症状からわかるホウレンソウの害虫

ホウレンソウの葉や根を食害し、被害をもたらす害虫。加害部位とそこに現れる被害症状から、害虫そのものは見えなくても原因を判別できるよう、現れる部位ごとのホウレンソウの被害や症状を説明します。


葉が展開したホウレンソウ

出典:Flickr (Photo by Nickel Lietzau
霜や寒さにさらされることで甘みが増すホウレンソウは冬が旬ですが、周年栽培することができる作物です。また、ほかの葉物野菜(主にアブラナ科)と比べてみても、被害を及ぼす害虫の種類が少ないので、新規就農時の栽培作物の候補としておすすめです。しかし、生育初期に病害虫の被害を受けてしまうと欠株になることが多く、確実に収穫するためには、生育初期から病害虫の防除対策が欠かせません。

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ホウレンソウの葉・茎に被害を及ぼす害虫

ここではホウレンソウの葉や茎を加害する害虫をその被害の様子と合わせて紹介します。

アブラムシ類

ホウレンソウに寄生したアブラムシ

【害虫名】
モモアカアブラムシなど
【食害の様子】
葉に集団で寄生し吸汁加害します。特に若い葉を好んで吸汁することが多く、被害部分は縮れたり奇形になったりします。また、間接的な被害として、アブラムシ類の排泄物に発生する「すす病」や、ウイルス媒介によってモザイク病を発症させます。
【予防と対策】
アブラムシ類を駆除・防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「チェス顆粒水和剤」「モスピラン粒剤」「コルト顆粒水和剤」はホウレンソウには使用できません。

▼すす病のことならこちらをご覧ください。

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シロオビノメイガ

シロオビノメイガの食害を受けたホウレンソウの葉

【害虫名】
シロオビノメイガ
【食害の様子】
主に夏から秋にかけて多発します。幼虫は葉裏から表皮を残して食害するため、食害痕は白く透けたようになり、後に破れて穴があきます。成長した幼虫は糸を吐き、葉を折り曲げたりつづったりしながら食害します。
【予防と対策】
アカザ科、ヒユ科、スベリヒユ科などの植物を好み、その種類の雑草から発生して圃場に侵入することが多いため、周辺の雑草管理を適切に行い、防虫ネットを設置して成虫の侵入を防ぎましょう。


ヨトウムシ類

ハスモンヨトウに加害されたホウレンソウ葉

【害虫名】
ハスモンヨトウ、ヨトウガなど
【食害の様子】
若齢幼虫は葉裏に集団で寄生し、表皮を残して食害するので食害痕は白く透けたようになります。成長とともに食害量が増え、中齢~老齢幼虫になると葉に穴をあけて食い荒らし、葉をボロボロにしてしまいます。
若齢幼虫による被害はシロオビノメイガと似ていますが、艶のある淡緑色のシロオビノメイガの若齢幼虫が単独で行動して食害するのに対し、ヨトウムシ類の若齢幼虫の体色は艶がなく集団で加害することから区別することができます。
【予防と対策】
ヨトウムシ類を駆除・防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「スピノエース顆粒水和剤」はホウレンソウには使用できますが、ヨトウムシ類の適用はありません。


ダニ類

ホウレンソウケナガコナダニによる加害を受けたホウレンソウ葉

【害虫名】
ホウレンソウケナガコナダニ、オオケナガコナダニ、ニセケナガコナダニなど
【食害の様子】
土壌に生息している微小なダニ類が株に侵入し、葉や中心部分などを加害します。加害直後は気付きにくいのですが、被害を受けた葉は生育とともにこぶ状の小突起が現れ、萎縮して奇形葉となります。多発すると中心部分が芯止まり症状となることもあります。
【予防と対策】
前作の残渣(ざんさ)や未完熟の堆肥から発生、侵入することが多いので、その処分を適切に行い、施用量は最小限にします。
また、コナダニは熱に弱い性質があるため、太陽熱を利用した土壌消毒などが有効です。

▼熱を利用した土壌消毒のことならこちらをご覧ください。

ホウレンソウの葉・茎を食害するほかの注意すべき害虫

上記の害虫以外にもホウレンソウの茎・葉に発生することがある害虫について紹介します。

アザミウマ類

【害虫名】
ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマなど
【食害の様子】
幼虫や成虫が葉に寄生し吸汁被害をもたらします。生長点付近や新葉が加害を受けると、葉が展開できなくなり、萎縮して奇形となります。すでに展開した葉が加害を受けると、吸汁によって葉の表皮が張り付いたようになり、特に葉表では葉脈に沿ってカスリ状の痕が残ります。
【予防と対策】
アザミウマ類を駆除・防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「コテツフロアブル」「ディアナSC」はホウレンソウには使用できますが、アザミウマ類の適用はありません。また、「モスピラン粒剤」「モベントフロアブル」はホウレンソウには使用できません。


