ホウレンソウ|基本の育て方と本格的な栽培のコツ

農業に興味を持っている方や家庭菜園で本格的に野菜作りをしている方、そしてこれから始める初心者の方にもわかりやすいホウレンソウの育て方を紹介!ホウレンソウ作りに欠かせない土づくりや病害虫、ホウレンソウの収穫適期の見分け方などを説明します。


ホウレンソウ、栽培

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野菜を育てた経験がある方なら「育てた野菜を食べる」ことは、何物にも代え難い格別のおいしさと感動を与えてくれます。あの採れたてのおいしさを求めて「もっと野菜のこと、栽培のことを知りたい!」そんな家庭菜園で本格的に野菜作りに励みたい方や野菜作りのプロを目指した「新規就農」を視野に入れている方に、基本的なホウレンソウの育て方と本格的な栽培のコツを紹介します。

ホウレンソウについて

ホウレンソウ、栽培
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ホウレンソウは、原産地である中央アジアから東の中国、日本へと伝わった東洋系の品種と、中央アジアから西のヨーロッパや北欧に伝わり、主にオランダで品種改良が進んだ後、アメリカに渡った西洋系の品種があります。
現在栽培されている主なホウレンソウは、収穫量が多く出荷など流通に適した性質を合せ持つ東洋系と西洋系を掛け合わせた品種が数多く栽培されています。
植物名  ホウレンソウ(法蓮草)
学名  Spinacia oleracea
英名  Spinach
科名  アカザ科
属名  ホウレンソウ属
原産地  中央アジア
生育適温  15~20℃
発芽適温  15~20℃

東洋系と西洋系のホウレンソウ

東洋系と西洋系、それぞれのホウレンソウの特徴を紹介します。

東洋系のホウレンソウ

耐寒性があり、長日条件下でとう立ちしやすい性質から、秋まき栽培に適した「冬ホウレンソウ」です。
東洋系のホウレンソウの種はトゲがある尖った形をしています。葉も同じように先が尖った切葉です。
お浸しなどのシンプルな調理で使用される日本人の食味に合った品種です。

西洋系のホウレンソウ

とう立ちが遅いので、春まき栽培もできる「夏ホウレンソウ」です。東洋系のホウレンソウに比べて耐寒性は弱い傾向があります。
西洋系の種はトゲのない丸い形で、葉も丸い形をした品種が多くあります。
葉肉が厚いので、缶詰や冷凍など加工品やバター炒めなどしっかり調理するときの食材に適した品種です。

ホウレンソウの特徴

ホウレンソウは冷涼な気候を好む性質があります。特に高温期は発芽しづらいので、栽培する地域に合った品種の選択や発芽適温の時期に種まきを行う必要があります。

ホウレンソウの種子

ホウレンソウの種子は、硬い殻(果実の皮)に覆われた中にあります。
発芽適温が15~20℃とほかの作物に比べても低めです。
また、採取したばかりの種子は3カ月ほど休眠するので、種をまいてもすぐには発芽しません。

ホウレンソウのとう立ち

ホウレンソウのとう立ちは、日長条件が大きな影響を与えています。品種にもよりますが、長日条件下では花芽分化が促進され、とう立ちが早まる特性があります。これは、太陽の光だけでなく、街灯などの照明によってもホウレンソウの早期とう立ちを引き起こすので、栽培時には注意が必要です。

雌雄異株植物

一般的な植物は、雌しべと雄しべが一つの花の中にある両性花なので、受粉して種をつけることができます。
しかし、ホウレンソウは、雌株と雄株が別々の雌雄異株の風媒植物なので、風によって雄株の花粉が運ばれて、雌株で受粉します。
そのほかにも雄株の中に雌花が咲いたり、雌株に両性花が存在するような中間の性質を持った間性株(雌雄同株)も出現します。

ホウレンソウの栽培時期

ホウレンソウの種まき、収穫時期を紹介します。
育てる地域や栽培する品種によってまきどきが異なりますので、種を購入するときに確認しましょう。
ホウレンソウ 種まき 収穫
寒冷地 ・4~5月
・6~9月上旬
・9月中旬~10月中旬
・5月中旬~7月中旬
・7〜10月中旬
・10月中旬〜12月
中間地 ・3月中旬~5月
・7
月中旬~9月上旬
・9月中旬~11月中旬
・4中旬~7月
・8月上旬~10中旬
・10月中旬〜2月上旬
暖地 ・2月中旬~4月
・8中旬9月中旬
・9月下旬~1月中旬
・3月下旬~6月
・9~10中旬
・10月中旬~4月中旬
※主に露地栽培の栽培時期。「温室」や「ビニールハウス」などの施設で栽培する場合、ホウレンソウは周年栽培が可能です。

