウム(46.0%)無水硫酸銅(30.0%)

▼農薬についてはこちらをご覧ください。

軟腐病発症後の効果的な3つの対策

軟腐病が発生してしまったら、すぐに行いたい効果的な対策をご紹介します。

1. 感染株の除去

軟腐病の発生が確認された株はただちに取り去りましょう。除去したものはビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。

2. 栽培環境の見直し

軟腐病が発生しやすい栽培環境になっていないか、圃場の水分管理、肥培管理などをもう一度見直しましょう。

3. 周辺株に軟腐病が広がらないための農薬散布

軟腐病を治療する薬剤は基本的にはありませんが、軟腐病がこれ以上広がらないことを目的に発症株の周辺の株にたっぷりと薬剤を散布します。
このとき使用する農薬は、上記の軟腐病の防除に効果的な「農薬」でおすすめした薬剤を散布することをおすすめします。

軟腐病は発生前の予防が重要

軟腐病は多発してからの薬剤防除は難しいため、発生しないための環境づくりが大切です。
多湿で発生しやすい土壌からの病気なので、気温25~30℃付近で雨が長引く時期は薬剤の予防散布を徹底し、発病している株は直ちに取り去り、雨の日の収穫や傷口をつくるような管理作業は控えましょう。

関連する記事

キャベツ軟腐病
このまとめが気に入ったら
「いいね!」をしよう

この記事のキーワード

rinko
rinko

農協、農業資材メーカーにて、営農相談業務を約10年間行っていました。 現場に寄り添った記事を心がけていきます。