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土壌消毒とは
土壌消毒は、自然の力や薬剤を使用して土壌中の病原体を減らすことで土壌をクリーンな状態に戻し、作物の生育をより良くする効果があります。
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病原体を減らす以外の土壌消毒メリット
病原体を抑制するほかに、土壌消毒によって次のような効果がもたらされます。雑草予防
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土がふかふかになる
土壌消毒(太陽熱消毒や土壌還元消毒)を行うことで土壌中の微生物を活性化させ、土壌の団粒構造が推進されるので、土をふかふかにする効果もあります。※団粒構造とは、小さい土の粒が集まり安定した大小の団子状の塊を作った状態で、保水性・排水性・通気性に優れた土壌のこと。
▼団粒構造など土をふかふかにすることならこちらもご覧ください。
3つの土壌消毒方法
1. 太陽熱消毒
一年のうち夏の暑い時期に太陽エネルギーによって地温を温め、熱によって病原体を死滅させます。
2. 土壌還元消毒
太陽熱消毒よりも高温を必要としないため、太陽熱消毒で温度が上がりにくい高冷地や露地でも行いやすい消毒です。
※フスマとは、小麦を製粉した際に残る外皮などの粉。
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3. 土壌消毒剤(薬剤)による消毒
クロルピクリンやD-D、バスアミドといった土壌消毒剤を使用した消毒方法です。病原体に対する消毒効果は一番高いといえます。畑の作物が全滅するような重大な病気が出た場合にはおすすめです。薬剤を使用するため、人体に対する負担も大きいので使用には注意が必要です。
※クロルピクリンやD-D、バスアミドの購入や使用方法は、JAや農業資材店にご相談ください。
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1. 太陽熱消毒の準備と手順
植物の生育を阻害する病原菌や害虫、センチュウ類などのほか、雑草の種子も抑制する効果があります。
太陽熱消毒の準備
太陽熱消毒の際に、使用するものや時期や期間について説明します。使用するもの
土壌の温度が最も上がりやすい「透明マルチ」を使用します。白マルチや黒マルチなどの有色マルチは、温度が十分に上がりきらないため太陽熱消毒には適していません。
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時期
7月中旬から8月下旬くらいまで。一年で最も暑い時期に行います。期間
20〜30日間太陽熱消毒の手順
夏の暑い時期にマルチを被せて太陽熱消毒を行うと、土壌が50℃以上になる事もあります。1. 施肥、畝立て
太陽熱消毒後、すぐに植物を植え付けられるように元肥を施し、畝立てをしておきます。水溶性の化学肥料はこの後の水やり工程で流亡してしまう可能性があるので、太陽消毒の際に使用する肥料は、有機質肥料を使用しましょう。また、消毒後に施肥や畝立てを行うと、病原体や雑草の種子が消毒した土に再び紛れ込む危険性があるので、必ず消毒前に行いましょう。
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2. 十分な水分
畝に水分を十分含ませます。畝の肩まで散水し、水分が隅々まで行き渡っているか確認しましょう。土をぎゅっとにぎりしめてゆっくり手を開いた時に、土の塊にひびが入る程度が目安です(最大容水量の60%以上)。
短時間で大量に散水するよりも、少なめの水量で時間をかけたり、同じ水量でも複数回に分けて散水する方が、土壌中の水分含量が高くなります。
散水設備が無い場所では、降雨が続いた後にマルチを被せることで水分を十分含ませましょう。
3. マルチを被せる
透明のポリマルチを畝にぴったりと表面に隙間が無いように被せます。マルチが風で飛ばないように、畝にかぶせたマルチの周りには土や土嚢(どのう)、トンボ(マルチ押さえ)などで押さえます。水分の蒸発と熱の逃げを防ぐために、可能であれば二重被覆するとより効果的です。このまま20〜30日間放置します。
4. マルチの除去
太陽熱消毒が終わる20〜30日以降は、種まきや植え付け直前に透明マルチを剥がしてから作業を行いましょう。▼マルチ回収機のことならこちらをご覧ください。
太陽熱消毒の効果を高める稲ワラと石灰窒素
「1. 施肥、畝立て」の段階で、稲ワラなどの有機物と石灰窒素を入れることで、太陽熱消毒の効果を高めることができます。1aあたり稲ワラ(モミガラ、イネ科青刈り植物でも可)200kgと、腐熟促進のために石灰窒素10kgをできるだけ深く混ぜ込んでから畝立てします。
石灰窒素は窒素肥料としてだけでなく、土壌のpHを酸性から中性に矯正し、除草効果およびセンチュウ類など病害虫を死滅させる効果もあるため、農薬登録もされています。
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太陽熱消毒で死滅しない病原体って?