ホウレンソウの栽培準備

ホウレンソウ、栽培
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作付け計画を立て、ホウレンソウの種を注文したら、播種に向けて畑の準備を済ませましょう。
※播種(はしゅ)とは、作物の種をまくことです。

▼ビニールハウスなど設備関係のことならこちらをご覧ください。

ホウレンソウの収量

ホウレンソウ、栽培
出典:写真AC
1a(100平方メートル)で111kgほど収穫することができます。
出典:作物統計調査 平成29年産野菜生産出荷統計
「都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量」(農林水産省)
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20170&month=0&tclass1=000001032286&tclass2=000001032933&tclass3=000001121095)(2019年10月22日に利用)

ホウレンソウの種・苗の用意

地域の種苗会社やホームセンターから購入することができます。ホウレンソウはビニールハウスなどで周年育てられる作物なので、栽培時期に合った品種を選ぶことも重要なポイントです。
主な品種 主な産地
 ミラージュ  千葉、群馬、茨城
 クロノス  千葉、群馬、宮崎
 オシリス  千葉、埼玉

♦1a(100平方メートル)あたりのホウレンソウの使用種子量

1a(100平方メートル)あたりの使用種子量は丸種子(主に西洋系)で400mlほど、角種子(主に東洋系)で1L位、ホウレンソウの硬い殻を取り除いたネーキッド種子ならだいたい1Lが目安です。

ホウレンソウの土づくり

排水性、通気性、保水性の整った団粒構造の土質は、微生物が多く住む作物にとって良い土壌です。作物を作る土壌の状態が良ければ、石灰資材など多く投入する必要がない場合もあるので、栽培の前には必ず土壌診断をし、pH、ECなどを測定したうえで、診断結果に基づいた適切な堆肥資材等の散布を心がけましょう。
▼土壌消毒や土づくり、土壌診断のことならこちらをご覧ください。

◆ホウレンソウの土壌pH

pH6~7が適しています。ホウレンソウは酸性土壌に弱いので、必ず酸度調整を行うようにしましょう。

◆ホウレンソウに適した土壌

ホウレンソウは直根性の作物なので、根が伸びやすいように深めに耕します。
また、ホウレンソウは多湿に弱いため、排水性の高い土壌に改良するか、畝を高くするなどして土壌の湿害から根を守ります。

ホウレンソウの肥料

ホウレンソウを栽培するときに使用される肥料は、目安として10平方メートルあたり窒素150~200g、リン酸200〜230g、カリ150~200g位です。

▼肥料のことならこちらをご覧ください。

畝立て

畝幅は60~120cm、条間は15〜20cm位にします。播種機を使う場合は、使用する機械の仕様に合わせた畝の向きや高さ、幅にする必要があります。

▼耕運機、鍬のことならこちらをご覧ください。

▼マルチ栽培のことならこちらをご覧ください。


ホウレンソウの育て方

ホウレンソウ、栽培、育て方
出典:写真AC
畝や種の準備が整ったら、ホウレンソウ栽培のスタートです。

種まき

ホウレンソウ、種まき、発芽
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ホウレンソウの発芽適温は15~20℃です。25℃以上の環境下では発芽率が低下します。

◆種まき前は十分な灌水

発芽するまでの種子が乾燥すると発芽率が下がるので、適度な土壌水分を保つことが重要です。
※灌水(かんすい)とは水を注ぐこと、植物に水を与えることです。灌水ホース、灌水装置など農業でよく使用する言葉なので覚えましょう。

▼灌水チューブのことならこちらをご覧ください。

◆すじまきのポイント

深さ1.5〜2cm位の溝を付けてすじまきで種をまき、1cmほど覆土して土を軽く押さえます。
このとき覆土の表面が均一でないと、適度に水やりを行っても、水が溜まってしまう場所ができるため、生育にムラが生じてしまいますので注意しましょう。

◆芽出しのコツ

高温期にホウレンソウの種をまく場合、発芽率が悪い傾向があります。その際には、ネーキッド種子を使用するか芽出しを行います。
ホウレンソウの種(ネーキッド種子以外)を一晩水に漬けた後水切りし、湿った布に種を包みビニール袋などに入れて、高温期の際は冷蔵庫、低温期は日の当たる場所で保管します。種から根が1mmほど出たころに種まきをすると発芽がそろいやすくなります。

