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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
灌水(かん水)チューブの種類
灌水(かん水)チューブとは、等間隔に小さな孔(あな)が開けられたホースのこと。チューブに水を流すと、その穴から水が出る仕組みになっています。ホースの素材はポリ塩化ビニールやポリエチレン製などで、柔軟性があるのが特徴。数ミリ単位の小さい孔から水を均一に散水・噴霧できるため、水流で用土が流れたり固まったりしづらいのが利点です。
散水チューブ
チューブの穴から散水する場合に適した灌水チューブです。短時間に広い範囲に散水できるというメリットがあります。散水チューブを利用した灌水には、ハウスの天井に設置した配管や頭上の配管から散水する「地上潅水(頭上灌水、ハウス肩灌水など)」、地表に設置する「地表潅水」があります。中でもミスト状の霧状の細かい水を巻く方法を「噴霧潅水(ふんむかんすい)」と呼びます。通常の散水灌水では、水圧によって土壌の型が変わってしまったり、水を均一に噴射しにくいというデメリットがありましたが、噴霧潅水であればこうした心配がありません。ミストノズルなど特殊な器具が必要で、風の影響には注意して散水する必要があります。
点滴チューブ
作物の根元にチューブを設置し、ポタポタと水やりする方法に適した灌水チューブです。茎葉に水がかかるのを防げる、風の影響を受けず均一に水やりできるなどのメリットがあります。地中にチューブを埋めて地中灌水を行えるタイプもあります。灌水チューブの選び方
チューブの孔径や孔開き面、孔の形状や孔の配列など、栽培環境に応じて最適なものを選びましょう。1)孔径
灌水チューブの孔のサイズは0.1㎜~0.8㎜程度。水稲の育苗や軟弱野菜では0.2㎜から0.3㎜前後、イチゴやメロンなどの果菜類で0.2㎜から0.6㎜前後の孔径のものが使われています。2)孔の面
作物の畝間から片側のみに灌水したい場合は片面孔タイプ、両側に灌水したい場合は両面タイプを選びます。3)孔の形状
〇孔タイプと✕孔タイプの2種類があります。〇孔はチューブに丸い穴が空いているタイプで、✕孔は独自の技術で×型の穴が空いているタイプです。〇孔タイプが大半ですが、✕孔タイプの場合、目詰まりしにくい、水を霧状に拡散できるというメリットがあります。4)孔の配列・間隔(ピッチ)
孔の配列は、それぞれの孔が互い違いに配列されたものや、同じピッチで配列されたものなど様々。孔と孔のピッチ(間隔)も7.5㎝程から30㎝前後まで多くの種類があり、作物や灌水方式に応じて使い分けられています。5)チューブの厚み
チューブの厚みは0.12㎜~0.4㎜前後が一般的。散水ホースなどに比べてかなり薄く、テープのように巻き取れるものがほとんどです。厚みがあるほど強度があり、かかる水圧によって厚みが使い分けます。6)チューブの長さ
圃場やビニールハウスの規模に応じて、5m程から200m前後までさまざまな長さから選べます。長さが足りなくなった場合は、継ぎ足しソケットを使えばチューブの延長ができます。7)(点滴チューブの場合)チューブの材質
点滴チューブの材質はポリエチレンなどのプラスティックですが、軟質タイプと硬質タイプがあります。軟質プラスティックは平なチューブで通水すると膨らみます。硬質プラスチックは元々膨らんでいる硬めの素材です。軟質プラスチックのチューブは安価で軽量で撤去時に丸めて場所を取らないというメリットがあります。一方、硬質プラスチックのチューブは値段は張りますが、丈夫で長持ち。露地栽培などにも適しています。灌水チューブのメリット
灌水チューブはビニールハウスなどの施設栽培や露地栽培の灌水、夏場の用土の乾燥対策に使われます。使用することでどんなメリットがあるのかをご紹介します。
灌水の負担を減らせる
人手がかかり、作業負担も多い水やり作業。灌水チューブをいったん設置してしまえば、水を通すだけで均一な水やりができます。ホースの種類や配置をアレンジすれば、細やかな水の管理も可能に。チューブ本体やパーツはネット通販やホームセンターで購入することができ、設置も自分の手で行えます。病気のリスクを減らせる
雨や水滴落下など、茎葉への水はねは病気の原因にもなります。イチゴ栽培で問題になる「炭疽(たんそ)病」などは、株元に灌水チューブを設置し、水滴が茎葉に当たらないように水やりすることで、病気になるリスクが低減します。収穫量を安定させられる
灌水チューブを導入すると、少量多潅水が可能になります。少量多潅水とは、作物が必要とする量の水を「できるだけ時間をかけて少しずつ」与えること。土壌内の水分量を常に最適に保ち、生育量を安定させる技術です。人力では難しい少量多潅水ですが、灌水チューブがあれば手軽に導入できます。灌水方法
