黒腐病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)

ブロッコリーや大根、キャベツなどのアブラナ科作物に感染し、被害が広がると品質が著しく低下してしまう「黒腐病」の感染しやすい時期や環境について紹介します。さらに、黒腐病の防除や対策方法について、おすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


キャベツ黒腐病

出典:flickr(Photo by Scot Nelson
黒腐病とは葉の縁から不整形~V字型に病斑が広がり、葉脈や維管束が黒変し、全身に移行する細菌(バクテリア)による病気です。キャベツ、ブロッコリー、ダイコンなどのアブラナ科野菜に感染します。発生し蔓延すると防除が難しい、黒腐病の発見のポイントを押さえて、予防と早期発見、防除を心がけましょう。

黒腐病の症状は葉の黄変、V字型の病斑

「葉が縁から黄色く枯れてきた」「V字型のような病斑の形をしている」などの症状が現れたときは、黒腐病を疑いましょう。
黒腐病は主に葉に病斑が現れ、不整形から切り込みが入ったようなV字型の黄褐色の病斑が拡大し、葉の葉脈は黒く変色します。茎の維管束は黒変し、病徴が進むと軟化、腐敗して株の生育を阻害します。

黒腐病の発症原因

キャベツ黒腐病2
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
黒腐病は土壌などに生息する細菌が原因の病気で、主にアブラナ科野菜に発生し、水や風雨で運ばれた菌が植物に付着して感染します。
黒腐病と同じように細菌に感染するモザイク病は、媒介昆虫のアブラムシによって伝播(でんぱ)されますが、黒腐病はモザイク病のような媒介昆虫で感染することはありません。
※伝播とは病原体が元となる感染源から運ばれ、別の個体に伝達すること。
名前  黒腐病
菌名  Xanthomonas campestris
分類  細菌
発生時期  5月ごろ、9~10月ごろ

主な感染源は前作の残りの植物や土壌

黒腐病の病原菌は、乾燥に対する抵抗力が強く、乾燥状態で1年以上生存します。前作の残りの植物(残渣/ざんさ)や土壌、感染した種子に付着して長期間生存し、伝染源となります。
出芽時に土壌に生存している病原菌と接触したり、灌水(かんすい)や雨水の跳ね上がりで、葉縁の水孔、傷口や害虫の食害痕、気孔などから侵入し、感染します。
その後、病斑部分で増殖した病原菌は、風や雨、灌水の水滴でほかの部位や隣接する作物に運ばれ、気孔や傷口から侵入し感染することで、さらに被害が広がります。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。

発生しやすい時期や栽培環境

春(5月ごろ)、秋(9~10月ごろ)のやや気温が低く、曇雨天が続く場合に発生します。台風、大雨、収穫後、害虫の食害など、傷口ができている状態で病原菌が作物体に侵入・感染しやすくなります。
また、作物を育てる際の水分過剰や多過ぎる肥料によって引き起こされる軟弱徒長、もしくは肥料切れによって生育が弱ることも発生の原因となります。
病気に感染した種子を植え付けたり、アブラナ科野菜を連作することでも発症しやすくなります。
※軟弱徒長とは、植物の葉厚や葉の色が薄くなり、茎や葉柄および葉身が弱々しく間延びした状態。

黒腐病に感染する主な植物

黒腐病はキャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー、チンゲンサイ、カブなどのアブラナ科野菜に発生します。
ここでは、黒腐病が問題となっている主要な作物とその症状を紹介します。

キャベツ

キャベツ黒腐病3
出典:flickr(Photo by Scot Nelson
苗、葉、茎に発生します。苗では発芽数日後に子葉頂部のへこんだところから黒変しはじめ、新葉や芽も侵されて苗は枯死、または奇形となります。
本圃では主に下葉から発生し、葉の縁から不整形、もしくは葉脈を中心としたV字型の黄色い病斑ができます。その周辺の葉脈の維管束部が黒変化し、葉全体に広がります。
結球している場合は頭に淡褐色の病斑ができ、発病が激しいと地際部の茎の維管束が黒変します。
※苗の段階で黒腐病に感染すると本圃で発病が広がります。苗の防除を徹底することが重要です。

ダイコン

葉と根で発生します。葉が黄色くなり、その周辺の葉脈が黒変化します。また葉柄も黒変し病徴が進むと枯れます。
根では見た目にはわかりませんが、切断すると導管部がリング状に黒変しています。病勢が進むと内部が腐敗して黒色となり、空洞となります。
※黒腐病に似た病気の症状:黒腐病ははじめ葉が黄変し、根の方向に病気が移行して枯れるのに対して、萎黄病は「下葉から」黄変して株が萎れ、枯れます。軟腐病は鼻に付く「悪臭」があります。

黒腐病に有効な防除方法

黒腐病に有効な防除は、「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬」の使用で行います。2つの方法を組み合わせて、適切な黒腐病の防除を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

黒腐病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行う黒腐病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣の処理

黒腐病菌は乾燥にも強く、前作の植物残渣などに長年付着して生存している可能性があります。残渣は圃場外に持ち出して処理しましょう。

2. アブラナ科雑草の除草

ナズナやタネツケバナなどのアブラナ科雑草は、黒腐病に感染して越冬し、翌年の感染源となりますので、圃場回りの除草を心がけてください。

3. 水はけの良い圃場づくり

土壌の水分過剰で、黒腐病に感染しやすくなるため、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。


4. 抵抗性品種の利用

抵抗性品種や、黒腐病に強いとされている品種を選定することも防除に効果的です。
※キャベツの抵抗性品種の例…いろどり(カネコ種苗)、彩シリーズ(タキイ種苗)、新藍・冬藍(サカタのタネ)など

