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菜園家・ブルーベリー研究家
福田 俊東京農工大学農学部農学科卒。「どうすればおいしい野菜がたくさん採れるか」「いかにラクで楽しい野菜づくりができるか」を追求し、「フクダ流」自然農的有機栽培を実践。16平米という限られたスペースの市民農園で、年間50品目以上の野菜を有機・無農薬で栽培しています。監修を務めた家庭菜園誌や著書も多数。 ■関連サイト HP:http://www.fukuberry.com/ Youtube:https://www.youtube.com/user/f104ryo Instagram:https://www.instagram.com/fukuberry104/?hl=ja Twitter:https://twitter.com/29da104 facebook:https://www.facebook.com/toshi.fukuda.73 ■著書:『市民農園1区画で年間50品目の野菜を育てる本』(学研プラス)、『フクダ流家庭菜園術』(誠文堂新光社)、『福田さんのラクラク大収穫!野菜づくり』(学研パブリッシング)…続きを読む
ブドウの育て方のポイント
- ブドウはつる性なので、棚か支柱が必要です
- 日光が好きなので、日当たりの良い場所に植えます
- 雨に当たると病気が出るため、農業用ビニールの雨除けがあると良いです
- 病虫害や鳥害から守るため、果房には袋をかけます
- 翌年の結果枝を出させるため、ほとんどのつるは剪定で根元を数十cm残して切ります
ブドウの栽培の基礎知識|時期や適温、環境は?
ブドウは世界中で広く栽培されていて、世界に10,000種以上の品種があるといわれています。日本でも、巨峰やピオーネ、デラウェア、シャインマスカットなどさまざまな品種が広く栽培されていますが、ブドウの栽培にはどのような環境が適しているのでしょうか。栽培時期(スケジュール)と栽培管理
ブドウは落葉樹で、秋に落葉してから休眠に入り、休眠した状態で冬を過ごして3~4月ごろに発芽します。葉を茂らせ、開花は5~6月ごろ。品種によって違いがありますが、収穫は夏から秋にかけて、8~10月ごろに行われます。その後落葉し休眠に入る、というサイクルを繰り返します。ブドウ栽培 年間スケジュール
・植え付け:11~3月ごろ
・剪定:11~1月ごろ
・芽かき:4~5月ごろ
・誘引:5~6月ごろ
・花房の成形:5~6月ごろ
・房の間引き:5~6月ごろ
・袋かけ:6月ごろ
・収穫:8~10月ごろ
ブドウの栽培適温
品種によって栽培適温は異なりますが、15~30℃が栽培適温です。ブドウ栽培に適した環境
よく日の当たる環境を好み、雨に当たると病気になってしまいます。そのため、日当りが十分にあり雨が少ない環境が栽培に適しています。土壌の環境もとても大切で、排水が良く、有機物、微生物がいっぱいでフカフカしたものが良いです。基本的に病害虫に強くないので、その点にも注意しておきましょう。ブドウ栽培は難易度が高い?
ブドウは棚や支柱の設置や、病気を防ぐための雨対策もあります。また、芽かきやツルの誘引などの手間もかかります。初心者には少々難易度が高いかもしれませんが、品種によっては難易度が下がります。初めてブドウを育てる方は、病害虫に強いものや樹勢があるものなど、育てやすい品種を選ぶとよいですよ。
ブドウは鉢植え(プランター)でも育てられる?
露地栽培の場合は苗が根付いてからは水やりの必要がありませんが、鉢植え栽培の場合は水やりは欠かせませんので注意してください。
また、鉢植えの場合は根詰まりが起こることにも留意しておきましょう。
「行燈仕立て」とは、植物を支柱にらせん状に絡ませて行灯のように仕立て上げていく方法。アサガオの栽培などにも使われる、数本の支柱に輪がついたタイプの支柱を使うと便利です。株のまわりに支柱を何本かまっすぐ挿し、そのまわりにひもを巻き付ける方法もあります。
ブドウの栽培方法&剪定
適切な品種を選べば初心者でも挑戦できるブドウ栽培ですが、野菜作りとは異なるさまざまな作業を行わなければなりません。ブドウの栽培(地植え・鉢植え)について、土づくりから苗の植え付け、剪定、誘引、花房成形、間引きなど、収穫までに必要となる各工程について紹介します。Step1. 土づくり
ブドウの栽培では、排水が良く、有機物と微生物がいっぱいの土をつくることが大切です。また、ブドウは日光が好きなので、日当たりの良い場所を選ぶようにしてください。土づくりは基本的には野菜作りと同じです。堆肥をたくさん入れ、有機質の肥料(ボカシなど)を加えて微生物の活動を活性化させましょう。一例として、1m2あたり堆肥2〜3kg、ボカシ300g、草木灰100gほどですが、必ずしもこの限りではありません。福田流の土づくり!