灌水は大きくわけて「地表灌水」「点滴灌水」「頭上灌水」の3つがあります。地表灌水
地表灌水は、畝間の表面に灌水チューブを設置するもの。施設園芸から露地栽培まで幅広く使われている、最も一般的な灌水方法です。株の根元のみに灌水する根元噴霧・散水用、マルチの下に通して灌水できるマルチ栽培用のチューブもあります。頭上灌水
ビニールハウスの天井部や肩部分にチューブを設置し、ハウス全体に水をいきわたらせるもの。細かい霧状の水を散水するタイプがよく使われます。葉菜類や育苗期などによく用いられ、作物への水やりのほかビニールハウス内の湿度調整にも役立ちます。点滴灌水
灌水チューブの圧力を調整し、点滴のようにゆっくりと水やりを行うもの。トマト、キュウリ、イチゴなど施設栽培で少量多潅水をする場合によく使われます。地表に設置するタイプと、地中に埋没して使用するタイプがあります。灌水チューブの使い方〜自作でホースと接続・設置〜
点滴灌水での灌水チューブ設置方法
点滴灌水専用のチューブ(点滴チューブ)を畝に並べて置き、ずれないようにピンなどで固定します。点滴チューブの設置ができたら、水の枝元になっているパイプやホース、給水栓と点滴チューブをつなぎます。灌水チューブの接続に必要なパーツ
給水栓とチューブを接続する継手や、チューブ同士をつなぐソケット、チューブ末端に装着するストッパーなどが必要です。その他にも、水圧を調整するバルブやコック、複数の畝へ水を枝分けをするための塩ビ管や分岐パイプなど、水の調節やひき込みにも各種のパーツが必要になります。灌水チューブの使い方
ハウス内や露地に設置した点滴チューブは、畑かん(畑地灌漑)・動力ポンプ・水道などから、パイプやホースで引いてきた水につないで使います。パイプ・ホースと点滴チューブが直結状態になっている場合、散水量の調整が困難です。バルブやコックをかませることで、均一の散水量を保つことができます。住化農業資材の灌水チューブ「スミサンスイ」おすすめ5選
灌水チューブで人気が高い、住化農業資材株式会社の「スミサンスイ」シリーズ。地上灌水、マルチ用、水平散水、頭上灌水などさまざまな用途の灌水チューブが充実しています。最大10mの飛び幅で省力化に貢献する噴霧チューブ
点滴から噴霧まで幅広く使える多用途・ハウス向けチューブ
細やかなピッチで水平散水できる、マルチ下用チューブ
畝の上での安定感が抜群!マルチ無し用チューブ
霧雨のようにやわらかな頭上散水を実現
三菱ケミカルアグリドリームの灌水チューブ「エバフロー」「キリコ」おすすめ7選
ハウス内でも露地でもOK! 点滴灌水も噴霧灌水もこなすマルチなA型
100mのロング&ワイド散水で効率アップ! スーパーエバフロー
チューブ全体に水圧がかかってから、一斉噴霧で細やかなミストができるM型
専用巻取機でコンパクトに収納できる「キリコ」のおすすめ3選
散水幅7.2m。中規模の灌水に最適なH型
マルチの下で使える水平散水のマルチⅡ型
10mの広域散水が可能なR型
コンパクト収納を実現する、キリコ専用の巻取機
露地栽培に適した灌水チューブおすすめ3選
耐久性や耐天候性など、頑丈さが求められる露地用の灌水チューブ。散水幅が広く、広い面積の灌水が一気にできるため、栽培条件が一定ではない露地栽培の品質安定性を高めることができます。1巻(100m)で約20aを灌水可能! 住化農業資材の大規模露地向けチューブ
大規模圃場でも威力を発揮する散水幅11m!「うるおーす」の露地用チューブ
広い畑を効率よく短時間灌水! セフティー3の露地用チューブ
灌水チューブに使えるストッパーおすすめ3選
「スミサンスイ」シリーズなど住化農業資材製品の純正ストッパーストッパー
「エバフロー」に対応した純正ストッパー
「キリコ」に対応した純正ストッパー
灌水チューブに使えるニップルおすすめ3選
「スミサンスイ」シリーズ用スクリューニップル(入口継手)
「エバフロー」を使う際の専用ニップル(継手)
「キリコ」を使う際の専用ニップル(継手)
水圧には注意!灌水チューブの注意点
作業負担を減らして収量をキープできる、便利な灌水チューブ。農作業には欠かせないものですが、日々の取り扱いにはご注意を。気を付けるべきポイントをご紹介します。
水圧による破裂に注意
畑かんなど、水圧が高いところから水を引く場合は、水圧の調整ができるバルブやコックを使用するようにしましょう。水圧が高過ぎると、かん水チューブが破裂してしまう可能性があるためです。また、チューブに目詰まりがあると内部の水圧が上がり、破裂などの損傷につながります。日々のメンテナンスが、チューブを長持ちさせる秘訣です。