ニンジン | 基本の育て方と本格的な栽培のコツ

農業に興味を持っている方や家庭菜園で本格的に野菜作りをしている方、そしてこれから始める初心者の方にもわかりやすいニンジンの育て方を紹介!ニンジン作りに欠かせない土づくりや病害虫、生育障害の原因、ニンジンの収穫適期の見分け方などを説明します。


ニンジン、栽培、収穫、育て方

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農業に興味を持っている方や家庭菜園で本格的に野菜作りをしている方、そしてこれから始める初心者の方にもわかりやすいニンジンの育て方を紹介します。ニンジン栽培に欠かせない土づくりや病害虫、生理障害の原因について、種まきの時期やコツ、水やり、追肥、収穫適期の見分け方など詳しく説明します。

ニンジンについて

ニンジン
出典:Pixabay
私たちがよく知っているオレンジ色のニンジンと違って、野生のニンジンは根が白くて硬いのが特徴です。オレンジ色のニンジンは、オランダで育成されたのが初めてで、日本には中国から江戸時代初期に伝わり、その後さまざまな品種のニンジン栽培が始まったといわれています。
日本で栽培されているニンジンの品種には、イラン、雲南、華北へと伝わり江戸時代初期に日本へ入ってきた「東洋系ニンジン」と、江戸時代後期に長崎に入ってきた「暖地型の西洋ニンジン」、明治以降にアメリカなどから北海道に伝わった「寒冷地型のニンジン」などがあります。
植物名  ニンジン
学名  Daucus carota
英名  Carrot
科名  セリ科
属名  ニンジン属
原産地  アフガニスタン
土壌pH  pH5.5〜6.5
生育適温  18〜20℃
発芽適温  15〜25℃前後

特徴

品種群によって差がありますが、概ね一致する特徴について紹介します。

ニンジンの種子寿命は短く、だいたい1〜2年位といわれています。発芽率も下がり、発芽も揃わなくなるので、経済的生産において、古い種子は使用しないほうが賢明です。

発芽

ニンジン、発芽
出典:Flickr(Photo by :sakura)
ニンジンは種子をまいてから発芽させるまでが一番難しいといわれています。ほかの作物と比べても、発芽までに要する日数が多く、発芽適温時でも8〜10日、寒い時期などは1カ月近くかかることもあります。

好光性種子
通常種子が発芽するためには「水」「温度」「酸素」が必要です。これに加えて、ニンジンは「光」が当たると発芽が促進される傾向があるので、覆土は薄くします。
覆土が薄いということは、水分を含むことができる土が少ないので、発芽まで乾燥には注意しなければならなりません。


ニンジン、花、とう立ち
出典:写真AC
ある程度生育が進んだニンジンは、低温によって花芽が分化され、気温の上昇と日が長く(長日条件)なったことを感知して、抽だいし花を咲かせます。

未熟な堆肥や肥料、石などの障害物で歪に肥大します。直根性なので移植に不向きな作物です。

根の肥大と温度の関係
生育適温の18〜20℃では根は順調に肥大しますが、低いと細長くなり、高過ぎると肩ばかりが張って短い尻細りのニンジンになります。
栽培する地域や作型から品種を選んだり、反対に品種から作型を選択することで収量・品質ともに納得のいくニンジンを収穫しましょう。


昔ながらの品種

品種改良が進みさまざまな特徴をもったことによって、春まきや夏まきなどニンジンの作型が増えましたが、もともと古くから日本で栽培されていた東洋系のニンジンは夏まきが主流でした。抽だいさせて種子を作り、種子寿命が短いので、種をとったその年の梅雨時期の水分を利用して種子をまく。品種の特徴と日本の四季を利用した伝統野菜の栽培が、日本食の文化とともに見直されています。

栽培時期

ニンジン 新規就農レッスン 栽培カレンダー
育てる地域や栽培する品種によってまきどきが異なります。種を購入するときに確認しましょう。
※主に露地栽培の栽培時期。野菜の栽培は、屋外の畑で作物を栽培する「露地栽培」のほかに、「トンネル」などをかけて栽培する方法があります。

栽培準備

ニンジンマルチがけ 栽培の計画を立て、圃場の準備を始めましょう。

収量

1a(100平方メートル)で333kgほど収穫することができます。
出典:作物統計調査 平成29年産野菜生産出荷統計
「都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量」(農林水産省)
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20170&month=0&tclass1=000001032286&tclass2=000001032933&tclass3=000001121095)(2019年10月2日に利用)

