ナス | 基本の育て方と本格的な栽培のコツ

農業に興味を持っている方や家庭菜園で本格的に野菜作りをしている方、そしてこれから始める初心者の方にもわかりやすいナスの育て方を紹介!ナス作りに欠かせない土づくりや病害虫、生育障害の原因、収穫適期の見分け方などを説明します。


ナス

撮影:AGRI PICK編集部
野菜を育てた経験がある方なら「育てた野菜を食べる」ことは、何にも代え難い格別のおいしさと感動を与えてくれます。あの採れたてのおいしさを求めて、「もっと野菜のこと、栽培のことを知りたい!」そんな家庭菜園で本格的に野菜作りに励みたい方や、野菜作りのプロを目指した「新規就農」を視野に入れている方に、基本的なナスの育て方と本格的な栽培のコツを紹介します。

ナスについて

撮影:AGRI PICK編集部
原産地であるインドのような熱帯地域では、ナスは多年生植物ですが、日本のような温帯地域では寒い冬の時期に枯れてしまうので一年草として栽培されています。
現在のようにハウス栽培技術のない江戸時代では、寒い時期は油紙障子でハウスのようなものを作り、馬糞や麻屑(あさくず)などを踏み込んだ発酵資材で温度を上げてナスを栽培していたようです。
植物名  ナス
学名  Solanum melongena
英名  Aubergine, Eggplant
科名  ナス科
属名  ナス属
原産地  インド
生育適温  20~30℃
発芽適温  25~30℃

ナスの特徴

ナスの色や形は、白や緑、縞模様、丸や卵型、中長、長形など様々な品種が栽培されています。日本でも古くから栽培されていたため、全国各地にその土地にまつわる伝統野菜として、脈々とナスの栽培が受け継がれています。最近ではイタリアなど海外からの品種も多く市場に参入しており、幅広く和洋中問わず楽しむことができます。

ナスの栽培時期

ナスの苗の植え付け時期を紹介します。育てる地域や栽培する品種によって植え付け時期が異なりますので、苗を購入する時に確認しましょう。
ナス 植え付け 収穫
寒冷地 5~6月 6~10月
中間地 4~5月 6~10月
暖地 4~5月 6~11月
※主に露地栽培の栽培時期。野菜の栽培は、屋外の畑で作物を栽培する「露地栽培」の他に、「温室」や「ビニールハウス」などの施設で栽培する方法があります。

ナスの栽培準備

ナス
出典:写真AC
作付け計画をたて、ナスの苗を注文したら、定植に向けて畑の準備を済ませましょう。

▼ビニールハウスなど設備関係のことならこちらをご覧ください。

ナスの作付け計画

1a(100平方メートル)で336kgほど収穫することができます。
参考HP:農林水産省「平成29年産都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 」

ナスの苗の用意

地域の種苗会社やホームセンターから購入することができます。育てる品種によって株間が異なるため、用意する苗の数も違ってきます。
品種 主な産地
筑陽 熊本、福岡など
くろべえ 群馬、茨城など
千両2号 群馬、茨城など
▼その他のナスの品種のことならこちらをご覧ください。

♦1a(100平方メートル)あたりのナスの苗の本数

(例1)一般的なナスの品種、育苗の場合
1a(100平方メートル)あたり種4~6mlが目安です。
(例2)一般的なナス品種、苗(株数)の場合
1a(100平方メートル)あたり苗90本が目安です。
参考HP:株式会社 三重興農社

ナスの土づくり

排水性、通気性、保水性の整った団粒構造の土質は、微生物が多く住む作物にとって良い土壌です。作物を作る土壌の状態が良ければ、石灰資材など多く投入する必要がない場合もあるので、栽培の前には必ず土壌診断をし、pH、ECなどを測定したうえで、診断結果に基づいた適切な堆肥資材等の散布を心がけましょう。

▼土づくりのことならこちらをご覧ください。


▼土壌診断のことならこちらをご覧ください。

♦ナスの土壌pH

ナスはpH6.0~6.5が最適値です。

♦ナスに適した土壌

ナスは深根性なので土壌に深く根を張ります。土を深耕し、良質の有機物を多く含んだ堆肥を投入して、保水性・保肥性に優れた土づくりを目指しましょう。
また、ナスは連作障害が出やすい作物なので、輪作や病気に強い接木苗を使用するなどの工夫が必要になります。