太陽熱消毒によって抑制できる病原体と、死滅しない病原体について説明します。死滅するかしないかは地温や植物の根の深さ
植物病原菌の90%は40℃もあれば2〜4週間で死滅します。晴れた日で外気温が30℃の場合、土壌の深さ10cmのところでは50℃以上まで地温は上がりますが、20cmでは45℃前後、30cmでは40℃以下と下層に行くほど温度は上がりにくくなります。そのため土壌深くにいる病原体や根を深く張る植物(トマトなど)は、土壌深部に生存する病原菌の影響を受けるため効き目が薄くなります。
太陽熱消毒で死滅可能な主な病害虫
土壌表面近くにいるセンチュウ類や、害虫の卵や幼虫、蛹(さなぎ)、病原菌(苗立枯病、白絹病など)において、また浅い所に根を張る植物のホウレンソウなどの萎凋病には太陽熱消毒の効果は高い傾向にあります。死滅可能な病気 | 死滅可能な害虫 |
・ヨトウムシ類 ・ネキリムシ ・ハモグリバエ類 |
太陽熱消毒で死滅不十分な病気は薬剤消毒を
一方、青枯病菌や軟腐病菌などは、土壌の深さ30cm以上まで生存しているため、太陽熱の到達が不十分なため消毒の効果は低くなります。特にメロン黒点根腐病菌は熱に極めて強いため、太陽熱消毒では効果がありません。薬剤による消毒を検討しましょう。
太陽熱消毒の効果不十分な病気 |
青枯病、軟腐病、メロン黒点根腐病、トマトモザイク病 |
2. 土壌還元消毒の準備と手順
フスマや米ぬかといった土壌に混入された有機物をエサにして、土壌中にいる微生物が活発に働き増殖することで、土壌の酸素を消費して病原菌を窒息させ死滅させます。
温度は30℃以上まで上昇すれば良いので、高冷地や露地、東北、北海道地方でも試しやすい方法です。
ただし、土壌が酸素不足(還元状態)になるとドブのような匂いがするので、住宅密集地などでの使用は注意が必要です。
※湛水とは、水田のように水を張ってため続けること。
土壌還元消毒の準備
土壌還元消毒の際に、使用するものや時期や期間について説明します。使用するもの
太陽熱消毒と同じ、土壌の温度が最も上がりやすい「透明マルチ」とフスマや米ぬかなどの有機物を使用します。時期
6〜9月ごろ期間
20日間ほど土壌還元消毒の手順
気温が20℃以上で晴れが続く日に行いましょう。1. 有機物の投入
フスマ、または米ぬかを100kg/a混和します。根が生える土層全体に効果があるようになるべく深く耕転します。
2. 水やり
畝に水分を十分含ませます。水分が圃場(ほじょう)の隅々まで行き渡っているか確認しましょう。大雨が降った後、足を踏み入れると潜ってしまうくらいを目安にします。
※圃場とは、田や畑のような農作物を育てる場所のこと。
3. マルチを被せる
透明のポリマルチを畝にぴったりと表面に隙間が無いように被せます。マルチが風で飛ばないように、畝にかぶせたマルチの周りには土や土嚢(どのう)、トンボ(マルチ押さえ)などで押さえます。水分の蒸発と熱の逃げを防ぐために、可能であれば二重被覆するとより効果的です。このまま20〜30日間放置します。
4. マルチの除去、耕起
マルチを剥がしたあとは、よく耕して土壌中に酸素を入れます。土壌が酸素不足(還元状態)のままだと、根傷みなどの障害が出ることがあります。
5. 施肥、植え付け
フスマや米ぬかなどには窒素分が含れています(1aに25kg施用した場合、窒素分は2.5kg/a)。ただし、土壌還元の過程で分解されたり、水に溶けて流亡している窒素分もあるため土壌分析を行って土壌中の窒素分を確認してから施肥をしましょう。また、フスマや米ぬかには十分な有機物が含まれているため、改めて土壌改良のために堆肥を入れる必要はありません。
▼窒素分分析ならこちらをご覧ください
消毒できる範囲は有機物と耕起の深さで決まる!
土壌還元消毒は、畑を耕起して有機物を施した部分を消毒するので、それ以外の深く根を張る作物や深い場所にいる病原体には、効果が薄い消毒方法です。消毒の範囲を広げるには、トラクターで深耕し、その分施用する有機物の量を増やしましょう。
3. 土壌消毒剤による消毒の準備と手順
目的別土壌消毒剤
使用する薬剤によって、改善できることが異なります。目的に合った薬剤を選びましょう。また、土壌消毒剤を施用すると土壌中でガス化して広がります。ガスは人体にも影響があるため、使用には十分注意が必要です。
主な土壌消毒剤
土壌消毒剤 | 病気(病原菌) | センチュウ類 | 害虫 | 雑草 |
クロルピクリン | ○ | ○ | ○ | |
バスアミド微粒剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ガスタード微粒剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
D-D、テロン | ○ | ○ | ○ | |
ダブルストッパー | ○ | ○ |
※使用する際は、防毒マスク、保護メガネ、ゴム手袋など保護具を着用してください。
※ガス抜きは必ず行いましょう。
▼土壌消毒剤の注意点についてはこちらをご覧ください。
消毒をした後には、土に良い菌を入れてあげる
リセットされた土壌消毒後の土に、良い菌を増やす資材を土壌に入れてあげましょう。土づくりの味方、放線菌を増やして、病原菌を撲滅!
土壌には、もともと放線菌という菌が生息しています。放線菌は土壌をふかふかにする効果があり、この菌を増やすことによって水はけの良い病原菌の住みにくい環境にすることができます。また、放線菌はキチン質をエサとするため、病原菌が増殖する前にキチン質の資材を入れて放線菌を増やすことで病気の予防になります。
カニ殻で放線菌を増やす
カニ殻のキチン質が、放線菌のエサとなり、放線菌が増殖します。カニ殻は、ホームセンターなどでも販売されています。肥料と一緒に土壌に混ぜて、放線菌を増やしましょう。漢方かすの肥料、ツムランド
漢方を作るときにできる残渣(ざんさ)を発酵させた堆肥です。微生物を多く含んでおり、特に放線菌が多いため、病気の予防に効果があります。また、微生物が土壌の団粒化を促進して土壌環境を改善するため、根張りが良くなる効果もあります。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。