植物の葉の役割とは
トマトに限らず植物にとって、葉は生命維持のための重要な器官です。葉の役割は大きく2つあります。1つは、太陽光をエネルギーとして使い、光合成によって生命活動に必要な栄養分を作り出すこと。もう1つは、葉の裏にある気孔から水を排出(=蒸散)して、根から水の吸収を促すこと。
葉がなければ、栄養分の生成と体温調整という重要な働きができなくなり、生きていくことも難しくなるのです。
なぜ葉かきをするのか
植物が生長するにしたがって、茎が伸び新しい葉が出てくると、元々あった古い葉は老化してしだいに役目を終えていきます。古くなった葉をそのままにしておくと、病虫害の発生源になるなど悪い影響をもたらすことも。老化した葉は病気への抵抗力が落ちているので、うどんこ病のような、梅雨の時期におなじみの病気が出やすくなります。
写真の白い粉状の斑点がうどんこ病。放っておくと上葉にもどんどん広がって防除が難しくなります。
トマトを栽培するうえでは、病気になりやすい古くなった葉を取り除く「葉かき」も大事な作業の1つなのです。
トマトの葉かきのタイミング
果房の下の葉は、実に栄養を送り生長させるためのものです。実を収穫してしまえばその下の葉は必要ありませんので、取ってしまいましょう。収穫前であっても、実が十分に大きくなったと思ったら果房下の葉は全部取ってしまっても構いません。
葉かきで押さえておくべきポイントとは
葉かきをする際には、どのあたりまで葉を取り除けば良いのか、どんな道具を使って行えば良いのかなど、押さえておくべきポイントがあります。「まだ下葉は元気な気がするけど、取り除いて良いかどうかわからない」など、判断に困っている方のためにコツをお伝えします。
葉かきの道具
私の場合はあまりハサミなどの道具を使わず手で葉をかいています。道具に病原菌が付着したまま葉かきに使うと、圃場全体に病気が蔓延する可能性があるためです。わき芽をかく時と同じように、根元からポキッと折って葉を取っていきます。
一般的には、葉かきをする際はハサミで切り落とすのがセオリー。
手で折るよりハサミを使った方が傷口が小さくて済むため、病気感染の危険性が低くなるからです。傷口がなるべく小さくなるよう葉の根元を5mm程度残して切り落としてください。
ハサミのほかに葉かき専用のナイフもあります。ナイフの方がハサミに比べ傷口がつぶれにくいという利点があります。
よほど葉かきに慣れていない限り、まずは道具を使って葉かきする方をおすすめします。もし手で葉かきする場合は、ハサミやナイフを使う時より傷口が大きくなりがちなので、傷口がなるべく早く乾くよう晴天日に行ってください。
どれくらい葉をかくべきか
トマトが安定的に生長するためには、樹全体で15枚の葉が必要とされています。収穫した実の下葉はすべてかくことを基本にしながら、樹全体で最低でも15枚は葉を残しておくことを意識してください。
Before
上の写真が第1果房下の葉をかく前。実が見えないくらいたくさん葉が茂っていますね。すでに黄化した葉も見えます。このままでは実に光が当たりにくいので葉をかいてみます。
After
ずいぶんスッキリしましたね!こうすることで通気性が高まり、うどんこ病のような病気のリスクも低減できます。
実にも太陽光が当たりやすくなることで、実が全体的にまんべんなくきれいに、短い日数で色づきます。
かいた後の葉の処理
葉かき直後の葉はジャマになりますが、2~3日も経てば水分が抜けやがて小さくバラバラになりますので、それからハウス外に撤去した方が楽です。肥料分が多く含まれているので、そのまま通路に放置しておけば追肥の代わりにもなります。私の圃場はハウス全面にマルチングしているので、やむなく全部撤去です。
取り除いた葉に病気の葉が含まれている場合は、すぐに圃場外に出してください。また、湿度が高い時期は取り除いた葉が病気の発生源になる可能性もあるので、早めに撤去した方が無難です。
葉かきのメリットはいくつもある
植物は太陽光をエネルギーにして栄養分を作り出しているので、不要な葉を取り除いていかに効率よく光を当ててあげるかが大事。「せっかく生えている葉をかいてしまうのはもったいない」
いざ下葉を取り除こうとしたら、そんな気持ちになるかもしれません。
でも、葉かきは、通気性を高めて病害虫に冒されるリスクを減らす以外にも、
・実が見えやすくなって収穫作業が短くできる
・余計な栄養分の浪費を防ぐ
など、さまざまなメリットがあり、トマト全体の生育にも良い影響をもたらします。
梅雨真っただ中ではタイミングが難しいですが、本格的な夏を迎える前に葉かきにチャレンジしてみてください!