カルシウム欠乏症とは、春から夏の高温乾燥時期や肥料の欠乏などにより、植物の葉先や芽先、果実に起こる生理障害の一つです。そんなカルシウム欠乏症の主な症状や発症を防ぐ管理方法を紹介します。
カルシウム欠乏症の主な症状
「葉の縁が茶色く枯れている」「果実の尻が黒くなっている」「新葉が奇形になる」などの症状が現れたときはカルシウム欠乏症を疑いましょう。
カルシウムは水と共に植物の各所に分配されるので、葉先や芽先、果実など、植物の根から離れた部分でカルシウム欠乏の影響が顕著にあらわれます。
また、一度分配されるとその場から移動せず、不足している場所に再分配されないことから、新しく細胞が作られる葉先や芽先、果実で不足してしまい障害が起こります。
葉の症状
葉の部位によって現れる症状が異なります。
葉の縁「チップバーン」
チップバーンは、イチゴやレタスなどの葉の縁が茶色く変色し枯れる症状です。
イチゴでは葉の縁に「溢液(いつえき)」とよばれる水滴がついていることがありますが、これにもカルシウムが含まれています。さまざまな環境要因で溢液が減少することから、新葉でカルシウムが不足しチップバーンが発生します。
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葉の内側「芯腐れ」
ハクサイやキャベツ、タマネギ、レタスなどの結球する作物では、芯腐れといって内側の葉が茶色く腐る症状が発生します。
カルシウムは植物の蒸散と水分の移動に伴って移動しますが、外葉の方が蒸散量が多くなるため、カルシウムは外葉に分配されます。
結球している内側の葉は蒸散が少ないためにカルシウムの移動量が少なく、その部分に細胞の壊死が生じて心腐れが発生します。
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芽の症状
芽は褐色に変色して縮れなどの変形を起こし、生育が抑制されます。
果実の症状
トマトの「尻腐れ」、サトイモの「芽つぶれ」などが発生します。
トマト・ミニトマト「尻腐れ」
果実の先端が黒く変色し硬化する尻腐れ症状が発生します。
カルシウムは植物の蒸散と水分の移動に伴って移動しますが、果実表面からの蒸散は少ないことから、果実内部でカルシウムが欠乏し尻腐れが発生します。
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サトイモ「芽つぶれ」
子いもや孫いもで発生し、生長点の発育が止まったり、頂芽が平面になって陥没することがあります。
※頂芽とは、植物の主茎の先端の芽の部分。
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カルシウム欠乏症の発症原因
カルシウムは植物の生長に欠かせない栄養素の一つで、運ばれたカルシウムは植物組織を維持する細胞壁や細胞膜の生成などに使われたり、根の生育を促進する働きもします。
このカルシウムが不足すると上記のようなトマトのしり腐れ果、ハクサイの心腐れなどの生理障害が発生します。
カルシウム欠乏症の5つの発症原因
植物がカルシウム欠乏を起こす主な5つの原因を説明します。
1. カルシウム肥料の不足
土壌や水耕栽培などの培地の中に、単純にカルシウム肥料が不足している場合に欠乏症状が起こります。
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2. 乾燥による水分不足
カルシウムは水と一緒に根から吸収されますが、土壌が乾燥して水が不足していると、カルシウムは根から吸収することができません。
3. 高温、強日射による蒸散不良
外気温が高温であったり、強い日射では植物の蒸散がうまくいきません。蒸散が上手にできないことで根から水分を吸収できず、結果植物体内でカルシウムの不足が起こります。
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4. 不均衡な土壌環境
土壌中の窒素分や塩基類が高濃度によるバランスの悪い土壌環境は、根の働きを弱めカルシウムの吸収を阻害します。
※塩基類とは肥料に含まれ土壌中に溶出したナトリウムやマグネシウムなどの成分のこと。電気伝導度(EC)を測定することで土壌中の塩類濃度の指標とすることができます。土壌の硝酸隊窒素が多いとECも相関して高くなります。
▼ECについてはこちらをご覧ください
5. 劣悪な土壌環境や害虫による根傷み
土壌の過湿や過乾燥、病害虫の食害などによる根傷みで根の機能が弱ると、肥料の吸収が抑制されカルシウム欠乏が起こります。
カルシウム欠乏症を防ぐ有効な管理方法
カルシウム欠乏症に有効な対策について説明します。あらかじめカルシウム欠乏症を発症させないように適切な管理を行い、発生が見られた場合はこれ以上重症化しないよう注意しましょう。
カルシウム欠乏症を発症させない管理方法
カルシウム欠乏症の予防方法について説明します。
1. 適切な灌水
土壌や培地の水分が不足しないように、灌水(かんすい)は適宜、適量を心がけます。
春先の日差しが強くなり気温が上がる時期に、冬の灌水をそのまま続けていると水分量が少なくカルシウム欠乏症が出ることがあります。
露地栽培は4月、ハウス栽培は2月末から3月は季節の変わり目と考えて、一気に灌水量を増やしましょう。
また、ハウス栽培では雨で灌水を止めている際、培地がカラカラに乾いている場合があります。翌日急に晴れると、培地の水分が足りずに萎(しお)れが生じカルシウム欠乏症の原因となりますので、早朝もしくは前日の夕方から培地を十分に湿らせておきましょう。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えること。
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2. 保水性を高める
水はけの良過ぎる土壌は、堆肥や腐植土などを投入して保水性を高めるか、土壌表面からの蒸散を抑制するためにマルチを敷くこともおすすめです。
▼保水性を高める堆肥やマルチのことならこちらをご覧ください。
3. 葉面散布などのカルシウム肥料の施肥
適切な量のカルシウムを施肥します。元肥で足りていない場合は、追加の液肥や葉面散布肥料もありますので適宜使用しましょう。
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4. 適正な施肥量
土壌中の窒素分や塩基類が多いとカルシウム吸収が阻害されるため、施肥は適量を行います。施肥量を決定する前に土壌分析を行うと効果的です。
▼土壌の状態の確認から元肥・追肥までの流れについてはこちらをご覧ください。
5. 根傷みの予防
根傷みが起こると、根の機能が弱まります。根に傷口を作るセンチュウなどの対策を行いましょう。
センチュウ対策には、えん麦やマリーゴールドなどの緑肥作物を栽培すると効果があるほか、椿油粕を土壌に混ぜるとサポニンという成分がセンチュウを抑制します。
※センチュウとは主に土壌に生息し、植物の根を侵す害虫。体長は0.5~3mmで紡錘形(ぼうすいけい)をしており、口に槍(やり)状の口針を持つ。
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カルシウム欠乏症対策に何より大事なのは根からの吸収促進
カルシウム欠乏症はカルシウムの不足、および根からの吸収不足で発生します。適正な施肥と灌水、また根傷みしない栽培管理でカルシウム不足を予防しましょう。春から夏の暑い時期は、水分不足と強日射に気をつけます。液肥や葉面散布剤を使ってカルシウムを補いましょう。










































