べと病|防除方法とおすすめの使用薬剤(農薬)

きゅうりでは、葉脈で区切られた淡黄色の多角形の病斑が特徴的な「べと病」の感染しやすい時期や環境、その他たまねぎやぶどうなどに感染した「べと病」の発見ポイントや、感染しないための防除対策、おすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。


べと病、キュウリ

出典:Flickr(Photo by :JIRCAS Library)
べと病とは白~黒色のカビが発生する糸状菌(カビ)による病気です。キュウリなどのウリ類やタマネギ、ブドウなどに感染します。べと病の症状と発見のポイントを押さえて予防と早期発見、防除を心がけましょう。

べと病の発症原因

べと病菌、卵胞子
出典:Flickr(Photo by :Björn S…)「べと病菌卵胞子』
「葉にぼんやりとした黄色の斑点ができている」「病斑に白っぽいカビが生えている」などの症状が現れたときは、べと病を疑いましょう。
べと病は、糸状菌(カビ)が原因となる病気です。鞭毛(べんもう)菌類ツユカビ科(Peronosporaceae科)の数種のカビが、多くの植物のさまざまな部位に発生します。
絶対寄生菌で生きた植物の細胞でのみ生存できます。
名前  べと病
菌名  Pseudoperonospora属
Peronospora属 等
分類  糸状菌/鞭毛菌類

べと病は水分で感染する

べと病菌は鞭毛(べんもう)菌類の一種です。
土壌中の被害植物の細胞内で、卵胞子の状態で眠っていたものが「水分」で発芽し、放出された病原体が「雨水」や「水滴」により気孔や表皮から侵入し、感染に至ります(第一次伝染)。
その後、菌糸が細胞内にはびこり、新たな病斑(カビ)から分生子を放出し、次の伝染源となります(第二次伝染)。
(卵胞子を介せずに土中に生存していた菌糸や、風雨で飛ばされた分生子が第一次伝染源となる場合もあります。)

発生しやすい時期や栽培環境

春、梅雨、秋の気温が低い時期に発生が多くみられ、多湿な栽培環境で胞子を形成し伝染します。
▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

べと病に感染する主な植物

キュウリ、べと病
出典:写真AC
べと病菌は菌の種類によって感染する植物が異なります。
例えば、キュウリの菌はタマネギには感染しません。ホウレンソウの菌は、ホウレンソウのみ感染します。
それぞれの菌で、感染する主な植物とその症状を紹介します。

ウリ科(菌名:Pseudoperonospora cubensis

キュウリ、メロン、トウガン、カボチャなどに発生します。

◆キュウリ

露地では6~7月に発生が多く、施設では周年で発生します。
主に葉に発生しますが、下葉から発症することが多いです。初め淡黄色の境界が不鮮明な斑点を生じ、病斑は拡大して淡褐色になり、葉脈に囲まれた角張った病斑となります。
湿度が高いときには病斑の裏面に灰色~黒色のカビを生じます。

ネギ類(菌名:Peronospora destructor

タマネギ、ネギ、ワケギに発生します。

◆タマネギ

越年した罹病株に症状があらわれるのは2~3月で、温暖な年は早まります。気温が15℃前後で降雨が続くと多発します。特に排水が悪く、日陰で風通しの悪い圃場で発生しやすい傾向があります。
全身感染した株は、症状が激しいと枯死しますが、軽い症状だと生育が停止し、葉の表面に白いカビ(胞子)を生じ、葉は黄変して枯れます。
二次伝染した株は、葉や花梗に長楕円形の黄白色の大型病斑を生じ、多湿のときには表面に白~灰色のカビを生じ、しだいに暗緑色~暗紫色に変わります。

ホウレンソウ(菌名:Peronospora farinosa

ホウレンソウのみを犯す菌です。平均気温が10℃前後になる春、晩秋に発病しやすく、種子伝染するため、消毒済みの種子を使用します。
葉の表面に青白色~黄色のぼんやりとした斑点を生じ、その後拡大して淡黄色または淡紅色の不正形病斑となり、さらに葉の大部分が淡黄色となって、やがて枯死します。
病斑の裏面に灰色~ネズミ色のカビを生じます。開いた外葉に発生することが多いです。

