目次
後継ぎも婿もいない農家が知っておきたい、第三者農業経営継承
第三者農業経営継承とは、後継者がいない農家が、農地や施設とともに経営を家族以外の第三者に受け渡し、経営を継承する手法のことです。家族以外に農家の後継ぎを募集するメリット
第三者農業経営継承では、家族以外の第三者に農地、施設、機械などの有形資産と、農業技術・ノウハウなどの無形資産を受け渡します。家族に農業の後継ぎがいない農家が第三者に経営を受け渡すことで、地域の農業を守ることに貢献できるだけでなく、自分が築いた大切な資産を次世代に残せます。代々受け継いできた農地を耕作放棄地にしたくない、自分が作り上げた畑や土を守りたい農家にとっても大きなメリットがある手法です。
第三者農業経営継承は農業研修を経て計画的に行うため、経営を引き継ぐ人とのミスマッチを防げるのもポイントです。
第三者農業経営継承で未経験から新規就農した事例はこちら。
農家の後継ぎ問題を解消する第三者農業経営継承の手続き・手順
このようなメリットを持つ第三者農業経営継承は、次の手順を経て完了します。1. まずは各地にある農業公社に申し込み
経営を第三者に継承したい農家は、まず全国各地にある農業公社にその旨を申し込みます。申し込みの際は農業公社の担当者と事前に面談を行い、要件や手続き内容を確認します。2. 顔合わせ・事前体験
事業を継承したい人が見つかったら、本人との顔合わせの後、農業の事前体験を短期間実施。この際に、お互いの適性や相性を見極めます。3. 経営継承計画書・資産評価の作成
第三者農業経営継承では、計画的に経営継承を行うため、事前に経営継承計画書と資産評価の作成が必要になります。現在の資産(有形・無形ともに)、売上高、経常利益などを細かく記入して計画書を作り、経営と継承方向をあらためて確認してください。経営継承では
1. 完全に経営を受け渡す
2. 共同で経営する
3. 継承と同時に法人を設立して、共同で経営を行う
など、さまざまな方法があります。
4. マッチング・覚書の作成
事前体験で適性・相性ともに問題がなく、経営継承に合意できた場合、マッチング完了として契約書を作成します。5. 本格的な農業研修を実施
継承する人の農業経験や知識をふまえて、半年~数年の農業研修を実施します。農業の技術指導と合わせて経営に関する指導も行い、地域の農業関係者や取引先に継承者を紹介しましょう。この間、継承者はJAや普及センター、市町村などの支援を受けながら、農業と経営について学び継承の準備を行います。第三者農業経営継承でも、年間最大で120万円の助成金が受け取れる「農の雇用事業」にあてはまるケースがあります。市町村の農政課などに、事前に確認しておきましょう。
6. 契約締結
継承者が経営に必要なことをすべて学んだら、経営継承合意書をもって契約を締結し、各種資産を引き継ぐ手続きを行います。資産のすべてを受け渡すには、さまざまな手続きが必要になります。JAや担い手育成センターと相談しながら、継承者と協力し各種手続きを進めましょう。7. 継承後について
経営を移譲した農家は、引退するか継承者に再雇用されます。必要に応じて、継承者の技術指導を行いましょう。第三者農業経営継承のリスク
第三者農業経営継承には、いくつかのリスクが存在しています。移譲者と継承者のそりが合わずに農業研修が中止になってしまったり、資産を譲渡する際の価額を巡って対立してしまったりすることもあります。また、継承者の研修期間中は、これまでの仕事に加えて継承者にノウハウを伝えるための手間がかかる点も忘れてはいけません。
経営を完全に移譲する前に問題が起こった、起こりそうなときには、JAや担い手育成センターなどの関係機関に協力を求めましょう。
第三者農業経営継承ができる農家・できない農家はある?
第三者農業経営継承で経営を誰かに引き継いでもらいたいと考えていても、この制度を活用できない農家もあります。経営継承について家族や周囲の同意が得られない
家族や関係者から、農業を第三者に受け渡すことに対して同意が得られない場合は第三者農業経営継承を行えません。第三者農業経営継承は、配偶者や子どもから同意を得ることが、農業公社への登録の要件です。その他
経営を第三者に移譲するためには、「専業で生計が立てられる経営規模」であることや「今後5年以内に経営を中止する意向で後継者がいない」など、いくつかの要件を満たしている必要があります。第三者農業経営継承の要件を満たしているかわからない場合は、各地の農業公社に問い合わせ確認してみましょう。
家族じゃなくても経営は引き継げる!農業公社に相談してみよう
第三者農業経営継承は、自分が大切にしてきた農地や技術、ノウハウを新規就農したい次世代に引き継げる制度です。これまで農業は親から子に受け継がれるのが一般的でしたが、後継者がおらず悩んでいる農業者は、第三者農業経営継承で外部から後継ぎを受け入れることを視野に入れてみてはいかがでしょうか。