ボカシ肥料の作り方
Step2. 植え付け
ブドウの植え付けを行うのは、春の3月ごろが良いでしょう。秋ではダメ、ということはありませんが、春の芽吹き前が植え付けにはベストのタイミングです。ブドウは広く根を張る果樹なので、植え付け穴も直径80cmくらいはほしいところです。植え付け穴の深さは30〜40cm。そこに堆肥2~3kg、ボカシ肥料300g、草木灰100gを入れてよく混ぜ合わせ、中央に苗を植えます。植え付けは、基本的には育苗ポットから苗を取り出してそのまま移植すれば良いのですが、苗の根巻き現象が激しければ、新根の発生を促すために手で根をほぐしてから植えるようにしてください。植え付けが終わったらたっぷり水やりをしましょう。
Step3. 水やり
ブドウは乾燥に強い果樹です。鉢植え栽培でなければ、ブドウの水やりは植え付けから根付くまでだけで問題ありません。根付くまでの間は、土が乾いたら水をやるようにしましょう。鉢植え栽培の場合は根付いてからも水やりが必要です。鉢植え栽培では、土の表面が乾いたときに鉢底から水が少し流れ出るくらいの量を与えてください。ブドウは実がなるまでどれくらいかかる?
Step4. 追肥
枝葉が茂り、ブドウの実がなり始めた頃が追肥を行うタイミングです。果実が大きく生長するのに養分が必要なので、追肥は欠かせません。追肥では、枝が伸びている範囲の下にボカシ肥料を適宜まくようにしてください。Step5. 剪定
ブドウの葉が黄葉して、落ちるようになってきたら剪定を行いましょう。幹から長く伸びているつるを、根元数十cmを残してすべて取り除くようにしてください。剪定の際にはブドウの樹を見て、害虫退治も行いましょう。枝の途中に膨れている部分があれば、中に蛾の幼虫やカミキリムシの幼虫が潜伏していますので、見逃さずに除去します。Step6. 芽かきと誘引(仕立て方)
芽かきは、春に枝が伸び始めた頃に行います。一カ所に2本以上の芽が伸びている場合に、小さい方(副芽)を根元からハサミで切って1本に制限してください。芽の付け根はもろく、手でもぎ取るようにすると残る枝にもダメージを与えてしまいます。残る枝への負荷を減らすため、ハサミで切り落とすようにしましょう。誘引作業を行うのは花が咲く前です。棚に張った針金やエスター線に、ひもで誘引した枝を結びます。春から伸びる枝を寝かせて花房が下になるようにしましょう。油断すると根元から簡単に折れてしまうので、慎重に作業を行うよう注意しましょう。
なお、摘心については必ずしも行う必要はないのですが、放っておくとどんどん枝が伸びてしまいます。摘心する場合は、果実を太らせる養分を作る葉を適宜残しながら、枝が伸びすぎないにならない程度に行ってください。
Step7. 花房の整形
花房の整形は、花の咲き初めから結実肥大期に行います。花房の形を整えるための作業なので、営利目的の栽培では欠かせませんが、家庭菜園では必ずしも必要な工程ではありません。花房整形を行う場合は、花房の根元に分岐した部分(副房)を取り、長すぎる花房の先端を切り詰めるようにしてください。細かい作業になるので、細いブドウ鋏を使うと良いでしょう。Step8. 房の間引き
房の間引きは、果実の結実肥大期に貧弱な果房を取り除く工程です。上物をそろえるために行う作業で、1つの結果枝に2〜3果房にします。営利栽培農家にとっては必要不可欠ですが、家庭菜園の場合には必要ありませんので、間引きを行わずにそのまま栽培していただいて問題ありません。Step9. 袋かけ
結実肥大期の大切な作業のひとつとして袋かけがあります。袋かけは、ブドウの房を袋で包みこみ、病虫害、鳥害を防ぐために行います。房を包む袋には紙製の袋やポリ袋がありますが、紙の袋は不透明で中のブドウの様子が見えないため、微孔のあいた透明のポリ袋がおすすめです。ブドウの房を包んだら、風で袋が飛ばされないように、袋の口を針金でしっかり結んで固定しましょう。かけた袋は収穫まで外しません。Step10. 袋かけ収穫
