今回は武井さんがなぜレストランのシェフに信頼され続け、レストラン卸で成功しているのか、その秘訣を紹介します。
レストランのオーナーシェフに聞いてみた!
タケイファームの主な出荷先はレストラン。しかも、その割合は出荷する野菜の実に95%!その数字を聞いただけで驚いてしまいます。どうしてそこまでレストランに特化して野菜を卸すことができたのか?レストランオープン当初からタケイファームの野菜を使い続けるレストランのシェフに会いに行ってきました。
▼タケイファームのことならこちらの記事をご覧ください。
シェフがタケイファームの野菜を選び続ける5つの理由
今回お話を伺ったのは、野菜をふんだんに使ったメニューが人気のイタリアンのオーナーシェフ。武井さんの作る野菜と出会ったのは、オーナーシェフが以前勤めていたレストランでした。武井さんの野菜を実際に調理して味を熟知していたことから、自分がお店をオープンするときはタケイファームの野菜を使いたいと思っていたそうです。
オーナーシェフがタケイファームの野菜をなぜ選び続けるのか?5つの理由を挙げてくれました。
1. 感動するおいしさ
「武井さんの野菜を食べて本当においしいと感じました。もちろんタケイファームも見学させてもらいましたが、そこで育てられている野菜はみずみずしく、味もしっかりしていて感動しました。」
毎日食材と向き合うシェフを感動させる野菜。最高においしい野菜を提供し続けている、武井さんならではの出荷発送のルールに秘訣があるようです。詳しくは後ほど。
2. 鮮度が長持ちする野菜
「一番状態の良いものを送ってくれるので鮮度抜群。しかも野菜の良い状態が長持ちするのがすばらしい。武井さんの野菜は本当にきれいなんです。」
タケイファームでは、収穫後その日のうちに出荷するスタイルなので抜群の鮮度はシェフのお墨付きです。
3. ここでしか味わえない規格外の野菜
「スーパーで取り扱いのない珍しい野菜や、一般的な野菜でも食べたことのない部位がタケイファームから送られてくるので、レストランに訪れるお客さまには新しい野菜との出会いに喜んでいただいています。」
シェフは、タケイファームから送られてくる野菜に応じたメニューを考えることが多いとのこと。
例えば、オクラは蕾(つぼみ)やとても小さなサイズの状態で、ネギもスーパーで取り扱いがなく一般的には食べられていないネギ坊主を、一番おいしいタイミングで出荷するので、レストランに訪れるお客さまにここでしか味わえないという付加価値を与える素材を提供しています。
4. メニューを見据えた野菜サイズ
「お皿に盛り付けるときに、ちょうどいい大きさなんですよ。」
レストランでは一皿に盛り付けられる野菜として最適な大きさが求められ、そしてその大きさは均一でなければなりません。こまやかな出荷基準は、レストランを食べ歩く武井さんならではの基準かもしれませんね。
5. レストランの付加価値を上げるタケイファームの情報発信力
「素晴らしいファームで育てられた良い野菜を使うということは、レストランの信頼にもつながっているんです。」
野菜を売りにしているレストランにおいて、直送してもらうタケイファームの品質や情報も付加価値となっているようです。
タケイファームがレストラン卸で成功し続ける秘訣
出荷する野菜の95%をレストランに卸す武井さんですが、実は一切営業は行っていません。タケイファームがどうやって営業せずにレストラン卸のスペシャリストになったのかは、また別の機会に紹介しますね。さて、シェフにタケイファームの野菜を使い続けたいと思わせる武井さんは、レストラン卸でどんなことを心がけているのでしょうか!?
主導権は生産者!4つの出荷発送ルール
レスランと契約している場合、今収穫できる野菜をリストにしてシェフに選んでもらうのが通常の卸のスタイルですが、タケイファームでは独自のルールがあります。一番の特徴は、主導権がレストランではなく、生産者側にあること。例えば、リストに書かれた野菜をレストランが必要としなければその日の出荷発送は無くなり、それが取引先全てに起きた場合、収入は0円になってしまう。このリスクを回避するために考えられた「タケイファームの出荷発送の4つのルール」を紹介します。
1. 出荷発送は週に1回
1人でできる作業範囲と野菜の鮮度を保つ期間の両方を鑑みて、レストランへの出荷発送は基本的に週に1回にしています。2. あらかじめ値段を設定
その週によって値段が上下してしまうと収入も安定しません。あらかじめ出荷1回あたりの最低金額を決め、出荷する回数が決まっていれば、自身の収入の見通しも立つので、安定した農業経営を行うことができます。3. 野菜の種類や量はおまかせ
送る野菜の種類や量はタケイファーム側のおまかせです。「サヤインゲン1本」など1つずつに値段を設定して出荷しています。例えば、ほうれん草を500g、サヤインゲンを1kgなど重さを出荷の単位としてしまうと、多めに収穫して野菜を無駄にしてしまったり、少ないと不足した野菜を再度収穫することで時間のロスにつながり、結果作業効率が落ちてしまいます。
送る野菜の種類や量はおまかせにすることで、無駄な作業や収穫ロスを無くすだけでなく、出荷する野菜のクオリティを保つことにもつながっています。
4. 雨の日は出荷しない
露地栽培のため、雨などの悪天候時は、野菜の状態もわかりにくく、クオリティを下げてしまう恐れがあります。さらに必要以上の量を収穫するなど作業効率も下がってしまいます。
プロとして納期を守ることも大切ですが、野菜のクオリティを守ることも大切です。
武井さんは後者を選択し、雨の日は出荷発送しないということをシェフにご理解いただいているそうです。
まさに生産者主導のスタイルですね。
「雨の日は、やっている本人のテンションも下がりますからね」と笑いながら話す武井さんが印象的でした。
「主導権は生産者」本当の意味はクオリティ!
