ハモグリバエ類を駆除・防除する方法

トマトやキュウリ、エンドウなどの葉に白い線で絵描くように食害するためエカキムシとも呼ばれます。増殖すると葉が真っ白になり、作物の品質や収量が低下し商品価値を失わせるハモグリバエ類の発見のポイントや予防と対策、使用する薬剤について紹介します。


ハモグリバエ 食害

出典:Flickr(photo by Ruokavirasto)
育てている野菜の葉に白い筋がついていたら、ハモグリバエ類が発生しているかもしれません。
トマト、ダイズ、インゲン、チンゲンサイ、キュウリ、メロンなどの葉に発生し食害するハモグリバエ類の発見のポイントや予防と対策、使用する薬剤について初心者の方にもわかりやすく紹介します。

ハモグリバエ類とは

ハモグリバエ
出典:wikimedia
ハモグリバエ類は、葉に白い線でクネクネと蛇行した筋や不規則に途切れている筋、または渦巻きを絵描くように食害するため「エカキムシ」とも呼ばれます。
増殖すると葉が真っ白になり、株の生育も悪くなるため、作物の品質や収量が低下し商品価値を失います。

ハモグリバエ類の種類

ハモグリバエ類の中で、農業害虫として問題になっているのは下記の6種類。
属名が同じLiriomyza属のマメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、アシグロハモグリバエ、ナスハモグリバエは、形態や加害の方法が似ているので判別するのが難しい害虫です。
マメハモグリバエやトマトハモグリバエはアメリカ原産の外来種で寄主作物の範囲が広く、薬剤抵抗性を発達させた個体群が世界中で問題となっています。
日本国内では1990年にマメハモグリバエが、1999年にトマトハモグリバエが確認され全国へと広がったことで、農業害虫として今まで目立たなかったハモグリバエ類の存在が大きくなりました。
ハエ目ハモグリバエ科 属名 種名
 マメハモグリバエ Liriomyza  trifolii
 トマトハモグリバエ  sativae
 ナスハモグリバエ  bryoniae
 アシグロハモグリバエ  huidobrensis
 ネギハモグリバエ  chinensis
 ナモグリバエ Chromatomyia  horticola

◆マメハモグリバエ

多くの植物に寄生しますが、イネ科とバラ科、ヒルガオ科には寄生しないという特徴があります。
1990年に静岡県、愛知県で発見されてから、キクやトマトに多大な被害をもたらしましたが、2000年以降被害は減少傾向にあるようです。

◆トマトハモグリバエ

1999年沖縄県で確認されてから、今までハモグリバエ類であまり問題にならなかったウリ科作物にも多発しています。
ほかのハモグリバエ類に比べて、雌の成虫の寿命が長く、産卵数も多いため、現在も猛威をふるっている害虫です。

◆アシグロハモグリバエ

2001年に北海道でホウレンソウや花き類で発生が確認されたアシグロハモグリバエは、ほかのLiriomyza属と加害の方法は似ていますが、成虫の脚がひときわ黒いのが特徴です。

◆ナスハモグリバエ

ナスハモグリバエは、ナモグリバエやネギハモグリバエと同じように、古くから日本にいたハモグリバエ類です。
ナスやアブラナ科のほかに、ナデシコ科のカスミソウで被害が出ています。

◆ネギハモグリバエ

ネギやニラ、タマネギなどのヒガンバナ科(ユリ科)ネギ属のみを食害するハモグリバエ類です。

◆ナモグリバエ

エンドウ、インゲンなどのマメ科やキャベツ、ダイコン、ハクサイなどアブラナ科を好みます。
ほかのハモグリバエ類の発生時期は4〜12月ですが、ナモグリバエは比較的低温性の害虫なので2〜6月、10月以降に発生し盛夏には見られなくなります。
ナモグリバエはChromatomyia属なのでLiriomyza属のハモグリバエ類と見分けがつきやすく、成虫は灰褐色、蛹は黒色、葉の中で蛹になるのがほかのハモグリバエ類との違いです。


ハモグリバエ類の生態

ハモグリバエ 幼虫
出典:wikimedia
ハモグリバエ類は露地栽培では年数回、施設栽培では年10回程度発生します。
施設栽培では周年発生しますが、冬季間の露地では蛹で越冬します。
トマトハモグリバエは、ほかのハモグリバエ類と異なり休眠せず露地では越冬しないといわれていますが、低温環境に強く、増殖能力も高い性質を持っています。

