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ビニールハウスの役割とメリット
ビニールハウスは、「鋼管などの骨組み」と「ビニールなどの被膜資材」を組み合わせた農業用の施設のこと。ビニールなどの被膜資材で天井や側面を被膜することで保温効果が高まり、冬でも野菜や花きなどを安定して生産できます。また暖房機械を使えば、短期間で出荷することができます。害虫や風から農産物を守る!
露地栽培では、防虫ネットを張って害虫を防除しますが、トンネル設置はかなりの重労働ですね。でもビニールハウスの場合は、あらかじめ防虫ネットを設置しておくだけで害虫の侵入を大幅に軽減することができます。また、風や雨から農産物を守ってくれます。どんな野菜が栽培できるの?
小松菜やほうれん草などの葉菜類をはじめ、トマトやキュウリなどの果菜類など幅広い農産物を生産できます。例えば、ハロウィン需要に合わせたかぼちゃを作る場合、露地では秋の長雨や台風で失敗することもありますが、ビニールハウス内であれば良品を作ることができます。新品と中古、どちらがおすすめ?
新品は、コストこそかかりますが部材などの寿命は長いです。一方中古は、コストは低めですが部材寿命が短く、すぐに交換が必要な場合もありますので注意が必要です。参考までに、こぐま農場は中古ビニールハウスのパイプ一式(2.5間×12間)および関連部材を、ネットオークションにて9万円弱で入手しました。部品や資材、販売はどこでしているの?
小さな家庭用ビニールハウスは、ネット通販やホームセンターが充実しています。プロ仕様の新品ビニールハウスは農協やホームセンターなどで購入できます。安く導入するならネットオークションなどの中古品という手も!南栄工業 菜園ハウス四季 OH-4575
本格的なプロ用ビニールハウス。組み立てに必要な部材がすべてセットになっているので、初めての方におすすめ。
サイズ | 10.2坪用 |
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アーチ数 | 16本 |
扉 | 両側スライド式 |
どうしても価格が気になるなら、こんな方法が!
不要なビニールハウスを持っている農家さんと直談判です。今は廃材を処分するにもお金がかかる時代ですので、解体は自分でやる旨を伝えると、格安で譲ってもらえる場合もあります!耐用年数はどのくらい?
パイプを使用したビニールハウスの場合、帳簿上の耐用年数は10年、軽量鉄骨以上の鋼材を使用した場合では、耐用年数は14年とされています。使用する環境によって前後するので、定期的に腐食をチェックすると良いでしょう。天井ビニールは1年前後で交換が必要なものもあれば、5年前後使えるものもあります。交換には手間がかかるので、寿命が長い被膜資材を選択することをおすすめします。ビニールハウスの作り方|事前準備が重要!
初めて作るとなると、何から手を付けて良いのかわからないですよね。資材や道具をそろえる前に、ビニールハウスをどのように使うのか具体的に決めてみましょう。場所を考える
建てる場所の条件として「日当たりが良いこと」は重要ですが、実はこれだけではないんです。強風や、大雨による浸水、他の農家さんの土地がビニールハウスの陰にならないか、水源や電気があるかなども選定のポイント。筆者は、一番初めのビニールハウスを畑の真ん中に建て、強風で屋根ビニールが裂けてしまった経験があります。強い風が当たらない場所を選びます。大きさを考える
ビニールハウスは面積が広いほど収量は増えますので、面積が広いことが理想です。ほかには「出入口のサイズ」にもこだわりましょう。筆者は、トラクターや軽トラがビニールハウス内に入れる構造にし、堆肥搬入や耕うんなどを簡単にしました。堆肥の搬入は時間をかけず、効率よく行いましょう。パイプ規格を考える
使用されるパイプ規格は、主に19mm径と22mm径があります。19mm径のほうが部材コストは安価で、一方22mm径のほうが堅牢性に優れています。コストと堅牢性、どちらを優先するか検討します。水やりを考える
ビニールハウス栽培には、かん水設備が必要です。かん水チューブ、スプリンクラー、またはリールホースなどどれにするか考えます。出入口を開放すると、中に害虫が侵入する恐れがあるため、出入口を閉じた状態でかん水できる構造をおすすめします。暖房を考える
無加温か、加温か方法を考えます。加温の場合は、施設園芸用の暖房機を入れましょう。またビニールなどの被膜資材を二重にすると効果もあがります。最近では、灯油などの燃料ではなく、ヒートポンプ式の暖房装置を導入するケースもあります。これは、電気価格が比較的安定しているためなんです。ビニールハウスの自作にチャレンジ!建て方を徹底解剖(19mm径のパイプハウスの場合)