▼播種機のことならこちらをご覧ください。

間引き

ホウレンソウ、種まき、発芽
出典:写真AC
1回目は本葉1~2枚のころに3~4cm間隔で、2回目は本葉が3~4枚になったら5~6cm間隔にします。

水やり

基本的にほかの野菜と同じように水やりは午前中に行います。暑い時期の水やりは、日中を避けて気温の低い早朝に行わないと根を傷めてしまいますので注意しましょう。

▼ハウス栽培での湿度や温度の管理についてはこちらをご覧ください。

◆生育初期の生育ムラに注意

ホウレンソウは灌水に部分的なムラが生じると、生育にばらつきが出るので注意しましょう。生育が均一に揃ったら、土壌は乾き気味に管理します。

▼土壌水分計のことならこちらをご覧ください。

追肥

ホウレンソウの追肥は基本的に元肥のみで、生育不良な場合は液肥、または窒素肥料で10平方メートルあたり窒素30gほどを施用して対応します。

▼液肥のことならこちらをご覧ください。

ホウレンソウの収穫

ホウレンソウ、収穫
出典:写真AC
一般的にホウレンソウの草丈が20cm前後になったら収穫適期です。春まきや夏まきのホウレンソウ(品種にもよる)の収穫はとう立ちしやすい傾向があるので、採り遅れに注意します。
収穫する際は根ごと抜き取るとほかの株を傷めるので、はさみなどで地際からカットして収穫します。
品種や栽培時期にもよりますが、耐寒性のあるホウレンソウは霜にあたると甘みが増します。厳寒期の葉の傷みは寒冷紗や不織布などを施用して、じっくり育てて甘みを引き出して育てましょう。

▼収穫時のおすすめグッズはこちらをご覧ください。

ホウレンソウの病害虫

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出典:Flickr(Photo by:Katja Schulz
ホウレンソウを栽培する上で、かかりやすい病気や気をつけたい害虫について紹介します。

▼ハウス栽培での病害虫対策にはこちらをご覧ください。

▼病害虫対策に欠かせない農薬のまとめ

ホウレンソウがかかりやすい病気

ホウレンソウは特にべと病に注意が必要です。

▼植物全体の病気のことならこちらをご覧ください。

▼台風後の病気を防ぐ対策についてはこちらをご覧ください。

◆べと病

葉脈で区切られた淡黄色の多角形の病斑が特徴的で、多湿環境で発生しやすい糸状菌(カビ)による病気です。病変の葉の裏側に灰白色のカビが生じます。

◆モザイク病

葉がモザイク状に黄化したり、淡黄色の斑入りで葉が萎縮、または葉の中心を境に両側が巻き上がったようになる、アブラムシを媒介にして発病するウィルス性の病気です。

◆立枯病

カビ(糸状菌)が原因となる病気で、感染すると根は褐色に腐敗し、下葉から黄化して葉は枯れ上がります。

◆苗立枯病

幼苗が立ち枯れたり、発芽不良を起こす糸状菌(カビ)による病気です。地際部に水浸状の病斑ができたり、褐色~黒色に変色し、腐敗すると水を上げることができずに生育が止まり枯死します。

◆萎凋病

地際の下葉から黄化、萎凋して、次第に株全体の生育が衰える糸状菌(カビ)による病気です。
▼そのほかの萎凋病ならこちらをご覧ください。

ホウレンソウを食害する害虫

ホウレンソウを好む害虫を紹介します。

◆ヨトウムシ

「夜盗虫」の名の通り夜に活動し、日中は葉裏や株元の浅い土中に潜んでいるヨトウガの幼虫です。

◆ハモグリバエ類

孵化した幼虫が、葉の内部をトンネルを掘るように進んでいって食害する、別名エカキムシと呼ばれる害虫です。

◆タネバエ

土の中にいるタネバエの幼虫が、ホウレンソウの種子や発芽直後の根を食害するため、発芽しない、立枯れるなどの症状があらわれます。

◆アザミウマ

植物の汁を吸い、食害を受けた葉は褐色化し、最終的には枯死します。別名スリップスと呼ばれる、さまざまな病気のウイルスを媒介してしまう害虫です。

◆アブラムシ類

主に新芽や茎、蕾に発生し、植物の汁を吸う害虫です。アブラムシを媒介にしてモザイク病やすす病などが発症しやすいので、アブラムシ発生後は病気が発症していないか注意が必要です。

