ピーマン | 基本の育て方と本格的な栽培のコツ

農業に興味を持っている方や家庭菜園で本格的に野菜作りをしている方、そしてこれから始める初心者の方にもわかりやすいピーマンの育て方を紹介!ピーマン作りに欠かせない土づくりや病害虫、生育障害の原因、ピーマンの収穫適期の見分け方などを説明します。


ピーマン

撮影:写真AC
野菜を育てた経験がある方なら「育てた野菜を食べる」ことは、何にも代えがたい格別のおいしさと感動を与えてくれます。あの採れたてのおいしさを求めて、「もっと野菜のこと、栽培のことを知りたい!」そんな家庭菜園で本格的に野菜作りに励みたい方や、野菜作りのプロを目指した「新規就農」を視野に入れている方に、基本的なピーマンの育て方と本格的な栽培のコツを紹介します。

ピーマンについて

ピーマン
撮影:写真AC
南アメリカ原産のピーマンの名前の由来は、フランス語のpiment(ピメント)というトウガラシを意味する言葉からきています。日本では寒い冬の時期に枯れてしまうため一年草扱いですが、原産地では多年生育する植物です。
植物名  ピーマン
学名  Capsicum annuum
英名  Bell pepper
科名  ナス科
属名  トウガラシ属
原産地  南アメリカ
生育適温(昼間)  25~30℃
生育適温(夜間)  15~20℃

ピーマンの特徴

日本では江戸時代に徐々に普及しましたが、実際にピーマンの消費が目立つようになったのは、昭和30年代後半以降です。一般的な大きさの緑色ピーマンだけでなく、大型のジャンボピーマン、小さな子供ピーマン、赤やオレンジ、黄色、白など、さまざまな色のピーマンが栽培されています。
ピーマンは未熟果の状態で収穫するため、肉厚なパプリカに比べて収穫サイクルが短いので、1苗から収穫できる個数がパプリカよりも多くなります。

ピーマンの栽培時期

ピーマンは、育てる地域や栽培する品種によって植え付け時期が異なりますので、苗を購入するときに確認しましょう。
ピーマン 植え付け 収穫
寒冷地 5~6月 7~10月
中間地 5~6月 6~11月
暖地 4~5月 6~11月
※主に露地栽培の栽培時期。野菜の栽培は、屋外の畑で作物を栽培する「露地栽培」の他に、「温室」や「ビニールハウス」などの施設で栽培する方法があります。

ピーマンの栽培準備

ピーマン
出典:写真AC
ピーマン栽培の準備を始めましょう。

ピーマンの作付け計画

1a(100平方メートル)で452kgほど収穫することができます。
参考HP:農林水産省「平成29年産都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量

ピーマンの苗の用意

地域の種苗会社やホームセンターから購入することができます。育てる品種によって株間が異なるため、用意する苗の数も違ってきます。
品種 主な産地
京鈴  宮崎、高知、茨城、岩手など
京ゆたか  宮崎、岩手など
みおぎ  高知、茨城など

♦1a(100平方メートル)あたりのピーマンの苗の本数

(例1)一般的なピーマン品種の育苗の場合
1a(100平方メートル)あたり種6~8mlが目安です。
(例2)一般的なピーマン品種の苗(株数)の場合
1a(100平方メートル)あたり苗150本が目安です。
参考HP:株式会社 三重興農社

ピーマンの土づくり

排水性、通気性、保水性の整った団粒構造の土質は、微生物が多く住む作物にとって良い土壌です。作物を作る土壌の状態が良ければ、石灰資材など多く投入する必要がない場合もあるので、栽培の前には必ず土壌診断をし、pH、ECなどを測定したうえで、診断結果に基づいた適切な堆肥資材等の散布を心がけましょう。
▼土壌消毒のことならこちらをご覧ください
▼土づくりのことならこちらをご覧ください

▼土壌診断のことならこちらをご覧ください。

♦ピーマンの土壌pH

ピーマンはpH6.0~6.5が最適値です。

♦ピーマンに適した土壌

野菜の中でも比較的土壌適応性は高いですが、やや浅根性で乾燥に弱いという特徴があるため、土壌の水分量がピーマンの生育や収量を左右します。適切な水やりが必要となりますので、あらかじめ保水性の高い、有機質に富んだ土壌づくりを心がけましょう。

