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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
なんとなくやっている、インターネットや本で調べたけれど実際に菜園の土がどれくらい水を含んでいるかよくわからない、経験と勘でやっているけど天候がいつもと違うとお手上げ…そんな人も多いはず。
土壌水分計とは土中の水分を計る機械。農業、園芸、家庭菜園のマストアイテムです。センサーで水分量を測ってくれるから、経験がなくても大丈夫。野菜の成長に重要な水分量を測り、必要な分だけ足してあげることで、野菜の健康状態が良好に保たれ、元気な野菜の収穫につながります。
水分計とは?
水分計はさまざまな用途で用いられています。 食品分野では、米、牧草などの食品・農作物・加工品の品質を確かめるために使われています。 また、建築分野では、木材・コンクリートの状態を確かめるために。 そして、農業・園芸分野では、土壌の水分量を計り適切な水やりをするために使われています。農作業・園芸・ガーデニングで活躍する土壌水分計、食品の品質管理で活躍する水分計 についておすすめ・原理・使い方を紹介します。
土壌水分計の原理
土壌水分計は主に3つのタイプがあり、それぞれ原理が違います。その主なタイプは、テンシオメーター法、TDR法、ADR法という方法です。それぞれについて簡単に紹介します。テンシオメーター法
ポーラスカップと呼ばれる素焼きのカップを土の中に埋めて測る方法です。カップの中に水が入っていて、その水がどれだけ外に滲み出る力(外から吸引される力が)が強いかを圧力センサーで測ります。土が乾燥していると水が外の土から吸引される力が強く、湿っていると吸引力は弱くなります。定期的に水の補給が必要になります。TDR法
TDR法では、金属棒の先に取り付けたセンサーを地中に埋めて測ります。土の誘電率は土に含まれる水分の量にほぼ比例することを利用して、誘電率をもとに土壌水分を計測する方法です。電磁波が電極棒を往復する時間から誘電率を求めます。TDR法は温度の影響を受けやすいと言われています。ADR法
ADR法も、誘電率から水分の量を測る方法で、TDR法と同じように金属棒の先に取り付けたセンサーを地中に埋めて測ります。誘電率を測る方法が少し違い、温度の影響を受けにくいと言われています。カールフィッシャー法って?
コーヒー、チョコ、香辛料などの水分量を計る際、JAS(日本農林規格)・ISO(国際標準化機構)・Codex(国際食品規格)などではカールフィッシャー法の水分計が良く用いられます。最も信頼性が高いといわれるカールフィッシャー法。原理はどのようなものなのでしょうか?実は、ヨウ素が使われています。学校で実験に使ったり、傷薬に利用されていたりと意外に身近なヨウ素。水と選択的・定量的にに反応するという性質があります。カールフィッシャー法では、カールフィッシャー試薬と呼ばれるヨウ素と二酸化硫黄、塩基、アルコール等を混ぜた試薬を使い、この試薬がどれくらいの量反応したかによって水分量を求めます。電量滴定法と容量滴定法と言われる方法があり、電気または滴定によってどれくらいの量が反応したかを測定します。
土壌水分計の選び方
さまざまなモデルがある土壌水分計。どれを選んだら良いのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。土壌水分計選びは、いくつかのポイントをおさえて比較するのがおすすめです。土壌水分計の選び方で大切となる4つのポイントを紹介します。アナログかデジタルか
土壌水分計には、計測した水分量がデジタルで表示されるものとアナログで表示されるものがあります。デジタルタイプは水分量がディスプレイ上に数値で表示され、水分量を客観的に把握する向いています。アナログタイプはメーター上の針の位置で水分量を読み取るので、水分量を直感的に把握するのに向いています。誘電率測定法かテンシオメータ法か
測定方法もポイントです。測定方法は大きく「誘電率測定法(TDR法やADR法)」と「テンシオメータ法」の2通りにわけられます。使用目的にも違いがあり、シンプルに土壌の水分量を知りたい場合には、誘電率測定法の水分計がおすすめです。水やりのタイミングを知りたい場合にはテンシオメータ法の水分計を使用するのが良いでしょう。付加機能(温度・酸度・照度計)の有無を確認