卵の特徴

卵は葉の内部に産み付けられます。
大きさ  長径0.2~0.3mm
 半透明

幼虫の特徴

ハモグリバエ類、幼虫、食害痕、糞
出典:Flickr(photo by Eran Finkle)
うじ状で、葉肉に潜り摂食しながら進むので白い線ができます。白い被害痕には黒い線状の糞が残ります。
大きさ  体長約3mm
 黄褐色

蛹の特徴

形は俵状をしています。Liriomyza属のハモグリバエ類は地表や土の中で蛹(褐色)になりますが、Chromatomyia属のナモグリバエは葉の中で蛹(黒色)になります。
大きさ  体長約2mm
 褐色

成虫の特徴

雌成虫は産卵管で葉に丸い穴を開け、そこからにじみ出た汁を吸います。また一部の穴に卵を産みます。食害痕と産卵痕は、小さな白い斑点となって残ります。
雄成虫は産卵管を持たないので、雌成虫の摂食痕から出る汁液を吸います。
大きさ  体長約2mm
 体:黒色 頭など:黄色

ハモグリバエ類が発生しやすい条件や好む植物

ハモグリバエ トマト
出典:Flickr(photo by Scot Nelson)
ハモグリバエ類の発生しやすい条件について説明します。

発生条件

時期

主に春から晩秋にかけて4〜12月まで発生します。
トマトハモグリバエは9~10月、マメハモグリバエは7~8月、ナスハモグリバエは5~6月の発生が多いです。

気象

暖冬の年は成虫の越冬量が増加するため、春の発生が多くなります。

環境

圃場内または圃場周辺に雑草が多いと、発生源となります。
※圃場とは、田や畑のような農作物を育てる場所のこと。

ハモグリバエ類が好む植物

キク ハモグリバエ
出典:Flickr(photo by Ruokavirasto)
ハモグリバエは種類によって好む作物が異なります。
トマトハモグリバエはハモグリバエ類の被害があまり問題とならなかったウリ科にも発生します。
ハモグリバエ類 好む作物
マメ
ハモグリバエ
 果菜類  キュウリ、メロン、トマト
 葉茎菜類  チンゲンサイ、セロリ
 豆類  ダイズ、インゲン、エンドウ
 草花  キク、ガーベラなど
トマト
ハモグリバエ
 果菜類  キュウリ、カボチャ、トマト
 葉茎菜類  シュンギク、コマツナ、ミブナ
 豆類  ダイズ、インゲン、アズキ
 草花  キク、マリーゴールドなど
アシグロ
ハモグリバエ
 果菜類  カボチャ、キュウリ、トマト
 葉茎菜類  テンサイ、ホウレンソウ、カブ
 豆類  ダイズ
 草花  アスター、アネモネ、プリムラ
ナス
ハモグリバエ
 果菜類  トマト、キュウリ
 葉茎菜類  チンゲンサイ、タマネギ、セロリ
 豆類  エンドウ
 根菜類  ジャガイモ
 草花  ダリアなど
ネギ
ハモグリバエ
 ネギ属  ネギ、アサツキなど
ナモ

グリバエ
 葉茎菜類  レタス、ダイコン、ハクサイ
 豆類  エンドウ、インゲン、ダイズ
 草花  キク、スイートピーなど

ハモグリバエ類に有効な6つの対策

ハモグリバエ類の被害が拡大する前に行う対策について説明します。

1. 圃場周辺の環境整備

雑草に寄生して発生源となっているので、特にキク科の雑草は圃場周辺の雑草管理を徹底します。
※圃場とは、田や畑のような農作物を育てる場所のことです。

2. 黄色粘着テープの利用

ホリバー
出典:Flickr(photo by Ruokavirasto
成虫が黄色に誘引される習性を利用して、黄色粘着テープを設置することも効果があります。
コナジラミやアブラムシなどとの同時防除も可能です。
ITEM
ホリバー(黄色)
害虫が好む色に着色されたプラスチック製粘着板で、コナジラミ類、アブラムシ類、ハモグリバエ類、アザミウマ類等の害虫全般が好むイエローです。
施設内で害虫の発生予察のためにモニタリング用として使用したり、大量捕獲に使用します。