送る野菜の種類や量はタケイファームにまかせてもらうため、レストランから個数指定は受けません。その理由には、主導権を握るということ以外にも武井さんならではの野菜のクオリティを保つ信念があります。味の基準
収穫した野菜は、必ず食べてみて納得できる味かを確認し、野菜の採りどきを見極めます。タケイファームでは、単純においしい野菜ではなく、「むちゃくちゃおいしい野菜」をレストランに卸しているという自負があります。レストラン側から個数を指定されてしまうことで納期に意識が集中すると、「むちゃくちゃおいしい野菜」の中に、ただの「おいしい野菜」も入れなくてはなりません。
食のプロであるレストランのシェフの信頼を維持し続けるために欠かせないクオリティの信念です。
サイズの基準
納品された野菜の規格に差ができると、シェフの繊細な料理の火の入れ方にまで影響が及ぶものです。アスパラガスを例にとって説明すると、収穫したものを1本ずつ品質や大きさ、太さをチェックして、ハケで小さな虫を取り除き、野菜のサイズごとに振り分けていきますが、さらにアスパラガスの先端部分もチェックしています。
タケイファームでは、アスパラガスの先端部分の隙間が空いているものと、詰まっているものの差まで注意してサイズ感を整えているのです。
この繊細な野菜のサイズをそろえることの重要さに気付いたのは、武井さんが普段レストランを食べ歩いているからです。タケイファームが野菜を卸す先はレストランなので、どんな先端のアスパラガスを使うことで美しい一皿になるのかを意識するために、武井さんはレストランで出される野菜について日々調査し、気付くことができるようにしています。
魅せる野菜の演出
キャリアの浅い農家が、野菜の品質をすぐに信頼してもらうことは難しいかもしれません。でも、おいしそうに魅せることはできます。育てた野菜を食べてもらう工夫が、新規就農時には不可欠です。武井さんに野菜を美しく見せるコツを教えてもらいました。野菜の袋
タケイファームの袋の種類はFG袋(フレッシュアンドグリーン)。少し厚めのNo.25(厚み25μ)を使用しているので、野菜の高級感が増します。このFG袋は、野菜の呼吸や水分、湿気によって生じる袋内の結露をある程度防止してくれる「防曇袋(ボードン袋)」です。湿度に影響されることなく、水分がこもらないようにするために穴あき(サイズによって穴の開く位置が違う)タイプを選び、さまざまな野菜の大きさに合わせるため全てのサイズを常備しています。
野菜の入れ方
野菜をFG袋に入れる際、クッキングシートを使います。クッキングシートを出荷する野菜に合わせてカットし(葉付きのニンジンや大根にも対応可)軽く包み袋に入れ、最後にクッキングシートだけを取り出します。こうすることで入れやすさが格段に上がるので、当然作業効率も上がります(クッキングシートはぬれても、乾かして数回使用可能)。
実際に筆者もクッキングシートを使って、野菜の袋入れに挑戦してみましたがストンと入れやすい!
反対にクッキングシートを使わない袋には、野菜の汁がついてしまい、くたびれた野菜という印象を受けます。同じ野菜なのに、ちょっとしたひと手間で、野菜の見栄えがこんなにも違うということを実感しました。
袋は黒で引き締める
袋をとめるテープは、さらに高級感が増すので黒がおすすめとのこと。テープをとめる位置は、キャラメル包装のように長めに。短いと見た目が悪いので、袋は大きく使うのがポイントです。野菜を少しでも高く売るためには欠かせないひと手間です。
レストラン卸は難しいことじゃない
野菜をレストランに卸すということは、とてもハードルが高く感じるかもしれませんが、武井さんは新規就農者でもレストラン卸はできると明言します。なぜなら、新規就農者だろうが経験が何年であろうが、レストランを見据えた生産出荷を行えば、必ずシェフに信頼され、対等な関係が築けるはずだからです。
もちろんレストラン卸だけがすべてではありません。それぞれが目指す農業には、さまざまな可能性が必ず秘められています。
漠然と野菜を育てることに集中する前に、目指す農業のカタチを見据え、その目的のためにどんな行動を選び、作業の無駄を排除するのか。前進し続ける武井さんの農業のカタチについて、引き続き紹介していきます!
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