ピーマンの肥料

ピーマンの元肥の目安として10平方メートルあたり窒素200~250g、リン酸250~300g、カリ200~250g位を施(ほどこ)します。

▼肥料のことならこちらをご覧ください。

畝立て

畝幅は80~110cm、畝の高さは圃場の排水性に合わせて調整します(移植機や収穫機を使う場合は、使用する機械の仕様に合わせた畝の向きや高さ、幅にする必要があります)。
せっかく与えた水分が流れ出てしまわないように、畝の形は山型よりも台形型にすると良いでしょう。また、ピーマンの根は、ナスなどに比べて浅根性で乾燥時期の水分不足や気温の変化に影響を受けやすい傾向があるため、マルチや敷きわらを使用した栽培がおすすめです。マルチなどを使用することで、乾燥を防ぎ、雨による泥はねや除草の手間も省ける利点があります。

▼マルチ栽培のことならこちらをご覧ください。


▼耕運機、鍬のことならこちらをご覧ください。



ピーマンの育て方

ピーマン
撮影:写真AC
畝や苗の準備が整ったら、ピーマン栽培のスタートです。

植え付け

ピーマンの植え付けに適した苗は、一番花の開花3~4日前が適期です。葉があまり大きくなく、緑色で艶があり、茎が太くて節間の短くしまった苗を選びましょう。

♦植え付け前は十分な灌水(かんすい)

ピーマンを植え付けする前は、十分灌水を行い、土に水分を与えます。ピーマンの苗にも水分をしっかり吸収させます。畝にマルチを貼る場合にも、あらかじめ水分が十分含まれているか確認しましょう。
※灌水とは水を注ぐこと、植物に水を与えることです。灌水ホース、灌水装置など農業でよく使用する言葉なので覚えましょう。


♦植え付けは天気のいい日に!

ピーマンは高温性の植物のため、特に露地栽培での植え付けは十分に気温が高くなってから、関東などの中間地では5月以降が望ましい時期です。気温が低すぎる環境での植え付けは避け、天候の良い日に行いましょう。風の強い日や悪天候時の植え付けは、ピーマンの苗の活着が遅れ、初期生育が悪くなります。

♦株間は55~60cm

株間55~60cmを開け植え付けます。ピーマンの根が活着するまでの約1週間は、土が乾燥状態にならないように管理しましょう。

水やり

ピーマンの苗が活着したら、根をしっかり生育させるために、萎(しお)れない程度に乾燥気味の水やりを心がけます。
基本的に水やりは午前中に行います。暑い時期の水やりは、日中を避けて気温の低い早朝か夕方に行わないと根を痛めてしまいますので注意しましょう。

♦ピーマンは乾燥NG

ピーマンが大きく生育してきたら、今度は樹勢を高めるために水分を増やしていきます。特にピーマンは、ナスなどと比べて根が浅いため、乾燥に弱く水やりは大変重要な作業となります。土壌の水分量だけでなく、ピーマンの葉からの蒸散による乾燥状態にも注意し、萎(しお)れさせないようにしましょう。

▼土壌水分計のことならこちらをご覧ください。

追肥

ピーマン
出典:写真AC
ピーマンの追肥の目安として、10平方メートルあたり窒素340g、リン酸250g、カリ300g位です。
定植1週間後から着果負担が重くなる前に樹勢を見ながら追肥をしましょう。その後7~14日間置きに追肥をします。ピーマンの生育の状態を見ながら、樹勢が落ちているときは窒素を多めに与え、樹勢が強過ぎるときには、リンとカリを多く与えます。
ピーマンの追肥のコツは、一回に施す施肥の量を少なめにし、回数を増やすことです。ピーマンの着果が確認され、実の肥大が始まったら早めに追肥を行うことで「成り疲れ」を防ぐことができます。
※成り疲れとは、果菜類の着果によって作物への負担が大きくかかることで生育が妨げられること。

▼液肥のことならこちらをご覧ください。

整枝

一般的なピーマンの整枝方法は、3~4本仕立てですが、ピーマンの果実を肥大させるために1~2本仕立てにする場合もあります。目指すピーマンの品質に合わせて整枝方法を決定しましょう。