いよいよ収穫です。ブドウの収穫の時期は品種によって異なりますが、夏~秋ごろが収穫のシーズンです。食べて甘ければ収穫のタイミングなので、果房を落下させないように注意しながら、ハサミで果梗を切って収穫します。初心者でもOK!家庭菜園におすすめのブドウ品種
ブドウの栽培は基本的に難易度が高めです。しかし、数多くあるブドウの中には栽培が容易な品種もあり、適切な品種を選べば初心者でも栽培することができます。家庭菜園でブドウを栽培するには、どのような品種が良いのでしょうか。おすすめの品種を5種ご紹介します。甲斐路
甲斐路は、果皮はピンクがかった明るい紅色で、上品なマスカットのような香りがあり、独特のコクとうまみを持ったブドウです。皮が厚く皮ごと食べられませんが、果肉は締まりがあり噛み応えがあります。収穫は9月中旬~10月上旬。作りやすい品種なので初心者にもおすすめです。藤稔
藤稔(ふじみのり)は、神奈川県藤沢市の青木一直氏によって、「ピオーネ」と「井川682号」の交配から生み出されました。収穫期は9〜10月ごろ。紫黒色に熟した藤稔は、一粒20g前後にもなる大きな果実をつけます。大粒でジューシー、糖度も高いのが特徴のブドウです。樹勢が強く、病害虫にも比較的強いため初心者にもおすすめです。デラウェア
デラウェアはアメリカのオハイオ州デラウェアで偶然発見されたブドウで、スーパーなどでもよく見かけるおなじみの品種です。種なしブドウとして有名ですが、これはジベレリン処理によって種ができないようにしているためで、ジベレリン処理をしなければ種ができます。収穫は7~9月ごろで、果実は一粒2g程度と小粒ですがたくさん実り、高い糖度とさわやかな酸味が特徴です。病害虫にも強くブドウの中でもとくに育てやすい品種で、ブドウ栽培の経験がない初心者にもおすすめできる品種です。高尾
高尾は、東京都の農業試験場で巨峰の品種改良によって誕生したブドウです。生産量が非常に少ないため、販売されているものはめったに見かけません。収穫は9~10月ごろで、果実は大粒でラグビーボールのような形をしており、紫黒色に熟します。甘みが強く濃厚な味わいのブドウです。病気に弱いなど栽培難易度は高く、上級者向きの品種です。シャインマスカット
シャインマスカットは「白南」と「安芸津21号」の交配から誕生した品種です。近年人気が高まっている高級品種ですが、樹勢は強く、病害虫にも強いため、ブドウの中では栽培が容易です。収穫は8~10月ごろで、黄緑色の大粒の果実をつけます。皮が薄く渋みもないため皮ごと食べることができ、強い甘みとさわやかなマスカット香が特徴です。西洋品種と日本品種では育て方にどんな違いがある?
ブドウ棚を作ってみよう!
つるの誘引のためはもちろん、庭の日よけやくつろぎスペースにもなる「ブドウ棚」を作りましょう!支柱はしっかり立てて、棚部分は軽くて扱いやすい竹竿で作るのが簡単でおすすめですが、広い畑などには雨風に強い単管をしっかり組んでもいいかもしれません。ここでは、女性でも作れる竹竿を使ったブドウ棚の作り方を紹介します。ブドウ棚の材料
- 支柱 4本:直接土に深く刺せなければ、束石(つかいし)や中に入れる砂利なども準備
- 竹竿 数本:格子に組んでいくので、庭に合った長さのものを必要数
- シュロ縄や麻ひも:竹竿を格子に組むためのひも
- フック(よーとネジ、吊りフックなど) 4個:支柱に取り付けて、棚を引っかけるもの。竿が落ちないように、フック部分が丸くなっているもの
ブドウ棚の作り方
- スペースを決めて、支柱を地面に深く刺して固定する。よりしっかり固定したい場合は、束石(つかいし)などを設置して、その中に支柱を固定する。
- 棚を設置する高さを決めて、支柱の内側にフックを付ける。
- スペースに合うように、竹竿を格子状に組みながら紐で固定する。組んだ棚の四つ角の竹に、支柱のフックに引っ掛ける用の輪を紐で作っておく(フックに直接竹ざおを乗せてもOK)。
- 支柱のフックに、組んだ棚をしっかり引っかけて完成!
