ヨトウムシ類を駆除・防除する方法

農作物に重大な被害を及ぼす農業害虫のヨトウムシ類は、薬剤抵抗性が発達しやすく、防除に使用する殺虫剤には効果的なローテーション散布が求められます。ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウを中心に、被害の様子や駆除・防除の方法を紹介します。


イチゴの葉を食害するハスモンヨトウの若齢幼虫

ヨトウムシ類は、農作物に重大な被害を及ぼす農業害虫です。成虫が葉の裏に一塊りの卵塊を産み付けると、卵からふ化した幼虫が作物を集団で食害します。若齢幼虫は表皮を残して食害しますが、中齢〜老齢幼虫になると成長とともに食べる量が多くなり、被害に気が付いたころには葉脈を残して食べ尽くされていることも。また、薬剤抵抗性が発達しやすいという一面もあるため、ヨトウムシ類の駆除・防除に使用する殺虫剤は効果的なローテーション散布が求められます。
本記事ではヨトウムシ類の中でも「ヨトウガ」「シロイチモジヨトウ」「ハスモンヨトウ」を中心に、被害の様子や駆除・防除の方法を紹介します。

ヨトウムシ類とは

アブラナ科を食害するヨトウガ類(ヨトウガ)
Flickr(Photo by:Patrick Clement
ヨトウムシ(夜盗虫)類は、昼間は作物の株元に潜み、夜に盗人のように葉を食べるという生態が名前の由来となったチョウ(鱗翅)目ヤガ科の害虫です。

農作物に被害を与える主なヨトウムシ類の種類

「ヨトウ」という名前がつく農業害虫には「ヨトウガ」「シロイチモジヨトウ」「ハスモンヨトウ」「ツマジロクサヨトウ」「アフリカシロナヨトウ」「クサシロキヨトウ」「アワヨトウ」「イネヨトウ」などがいますが、農業害虫においてヨトウムシ類といえば主に「ヨトウガ」「シロイチモジヨトウ」「ハスモンヨトウ」の3種類をさします。

ヨトウムシ類の種類の見分け方

イチゴの葉裏に産み付けられたハスモンヨトウの卵塊 農薬によっては、作物別の適用害虫名が「ハスモンヨトウ」などと限定されていることがあるので、ヨトウムシ類の種類を特定できるように下記の表に「ヨトウガ」「シロイチモジヨトウ」「ハスモンヨトウ」についてまとめました。
ヨトウガ シロイチモジヨトウ ハスモンヨトウ
 学名  Mamestra brassicae  Spodoptera exigua(Hübner)  Spodoptera litura(Fabricius)
 卵  まんじゅう型  球形  まんじゅう型
 卵塊  毛で覆われていない  灰白色〜黄白色の毛で覆われる  黄土色の毛で覆われる
 若齢幼虫 ・シャクトリムシのように歩く
・腹脚は4対
・狭い隙間を好む
・体の側面に白〜黄色のすじ
 頭の後ろに黒い一対の斑紋

 
 老齢幼虫の体長  50mm 30mm 40mm
 成虫の体長  20mm  12mm  15〜20mm
 開張時  45mm  28mm  40mm
ヨトウムシ類の老齢幼虫は、主に淡褐色〜濃褐色、または灰暗緑色をしています。しかし、個体差があるため体色では判別がつきづらい傾向があります。そのため、成虫が産み付けた卵塊の様子や、若齢期の幼虫の特徴から見分けるとわかりやすいでしょう。

ヨトウムシ類とよく似た害虫との見分け方のポイント!
【ウワバ類】
・卵は一つずつ産卵(まれに2〜3粉)
・シャクトリムシのように歩くが、ウワバ類の腹脚は2対しかない
【オオタバコガ】
オオタバコガの幼虫は黒い斑点から毛が生えている
【アオムシ】
アオムシの卵は卵塊ではなく、一つずつ産み付けられる
【コナガ】
コナガは老齢幼虫でも10mmと小さい

▼オオタバコガやアオムシ、コナガのことならこちらをご覧ください。

ヨトウムシ類の生態

ヨトウムシ類は種類によって発生時期や回数が異なります。

発生時期・回数

【ヨトウガ】
・成虫:春季(4~6月)と秋季(9~11月)の年2回
・幼虫:6〜10月

【シロイチモジヨトウ・ハスモンヨトウ】
・成虫:年5〜6回発生
・幼虫:6〜11月

生息場所

卵は一塊りで葉裏に産み付けられます。ふ化した幼虫は団体で葉裏に寄生しますが、中齢以降になると分散して作物の地際部などに潜み、夜になると活動を開始して食害し出します。
シロイチモジヨトウは、狭い隙間に入り込んだり、葉を自らつづり合わせたりして内側から食害します。

