灰色かび病 | 防除方法とおすすめの使用薬剤(農薬)

トマトやバラ、イチゴやぶどうなどに発生し、被害が広がると防除が難しい「灰色かび病」の発見ポイント、感染しやすい時期や環境、植物について紹介します。さらに、灰色かび病の防除や対策方法について、おすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


ぶどう灰色かび病
出典:wikimedia

灰色かび病とは、灰色〜褐色のカビに覆われる糸状菌(カビ)による病気です。野菜類、花卉類、ほとんど全ての植物に感染します。葉、茎、果実などあらゆる部分に発生し、一度発生すると止まりにくい病気です。そんな灰色かび病の症状と発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。


灰色かび病の症状は灰色〜褐色のカビ

イチゴ、灰色かび病
出典:Flickr(Photo by :chantal gauthier)
葉や果実が「灰色のカビに覆われていた」「花びらに染みがついていた」などの症状が現れたときは、灰色かび病を疑いましょう。具体的にどのような症状なのか、発見のポイントも合わせて説明します。

灰色かび病の症状

葉や果実、茎に、最初は水にひたしたような(水浸状)病斑が現れて、後に灰白色〜褐色のカビに覆われます。感染が茎内部や地際部に及ぶと、上に水をあげることができずに枯死することもあります。花弁、蕾に感染すると褐色斑点状の病斑が現れ、拡大することがあります。

灰色かび病の発見のポイント

灰色かび病は早めの対処が有効です。発見のポイントを押さえて、早期発見、早期防除を行いましょう。
部 位 発見のポイント
花 弁 ・小斑点、水浸状の病斑。(病斑が拡大してとろけるような症状となる場合もある)
・小斑点、水浸状の病斑。
・被害が進むと、灰褐色のカビで覆われる。
・暗緑色~灰緑色の水浸状の病斑。
・後に灰褐色のカビに覆われる。(被害が進むと病斑が茎を一周し、上葉が萎れる場合がある)
・暗緑色~灰緑色の水浸状の病斑。
・後に灰褐色のカビが発生。(枯死しやすい葉のふちから発生する場合が多い)
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

灰色かび病の発症原因

ボトリティス菌という、糸状菌(カビ)が原因となる病気です。「灰かび」「ボト」と略称で呼ばれることもあります。
名前  灰色かび病
学名  Botrytis cinerea
分類  糸状菌/不完全菌類
発生時期  4月~11月
発生温度  20℃前後
胞子形成  16℃前後

灰色かび病の伝染源

植物体や腐敗した葉、残渣(ざんさ)等で繁殖を続け、伝染源となります。胞子や菌糸は風に乗って飛散し、植物上で発芽し、傷口や柔らかい部分から侵入して感染します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

灰色かび病の発生しやすい環境

葉が多くて混みあっている場合も、植物体の周りの湿度が上がりやすくなり、灰色かび病が発生しやすくなるため注意が必要です。

◆灰色かび病の胞子が飛散しやすい条件

気温が低く、湿度が高い条件で胞子が飛散し、温度が20℃前後で発病しやすくなります。朝夕が冷え込む時期や水やり後、雨上がり、夜露などで湿度が高く葉が濡れている場合は、特に気を付ける必要があります。
一年の中で春先の気温が低い時期、梅雨、秋から初冬にかけて感染が多く見られるので要注意です。

灰色かび病と間違えやすい病気

見た目が同じ「灰褐色水浸状」「カビ状の病斑」ですが、灰色かび病とは異なる病気があります。見分け方のポイントをおさえて、正しい防除を行いましょう。
病気名 作物名 灰色かび病に似ている症状 灰色かび病と異なる症状
疫病  トマト
ジャガイモ
ピーマン等
 暗緑色〜褐色の水浸状の病斑。 ・初期の病斑の色が灰色かび病よりも黒っぽい。
・白色、霜のようなカビを生じる。
・触ると表面がとろけるように腐る。
菌核病  花卉類
野菜類
 果実、茎、地際部に水浸状の病斑。 ・白色で綿毛のようなカビを生じる。
・「ネズミの糞」のような黒い菌核がカビの中に見られる。
すすかび病
葉かび病
 主にトマト  灰褐色のカビを生じる。 ・カビは灰褐色〜褐色、黒褐色になる。
・円形、あるいは葉脈に囲まれた不正形のカビが葉裏にスポット状に点在する。
・主に葉に発生し、茎や果実には出にくい。
※就農者の方には、病名の正確な判断は、都道府県の農業改良普及センターやJA等指導機関にご相談することをおすすめします。

