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べと病|防除方法とおすすめの使用薬剤(農薬)


キュウリでは、葉脈で区切られた淡黄色の多角形の病斑が特徴的なべと病の感染しやすい時期や環境、そのほかタマネギやブドウなどに感染したべと病の発見ポイントや、感染しないための防除対策、おすすめの薬剤(農薬)など詳しく説明します。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。…続きを読む

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べと病におかされたキュウリの葉

出典:Flickr(Photo by :JIRCAS Library)
べと病とは黄色の斑点や白~黒色のカビが発生する糸状菌(カビ)による病気です。キュウリなどのウリ科作物やタマネギ、ブドウなどに感染します。べと病の症状と発見のポイントを押さえて予防と早期発見、防除を心がけましょう。

べと病の発症原因

べと病病原菌の卵胞子
出典:Flickr(Photo by :Björn S…)「べと病菌卵胞子』
べと病は糸状菌(カビ)が原因となる病気です。鞭毛(べんもう)菌類ツユカビ科(Peronosporaceae科)の数種のカビが、多くの植物のさまざまな部位に発生します。
また絶対寄生菌なので、生きた植物の細胞でのみ生存することができます。
名前 べと病
菌名 Pseudoperonospora属
Peronospora属 
など
分類 糸状菌/鞭毛菌類

べと病の症状

「葉にぼんやりとした黄色の斑点ができている」「病斑に白っぽいカビが生えている」などの症状が現れたときは、べと病を疑いましょう。

▼植物の病気の症状についてはこちらの記事もご覧ください

べと病の感染

べと病に感染した植物から感染が広がる様子について説明します。

一次伝染源

土壌中のべと病被害植物の細胞内で、卵胞子の状態で眠っていたものが「水分」で発芽し、放出された病原体が「雨水」や「水滴」により気孔や表皮から侵入して感染に至ります。
※卵胞子を介せずに土中に生存していた菌糸や、風雨で飛ばされた分生子が第一次伝染源となる場合もあります。

ニ次伝染源

その後、菌糸が細胞内にはびこり、新たな病斑(カビ)から分生子を放出し、次の伝染源となります。

べと病の発生時期と栽培環境

べと病が発生しやすい時期や環境について紹介します。

発生しやすい時期

春、梅雨、秋の気温が低い時期に発生が多くみられます。

発生しやすい栽培環境

多湿な栽培環境で胞子を形成し伝染していきます。

べと病に感染する主な植物の症状や発生時期

べと病におかされたキュウリの葉
出典:写真AC
べと病菌は菌の種類によって感染する植物が異なります。
例えば、キュウリの菌はタマネギには感染しません。ホウレンソウの菌は、ホウレンソウのみ感染します。
それぞれの菌で、感染する主な植物とその症状を紹介します。

ウリ科

【病原菌名】Pseudoperonospora cubensis

キュウリ、メロン、トウガン、カボチャなどに発生します。

▼カボチャの育て方ならこちらをご覧ください。

キュウリ

【発生時期】
露地では6~7月に発生が多く、施設では周年で発生します。

【症状】
主に葉に発生しますが、下葉から発症することが多いようです。はじめは淡黄色で境界が不鮮明な斑点が生じ、それが淡褐色の病斑に拡大して、やがて葉脈に囲まれた角張った病斑になります。湿度が高いときには、病斑の裏面に灰色~黒色のカビが生じます。

▼キュウリの育て方ならこちらをご覧ください。

ネギ類

【病原菌名】Peronospora destructor

タマネギ、ネギ、ワケギに発生します。特に排水が悪く、日陰で風通しの悪い圃場や、気温が15℃前後で降雨が続くと多発する傾向があります。

▼ネギの育て方ならこちらをご覧ください。

タマネギ

【発生時期】
越年した罹病株に症状があらわれるのは2~3月ごろですが、温暖な年は発生が早まります。

【症状】
葉の表面に白いカビ(胞子)が生じたり、葉が黄変したりします。軽い症状では生育が停止し、症状が激しくなると枯死してしまいます。
二次伝染した株は、葉や花梗(かこう)に長楕円形の黄白色の大型病斑を生じたり、多湿のときには表面に白~灰色のカビを生じたりして、次第に暗緑色~暗紫色に変わります。
※花梗とは花を支える柄の部分で、別名花柄(かへい)。

▼タマネギの育て方ならこちらをご覧ください。

ホウレンソウ

ホウレンソウのみを犯す病原菌で、種子伝染するため消毒済みの種子を使用します。

【病原菌名】
Peronospora farinosa

【発生時期】
平均気温が10℃前後になる春、晩秋に発病しやすい傾向があります。

【症状】
開いた外葉に発生することが多いようです。葉の表面に青白色~黄色のぼんやりとした斑点が生じると、その後拡大して淡黄色または淡紅色の不正形の病斑になります。さらに被害が進むと葉の大部分が淡黄色となって、やがて枯死します。病斑の裏面には灰色~ネズミ色のカビが生じます。

▼ホウレンソウの育て方ならこちらをご覧ください。

ブドウ

【病原菌名】
Plasmopara viticola

【発生時期】
6月ごろから発生が見られ、低温、連続降雨で多発します。生育初期~幼果期(5月ごろ)に降雨が多いと発病が多くなります。発病の適温は20~24℃で、盛夏期には発病しません。

【症状】
葉や花穂、果実に発生します。葉に淡黄色のぼんやりとした斑点が現れ、斑点の裏面には白色のカビが生えます。症状が進むと落葉し、果実の品質に影響を与えます。幼果が侵されると硬くなり、肥大は止まってその上に白色のカビが現れます。果実は鉛色となってミイラ化してしまいます。