繁殖

ヨトウムシ類の雌成虫は一度に数十〜数百個以上の卵を葉裏に産み付けます。

休眠

暖地では夏季、寒地では冬季に蛹(さなぎ)になって休眠しますが、休眠性のない種類は幼虫の状態で越冬します。


ヨトウムシ類の被害の特徴

ヨトウムシ類の被害状況は、ほかの害虫の特徴に類似している点も多くみられます。

若齢幼虫

ふ化したハスモンヨトウの幼虫がナスの葉裏を食害 若齢幼虫が集団で葉裏から表皮を残して食害します。

中齢〜老齢幼虫

イチゴの葉を食害するハスモンヨトウの中齢以降の幼虫 中齢〜老齢幼虫は葉脈を残して著しく葉を食い荒らします。キャベツなどでは結球内に入り込んで食害します。

ヨトウムシ類が好む植物

ヨトウムシ類は広範囲の植物を食害しますが、一番被害が多いのはアブラナ科のキャベツなどの葉菜類です。なかでもヨトウガは、イネ科以外のほとんどの野菜類を食害します。

ヨトウムシ類に有効な5つの対策

ナスの葉を食害するハスモンヨトウの幼虫 ヨトウムシ類は寄生する作物の種類が多いので、栽培施設周辺で複数の作物や花を育てているとそこから飛来して繁殖します。また、雑草が茂る緑地付近の露地・施設栽培は、ヨトウムシ類の発生、被害に注意が必要です。

1. 残渣の処理

ヨトウムシ類の卵は葉に産み付けられることから、整枝や摘葉、残渣(ざんさ)には卵塊がある可能性があります。不要な茎葉は圃場の外に持ち出して処理しましょう。
※残渣とは、圃場などに残った生育(栽培)を終え枯れた植物体。

2. 防虫ネットを利用する

ヨトウムシ類には目合1mm以下の防虫ネット(ヨトウガ類には2〜4mm以下)を設置します。ハウス栽培では側面や出入口、妻面、換気扇口、天窓など開口部に、露地栽培では作物をしっかり防虫ネットで被覆しましょう。
このとき、より目合いの小さい防虫ネットを使用することでヨトウムシ類の侵入を防ぐことは可能ですが、反面ハウス内の風通しが悪くなったり、湿気がこもったりすることも。新たな病害虫を発生させる要因ともなるので、最適な目合いの防虫ネットを使用しましょう。

ITEM
サンサンネット EX2000
ヨトウムシ類の防除には目合1mm以下のものを。
透水性、透光性、通気性に優れた防虫ネットです。

・目合い:1mm
・サイズ:巾230cm×長さ100m


ITEM
サンサンネット N7000
ヨトウガ類には2〜4mm以下のもので防除しましょう。

・目合い:2mm
・サイズ:巾200cm×長さ100m

3. 黄色蛍光灯

黄色蛍光灯を設置することで夜間に活動するヨトウムシ類の忌避に効果があります。
活動を制御するには最低1ルクス以上の光が必要なので、設置する黄色蛍光灯の位置や高さについて調整が必要です。せっかく光を当てても、葉の影になってしまうこともあります。作物ごとに黄色蛍光灯を当てる向きにも配慮しましょう。
また、ホウレンソウなど作物によっては日長感受性の問題から点灯には十分注意が必要です。

▼ホウレンソウの日長条件のことならこちらをご覧ください。

ITEM
黄色蛍光ランプ FL40SYF
虫の飛来を抑えるために果樹園のほか食品工場や畜舎でも使用される黄色蛍光ランプです。

・管長:1,198mm
・管径:32.5mm
・質量:273g
・口金:G13
・ランプ電流:0.42A
・全光束:2,200lm
・定格寿命:10,000時間



4. 性フェロモン剤

通常ヨトウムシ類の雄は雌の匂い(性フェロモン)をたよりに交尾の相手を探し当てます。
性フェロモン剤は、性フェロモンを人工的に合成した合成性フェロモンによって、雄が本物の雌にたどり着けないという「交信かく乱」を目的として作られたものです。
この性フェロモン剤は農薬取締法に基づき「農薬」として登録されていますが、毒性が極めて低いことから有機JASでも使用可能。しかも効果が持続する期間が長いという特徴があります。
※使用する作物やヨトウムシ類の種類によってロープ状やチューブ(コンフューザーV・ヨトウコンーS・ヨトウコンーH、コナガコンープラス)などの性フェロモン剤もあります。