種の用意

地域の種苗会社やホームセンターから購入することができます。
主な極早生種品種 主要産地
 彩誉  千葉、徳島、青森、長崎など
 愛紅  千葉、徳島、長崎など
 向陽二号  北海道、青森、長崎など
▼家庭菜園で楽しみたいニンジンの品種のことならこちらをご覧ください。

1aあたりの使用種子量

1a(100平方メートル)あたり100mlほどです。

土づくり

排水性、通気性、保水性の整った団粒構造の土質は、微生物が多く住む作物にとって良い土壌です。作物を作る土壌の状態がよければ、石灰資材など多く投入する必要がない場合もあるので、栽培の前には必ず土壌診断をし、pH、ECなどを測定したうえで、診断結果に基づいた適切な堆肥資材等の散布を心がけましょう。

▼土壌消毒や土づくり、土壌診断のことならこちらをご覧ください。

土壌pH

pH5.5〜6.5位です。

適した土壌

ニンジン栽培は土づくりが大切です。完熟堆肥を使用し、深さ20〜35cm程度(品種にもよる)耕しましょう。
土壌が乾燥から湿った状態へと、反対に多湿から乾燥へと急激に変化することで、裂根になりやすい性質があります。排水性、保水性の高い土づくりを心がけましょう。

肥料

栽培するときに使用される全肥料は、目安として10平方メートルあたり窒素100〜150g、リン酸150〜200g、カリ100〜150g位。元肥には肥料全量の7割位を施します。
▼肥料のことならこちらをご覧ください。

畝立て

畝幅は品種によって異なりますが一条植えで畝幅40cm位、二条植えで60〜100cm位です。播種機を使う場合は、使用する機械の仕様に合わせた畝の向きや高さ、幅にしましょう。
▼マルチについてはこちらをご覧ください。

育て方

ニンジン、育て方
出典:Pixabay
畝や種の準備が整ったら栽培のスタートです。ニンジンは光を好むので日当たりの良い環境で育てましょう。

種まき

ニンジンの種子は薄くて小さいため、種まきを効率的に行う(機械使用など)ためにペレット加工されたものや、シーダーテープ種子といってひも状の溶ける素材の中に1粒ずつペレット加工種子が入ったものを播種する方法もあります。

▼ニンジンのペレット加工・シーダーテープ種子のことならこちらをご覧ください。

発芽温度

発芽適温は15〜25℃前後。最低で8℃、最高だと30℃以下でも発芽しますが、35℃を超えると難しいようです。

水分管理

発芽するまでの種子が乾燥すると発芽率が下がるので、適度な土壌水分を保つ必要があります。

株間

ニンジンの条間は20cm位、1cm間隔の条まきにします(播種機のサイズに合わせる)。

間引き

ニンジン、間引き
出典:Flickr(Photo by :minnemom)
本葉2〜3枚で2〜3cm間隔、本葉5〜6枚で6〜10cm間隔を目安に丈夫そうなものを残します。間引き終わったら、残す株元に土寄せをしましょう。
発芽をそろえることで、あらかじめ株間を広くして種をまく無間引きも可能です。

水やり

生育初期は乾燥状態にならないように管理し、後期はやや乾燥気味にします。

急激な水分変化はNG

生育後期の急激な土壌の水分変化は、ニンジンの裂根を招くので、保水性、排水性のバランスのとれた土壌管理に努めましょう。

▼土壌水分計のことならこちらをご覧ください。

追肥

追肥のタイミングは最終間引きの後、ニンジンを栽培するときに使用される全肥料の3割位を施します。
ニンジンは生育後期に多く肥料を与え過ぎてしまうと、裂根になりやすい傾向があるので施し過ぎには注意します。

土寄せ

ニンジン、青首
出典:Pixabay
風雨によってむき出しになったニンジンの肩に光が当たることで生じる「青首」を防ぐため、追肥のタイミングでニンジンの株元に土寄せ(ロータリーカルチなど)を行いましょう。

収穫

ニンジン収穫
気温が15℃以上ではニンジンの生育が進むため、収穫が遅れると裂根になりやすいので注意します。5〜10℃位の低温ではニンジンの生育が停止状態になるので、2〜3カ月ほど圃場で生育したままおいておき、順次収穫して出荷することができます。