ビニールハウスのパイプは、いわば「柱」!パイプの並びが一直線でなく歪んでいたり、高さや間隔がバラバラだったりすると強度が弱くなってしまいます。プロ農家らしく、正確に組み立てて、美しいビニールハウスを作りましょう。Step1. 建設予定地に、あらかじめ堆肥散布や除草剤の処理を行う
建てたあとに堆肥搬入や除草作業をすると効率が悪いです。おおよその場所を決めたら、事前に行っておきましょう。Step2. 間口を取る(短辺を決める)
いよいよ組み立てに入ります。間口の位置を決め、長さを測り、間口の両端に目印棒を立てます。隣に別のビニールハウスがある場合は、風通しを考慮して2m以上のスペースを確保します。Step3. 奥行を取る(長辺を決める)
Step2で立てた目印棒から、直角に奥行を取っていきます。ここで歪んでしまうと、ビニールを張ったときに左右のバランスが崩れ、やり直しとなるので注意が必要です!Step4. アーチパイプを差す場所に目印を付ける
アーチパイプを差し込む位置に目印棒を立てます。間隔1mでは強度に不安がありますので、45cm間隔が理想です。その後目印棒の場所に下穴をあけます。穴あけ道具が便利!下穴開けに便利な「穴あけ大将直径19mm」
Step5. 下穴にアーチパイプを差し込む
最初に、全アーチパイプの地面に埋める深さや部材を取り付ける場所に目印を付けておきます。アーチパイプの埋め込み部分から順に、40cm、170cmの位置にマジックで印を付けます。40cmはパイプを埋める深さ、170cmは直管パイプを取り付ける位置となります。次に、アーチパイプを40cmの目印まで地面に差し込み、隙間を土で塞ぎます。
Step6. アーチパイプを天井部でつなぐ
左右のアーチパイプを「峰ジョイント」でつなぎます。脚立から転落しないよう注意しましょう。アーチパイプを連結する「峰ジョイント」19mmパイプ用
パイプハウス 部品 峰ジョイント 19mmパイプ用
アーチパイプの先端を差し込むだけで、天井部でアーチパイプ同士を固定できる金具です。パイプの径にあったものを選びます。
内容 | 傾斜角度30° |
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Step7. アーチパイプに、直管パイプを取り付ける
いよいよ、アーチパイプ天井部と、アーチパイプの肩部(170cmの印の場所)に、直管パイプを取り付けます。直管パイプはアーチパイプの内側に取り付け、天井部は「ミネックス」、肩部は「カチックス」金具をそれぞれ使います。直管パイプの両端は「端末フック」でアーチパイプに固定します。天井部の固定に使う「ミネックス」10個パック
サンガーデン ハウス部材 MEミネックス
「直径19mmパイプ用の峰ジョイント」と「直径19mmのアーチパイプ」を直角に固定するための金具です。
内容 | 10個パック |
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肩部の固定に使う「カチックス」
東都 パイプ固定部品 カチックス
「直径19mmの直管パイプ」と「直径19mmのアーチパイプ」を直角に固定するための金具です。クサビには先端曲げ加工・戻り防止加工が施されています。
サイズ | 直径19×19mm |
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直管パイプの先端用金具「端末フック」
端末フック 19mm×19mm
「直径19mmの直管パイプ」先端部と「直径19mmのアーチパイプ」を直角に固定したとき、両端の固定に使用します。被膜資材を破かないように、先端はキャップ構造となっています。
サイズ | 直径19×19mm |
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Step8. ビニペットレールを取り付ける
ビニールをパイプハウス本体に取り付ける役目を担うのが、この「ビニペットレール」です。溝の中にビニールの端を入れて、上から専用のスプリングで挟み込めば、ビニールをしっかり押さえることができる優れもの。アーチパイプとの固定には、「ヒロパイプジョイント」を使います。Step7で直管パイプを肩部に取り付けましたが、その10cm上にアーチパイプと固定します。加えて、腰板用として地表から40cmの場所にもビニペットレールを取り付けておきます。
被膜資材をしっかり固定する!「ビニペットレール 2m×10本セット」
ビニペットレールをアーチパイプに固定!「ヒロパイプジョイント」19mm用
ヒロパイプジョイント 19.1mm用