ブドウ(菌名:Plasmopara viticola

6月ごろから発生が見られ、低温、連続降雨で多発します。生育初期~幼果期(5月ごろ)に降雨が多いと発病が多くなります。発病の適温は20~24℃で、盛夏期には発病しません。
葉や花穂、果実に発生します。葉では初め淡黄色のぼんやりとした斑点が現れ、斑点の裏面には白色のカビが生えます。
症状が進むと落葉し、果実の品質に影響します。幼果が侵されると硬くなり、肥大は止まってその上に白色のカビが現れます。
果実は鉛色となり、ミイラ化します。
▼ブドウの育て方ならこちらをご覧ください。

その他のべと病菌

その他にダイコン、カブ、キャベツ、ハクサイなどのアブラナ科類を侵す菌(Peronospora parasitica)、ダイズを侵す菌(Peronospora manshurica)、レタスを侵す菌(Bremia lactucae)等があり、それぞれ症状が異なります。


べと病に有効な予防方法

べと病に有効な予防は「農薬を使わず」に圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)と「農薬の使用」で行います。さまざまな方法を組み合わせて適切なべと病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

べと病を発症させない「農薬を使わない」管理方法

農薬を使わずに行うべと病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣(ざんさ)の処理

べと病は生きた植物上で生き残り越冬、越夏し感染源となります。前作の残りの植物体に生き残っている可能性もあるので、残渣はなるべく圃場外に持ち出して処理します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

2. 連作の防止

病気が発生した場合は連作を控えてください。また、タマネギやホウレンソウといったべと病が発生しやすい作物は、予防的に連作を控えましょう。

3. 施肥の見直し

窒素過多も病気発生の原因の一つなので元肥、追肥は適切に行いましょう。植え付け時に土壌分析を行い施肥量を確認することも効果的です。
▼土壌分析のことならこちらをご覧ください。

4. 水はけの良い圃場造り

土壌中の水分が過剰な状態では、べと病の胞子が発芽してしまいます。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。
▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

5. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。

6. 灌水(かんすい)方法の見直し

べと病は水の跳ね上がりで感染するので、頭上からの灌水は要注意です。株元灌水を心がけてください。また、ポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。
▼マルチについてはこちらをご覧ください。

べと病の予防に効果的な「農薬」

農薬散布
出典:写真AC
農薬を使用してより効果的にべと病を予防しましょう。特に降雨の前後は、集中的に散布することがおすすめです。耐性菌の発生を予防するためにも、薬剤を組み合わせてローテーションで散布することをおすすめします。また、使用する薬剤に作物の登録があるか必ずご確認ください。
※耐性菌とは、薬剤(農薬)に含まれる抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。
※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

◆ユニフォーム粒剤

前年病気が発生した圃場や、雨が多く気温が低そうな時期に植え付ける場合には、ユニフォーム粒剤の使用がおすすめです。優れた浸透移行性があり、作付け前に土壌混和で病害を抑えることができます。アミスター20の成分も含むためより効果が期待できます。
ITEM
ユニフォーム粒剤
土壌病害が発生すると作物の表面にやけ・しみ・あざなどを生じることがありますが、ユニフォーム粒剤は土壌病害を抑制することによって、そのような品質劣化を抑え、秀品率の向上に貢献します。
二つの有効成分は優れた浸透移行性を示し、粒剤の土壌処理によって病害を抑えることができます。
粒剤散布の場合、希釈する水の準備が必要ないだけでなく、茎葉散布と比較してドリフトの心配もありません。

・内容量:3kg
・有効成分:メタラキシルM(1.0%)アゾキシストロビン(2.0% )