ITEM
フェロディンSL ファネルトラップ
ハスモンヨトウの雌成虫が放出する性フェロモンを製剤化した製品で、雄成虫を大量に誘引します。
トラップとの併用により雄成虫を捕殺します。

【フェロディンSL】
・個数:2個
・有効成分:リトルアA(4.55mg/1個)、リトルアB(0.45mg/1個)
【ファネルトラップ】
・個数:1個

5. 農薬(殺虫剤)で駆除

老齢幼虫は日中作物の地際に潜むため、農薬もかかりづらいので、殺虫剤を使用した駆除対策はできるだけ葉に寄生する若齢幼虫期に行うようにしましょう。

ITEM
ディアナSC
チョウ目、アザミウマ目、ハエ目などの害虫の防除に効果を発揮します。

・容量:100ml
・有効成分:スピネトラム(11.7%)


ITEM
スピノエース顆粒水和剤
微生物がつくる天然由来の殺虫剤で、環境への負荷が比較的少なく、散布後は太陽光線や微生物の働きにより、水や炭酸ガスなどに代謝されます。 
速効性、残効性に優れ難防除害虫にも高い効果を示します。

・容量:100g
・有効成分:スピノサド(25.0%)


ITEM
ゼンターリ顆粒水和剤
薬剤抵抗性の高いコナガやヨトウムシに対しても効果が期待できます。
マルハナバチ、ミツバチ、天敵などへの影響が少なく、環境に優しい薬剤です。
主な野菜類で使用可能ですが、ハクサイには使うことはできません。

・容量:100g
・有効成分:バチルス チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素(10.0%)


ITEM
デルフィン顆粒水和剤
天敵類や蜂に影響がなく、害虫の異常増殖(リサージェンス)の心配がありません。
有機農産物にも使用できる生物農薬です。

・容量:100g
・有効成分:バチルス チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素(10.0%)


▼生物農薬のことならこちらをご覧ください。

ヨトウムシ類の薬剤抵抗性

ヨトウムシ類は、農薬に対する耐性が強くなってきています。シロイチモジヨトウとハスモンヨトウなどで有機リン剤、カーバメイト剤、合成ピレスロイド剤などの薬剤抵抗性が報告されています。

ローテンション散布を心がける

同じ農薬を続けて使用せず、ヨトウムシ類が薬剤抵抗性を持ちづらくなるように異なる作用性の農薬をローテーション散布しましょう。

▼薬剤抵抗性やローテーション散布のことならこちらをご覧ください。

ヨトウムシ類の駆除は総合的な防除対策で挑む!

イチゴの葉を食害するハスモンヨトウの幼虫 ヨトウムシ類は野菜だけでなく果樹や花きなど多くの植物を食害する害虫です。卵は卵塊で産み付けられ、ふ化した幼虫は葉裏から食害をはじめると、成長とともに食害量が増え、作物を丸ごと食べ尽くすこともあります。被害が拡大する老齢期には薬剤の効き目が低下したり、薬剤に対する耐性が強くなったりする性質から、交尾をかく乱して産卵を未然に防ぎ、ふ化してしまった幼虫は若齢期のうちに駆除することが求められます。農薬は予防を中心に、防虫ネットや黄色蛍光灯、性フェロモン剤などを併用してヨトウムシ類を総合的に防除しましょう。

紹介されたアイテム

サンサンネット EX2000
サンサンネット N7000
黄色蛍光ランプ FL40SYF
フェロディンSL ファネルトラップ
スピノエース顆粒水和剤
ゼンターリ顆粒水和剤
デルフィン顆粒水和剤

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sana

農業研究センターで6年間、大豆と稲の研究作物の栽培及び実験助手業務に従事。その後、屋上ガーデン・屋上菜園などの管理業務を経て、植物ライターに。植物・園芸サイトやフリーペーパーなどで活動。AGRI PICKでは新規就農者のための野菜の栽培方法や農業経営者の取材を執筆中。

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