付加機能にも注目しましょう。土壌水分計には、水分量の計測に加えて付加機能をもつものもあります。具体的な付加機能としては、温度や酸度、照度計測などがあり、植物の生育に重要となる要素を把握して生育環境を管理するのに役立ちます。計測する早さもチェック
忘れがちなのが計測する早さです。たとえば誘電率測定法の土壌水分計の場合数分程度で計測結果が出ますが、テンシオメータ法の土壌水分計ではポーラスカップを使う仕様上1時間程度かそれ以上の時間を要します。測定方法によって要する時間にかなりの差があるので、あらかじめ計測する早さもチェックしておきましょう。おすすめの土壌水分計8選
土壌水分計の選び方についてポイントを紹介しましたが、実際に購入するとなるとどれを選んだらよいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。おすすめの土壌水分計を8選でご紹介しますので、土壌水分計選びにぜひご参考ください。1. 色でお知らせお手軽&お手頃水分計
電池を使わず、土に挿しておくだけで使えます。水が足りていれば青色、水が不足していれば白色に小窓のラベルが変化し、適切な水やりのタイミングを色の変化で教えてくれます。直感的で初心者にもわかりやすい手軽さと、手頃な価格が魅力です。中のラベルは6~9カ月で劣化するため交換が必要で、リフィルも販売されています。水やり水分計「サスティー」sustee Mサイズ
サイズ | 10×8×180mm |
---|---|
カラー | ホワイト、ブラウン、グリーン、ピンク |
計測対象 | 水分量 |
計測時間 | 約30分 |
2. 数値で測れる、電池不要の土壌水分計
計測するのは土壌の水分量のみで、電池も使いません。付加機能をもたないシンプルな土壌水分計で、使い方も簡単。アナログ式のパネルに水分量が1~10の目盛りで表示されており、針が動いて水分量を示すタイプです。目盛りはDRY~WETまで3色で色分けもされており、直感的に水分量を把握することができます。3.土壌酸度も測定できる付加機能モデル
サーモ901に土壌酸度計測の付加機能をもたせたモデルで、土壌水分量と土壌酸度の2つを計測することが可能です。測定項目は本体下部のスイッチをスライドして切り替えます。アナログ式で電池は不要。土壌に挿しておくだけで使えるタイプです。土壌水分量は1~10の目盛りで表示されており、DRY・MOIST・WETで3色に色分けされています。4. pF値測定。農家も使う本格派
真空計を使用したpFメータータイプの土壌水分計です。pF値(水分張力)をもとにして、それぞれの作物に適した水やりを行うことができます。農家も使う本格的なモデルで、表示部は脱着可、棒部は5cm間隔の目盛り付き、水除け・殺虫剤除けカバーが付属するなどプロのニーズに対応。表示はアナログ式で水分の適正範囲が色分けして示されています。5. 水分量・pH・照度が一度に測れる
3 in 1の土壌測定器で、土壌水分量のほか、土壌pH、照度を測定できます。多彩な機能をもちますが、電池は不要でランニングコストがかかりません。本体下部にあるスライドスイッチで測定する項目を切り替えるこができます。表示はアナログ式、水分量は1~10の色分けされた目盛りで示されます。価格もリーズナブルで、コストパフォーマンスにすぐれたモデルです。6. 4つが測れる多機能、デジタルで正確
土壌水分量、酸度、照度、地温を測定できるデジタルタイプの測定器です。多機能で、植物の生育環境全体を把握するのに役立ちます。背面スイッチを操作することで測定項目を切り替えでき、土壌水分はDRY+~WET+の5段階で表示されます。電源として9V乾電池を1つ使用し、連続12時間の使用が可能です。7. 土壌塩分濃度も計測可能な高付加機能モデル
デジタル土壌酸度計Aにさらに塩分濃度計測機能をもたせたモデルです。土壌水分量、酸度、照度、地温、塩分濃度を計測できます。本体正面のモードスイッチで測定項目を切り替えでき、塩分濃度はDANGERとNORの2段階で表示、土壌水分はDRY+~WET+の5段階で表示されます。電源として単4アルカリ乾電池が3本必要です。8. 小型の高精度デジタルタイプ
小型で高精度の土壌水分計です。計測時間も非常に短く、0.8秒で測定結果が表示されます。データホールド機能、Max値・Min値の表示機能など、データ管理に役立つ機能性に優れているのも特徴です。電源として単4電池を4本使用。コンパクトで持ち運びにも邪魔にならず、IP-65防水対応型で汚れた場合などに丸洗いできるのもポイント。おすすめの土壌水分計を比較!