◆ジマンダイセン水和剤

保護殺菌剤で植物体上に付着して主として胞子発芽を強く抑制する事により、病原菌の侵入を阻害し殺菌効果を発揮します。定期的に散布して(7~10日間隔がおすすめ)病原菌の発病を抑えましょう。
ITEM
ジマンダイセン水和剤
SH酵素など多作用点を阻害するので薬剤耐性が発達しにくく、他剤の耐性菌対策としても効果が期待できます。
多くの作物の病害対策にもっとも広く利用されている殺菌剤の一つで、国内では39作物の100種類を越える病害、またカンキツには害虫(チャノキイロアザミウマ、ミカンサビダニ)に使用できます。

・内容量:250g
・有効成分:マンゼブ(80.0% )

◆ダコニール1000

有効成分TPNは耐性菌が発生しにくく、幅広く病害に適応があり、同時防除にもおすすめです。
ITEM
STダコニール1000
草花、野菜、果樹などさまざまな植物で、カビ類(糸状菌)によって起こり、特にもち病や炭そ病、斑点病など葉が変色するタイプの広範囲の病気に効果がある優れた園芸用の総合殺菌剤です。
耐光性、耐雨性に優れ、病気から植物を守る残効性があります。また各種病原菌に対しても抵抗性が付きにくい、優れた効果の保護殺菌剤です。
計量が手軽に行えるフロアブルタイプで、散布後の葉の汚れも少ないです。

・内容量:30ml
・有効成分:テトラクロロインソフタロニトリル(40.0%)

べと病発見後の効果的な2つの対策

べと病を発見してしまった際にはどうすれば良いのか、その効果的な対策を紹介します。

1. べと病発症後の被害部分の「除去」

べと病の発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは胞子が飛ばないように、ビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。
また、発生が広がらないように圃場の環境を見直しましょう。古い葉が残っている場合は、さらなる伝染源となる可能性があるので、ただちに取り去りましょう。

2. べと病の治療に効果的な「農薬」

効果的な農薬を使用して、早期にべと病を治療しましょう。病気の発生が見られたら、短期間で数回散布することがおすすめです。
※使用回数は農薬登録を遵守してください。

◆アミスター20フロアブル

浸透移行性があり、治療効果の高い殺菌剤です。
ITEM
アミスター20フロアブル
シメジ(マツカサキノコ)の一種である食用きのこから発見された天然生理活性物質 (ストロビルリン類)に由来する殺菌剤で、作用性としては病原菌細胞におけるミトコンドリア内の電子伝達系に働き、呼吸を阻害します。
各種野菜、畑作物、茶のさまざまな病害に高い効果。同時防除にも最適です。
収穫前使用日数が短く、散布適期は幅広く、使い勝手に優れています。
作物の汚れが少なく、使いやすいフロアブル剤です。

・内容量:250ml
・有効成分:アゾキシストロビン(20.0%)

◆ランマンフロアブル

鞭毛菌類の病害に対して、高い治療効果があります。
ITEM
ランマンフロアブル
べと・疫病など藻菌類病害とアブラナ科作物の根こぶ病に対し、卓越した高い防除効果を示します。
実用濃度は50〜100ppm(2000〜1000倍希釈)です。これは、既存のべと・疫病剤に比較して最も低い処理濃度であり、農薬総使用量の低減に貢献します。
すぐれた残効性と耐雨性により安定した効果が期待できます。長い残効性により、作物・生育ステージによっては、10〜14日間隔の散布も可能で、農薬使用回数の低減につながります。

・内容量:100ml
・有効成分:シアゾファミド(9.4%)

▼農薬についてはこちらをご覧ください。

べと病対策に何より大事なのは育てる環境

べと病は多湿を好みますので、水はけの良い土壌を目指しましょう。
降雨が多く、気温が低い時期(春、秋)は圃場を注意して、べと病の兆候がないか観察してください。降雨前後は予防的に農薬を散布することもおすすめです。
感染した場合の連作は避け、植物体が圃場にそのままになっていたらすぐに取り去り、病原体の土壌蔓延を防ぎましょう。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。