ハウス栽培で虫や病気が激発して困っているときは「蒸し込み」がおすすめです。蒸し込みの方法や防除可能な病害虫、蒸し込み後に使いたいおすすめ薬剤などについて詳しく紹介します。
蒸し込みとは
夏の高温期を利用して、ハウス内にいる病害虫の殺菌、殺虫を目的にハウスを締め切って行う「蒸し込み」は、太陽熱という自然状況を活用し、高い室温で病害虫を防除する大変お得な方法です。▼ハウスについてはこちらの記事もご覧ください
蒸し込みで殺菌、防除できる病害虫は?
蒸し込み処理をすることで、害虫だけでなく、病原菌や雑草の種も死滅させることが可能です。防除可能な害虫
蒸し込みで防除効果が高いといわれる害虫について説明します。アザミウマ類・ハモグリバエ類・コナジラミ類
「黄化えそ病」を媒介するアザミウマ類やハモグリバエ類、コナジラミ類は、温度が40℃以上の環境のもと10日間以上で死滅します。▼黄化えそ病やアザミウマ類のことならこちらをご覧ください。
▼ハモグリバエ類のことならこちらをご覧ください。
タバココナジラミ
タバココナジラミが媒介するウイルス病の「トマト黄化葉巻病」は、トマトの矮化を起こし近年トマト産地で猛威を奮っています。栽培終了後に殺虫せずにトマトの残渣(ざんさ)を外に出すと、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV)を媒介するタバココナジラミが一斉に周囲に飛び立ち、周辺の施設や露地栽培の畑ヘウイルス病を伝播してしまいます。
また、ハウス近くの雑草や野良トマトで生息し、栽培が始まるとハウスへ戻ってくる可能性もあります。
栽培終了後にトマトの残渣を外に出す前に、ハウスを締め切って蒸し込みを行い、タバココナジラミを殺虫しましょう。
※残渣とは枯れた植物や落ち葉のこと。
▼タバココナジラミやトマト黄化葉巻病のことならこちらをご覧ください。
殺菌可能な病気
蒸し込みは、空気中や土壌表面にいる病原菌にも効果があります。うどんこ病、灰色かび病、さび病、白さび病など
多犯性の病害で、多くの植物の葉、茎、果実などに感染する糸状菌(カビ)による病気です。▼うどんこ病、灰色かび病、さび病、白さび病のことならこちらをご覧ください。
防除が難しい害虫
ハダニ類は高温に強いため、あまり効果は得られません。▼ハダニ類のことならこちらをご覧ください。
土壌病原菌の殺菌は期待できない
ハウス内の温度が高温になっても、土壌の温度(地温)までは十分に上がらないため、土壌中に存在する病原菌には効果は期待できません。特に青枯病、軟腐病など土壌の深い所に存在する病原菌にはほとんど効き目はありません。▼青枯病、軟腐病のことならこちらをご覧ください。
蒸し込みの方法
蒸し込みの方法について、時期と手順を解説します。時期
7〜9月(ハウスを締め切って40℃以上になる日が10日続く時期)。期間
天候によって期間は前後しますが、目安としてコナジラミ類やハモグリバエ類などの殺虫が目的で、蛹の期間も考慮に入れると10日は必要です。手順
蒸し込みの手順について説明します。1. 片付け、除草
栽培終了後に作物の根もとを切るか根を引き抜きます。トマトなど誘引されているものはそのまま根もとを切ります。雑草は抜くか除草剤で枯らしておきます。※害虫のエサとなる植物ごと枯れさせることで、より殺虫効果が期待できます。
2. ハウスを密閉
ハウス内温度が40℃を超えるように、天窓、側窓、谷換気、入り口などハウス開口部は全て締め切り完全に密閉します。10日以上そのまま放置します。
※ガラスやビニールに破れている箇所がある場合はビニールや養生テープを貼るなどして応急処置します。
3. ハウスを開放、残渣を処理する
ハウスを開放して残渣を外に持ち出し、適切に処理します。栽培中に蒸し込む方法もある?
栽培途中でどうしても虫が増え過ぎてしまったときや病気を一網打尽にしたい場合、植物の生育に影響の無い範囲で蒸しこむ方法もあります。栽培終了後の長期間の蒸し込みよりは殺虫効果は劣りますが、農薬の代わりと考えると経済的です。
栽培している植物の特性によりますが短時間の暑さに耐えられる植物なら効果が高いと言えます。
コナジラミやアザミウマなどの害虫は50℃で1時間、うどんこ病や灰色かび病などの病気は45℃で2時間で死滅します。
※植物の生長に影響が出る恐れがありますので、各種指導機関に相談しながら十分に注意して行ってください。
※土壌中の病害虫には効果が無いため、農薬防除は引き続き行いましょう。
蒸し込みの注意点
蒸し込みを行う際の注意点です。1. 設備類はなるべく外に避難
蒸し込み作業中のハウスは60℃以上の高温になることもあるため、機械類やビニールが故障または変形する場合があります。外に持ち出せる物はなるべく持ち出し、遮光をするなどの対策をしてからハウスを締め切りましょう。天窓を開けながら蒸し込みする方法
抜き取った植物にビニールをかけて放置する方法で、ビニールの下部分のみ高温にして蒸し込みを行う方法もあります。
その場合は天窓は開けたままで作業可能なので、ハウス内の温度は通常の蒸し込みより上がらず、機械類やビニールなどの設備を傷める心配はありません。
2. 蒸し込み後も薬剤による防除を
蒸し込みで一旦は害虫を防除することはできたとしても、ハウスの入り口を解放した後、また外から害虫が飛来してくるため効果は長続きしません。農薬(殺虫剤)による総合的な病害虫の防除が必要です。※農薬使用の際は必ず作物登録、使用方法をラベルで確認してください。地域の防除指導機関やJAなどの使用基準を守り施用してください。
▼殺虫剤のことならこちらをご覧ください。
定植時から害虫の総合防除!
定植時に植え穴に混ぜるなどの使い方で、栽培初期に害虫から作物を守ることができます。アザミウマ、ハモグリバエの防除におすすめ
栽培中の防除ローテーションに組み込むことがおすすめです。病気の総合防除におすすめ、定期的な散布がポイント
多くの病気、作物に登録があり、総合的防除剤のひとつとして使用できます。予防効果が高い保護殺菌剤で、定期的な散布がおすすめです。
▼農薬についてはこちらをご覧ください。