5. 無病の種子、苗を使用する

黒腐病は種子に感染して伝染します。アブラナ科野菜を栽培する際の種子は毎年更新しましょう。
また、苗の段階で黒腐病に感染していると、圃場で一気に広がります。苗の防除を徹底し、病気を圃場に持ち込まないようにします。

6. アブラナ科野菜を連作しない

アブラナ科野菜の連作で、土壌中の黒腐病菌の密度が高くなります。アブラナ科野菜の連作は避けてください。

7. 灌水方法の見直し

黒腐病は水の跳ね上がりで感染する場合が多いので、頭上からの灌水は要注意です。株元灌水を心がけてください。ポリマルチで泥跳ねを予防することも効果的です。

▼マルチについてはこちらをご覧ください。

8.害虫を防除して食害を減らす

害虫による食害痕から、病原菌は侵入し感染します。キスジノミハムシなどのハムシ類、バッタなどの防除を行いましょう。防虫ネットの使用も効果的です。

▼防虫ネットの選び方についてはこちらをご覧ください。

9. 肥培管理、水管理の見直し

黒腐病は軟弱徒長、もしくは肥料切れで発生しやすいため、主な原因「肥料」と「水」の管理を見直しましょう。元肥や追肥の量が多い・少ない、または時期が適切で無い場合や、灌水量が多過ぎることのないように適切な肥培管理、水管理を心がけましょう。

▼肥料のことならこちらをご覧ください。

10. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。

黒腐病の防除に効果的な「農薬」

農薬を使用して、より効果的に黒腐病を防除しましょう。黒腐病は多発してからの薬剤防除は難しいため、予防、または発病初期に散布を徹底することが効果的です。台風や豪雨、収穫や管理作業を行った後など、傷口ができている場合は、入念に予防散布してください。
散布する際は展着剤を加用し、下葉にもしっかりかかるように散布してください。
※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆オリゼメート粒剤

植物の病気の抵抗性を高める薬剤です。栽培初期の予防に効果的です。
ITEM
オリゼメート粒剤
植物の病害抵抗性を誘導して高い効果を現す、ユニークな作用性の殺菌剤です。
キュウリ・レタス・キャベツ・ブロッコリー・ハクサイ・ネギ等の細菌性病害に有効です。
有効成分は根から速やかに吸収され、体内へ浸透移行します。

・有効成分:プロベナゾール(8%)
・内容量:3kg

◆バリダシン液剤5

黒腐病をはじめ、株腐病、軟腐病、苗立枯病にも効果が高く同時防除が可能です。
病害の発生盛期より早めの散布(結球初期よりやや早め)が効果的です。
ITEM
バリダシン液剤5
散布後茎葉に吸収され、導管内の細菌の増殖をユニークな作用機構(糖代謝系酸素阻害)で抑制します。
液剤タイプなので作物への汚れの心配がありません。
結球後期までの防除が可能です。ハクサイ・タマネギ防除では、収穫3日前まで使用できます。
高温時の散布でも薬害の心配がほとんどありません。
ユニークな作用機構により、耐性菌出現の心配はほとんどありません。

・内容量:500ml
・有効成分:バリダマイシン(5.0%)

◆カッパーシン水和剤

予防効果のある塩基性塩化銅と、治療効果のある抗生物質カスガマイシンの混合剤です。糸状菌および細菌による多くの病害に対して効果があります。
※キャベツの結球期以降は薬害の恐れがあるため使用しないでください。
※ダイコンに対して薬害を生じるおそれがあります。幼苗期又は生育の初期は特に発生しやすいので、中期以降散布します。過度の連続散布は控え、高温時の散布は症状が激しくなることがあるので避けてください。
ITEM
カッパーシン水和剤 100g
2つの有効成分の働きにより、糸状菌および細菌による多くの病害に対して優れた効果を示します。
効果の持続性、耐雨性に優れ、効果が安定しています。懸垂性がよく、付着性の高い製剤です。
人畜毒性、魚毒性が低く、安心して使用できます。

・内容量:100g
・有効成分:塩基性塩化銅 75.6%(銅として45.0%)、カスガマイシン塩酸塩 5.7%(カスガマイシンとして5.0%)


▼農薬についてはこちらをご覧ください。

黒腐病発症後の効果的な3つの対策

黒腐病が発生してしまったら、すぐに行いたい効果的な対策を紹介します。

1. 感染株の除去

黒腐病の発生が確認された株は、ただちに取り去りましょう。除去したものはビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。

2. 栽培環境の見直し

黒腐病が発生しやすい栽培環境になっていないか、圃場の水分管理、肥培管理などをもう一度見直しましょう。

3. 周辺株に黒腐病が広がらないための農薬散布

黒腐病は発生し、蔓延すると防除が難しい病気のため、治療目的というよりも、黒腐病がこれ以上広がらないことを目的に、発症した株の周辺にたっぷりと薬剤を散布します。このとき使用するのは、上記の「黒腐病の防除に効果的な農薬」として紹介した薬剤をおすすめします。

黒腐病は栽培初期からの予防が重要

黒腐病は、栽培初期からの発生しないための環境作りが大切です。アブラナ科野菜は毎年種子更新し、無病の苗を植え付けます。
多湿で発生しやすい土壌からの病気なので、気温がやや低く、雨が長引く時期は注意が必要です。台風や豪雨で病気が一斉に広がるので、降雨前後の薬剤散布を徹底しましょう。

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農協、農業資材メーカーにて、営農相談業務を約10年間行っていました。 現場に寄り添った記事を心がけていきます。