組み立てるだけのセットもおすすめ!
ブドウの受粉とジベレリン処理
ブドウは受粉作業しなくてOK
ほかの品種の花粉が必要な梨やブルーベリーと違い、ブドウは自分の花粉で受粉する「自家受粉」が可能です。なので人の手で受粉作業を行う必要はありません。また、「ジベレリン液」に浸すと、受粉していなくても実を作ることができます。
種なしを作るならジベレリン処理が必要
「種なしブドウ」はジベレリンという液体に、ブドウを房ごと浸して作ります。2度浸ける必要があり、1度目は全ての蕾が開花した3日以内。2回目は、1回目の処理から10~15日以内です。家庭でも種なしブドウ作りに挑戦
ジベレリン明治
ジベレリンとは植物ホルモンの一つ。この液体に2度浸けることで、種なしぶどうができあがります。ぶどうに使えないジベレリン液もあるので、購入時は使える果実一覧や注意書きをよく読みましょう。
内容量 | 50mg×4包 |
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ブドウの増やし方|挿し木・接ぎ木
苗から育てるのが基本
ブドウは苗から育てます。最初の苗はホームセンターや通販で購入し、それを親株として挿し木や接ぎ木で増やしましょう。挿し木
親株から若い枝を取り、その切り口から発根させ、新しい株として育てる方法です。秋の剪定時に長さ30cmぐらいに切りそろえ上下がわかるようにそろえてポリ袋に包み、土室などに入れて春まで保存します。土室がなければ冷蔵庫に入れておきます。挿し木を行うのは3月ごろ、大きな株に育つまで時間はかかりますが、同時に何本も行いやすく、接ぎ木より手軽です。接ぎ木
別の木を土台にして増やす方法で、上級者向きです。接ぎ木は冬と初夏に2度行えます。病気への抵抗性がある木を土台にすれば、より丈夫なぶどうを育てることも可能です。台木に接ぎ木するほか、現在元気に伸びているブドウの樹があればそこに高接ぎする方法もあり、こちらの方が簡単で早く結実します。接ぎ木のポイントは切り出しをよく研いで、切り口を平滑に切り、ピタッと密着させること。形成層を合わせることはもちろんです。ブドウの大敵!病気・害虫・雨への対策
ブドウは、一般に病気や害虫に弱い果樹です。ブドウ栽培において、病気や害虫への対策はとても大切です。ブドウ栽培ではどのような病気や害虫に注意すれば良いのでしょうか。ブドウ栽培で気を付けたい病気と害虫、そして病害虫への対策について紹介します。「病気」の原因と対策
ブドウがかかりやすい病気には、灰色カビ病、晩腐病、ベト病などがあります。生育期の雨、風通しの悪さ、朝晩の温度差などが病気の原因になります。実が黒くなっていたり、葉っぱが黄色や白になっていたりしたら病気のサイン。病気にかかってしまったら、病変葉を取り除きましょう。病気の予防には天恵緑汁を500倍に希釈して散布します。天恵緑汁の作り方はこちらで紹介しています!
「害虫」の特徴と対策
ブドウには、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、フィロキセラ、コガネムシといった害虫が見られます。いずれの害虫も暖かな時期に注意が必要です。見付け次第、捕獲退治しましょう。つるの中に入ってしまう害虫もおり、この場合は膨らんでいる箇所を刃物で裂いて駆除しましょう。雨に当たっても大丈夫?雨への対策
ブドウ棚の上にハウスの屋根のようにパイプを組んで農業用ビニールを張り、雨に当たらないようにしましょう。
作りやすい品種から挑戦!家でブドウを収穫しよう
ブドウは栽培難易度の高いものが多いですが、デラウェアやシャインマスカットなど難易度の低いものもあり、品種を選べば初心者でも栽培することができます。まずは難易度低め、栽培が容易なブドウから挑戦してみましょう。自分で育て、収穫するブドウはきっと格別です!