ハモグリバエ類

【害虫名】
アシグロハモグリバエなど
【食害の様子】
雌成虫は産卵や吸汁のために葉に穴をあけるため、その部分が白く色の抜けた小さな斑点となります。ふ化した幼虫は葉の内部に潜り込み、内部の葉肉を食い進むため不規則な白い線状の食害痕が残ります。特に葉裏に被害が目立つことが多く、多発すると葉が枯れてしまいます。
【予防と対策】
ハモグリバエ類を駆除・防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「プレバソンフロアブル5」「アルバリン粒剤」「アファーム乳剤」はホウレンソウには使用できますが、ハモグリバエ類の適用はありません。


ハコベハナバエ

【害虫名】
ハコベハナバエ
【食害の様子】
幼虫が葉の内部に潜り、表皮を残して葉肉を広く食害します。被害部分は白変し袋状(幼虫が潜った痕)となって、最終的には萎れて黄化してしまいます。生長点付近に潜り込むと芯止まり症状を引き起こすこともあります。
【予防と対策】
防虫ネットを利用することで、成虫の侵入を防ぎます。またナデシコ科の雑草などにも寄生するので周辺の雑草管理を適切に行います。


ホウレンソウの根に被害を及ぼす害虫

ここではホウレンソウの根を加害する害虫をその被害の様子と合わせて紹介します。

ネキリムシ類

【害虫名】
カブラヤガなど
【食害の様子】
昼間地中に潜んだ幼虫が夜間出てきて、幼苗の地際の茎などを食害して切り倒してしまいます。
【予防と対策】
ネキリムシ類を駆除・防除する方法
※上記リンク先の記事で紹介されている「サンケイデナポン5%ベイト」「家庭園芸用GFオルトラン粒剤」はホウレンソウには使用できません。


ヤギシロトビムシ

【害虫名】
ヤギシロトビムシ
【食害の様子】
成虫や幼虫が土中に潜み、発芽間もない幼芽や幼根を食害するので、芽がでなかったり立枯れ症状を起こしたりします。被害株は黄化して生育不良になり、さらに被害が進むと株全体が枯死してしまいます。
【予防と対策】
夏は幼虫の状態で休眠するため、秋から春にかけての発生が多くなります。種から発芽するまでの期間が長いと、土中に潜むヤギシロトビムシの加害を受けやすいので、発芽適温などを考慮して播種のタイミングを調整しましょう。


タネバエ類

【害虫名】
タネバエなど
【食害の様子】
幼虫が地中に潜み、種子や発芽後間もない根の部分を食害します。被害を受けると発芽できず、欠株となってしまうので大きな損害となります。
【予防と対策】
タネバエを誘引してしまう臭いの強い有機肥料や鶏ふんなどの施用はなるべく控えましょう。また登録のある農薬を使用する際には、播種時に種のまき溝、苗の植え穴、あるいは圃場全面の土壌と混和しましょう。


ホウレンソウは生育初期の害虫被害に要注意

露が付着したホウレンソウの葉
出典:Flickr (Photo by Jason Bachman
ホウレンソウ栽培において注意する害虫は、アブラムシやヨトウムシ、シロオビノメイガ、ホウレンソウケナガコナダニ、タネバエなどです。特に幼苗期や発芽直後を好んで加害するホウレンソウケナガコナダニやタネバエに食害されると発芽することすらできません。また、発芽できたとしても生育初期に食害を受けると、株そのものが育たずに大きな損失となることもあります。ホウレンソウの害虫が発生しやすい未熟な堆肥の施用を避け、除草管理など予防対策をしっかり行いましょう。

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村田 康允
村田 康允

大阪府茨木市出身。大学院農学研究科で農業害虫を扱った研究に取り組み、博士号を取得。国際学会・ワークショップや応用研究プロジェクトなどに積極的に参加。 幼少期から持つ生物への興味とこれまでの経験を活かして、栽培・農薬・害虫などの記事編集を担当。 好きなことは音楽で遊ぶこと。

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