<4本仕立て>
一般的なピーマンの4本仕立ては、一番花から下のわき芽は取り除きます。その後展開する、二番花の着花節で分枝した合計4本の枝を伸ばしていきます。この4本の枝の誘引の方法は、一番果の下の部分から吊り下げるように4本の枝をひもに絡ませるように誘引します。
基本的に、これ以降の整枝は放任しますが、ピーマンの茎葉が込み合ってきたら、着果しない余計な枝や徒長した枝をカットして、日当たりや風通しの良い環境をつくりましょう。側枝は2~3節を残して摘芯し、収穫後は1節残して切り戻しをします。カットする際は清潔なはさみを使用して、病気を伝染させないよう注意が必要です。
※農業用のはさみ附属のカートリッジにウイルス予防液を装着することで、自動的に刃が洗浄される商品もあります。

ピーマンの収穫

ピーマン
出典:写真AC
開花から収穫までの日数は、温度や個体差によって異なりますが、通常は開花から20~25日ごろに、1果あたり30gまで肥大したころが収穫適期になります。
収穫する際は、ピーマンのへたのすぐ上あたりをカットします。
未熟果を収穫するピーマンは、収穫適期を過ぎると肥大したり、完熟して赤くなりますが、株が疲れる原因となります。収穫量も減ってしまうため、収穫適期を見過ごさず、若いうちに収穫することを心がけましょう。

▼収穫時のおすすめグッズはこちらをご覧ください。

ピーマンの病害虫

ピーマン、タバコガ
出典:Flickr(Photo by :urasimaru)
ピーマンを栽培する上で、かかりやすい病気や気を付けたい害虫について紹介します。
▼ハウス栽培での病害虫対策にはこちらをご覧ください

ピーマンがかかりやすい病気

ピーマンは葉に水が掛かると病気になりやすい傾向があるようです。
▼植物全体の病気のことならこちらをご覧ください

◆モザイク病

葉がモザイク状に黄化するアブラムシを媒介に発病するウィルス性の病気です。

◆うどんこ病

葉に白いうどん粉をまぶしたような白カビが発生する糸状菌(カビ)による病気です。

◆黄化えそ病

生長点が枯れ、果実の表面が褐色になり腐敗が進む、アザミウマ類を媒介に発病するウィルス性の病気です。

◆斑点細菌病

細菌により感染する病気で、丸い斑点が外葉から生じます。生育後半にかかりやすい病気です。

◆灰色かび病

糸状菌(カビ)による病気で、初期は地ぎわの葉や茎から、次第に全体へと広がり灰色のカビが生じます。

ピーマンを食害する害虫

アブラムシやアザミウマは、植物の汁を吸うだけでなく、病気の伝染源にもなるので注意が必要です。

◆アザミウマ

植物の汁を吸い、食害を受けた葉は褐色化し、最終的には枯死します。別名スリップスと呼ばれる、さまざまな病気のウイルスを媒介してしまう害虫です。

◆アブラムシ類

主に新芽や茎、つぼみに発生し、植物の汁を吸う害虫です。アブラムシを媒介にしてモザイク病やすす病などが発症しやすいので、アブラムシ発生後は病気が発症していないか注意が必要です。

◆タバコガ類

中齢幼虫以降になると、果実に穴を開け、内部の果肉や種の部分を次々と食害していくチョウ目ヤガ科の害虫です。

◆チャノホコリダニ

葉が食害されると葉が萎縮し凸凹になり、実を食害されたときは、表面が褐色のカスリ状の被害を受ける、ダニ目ホコリダニ科の害虫です。

◆ハダニ類

葉裏に潜み、植物の汁を吸うダニ目ハダニ科の害虫です。食害する植物によって、葉の色が抜けたような白や黄色のカスリ状になります。

▼防虫、防獣ネットならこちらをご覧ください。

ピーマンの生理障害

ピーマン
出典:写真AC
ピーマンは生理障害を起こすと、実が腐れやすいので注意しましょう。

カルシウム欠乏症

被害状況  先端の葉がいびつになる。
原因 チッソ肥料やカリ、マグネシウムの過多、カルシウム欠乏によるもの。
▼カルシウム欠乏についてはこちらをご覧ください

尻腐れ果

被害状況  ピーマンの果頂部が始め褐変し、のちに黒く壊死状態になる。
原因 主にカルシウム欠乏によるもの。

日焼け果

被害状況  ピーマンの果肉部分が、一部壊疽する。
原因 高温乾燥状態によるもの、又は雨でヘタの部分に水が溜まり、光が当たることでレンズ状態になるため。
▼日焼け果の原因の高温障害についてはこちらをご覧ください