収穫適期

品種にもよりますが、ニンジンの根茎が5cm位になったら収穫適期です。根元近くを持って途中で折らないように引き抜きます(ニンジンの抜き取り、出荷に不要な葉茎切りまでしてくれる収穫機もあります)。

収穫時の注意点

夏場の日中の収穫は、ニンジンに直射日光があたり変色することがあるので、できるだけ早朝に作業を済ませましょう。反対に気温の低い冬は、収穫後の凍害に注意しましょう。

出荷

ニンジンは葉も食べられますが、出荷・流通を考えると日持ちしないため、葉を切り落としてから貯蔵、出荷します。

貯蔵

収穫したニンジンは葉を切り落とし、温度0℃湿度90〜95%の低温(または雪中貯蔵)で長期貯蔵することができます。30〜50日間位貯蔵することで甘味も増していきます。
しかし、凍害をうけたニンジンは貯蔵しても腐ってしまうので取り除きましょう。

病害虫

ニンジン、キアゲハ
出典:Pixabay
栽培する上で、かかりやすい病気や気を付けたい害虫について紹介します。

▼病害虫対策に欠かせない農薬のまとめ

かかりやすい病気

ニンジンは通気性が悪い環境で育てると、うどんこ病などにかかりやすい傾向があります。

▼植物全体の病気のことならこちらをご覧ください。

▼台風後の病気を防ぐ対策についてはこちらをご覧ください。

苗立枯病

生育初期の幼苗期に発生しやすく、地ぎわの茎がくびれて枯死する糸状菌(カビ)による病気です。

菌核病

初期症状は、ニンジンの葉柄の付け根付近が黒褐色に変色し、続いて葉も腐敗します。最後にはニンジンも腐敗する糸状菌(カビ)による病気です。

うどんこ病

葉に白いうどん粉をまぶしたような白カビが発生する糸状菌(カビ)による病気です。

ニンジン黄化病

発病初期に矮性になり、次第に葉が黄化するアブラムシを媒介に発病するウィルス性の病気です。

根腐病

糸状菌(カビ)による病気で、ニンジンの根の表面に色が染みたような病斑が出ます。

食害する害虫

特にキアゲハの幼虫がニンジンを好んで食害します。

アブラムシ類

主に新芽や茎、蕾に発生し、植物の汁を吸う害虫です。アブラムシを媒介にして、モザイク病やすす病を引き起こすため、発生したら病気の発症に注意が必要です。

キアゲハ(幼虫)

セリ科の植物を好むチョウ目アゲハチョウ科の幼虫です。老齢幼虫は、緑色に黄色いドットが入った黒の横縞模様が特徴的です。

センチュウ類

ネコブセンチュウ類では、根にこぶが発生するため作物の生育を阻害します。ネグサレセンチュウ類では、根が腐れたり、又根が発生しやすいという被害を引き起こす害虫です。

ネキリムシ

幼苗の地ぎわの茎や葉柄を夜間に切り倒して食害する害虫で、チョウ目ヤガ科幼虫の総称です。

キンウワバ類

鱗翅目(りんしもく)ヤガ科の薄緑色の幼虫で、シャクトリムシのような動きをして、葉を食害します。

▼そのほかの病害虫対策のまとめ

生理障害

ニンジン、生理障害
出典:Pixabay
生理障害は主に根の部分に異常を引き起こします。

裂根

被害状況  ヒビ割れが生じる。
原因  周皮(篩部)と内部(木部)の肥大の不均衡により。

岐根

被害状況  先端部が分岐するなど歪な形になる。
原因  土塊やセンチュウ類、不完全な堆肥や化学肥料に触れる事で起こる。

青首

被害状況  肩の部分が緑色になる。
原因  土から見える部分に光が当たるため。
▼そのほかの生理障害のまとめ

栽培のまとめ

ニンジン、栽培
出典:Pixabay
家庭菜園でニンジンを栽培するときに、セリ科を食害するキアゲハの幼虫に葉を食べられてしまうことが多いため、アブラナ科やキク科の野菜と一緒に育てる混植栽培をおすすめします。このように相性の良い作物を一緒に育てることで良い影響を与え合う「コンパニオンプランツ」としても、セリ科の作物であるニンジンは優秀な野菜です。
大規模なニンジン栽培では、早生種の品種が多く作付けされています。全国的にも出荷量の多い北海道では、収穫できる状態まで生育したニンジンを雪の中で貯蔵し、春に出荷を行なったり、千葉県では加工・業務向けニンジン栽培の労働時間の短縮のため、株間を狭め、間引きをしない栽培を行うなど、各地で栽培方法の工夫が進んでいます。