ナスの肥料

ナスの元肥の目安として10平方メートルあたり窒素250g、リン酸350g、カリ各200g位を施します。

▼肥料のことならこちらをご覧ください。

畝立て

畝幅は70~180cm、畝の高さは圃場の排水性に合わせて調整します(移植機や収穫機を使う場合は、使用する機械の仕様に合わせた畝の向きや高さ、幅にする必要があります)。せっかく与えた水分が流れ出てしまわないように、畝の形は山型よりも台形型にすると良いでしょう。
ナスは水分を多く必要とする作物なので、マルチや敷きわらを使用した栽培がおすすめです。マルチなどを使用することで、乾燥を防ぎ、雨による泥はねや除草の手間も省ける利点があります。

▼マルチ栽培のことならこちらをご覧ください。


▼耕運機、鍬のことならこちらをご覧ください。



ナスの育て方

ナス
出典:Pixabay
畝や苗の準備が整ったら、ナス栽培のスタートです。

植え付け

ナスの植え付けに適した苗は、一番花が咲いたころか、蕾(つぼみ)の苗を選びます。連作障害や病気を防ぐためにも、接木苗をおすすめします。

♦植え付け前は十分な灌水(かんすい)

ナスを植え付けする前は、十分灌水を行い、土に水分を与えます。ナスの苗にも水分をしっかり吸収させます。畝にマルチを貼る場合にも、あらかじめ水分が十分含まれているか確認しましょう。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えることです。灌水ホース、灌水装置など農業でよく使用する言葉なので覚えましょう。


♦植え付けは天気のいい日に!

ナスは高温性の植物のため、特に露地栽培での植え付けは十分に気温が高くなってから、関東などの中間地では4月下旬~5月以降が望ましい時期です。気温が低過ぎる環境での植え付けは避け、天候の良い日に行いましょう。風の強い日や悪天候時の植え付けは、ナスの苗の活着が遅れ、初期生育が悪くなります。

♦株間は50~60cm

株間50~60cmの間隔を空けて植え付けます。その後、ナスの根が活着するまでの約1週間は、土が乾燥状態にならないように管理しましょう。

水やり

ナスの苗が活着したら、根をしっかり生育させるために、萎れない程度に乾燥気味の水やりを心がけます。基本的に水やりは午前中に行います。暑い時期の水やりは、日中を避けて気温の低い早朝か、夕方に行わないと根を痛めてしまいますの注意しましょう。

♦ナスの水やりはたっぷりと

ナスが大きく生育してきたら、今度は樹勢を高めるために水分を増やしていきます。特にナスは他の作物と比べて、水分と肥料を多く必要としますので、水切れや肥料切れを起こさせないよう水やりのタイミングに注意しましょう。

▼土壌水分計のことならこちらをご覧ください。

追肥・中耕・土寄せ

ナスの花
出典:写真AC
ナスの追肥の目安は、10平方メートルあたり窒素130g、リン酸80g、カリ110g位です。
ナスの追肥は定植1週間後から。その後2週間おきに追肥をしていきます。ナスは肥料好きな作物なので、肥料が足りないと生育に顕著に現れます。

◆ナスの肥料切れは花で判断

ナスの花の乳頭が短い場合は、肥料切れまたは水切れのサインです。花が落ちたり、石ナスといって実が硬くなったりしてしまうので、追肥をしてしっかり水分を与えましょう。

▼液肥のことならこちらをご覧ください。

整枝

一般的なナスの整枝方法は、3~4本仕立てですが、ベランダで行う家庭菜園の場合は、1~2本仕立てにすると省スペースで栽培できます。

◆3本仕立て

一般的なナスの3本仕立ては、一番花をはさんだ上下2本のわき芽を伸ばすか、一番花の下から出た勢いのあるわき芽を2本残して3本仕立てにします。これ以外の不要な一番花の下のわき芽は、早い段階で取り除きます。
この3本の枝の誘引の方法は、一番果の下の部分から吊り下げるように3本の枝を紐に絡ませるように誘引します。
基本的に、これ以降の整枝は放任しますが、ナスの茎葉が込み合ってきたら、着果しない余計な枝や徒長した枝をカットして、日当たりや風通しの良い環境をつくりましょう(農業用のハサミ附属のカートリッジにウイルス予防液を装着することで、自動的に刃が洗浄される商品もあります)。

摘果

ナスの摘果
出典:Flickr(Photo by:fto mizno
ナスの苗が小さいうちに実をつけると、株の生育が不良になります。このナスの株疲れ(なり疲れ)を防ぐために、ナスの一番果は小さいうちに摘み取ります(この作業を摘果といいます)。
これ以降もナスの株の状態を観察しながら、疲れているようでしたらナスの実を適宜摘み取りましょう。