ピーマン栽培のまとめ

ピーマン
出典:写真AC
家庭菜園でピーマンを育てていると、花付きが良く、実が次々に大きく生長するので、気が付くとピーマンの苗が疲れ切っていることがあります。追肥や風通しの良い整枝を心がけ、長い間元気に育てたいものです。
また、乾燥させないようにとピーマンに水をたくさん与えるのは良いのですが、ピーマンの葉に水をかけると病気になりやすい傾向があります。「ピーマンの水やりは株元に」を心がけ、健康に育てましょう。


ピーマンの経営指標

ピーマン
出典:Pixabay
新規就農者として野菜作りを本格的に始めるならば、農業経営の見通しが不可欠です。職業として生活を成り立たせ、なおかつ豊かなものにするために、しっかりとした農業経営の指標を持ちましょう。

需要動向を調べる

ピーマンの1人当たりの年間購入量は、平成27年度の調べで1年間に900gを超えるくらいです。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探」原資料:総務省「家計調査年報」

卸価格を調べる

ピーマンを栽培する季節や品種によっても価格の差が出ますが、平成27年度の調べで、ピーマンの卸価格は1kgあたり262~730円、平均で464円で取引されています。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探」原資料:東京都中央卸売市場「市場月報」

販売価格を調べる

ピーマン
出典:写真AC
卸価格同様にピーマンの販売価格も天候などの影響で前後しますが、平成30年度(平成30年4月~31年1月調べ)のピーマン小売価格は1kgあたり標準品で853円ほどです。
参考HP:農畜産業振興機構「ベジ探

10aあたりのピーマンの経営収支

ピーマンの栽培地である鳥取、愛媛の経営収支を例に挙げて簡単に説明します。
地域 収量(kg) 粗利(円) 経営費(円) 農業所得(円) 労働時間
 鳥取(夏秋) 4,600 1,090,200   654,371   435,829 636.1
 愛媛(夏秋) 8,000 2,729,600 1,444,140 1,285,460 808
参考HP:鳥取県庁愛媛県庁

♦経営費

ピーマン栽培における経営費とは、ピーマンを生産するために使った経費のことです。具体的に挙げると、肥料、農薬、地代、土地改良費、雇用労働、農業機械(減価償却費)、利子などです。

♦農業所得

農業所得は、粗利から経営費を引いた金額になるので、経営費を上手にやりくりすることで所得もアップするということがいえます。

♦労働時間

労働所得を労働時間で割ると、ピーマン栽培の時給計算ができます。鳥取の例でいうと、農業所得435,829円÷労働636.1時間=685円。つまり時給685円として換算、愛媛の例でいうと、農業所得1,285,460円÷労働808時間=1,590円。つまり時給1,590円として換算します。

♦経営の状態を大まかに捉える

ピーマンの経営収支から、どのくらいの規模で栽培すると収益はどのくらいあるのかなど、あらかじめ調べることで用意する苗の本数や、ピーマンの他に育てる作物の種類を増やすなど、最初から計画をしっかり立てることが重要です。

新規就農までの流れ

新規就農者への道は、各都道府県にある農業の支援機構などに相談してみることから始めます。相談から農地の準備までの7つのステップを踏みながら、その土地の一員として「自覚」と「信頼」を第一に考えて、地域に溶け込んでいきましょう。
 1. 相談  実際に相談窓口で相談(忙しい方にはメールでの対応もできます)。
 2. 情報収集  研修先や農業普及センター、農協、営農のプロのアドバイスや手助け先の獲得。
 3. 経営像  各都道府県の経営指標を参考にして、自身の農業計画を立てる。
 4. 就農計画  農地の確保、栽培作物の選定、農業技術の取得方法、資金などの具体的なプランを作り。
 5. 農業技術  栽培に適した作物、栽培方法などを身に付ける。
 6. 資金確保  自己資金、公的助成金・融資の確認。
 7. 農地の準備  その他の住居や農機具、農業施設等の準備。
参考HP:全国新規就農相談センター
▼新規就農のことならこちらもご覧ください。

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農業研究センターで大豆と稲の研究作物栽培及び実験業務に従事。屋上ガーデン・屋上菜園スタッフ勤務後、野菜をはじめとする植物の記事を執筆中。