灰色かび病に感染する主な植物

前述のとおり、灰色かび病は野菜類、花卉類、ほぼどんな植物でも感染する病気です。ここでは、灰色かび病が問題となっている主要な作物とその症状と見分け方を紹介します。

野菜類

野菜類では、トマト、キュウリ、イチゴ、レタスなどに発生します。

◆トマト

果実、葉、茎などに発生し、特に枯れた葉先、咲き終わった花弁からの発生が多いです。トマトの花弁にカビが発生すると、果実全体が灰色のカビで覆われて軟化し、最後には腐敗してしまいます。
また、果実に2~3mmのゴーストスポットと呼ばれる白いリング状の病斑を生じることもあります。

◆イチゴ

果実、がく、果梗、葉、葉柄に発生します。下葉等から発生し、果実に被害が及ぶと、果実全体が灰褐色のカビに覆われてしまいます。

草花

草花では、キク、バラ、シクラメン、チューリップ、ガーベラ、マリーゴールド、洋ラン類などに発生します。

◆キク

茎、葉、花に発生します。最初は古くなった葉などで感染が進み、花に感染すると花弁に褐色の小斑点ができ後に拡大します。

◆バラ

花、葉、茎、蕾に発生します。開花前の蕾や花弁で水浸状の小斑点を生じ、徐々に拡大して花や蕾が灰色のカビで覆われ軟化腐敗します。

果樹・樹木

果樹、樹木ではカンキツ、ブドウ、モモ、ウメなどに発生します。

◆カンキツ

葉、果実に発生します。古くなった花弁が幼果に付着して腐ると、花弁の付着部分が褐色のかさぶた状の傷になり、傷の多い果実は落果するが、傷の少ない果実は落果せずに残り傷が拡大し、品質が低下します。貯蔵果では、始め暗褐色、水浸状の病斑ができ、その後灰色のカビが生じ腐敗します。


灰色かび病に有効な予防方法

灰色かび病に有効な予防は、「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と、「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて、適切な灰色かび病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

灰色かび病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行う灰色かび病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣の処理

灰色かび病は、枯れた植物上でも生き残り感染源となります。前作の残りの枯れた植物は、土中に埋め込むか、圃場外に持ち出して処理します。

2. 圃場回りの除草

雑草も灰色かび病の感染源になっています。植え付け前に圃場回りの除草を徹底して、伝染源を根絶しましょう。

3. 水はけの良い圃場づくり

湿度が高いと、灰色かび病の胞子が作られてしまいます。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

4. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は、過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。
古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。また咲き終わった花がらも感染源となる場合が多いので、こまめに取り去りましょう。

灰色かび病の予防に効果的な「農薬」

農薬を使用して、より効果的に灰色かび病を予防しましょう。1回だけではなく、定期的に散布することがおすすめです。
また、灰色かび病は同一薬剤の多使用による薬剤耐性菌の発達が報告されています。耐性菌の発生を予防するためにも、薬剤を組み合わせてローテーションで散布することをおすすめします。使用する薬剤に作物の登録があるか必ずご確認ください。
※耐性菌とは、薬剤(農薬)に含まれる抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆ダコニール1000

有効成分TPNの保護殺菌剤です。現在報告されている薬剤耐性菌にも、広範囲に効果的な薬剤です。
ITEM
殺虫殺菌剤 STダコニール1000
草花、野菜、果樹など様々な植物で、かび類(糸状菌)によって起こり、特にもち病や炭そ病、斑点病など葉が変色するタイプの広範囲の病気に効果がある優れた園芸用の総合殺菌剤です。
耐光性、耐雨性に優れ、病気から植物を守る残効性があります。また各種病原菌に対しても抵抗性がつきにくい、優れた効果の保護殺菌剤です。
計量が手軽に行えるフロアブルタイプで、散布後の葉の汚れも少ないです。