ナスの更新剪定

ナスは枝が伸びやすいので、小まめな整枝を行うか、7月中旬~8月上旬ごろに疲れたナスの枝を一気に切り戻し、新しい枝を伸ばして秋の収穫に備えます。

◆こまめな更新剪定

小まめな整枝方法は、ナスの花の先にある葉を1枚残して枝をカットします。収穫後、さらにナスの実が付いていた枝の葉を1枚だけ残し枝をカットします。

◆7月中旬~8月上旬ごろの更新剪定

更新剪定の方法は、なり疲れたナスの株の枝を3分の1から2分の1ほど切り戻します。切り戻したナスの株は、剪定することで生長が促され徐々に葉が出てきます。このとき、ナスの株元から30cmほど離れたところにスコップで垂直に差し込んでナスの根を切り、根の発育も促しましょう。

ナスの収穫

ナス
出典:写真AC
一般的なナスは、開花後25~30日前後の手のひらサイズくらいで収穫できます。ナスを収穫する際は、日中の気温が上がる時間帯を避け、朝方の涼しいときに収穫すると収穫したナスの水分が保たれます。ナスの採り残しは、株疲れを招きますので、収穫忘れのないように注意しましょう。
ナスは品種によって収穫適期が異なります。栽培しているナスの収穫適期を必ず確かめましょう。
種類 収穫適期の長さ
一般的なナス 10~15cm
長ナス 35~40cm
ひもナス  25~30cm

ナスの病害虫

ナス
出典:Pixabay
ナスを栽培する上で、かかりやすい病気や気を付けたい害虫について紹介します。

ナスがかかりやすい病気

ナスは主に糸状菌(カビ)による病気に注意が必要です。

◆半身萎凋病

初期症状は下葉の片側に淡黄色斑が現れ、徐々に萎れて、葉の縁が上方に軽く巻き上がり、株全体に広がると枯死する糸状菌(カビ)による病気です。

◆うどんこ病

葉に白いうどん粉をまぶしたような白カビが発生する糸状菌(カビ)による病気です。

◆青枯れ病

昼間は地上部が萎れたようになりますが、夜間や曇天時に持ち直すことを繰り返し、最後には株全体が萎縮して枯れてしまう細菌による病気です。

◆灰色かび病

糸状菌(カビ)による病気で、初期は地ぎわの葉や茎から、次第に全体へと広がり灰色のカビが生じます。

◆褐斑細菌病

黒褐色の小さな斑紋が葉にあわられる。その後、葉脈、または葉縁部に沿って長円形状に細長く広がる細菌による病気で、主にハウス内で発生します。

ナスを食害する害虫

ナスの葉が食害されているときは、その多くはニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ)の仕業かもしれません。

◆ニジュウヤホシテントウ

益虫であるテントウムシとよく似ていますが、葉を食害する害虫です。食害を受けた葉は、網目模様で褐色に変化します。

◆チャノホコリダニ

葉が食害されると葉が萎縮し凸凹になり、実を食害されたときは、表面が褐色のカスリ状の被害を受ける、ダニ目ホコリダニ科の害虫です。

◆ハダニ類

葉裏に潜み、植物の汁を吸うダニ目ハダニ科の害虫です。食害する植物によって、葉の色が抜けたような白や黄色のかすり状になります。

◆アザミウマ

植物の汁を吸い、食害を受けた葉は褐色化し、最終的には枯死します。別名スリップスと呼ばれる、様々な病気のウイルスを媒介してしまう害虫です。

◆アブラムシ類

主に新芽や茎、蕾に発生し、植物の汁を吸う害虫です。アブラムシを媒介にしてモザイク病やすす病などが発症しやすいので、アブラムシ発生後は病気が発症していないか注意が必要です。