▼家庭菜園でのニンジンの育て方ならこちらをご覧ください。

経営指標

ニンジン、栽培
出典:写真AC
新規就農者として野菜作りを本格的に始めるならば、農業経営の見通しが不可欠です。職業として生活を成り立たせ、なおかつ豊かなものにするために、しっかりとした農業経営の指標を持ちましょう。

需要動向を調べる

1人当たりの年間購入量は、安価で取引が行われた平成26年には1年間で2950g弱ほど。さまざまな料理の材料になるだけでなく、ジュースなどの加工品にも使用されるため年々消費は伸びています。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

卸価格を調べる

ニンジン
出典:Pixabay
栽培する季節や品種によっても価格の差が出ますが、平成30年度(h30.4.1〜h31.2.28)の調べで、卸価格は1kgあたり91~212円、平均で146円で取引されています。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

販売価格を調べる

卸価格同様に販売価格も天候などの影響で前後しますが、小売価格は平成30年度(h30.4.1〜h31.2.28)で1kgあたり標準品で308~471円、平均で389円で取引されています。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

10aあたりの経営収支

熊本県、茨城県の経営収支を例に挙げて簡単に説明します。
地域 収量(kg) 粗利(円) 経営費(円) 農業所得(円) 労働時間
 熊本(冬ニンジン/露地) 4,500 432,000 220,385 211,615 55
 熊本(春ニンジン/トンネル) 4,000 360,000 231,951 128,049 90
 茨城(初夏どり/トンネル) 5,000 840,000 370,000 470,000 98
出典:熊本県庁公益社団法人 茨城県農林振興公社

経営費

ニンジン栽培における経営費とは、ニンジンを生産するために使った経費のことです。具体的に挙げると、肥料、農薬、地代、土地改良費、雇用労働、農業機械(減価償却費)、利子などです。

農業所得

農業所得は粗利から経営費を引いた金額になるので、経営費を上手にやりくりすることで所得もアップするということがいえます。

労働時間

労働所得を労働時間で割ると、ニンジン栽培の時給計算ができます。
熊本(冬ニンジン/露地)の例でいうと、農業所得211,615円÷労働55時間=3,847.5円、時給3,848円、茨城(初夏どり/トンネル)の例でいうと、農業所得370,000円÷労働98時間=3,775.5円、時給3,776円として換算します。

経営の状態を大まかに捉える

ニンジンの経営収支から、どのくらいの規模で栽培すると収益はどのくらいあるのかなど、あらかじめ調べることで用意する苗の本数や、ニンジンのほかに育てる作物の種類を増やすなど、最初から計画をしっかり立てることが重要です。

▼農業の補助金や収入など就農の基礎知識

新規就農までの流れ

新規就農者への道は、各都道府県にある農業の支援機構などに相談してみることから始めます。相談から農地の準備までの7つのステップを踏みながら、その土地の一員として「自覚」と「信頼」を第一に考えて、地域に溶け込んでいきましょう。
 1. 相談  実際に相談窓口で相談(忙しい方にはメールでの対応もできます)。
 2. 情報収集  研修先や農業普及センター、農協、営農のプロのアドバイスや手助け先の獲得。
 3. 経営像  各都道府県の経営指標を参考にして、自身の農業計画を立てる。
 4. 就農計画  農地の確保、栽培作物の選定、農業技術の取得方法、資金などの具体的なプランを作り。
 5. 農業技術  栽培に適した作物、栽培方法などを身に付ける。
 6. 資金確保  自己資金、公的助成金・融資の確認。
 7. 農地の準備  そのほかの住居や農機具、農業施設等の準備。
参考:全国新規就農相談センター
▼新規就農のことならこちらもご覧ください。

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農業研究センターで6年間、大豆と稲の研究作物の栽培及び実験助手業務に従事。その後、屋上ガーデン・屋上菜園などの管理業務、エディブルフラワー事務局を経て、植物ライターに。植物・園芸サイトやフリーペーパーなどで活動。AGRI PICKでは新規就農者のための野菜の栽培方法や農業経営者の取材を執筆中。

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