・容量:30ml
・有効成分:TPN

◆ボトキラー水和剤

有効成分バチルス菌は、「納豆菌」の仲間です。バチルス菌が作物の葉や花に棲み着き、病原菌の繁殖を抑制して灰色かび病などの病気から作物を守ります。
ITEM
ボトキラー水和剤 
微生物を有効成分とする国内初の灰色かび病防除用微生物剤です。
発病前に散布することにより、植物体上に先に定着し、病原菌の活動を抑制することによって予防効果を発揮します。
化学薬剤に対して感受性の低下した病原菌(耐性菌)に対しても有効。化学剤と体系を組むことによって耐性菌密度を低下させることが可能です。
使用回数に制限がなく、農薬の使用回数にカウントされません

・容量: 100g
・有効成分 バチルス・ズブチリス芽胞1x10の11乗CFU/g含有 (1g当たり1000億個の生きた胞子を含有)

◆ベニカXファインスプレー

虫と病気を総合的に防除できる薬剤です。優れた展着性、浸達性があり、葉の表面から葉裏まで薬剤が浸透します。有効成分メパニピリムは、灰色かび病薬剤耐性菌にも効果がある成分です。
ITEM
ベニカXファインスプレー
植物への展着性が良く、安定性にもすぐれた総合殺虫殺菌剤です。草花・庭木の害虫と病気を同時に防除します。
害虫にすばやく効き、長期間再発生を抑えます(アブラムシで約1ヶ月)。
【効果のある害虫・病気】
[害虫]アブラムシ類、ハダニ類、チュウレンジハバチ、ハスモンヨトウ、チャドクガ、ツツジグンバイ、ツノロウムシ
[病気]うどんこ病、黒星病、灰色かび病

・容量:420ml
・有効成分:クロチアニジン、フェンプロパトリン、メパニピリム

灰色かび病発見後の効果的な2つの対策

灰色かび病を発見してしまった際にはどうすればよいのか、その効果的な対策を紹介します。

1. 灰色かび病発症後の被害部分の「除去」

果実や葉に発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは胞子が飛ばないように、ビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。
茎に被害の発生が見られた場合は、ナイフ等で感染部位を削り取る方法もあります。
また、発生が広がらないように圃場の環境を見直しましょう。古い葉が残っている場合は、さらなる伝染源となる可能性があるので、ただちに取り去りましょう。

2. 灰色かび病の治療に効果的な「農薬」

効果的な農薬を使用して、早期に灰色かび病を治療しましょう。

◆カリグリーン

人と環境にやさしい炭酸水素カリウムが主成分です。有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用可能です。
多発時には効果が薄れることがあります。なるべく発生初期に、所定の散布量で葉全体を洗い流すように散布しましょう。
ITEM
殺菌剤 カリグリーン
野菜類、花卉類の灰色かび病、うどんこ病に効果のある治療薬です。
炭酸水素カリウムを主成分としているので、散布後、副次的にカリ肥料になります。
炭酸水素カリウムは、ベーキングパウダー(炭酸水素ナトリウム)と類似の炭酸水素塩の一種です。

・容量:1.2g×10袋
・有効成分:炭酸水素カリウム

有機農法での灰色かび病対策

キッチンにある材料でも、灰色かび病の対策をすることができます。どちらも病気が多発してからは効果が薄いので、なるべく予防的に散布するように心がけましょう。

納豆

前述のとおり、ボトキラー水和剤は納豆菌を使った農薬です。納豆菌が葉の表面に病原菌より先に住み着くと、病原菌の繁殖を抑制して灰色かび病などの病気から作物を守ります。
自宅で納豆をミキサーで粉砕して納豆水を作り、スプレーボトルで散布する方法もあるようです。

重曹

重曹(炭酸水素ナトリウム)は、前述のカリグリーンの成分と同じ炭酸水素塩なので治療効果があります。
食品用として市販されている重曹を水で500~1000倍に薄め、ハンドスプレーなどを使って、病気の発生部位を中心に周辺にもたっぷりと散布しましょう。
▼有機栽培の農薬については、コチラの記事も参考にしてください

灰色かび病対策に何より大事なのは育てる環境

灰色かび病は多発してしまうと防除が難しい病気です。古い葉、落ち葉、花がらはそのままになっていませんか?まずは環境を見直し、灰色かび病の感染源とならないように風通しの良い圃場環境を保ちましょう。

雨が長引き、気温の低い(梅雨、秋から初冬)感染しやすい時期は、灰色かび病の兆候がないか圃場を注意して観察し、予防的に農薬を散布することもおすすめします。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。