おすすめの土壌水分計8選をご紹介しましたが、計測方式や付加機能などそれぞれさまざまです。紹介したモデルについて、土壌水分計選びのポイントに注目して表にまとめましたので、こちらも参考にしてみてください。アナログ ・デジタル | 測定方式 | 測定時間 | 電池 | 付加機能 | |
サスティー | アナログ | 毛管現象を利用 | 約30分 | 不要 | なし |
サーモ901 | アナログ | 誘電率測定法 | - | 不要 | なし |
サーモ902 | アナログ | 誘電率測定法 | - | 不要 | ・酸度 |
pFメーター DM-8 | アナログ | テンシオメータ法 | 1時間以上 | 不要 | なし |
3 in 1 土壌測定器 | アナログ | 誘電率測定法 | - | 不要 | ・酸度 |
デジタル土壌酸度計A | デジタル | 誘電率測定法 | 1分以上 | 9V乾電池×1 | ・酸度 |
デジタル土壌酸度計A-2 | デジタル | 誘電率測定法 | 1分以上 | 単4アルカリ乾電池×3 | ・酸度 ・照度 ・温度 ・塩分濃度 |
ペン型土壌水分計 PMS-714 | デジタル | 導電率測定 | 0.8秒 | 単4乾電池×4 | なし |
土壌水分計の使い方
基本的な土壌水分計の使い方を紹介します。基本的な使い方
1. 測定前の準備をします。土壌水分計によっては事前に水の中に入れたり、内部に水を入れたりする必要があるものがあるので、各土壌水分計に合わせた準備をします(必要ないものもあります)。2. 測定位置に設置します。根の近くの位置に、センサー部分(先端にあることが多いです)が植物の根の深さになるように刺します。刺す前にどこまで刺せば良いか目安をつけておくといいでしょう。
3. 測定できるようになるまで待ちます。各水分量計によって、測定できるまでの時間が違うので、自分の水分量計の必要時間を確かめましょう。30分〜1時間程度のものが多いです。
4. 数値を読み取ります。各土壌水分計によって、色で表すもの、独自の数字で表すもの、pF値という数値で表すものがあります。植物の種類によって好む水分量が違います。植物にあった水分量になるように水やりを調整しましょう。
植物にあった水分量(pF値)の表
pF値は水分張力といい、土の水分の状態を表す数値です。低いほど水を含んでいて植物が根から水を吸い上げやすく、高いほど乾燥していて水を吸い上げにくいです。畑の場合、普通pF値は1.5~2.7で、これより低いと水分が多過ぎ、これ以上では乾き過ぎです。植物がストレスを感じないのは一般にpF1.7~2.3といわれています。ただ、植物の種類や生育段階によっても水分量(pF値)は変わります。以下の表を参考にしてみてください。作物名 | 前期 | 中期 | 後期 |
トマト | 2.5 | 1.8-2.5 | |
キュウリ | 2.5 | 1.7-2.3 | |
ピーマン | 1.5-2.0 | ||
ナス | 1.5-2.0 | ||
ホウレンソウ | 2.3 | 2.3 | |
アスパラガス | 1.8-2.2 | ||
イチゴ | 1.5-2.0 | ||
キャベツ | 2 | 2.3 | 2.5 |
レタス | 2 | 2.3 | |
ハクサイ | 2 | 2.3 | 2.5 |
ネギ | 2.3 | 2.5 | |
サトイモ | 2 | 2 | 2.3 |
ショウガ | 2 | 2.3 | 2.5 |
ダイコン | 2.3 | 2.5 | |
ニンジン | 2.3 | 2.5 |
観葉植物のpF値は?
観葉植物の水やりのタイミングは難しく、観葉植物が枯れてしまう大きな原因の1つが、実は「水のやりすぎ」でもあります。観葉植物の場合も他の一般の植物と同様、pF値は通常1.5~2.7です。これよりpF値が低いと水分過剰、高いと水分不足と考えてください。ストレスを感じないのも同様にpF1.7~2.3で、この値の範囲の中で水分を調節することで、水不足はもちろん、水のやりすぎによる根腐れなどを防ぐことができます。食品の品質管理には、定番KETT(ケット)の水分計
食品、穀物、牧草の品質管理にも、水分量は重要です。食品など測る対象自体を傷つけたりしたくない場合、非接触タイプの水分計がいいですね。そんな水分計では「ケット(kett)」のシリーズが有名です。電気式・赤外線式などの測定方法別の水分計があります。また、穀物用、米麦用、酒米用、そば用、木材用、牧草用、コンクリート用など、専門の水分計の種類も豊富。科学的な品質管理、一ランク上の品質管理に、ケット(kett)の水分計がおすすめです。商品一覧はこちら
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