・数量:10枚入り


ITEM
ホリバーロール イエロー
施設栽培ではロールタイプも便利です。
用途に合わせて長さも調整できます。
ホリバーと合わせて使えば効果も確認できます。

・サイズ:15cm×100m


3. 防虫ネット、寒冷紗の利用

防虫ネットや寒冷紗などでハモグリバエ類の成虫の飛来を防ぐことで、幼虫の発生を抑えることができます。
目合いは1mm以下のものをおすすめします。
ITEM
シンセイ 防虫ネット
防虫ネットは外敵から大切な農作物を守ります。
また、透光性・雨通し・強風暖和に優れ、 縦縞のシルバーが太陽光線の反射で大切な農作物を害虫から守る効果があります。
農薬の使用量を減らし、安全安心な野菜を栽培するための代替技術として非常に有効です。

・サイズ:幅180cm×長さ10m
・目あい:1mm目

4. 高温で殺虫

施設栽培では栽培終了後に施設を密閉して太陽熱による蒸し込みを行なって、成虫と幼虫を殺します。
また、太陽熱消毒で土壌中の蛹を殺虫することも効果的です。

5. 農薬(殺虫剤)で駆除

ハモグリバエ類の農薬による対策は、育苗期、定植時の処理と、生育期の成虫に対する農薬散布で行います。
特に夏期は、卵から成虫までのサイクルが早く次々に発生するので、1週間に2〜3回散布することをおすすめします。
※生産者の方は、地域の防除指導機関やJAなどが推奨する効果の高い薬剤を選定し使用基準を守って作物にあった薬剤を使用しましょう。
※家庭菜園の方は、駆除したい虫をしっかり把握したあと、必ず作物にあった薬剤を選びましょう。

育苗時や定植時に施用して予防

育苗期~定植時に施用しておくと、栽培初期のマメハモグリバエ類防除に効果があります。
ITEM
プレバソンフロアブル5
チョウ目をはじめ、ハエ目など防除が必要な幅広い害虫に高い効果を示します。
生育期の散布処理で約2週間、さらに根からの吸収移行性に優れるため、育苗期のセルトレイ・ポット灌注処理により約4週間の長期にわたる効果が期待出来ます。
育苗期のセルトレイ・ポット灌注処理、生育期の散布処理において作物への薬害事例は確認されていません。

・容量:250ml
・有効成分:クロラントラニリプロール(5.0%)

ITEM
アルバリン粒剤
コナジラミ類、ハモグリバエ類、アブラムシ類、アザミウマ類、キスジノミハムシなど広範囲の野菜害虫に優れた効果があります。
根部及び茎葉部から容易に吸収され、高い浸透移行性を有し、茎葉散布、土壌混和処理、育苗箱処理、湛水散布にて速やかに効果を発揮し、十分な残効を示します。
既存剤の薬剤抵抗性害虫にも高い効果を示します。

・容量:1kg
・有効成分:ジノテフラン(1.0%)

生育期にはコレを散布!

成育期にもほかの害虫とあわせて定期的に防除を行いましょう。
ITEM
アファーム乳剤
作物の生育時期を選ばず、害虫の発生に応じた使用が可能。確実な効果が期待できます。
コナガ、アザミウマ類、ダニ類、ハモグリバエ類など、複数の害虫を同時に防除します。
収穫前日数が短く、適用作物も60以上と幅広く使えます。 速やかに分解し、長く残りません。

・容量:100ml
・有効成分:エマメクチン安息香酸塩(1.0%)

6. 自然の力、天敵を利用する

施設栽培では、ハモグリバエ類の自然界の天敵を利用して防除することもできます。
発生初期に天敵寄生蜂のハモグリミドリヒメコバチ剤(製剤名:ミドリヒメ)を利用すると、ハモグリバエ類の爆発的な増殖を抑えることができます。
多発してからでは効果が薄いので、必ず発生初期に使用しましょう。
※ミドリヒメの購入、詳しい使い方はお近くの農協、または農業資材店にご相談ください。

ハモグリバエ類から作物を守るために

ハモグリバエ
出典:wikimedia
ハモグリバエ類は幼虫が葉を食害し、作物の生育を悪くし商品価値を失わせてしまいます。
土壌消毒や誘引テープで発生を防ぐほか、栽培初期から農薬を使用して、効果的に予防しましょう。

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rinko
rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。