▼防虫、防獣ネットならこちらをご覧ください。

ナスの生理障害

ナス
出典:Flickr(Photo by:Inma Molina
ナスの生理障害は「ボケナス」、「石ナス」などが有名です。

苦土欠乏症

被害状況  下葉の葉脈が黄色くなり、下からだんだん全体に広がっていく。
原因  土壌のカリ過多のため、苦土(マグネシウム)が欠乏。

石ナス果

被害状況  ナスの皮が硬く、艶がない石のように硬くなった状態。
原因  開花前後の天候不順により。

艶なし果

被害状況  ナスの皮に艶がない状態。ボケナスとも呼ばれる。
原因  ナスの実が肥大するときに、水分が不足すると起こる。

ナス栽培のまとめ

ナス
出典:写真AC
ナスは水や肥料を好む作物なので、日頃の管理を怠らないようにしましょう。肥料や水が不足して、草勢が落ちているときには、ナスの花の雄しべと雌しべを観察します。雄しべに比べて、雌しべが短いようなら、肥料や水を与えて草勢を上げましょう。
また、夏から秋に掛けて長い間収穫するためには、ナスの株を若返らせる更新剪定が不可欠です。更新剪定の時期を逃さないように、しっかりお手入れをしてあげることでナスの収穫期間が格段に伸びるので、育てがいのある作物といえるでしょう。


ナスの経営指標

ナス
出典:Flickr(Photo by:JeffChristiansen
新規就農者として野菜作りを本格的に始めるならば、農業経営の見通しが不可欠です。職業として生活を成り立たせ、なおかつ豊かなものにするために、しっかりとした農業経営の指標を持ちましょう。

需要動向を調べる

ナスの1人当たりの年間購入量は、平成28年度の調べで1年間に1,400gほどです。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探」原資料:総務省「家計調査年報」

卸価格を調べる

ナスの平成28年度の卸価格は、1kgあたり234~568円、平均で405円、長ナスの卸価格は、1kgあたり170~521円、平均で377円で取り引きされています。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探」原資料:東京都中央卸売市場「市場月報」

販売価格を調べる

ナス
出典:写真AC
卸価格同様にナスの販売価格も天候などの影響で前後しますが、平成28年度のナスの小売価格は1kgあたり標準品で739円ほどです。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探」、原資料:総務省「小売物価統計調査」

10aあたりのナスの経営収支

ナス栽培地である群馬、愛媛の経営収支を例に挙げて簡単に説明します。
地域 収量(kg) 粗利(円) 経営費(円) 農業所得(円) 労働時間
 群馬(露地)  7,000  2,198,000  997,352  1,200,648  870.2
 群馬(半促成)  8,000  3,080,000  1,989,749  1,090,251  1,464
 愛媛(夏秋)  10,000  2,448,000  1,444,774  1,003,226  930.5
参考HP:ぐんまアグリネット愛媛県庁

♦経営費

ナス栽培における経営費とは、ナスを生産するために使った経費のことです。具体的に挙げると、肥料、農薬、地代、土地改良費、雇用労働、農業機械(減価償却費)、利子などです。

♦農業所得

農業所得は、粗利から経営費を引いた金額になるので、経営費を上手にやりくりすることで所得もアップするということがいえます。

♦労働時間

労働所得を労働時間で割ると、ナス栽培の時給計算ができます。群馬(露地)の例でいうと、農業所得1,200,648円÷労働870.2時間=1,379.7円。およそ時給1,380円、群馬(半促成)の例でいうと、農業所得1,090,251円÷労働1,464時間=744.7円。およそ時給745円として換算できます。

♦経営の状態を大まかに捉える

ナスの経営収支から、どのくらいの規模で栽培すると収益はどのくらいあるのかなど、あらかじめ調べることで用意する苗の本数や、ナスの他に育てる作物の種類を増やすなど、最初から計画をしっかり立てることが重要です。

新規就農までの流れ

新規就農者への道は、各都道府県にある農業の支援機構などに相談してみることから始めます。相談から農地の準備までの7つのステップを踏みながら、その土地の一員として「自覚」と「信頼」を第一に考えて、地域に溶け込んでいきましょう。
 1. 相談  実際に相談窓口で相談(忙しい方にはメールでの対応もできます)。
 2. 情報収集  研修先や農業普及センター、農協、営農のプロのアドバイスや手助け先の獲得。
 3. 経営像  各都道府県の経営指標を参考にして、自身の農業計画を立てる。
 4. 就農計画  農地の確保、栽培作物の選定、農業技術の取得方法、資金などの具体的なプランを作り。
 5. 農業技術  栽培に適した作物、栽培方法などを身に付ける。
 6. 資金確保  自己資金、公的助成金・融資の確認。
 7. 農地の準備  その他の住居や農機具、農業施設等の準備。
参考HP:全国新規就農相談センター
▼新規就農のことならこちらもご覧ください。

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農業研究センターで大豆と稲の研究作物栽培及び実験業務に従事。屋上ガーデン・屋上菜園スタッフ勤務後、野菜をはじめとする植物の記事を執筆中。