▼ブドウの育て方ならこちらをご覧ください。

そのほかのべと病病原菌

そのほかの作物に発生するべと病もそれぞれ病原菌が異なります。

ダイコン、カブ、キャベツ、ハクサイなどのアブラナ科

【病原菌名】Peronospora parasitica

▼ダイコンやカブ、キャベツ、ハクサイの育て方ならこちらをご覧ください。

ダイズ

【病原菌名】Peronospora manshurica

レタス

【病原菌名】Bremia lactucae

▼レタスの育て方ならこちらをご覧ください。


べと病に有効な防除方法

圃場の管理で行う方法(耕種的防除方法)や農薬散布など、さまざまな方法を組み合わせて適切なべと病の予防を行いましょう。
※圃場(ほじょう)とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

べと病の防除方法

べと病の予防方法について説明します。

1. 前作の残渣(ざんさ)の処理

べと病は生きた植物上で生き残り越冬、越夏し感染源となります。前作の残りの植物体に生き残っている可能性もあるので、残渣はなるべく圃場外に持ち出して処理します。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

2. 連作の防止

病気が発生した場合は連作を控えてください。また、タマネギやホウレンソウといったべと病が発生しやすい作物は予防的に連作を控えましょう。

▼連作のことならこちらをご覧ください。

3. 施肥の見直し

窒素過多も病気発生の原因の一つなので元肥、追肥は適切に行いましょう。植え付け時に土壌分析を行い施肥量を確認することも効果的です。

4. 水はけの良い圃場造り

土壌中の水分が過剰な状態では、べと病の胞子が発芽してしまいます。圃場の湿度が上がらないように、水はけの良い土づくりを目指します。
畝を高くしたり、腐植土、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの土壌改良材を投入して、効果的な土質改善を行いましょう。

▼土壌改良のことならこちらをご覧ください。

5. 風通しを良くして、湿度を低く保つ

植え付け後は過繁茂に気を付けましょう。適度に風通しを良くすることで、植物の周りの空気を入れ替え、湿度を下げる効果があります。古い葉や傷んでいる葉は取り去ります。

6. 灌水方法の見直し

べと病は水の跳ね上がりで感染するので、頭上からの灌水(かんすい)は要注意です。株元灌水を心がけてください。また、ポリマルチで泥はねを予防することも効果的です。

▼マルチについてはこちらをご覧ください。

    7. 農薬

    農薬散布
    出典:写真AC
    農薬を使用してより効果的にべと病を予防しましょう。特に降雨の前後は、集中的に散布することがおすすめです。耐性菌の発生を予防するためにも、薬剤を組み合わせてローテーションで散布することをおすすめします。また、使用する薬剤に作物の登録があるか必ずご確認ください。
    ※耐性菌とは、薬剤(農薬)に含まれる抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。
    ※農薬は地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。

    ▼薬剤抵抗性やローテーション散布のことならこちらをご覧ください。

    ユニフォーム粒剤

    優れた浸透移行性があり、作付け前に土壌混和で病害を抑えることができます。

    内容量3kg
    有効成分メタラキシルM(1.0%)アゾキシストロビン(2.0% )
    FRACコード4


    ジマンダイセン水和剤

    保護殺菌剤で植物体上に付着して主として胞子発芽を強く抑制することにより、病原菌の侵入を阻害し殺菌効果を発揮します。

    内容量250g
    有効成分マンゼブ(80.0% )
    FRACコードM3


    STダコニール1000

    有効成分TPNは耐性菌が発生しにくく、幅広く病害に適応があり、同時防除にもおすすめです。

    内容量30ml
    有効成分テトラクロロインソフタロニトリル(40.0%)
    FRACコードM5


    Zボルドー

    作物を病原菌から保護してくれる薬剤です。 有機農産物栽培においても使用することができます。

    内容量500g
    有効成分塩基性硫酸銅(58.0%)
    FRACコードM1


    ▼農薬を安全に使用するためにまずはこちらをご覧ください。

    ▼希釈方法や散布後の処理方法などそのほかの農薬のことなら農薬まとめをご覧ください。

    べと病発見後の効果的な2つの対策

    べと病を発見してしまった際にはどうすれば良いのか、その効果的な対策を紹介します。

    1. べと病発症後の被害部分の「除去」

    べと病の発生が確認された場合は、ただちに取り去りましょう。除去したものは胞子が飛ばないように、ビニール袋に入れて圃場外に持ち去ります。
    また、発生が広がらないように圃場の環境を見直しましょう。古い葉が残っている場合は、さらなる伝染源となる可能性があるので、ただちに取り去りましょう。

    2. べと病の治療に効果的な農薬

    効果的な農薬を使用して、早期にべと病を治療しましょう。病気の発生が見られたら、短期間で数回散布することがおすすめです。
    ※使用回数は農薬登録を遵守してください。

    ダイナモ顆粒水和剤

    長期の「予防効果」と感染直後の「治病効果」を兼ね備えた薬剤で、病原菌の遊走子に作用し、感染後でも遊走子の形成を阻害して2次感染を阻止することができるため、病気の蔓延を抑えることができます。

    内容量250g
    有効成分アミスルブロム(17.0%)、シモキサニル(30.0%)
    FRACコードアミスルブロム(21)、シモキサニル(27)


    ▼病気対策に欠かせない農薬散布のタイミングや、選び方・使い方のことならこちらをご覧ください。

    べと病対策に何より大事なのは育てる環境

    べと病は多湿を好みますので、水はけの良い土壌を目指しましょう。
    降雨が多く、気温が低い時期(春、秋)は圃場を注意して、べと病の兆候がないか観察してください。降雨前後は予防的に農薬を散布することもおすすめです。
    感染した場合の連作は避け、植物体が圃場にそのままになっていたらすぐに取り去り、病原体の土壌蔓延を防ぎましょう。

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