▼防虫、防獣ネットならこちらをご覧ください。


▼そのほかの病害虫対策のまとめ

ホウレンソウの生理障害

ホウレンソウ、生理障害
出典:写真AC
続いてホウレンソウの生理障害を紹介します。

葉先枯れ

被害状況  葉が丸まり、やがで葉先の方から枯れる。
原因  カルシウム不足。
▼カルシウム不足についてはこちらをご覧ください。
▼そのほかの生理障害のまとめ

ホウレンソウ栽培のまとめ

ホウレンソウ、栽培
出典:写真AC
ホウレンソウは、西洋系と東洋系によって食味や食材として適するものも違ってくることから、出荷を見据えた品種選定が必要です。
また、種の形や使用する量も西洋系と東洋系とでは大きく異なるので、種子の性質を十分理解し、発芽しやすいように芽出しを行ったり、発芽率の良い加工したネーキッド種子を使用するなどの工夫を凝らすことが求められます。
ハウスなどの施設栽培では、ホウレンソウは一年中栽培できます。種をまいてから収穫まで春まきで30日ほど、秋まきでは50日程度で収穫できるので、栽培スケジュールをしっかり立てて、効率良く栽培しましょう。


ホウレンソウの経営指標

ホウレンソウ、栽培
出典:写真AC
新規就農者として野菜作りを本格的に始めるならば、農業経営の見通しが不可欠です。職業として生活を成り立たせ、なおかつ豊かなものにするために、しっかりとした農業経営の指標を持ちましょう。

需要動向を調べる

昭和40年代の緑黄色野菜ブームにのって、ホウレンソウの需要は増加しましたが、2015年の調べでは、ホウレンソウの年間購入量は1,109gと減少傾向にあります。しかし、加工できる冷凍食品として国内産のホウレンソウの需要が増加しています。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

卸価格を調べる

ホウレンソウは、周年栽培が可能なので1年中市場で流通しています。そのため、季節や品種によっても価格の差が出ますが、卸価格は2015年の調べで1kgあたり295~857円、平均で521円で取引されています。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

販売価格を調べる

卸価格同様にホウレンソウの販売価格も季節や天候などの影響で前後しますが、2015年の調べで1kgあたり標準品で929円ほどです。
出典:農畜産業振興機構「ベジ探

10aあたりのホウレンソウの経営収支

ホウレンソウ栽培の産地である群馬県の経営収支を例に挙げて簡単に説明します。
群馬 収量(kg) 粗利(円) 経営費(円) 農業所得(円) 労働時間
 周年栽培
(雨よけ)
7,500 3,600,000 1,478,575 2,121,425 847.8
 秋まき 2,000 954,000 362,113 591,887 340.5
出典:ぐんまアグリネット

◆経営費

ホウレンソウ栽培における経営費とはホウレンソウを生産するために使った経費のことです。具体的に挙げると肥料、農薬、地代、土地改良費、雇用労働、農業機械(減価償却費)、利子などです。

◆農業所得

農業所得は粗利から経営費を引いた金額になるので、経営費を上手にやりくりすることで所得もアップするということがいえます。

◆労働時間

労働所得を労働時間で割ると、ホウレンソウ栽培の時給計算ができます。群馬県の周年栽培の例でいうと、農業所得2,121,425円÷労働847.8時間=2,502.2円。つまり時給2,502円として換算します。

◆経営の状態を大まかに捉える

ホウレンソウの経営収支から、どのくらいの規模で栽培すると収益はどのくらいあるのかなど、あらかじめ調べることで用意する苗の本数や、ホウレンソウのほかに育てる作物の種類を増やすなど、最初から計画をしっかり立てることが重要です。

▼農業の補助金や収入など就農の基礎知識

新規就農までの流れ

新規就農者への道は、各都道府県にある農業の支援機構などに相談してみることから始めます。相談から農地の準備までの7つのステップを踏みながら、その土地の一員として「自覚」と「信頼」を第一に考えて、地域に溶け込んでいきましょう。
 1. 相談  実際に相談窓口で相談(忙しい方にはメールでの対応もできます)。
 2. 情報収集  研修先や農業普及センター、農協、営農のプロのアドバイスや手助け先の獲得。
 3. 経営像  各都道府県の経営指標を参考にして、自身の農業計画を立てる。
 4. 就農計画  農地の確保、栽培作物の選定、農業技術の取得方法、資金などの具体的なプランを作り。
 5. 農業技術  栽培に適した作物、栽培方法などを身に付ける。
 6. 資金確保  自己資金、公的助成金・融資の確認。
 7. 農地の準備  そのほかの住居や農機具、農業施設等の準備。
参考:全国新規就農相談センター
▼新規就農のことならこちらもご覧ください。

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農業研究センターで6年間、大豆と稲の研究作物の栽培及び実験助手業務に従事。その後、屋上ガーデン・屋上菜園などの管理業務、エディブルフラワー事務局を経て、植物ライターに。植物・園芸サイトやフリーペーパーなどで活動。AGRI PICKでは新規就農者のための野菜の栽培方法や農業経営者の取材を執筆中。