ビニペットレール同士を中接する金具「外ジョイント」
ビニペットレールの先端用!アーチパイプに固定する「先端ジョイント19mm用」
コーナージョイント 19.1mm用
Step9. ビニールハウス妻面を作る
まず、妻柱となる直管パイプを妻面側のアーチパイプに取り付けていきます。妻柱の間隔は80cm以内で立てます。妻柱の先端は「T字バンド」や「ユニバーサルジョイント」を使用します。中央妻柱とアーチパイプの接続に便利な「T字バンド」
加賀 パイプハウス部品 T字バンド ネジ式
直管パイプとアーチパイプを直角に固定する金具です。似た金具に「ユニバーサルジョイント」がありますが、こちらはアーチパイプ肩部に適したものです。
サイズ | 直径19×19mm |
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肩部の妻柱とアーチパイプの接続に便利な「ユニバーサルジョイント」
加賀 パイプハウス部品 ユニバーサルジョイント
直管パイプとアーチパイプを固定する金具です。肩部の妻柱の固定に適しています。
サイズ | 直径 19×19mm |
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Step10. 扉を付ける
自作または既製品の扉を妻面に取り付けます。引き戸タイプや開き戸タイプなどありますが、開き戸タイプのほうが簡単。強度を優先なら引き戸タイプにしましょう。説明書に従い取り付けます。ハウス扉 開き戸タイプ 縦180cm×横90cm
ハウス扉 アルミ 90cm×180cm
Step11. 妻面にもビニペットレールを取り付ける
妻面にもビニールを張るので、ビニペットレールを水平方向に取り付けます。取り付け幅は50cm程度。天井のビニールの端も、この妻面のビニペットレールで固定します。Step12. 天井にビニールを張る
まず、アーチパイプの上にビニールを被せます。次にビニールの裾をStep8で設置したビニペットレール(アーチパイプ肩部)の溝に入れて、上からビニペットスプリングで押さえていきます。妻面のビニールの余りは、妻面のビニペットレールに固定します。ビニールを破かないよう、慎重に作業しよう
風がある日を避け、二人以上で作業するのがポイント。天井ビニールは面積も大きいため風が吹くと危険です、無風のときに一気に張ってしまいましょう。ビニールハウスの天井に!厚さ0.1mm×幅7m×長さ21m農業用ビニール
Step13. ビニールの腰板を張る
Step8で地表から40cmの場所にビニペットレールを取り付けましたが、ここにもビニールの端を入れ、ビニペットスプリングで押さえます。もう片方の端は地中に埋めます。Step14. 換気を行う「巻き上げ」を作る
換気のための「巻き上げ」も作ってしまいましょう。奥行と同じ長さのビニールを肩部のビニペットレールに固定します。巻き上げハンドルは、ビニールハウス本体から50cm程度離した場所に支柱を立て、そこに固定します。巻き上げ用の直管パイプをハンドルに接続し、最後に直管パイプと巻き上げビニールをパッカーで固定すれば完成です。ハウスサイド巻き上げ機50m対応2個入り
シンセイ ハウスサイド用 マキアゲ機
奥行50mまで巻き上げ可能な巻き上げ機です。2個セットで両サイドからの換気が簡単に行えます。直管パイプ19mm径および22mm径に対応です。
内容 | 2個セット |
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サイズ | 奥行50m×巻上幅1m |
巻き上げビニールを直管パイプに固定!パッカー10個入り×5セット
Step15. マイカ線で巻き上げビニールを風から守る!
「マイカ」をビニペットレールに取り付け、マイカ線をマイカに通しジグザグに張っていきます。被膜資材をしっかり押さえる「マイカ線」幅10mm×長さ300m
マイカ線を固定する専用金具「マイカ」100個入り
長い作業でしたが、これでビニールハウス本体は完成です。
ビニールハウスを守るための風対策の方法とは?
完成したら、風対策も行います。天井が飛ばされないようにマイカ線で押さえたり、防風ネットを設置したりすることでビニールハウスを守ることができます。ビニールハウスの天井を押さえるには?
天井から胴体にかけて何本ものマイカ線が巻かれているのを見たことがありますか?これは、風でビニールが膨らまないように押さえる役割を果たしています。マイカ線の端は地面に固定した鋼管などに巻きつけると強度が増します。この鋼管をスクリューアンカーで固定すると、さらに丈夫になります。強風から守る!スクリューアンカー(羽根型)
スクリューアンカー 羽根型