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肥料法改正により生産が可能となった混合堆肥複合肥料とは?


土づくりや施肥といった作業を同時に行うことができる「混合堆肥複合肥料」の活用は、土壌改良と農作業の省力化が期待できる新しい肥料です。これまで投入量も多く、施用も大変だった堆肥を有効活用できる「混合堆肥複合肥料」について紹介します。

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。…続きを読む

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混合堆肥複合肥料

llustration:umi
「肥料取締法の一部を改正する法律」が2020年12月1日に施行されました。これは肥料配合に関する規制の見直しで、指定混合肥料制度等の創設により、堆肥(特殊肥料)と普通肥料を配合した「混合堆肥複合肥料」などの生産が可能になりました。この法律により今後の堆肥活用が期待されています。

本記事は、現在「伝統農法文化研究所」で代表を務め、数多くの栽培方法や農業技術の書籍を執筆されている農学博士の木嶋先生に監修いただき、「混合堆肥複合肥料」とは何か、また実際に開発・流通している「混合堆肥複合肥料」について紹介します。

近年の土づくりにおける堆肥と肥料の問題

堆肥
出典:写真AC
今日の農業において、海外産の化学肥料に偏った施肥管理と、労働⼒不⾜による堆肥投入量の減少などによって、国内の農耕地の地⼒が低下したり、⼟壌養分のバランス悪化による連作障害を引き起こしたりなど、さまざまな問題が発生しています。加えて将来世界的規模において、肥料を安定的に供給できるかについても関心が高まっています。これらのことから、良質な⼟づくりに欠かせない「堆肥」と、堆肥以外の国内で生産・調達できる数少ない資源「産業副産物由来肥料」が、今後よりいっそう有効活⽤されることが期待されています。

堆肥

肥料取締法の肥料と土壌改良資材をあらわしたイラスト
llustration:AGRI PICK編集部
堆肥とは、稲わらや家畜ふんなど有機物を蓄積し、微生物の働きによって分解・発酵したもので、土の中に含まれる有効な微生物を増やし、栄養素の供給や土壌の改善のために使われる資材です。
近年、さまざまな材料を混ぜて堆肥にすることが多くなり、材料で区別せず総じて「堆肥」と呼ぶことが多くなっています。
参考:全国土壌改良資材協議会

産業副産物由来肥料

畜産や農業などから排出される家畜のふんや稲わらなどの「堆肥」、下水や処理汚泥などを原料とした「汚泥肥料」、製鉄工程で除去される不純物などの「鉱さい」、食品製造過程で排出される「残渣(ざんさ)」、及び動植物油脂製造から排出される「油かす」など。これらの有機質肥料が産業廃棄物由来肥料とされてます。

堆肥・産業副産物由来肥料活用の問題点

過去に堆肥や産業副産物を原料として生産された肥料において、原料表示や品質偽装の事案が発生したことから、有害物質などが含有するのではないかという懸念がありました。

改善のための肥料法の見直し

堆肥や産業副産物由来肥料の利⽤を拡大していくためには、安⼼して使用できるような原料管理や表示を規制する対策が求められ、肥料法の見直し(2020年12月1日施行「肥料の品質の確保等に関する法律」)がなされました。
参考:独立行政法人農林水産消費安全技術センター「肥料の品質の確保等に関する法律」

そして、さらなる活用拡大のため、普通肥料(化学肥料など)と特殊肥料(堆肥など)を混合した肥料や、肥料と土壌改良剤を混合した肥料の届け出や生産ができるようになりました。
参考:肥料 ー制度見直し・オンライン申請・肥料の販売・お問い合わせー 農林水産省


問題解決の救世主!混合堆肥複合肥料

混合堆肥複合肥料
llustration:umi
「混合堆肥複合肥料」はまだ開発が始まったばかりの資材ですが、さまざまな企業や団体が研究を行っており、今後期待できる肥料です。

混合堆肥複合肥料とは

混合堆肥複合肥料は、品質管理された堆肥をベースに、化学肥料で成分バランスを整え、造粒および加熱乾燥したものです。肥料の種類として普通肥料の複合肥料に分類されます。
肥料としての利便性を保ったまま、土壌に有機物を供給する効果をはじめとした新たな機能が付加されています。

原料の堆肥の登録申請の注意点
家畜ふんを肥料として利用する場合、肥料取締法において「堆積⼜は攪拌(かくはん)し、腐熟させたもの」は「堆肥」、それ以外のものは「動物の排せつ物」として都道府県知事に生産や販売の届出をします(どちらも特殊肥料)。同じ家畜ふんであったとしても腐熟させたものであるか、そうでないかによって肥料の規格(公定規格)が異なるため注意が必要です。

▼肥料の種類のことならこちらをご覧ください。

混合堆肥複合肥料の3つのメリット

混合堆肥複合肥料
llustration:umi
今後期待される「混合堆肥複合肥料」ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか?

1. 堆肥よりも優れている

・堆肥と違い、施用成分を把握できる
・窒素の肥効は堆肥よりも高く、有機入りの配合肥料や有機化成と同様の肥効を持つ
・肥効が⾼い各肥料成分を保証値として一定量含むので、化成肥料や配合肥料のように過不足なく用いることができる

2. 作業時間の削減

・土づくりと施肥が同時にでき、作業が省力化できる
・造粒されているので、堆肥よりも散布しやすい
・化成肥料と同様に使用できる
・基肥だけでなく追肥で使用する際に有機物も供給できる

3. コスパが良い

・堆肥由来有機物を含むので有機物供給効果が高い
高度化成肥料に比べて肥料成分の含有量は低い
・同等の肥料成分を持つ有機化成と比べて安い
※高度化成肥料とは窒素、りん酸・カリウムのうち2つ以上を含み、これらの合計が30%以上の肥料のこと
※有機化成とは、大部分は化学肥料で有機質肥料を含む肥料のこと

混合堆肥複合肥料使用の2つの注意点

注意
llustration:umi
これから混合堆肥複合肥料を使用する生産者は、どんな点に注意すればいいのでしょうか?

1. 選択

有機物の供給効果が高いものほど肥料成分が低いというように、有機物の供給と肥料効果は相反するため、施⽤する⽬的に応じた肥料を選ぶ必要があります。

2. 投入量

肥料成分がそれほど高くない混合堆肥複合肥料を、有機物の効果を期待して施⽤する場合は、投入量が多くなるので注意が必要です。

散布方法

散布方法には、肥料散布機やブロードキャスター、ライムソアーなどを用いて行いましょう。

▼肥料散布機のことならこちらをご覧ください。

ブロードキャスターCS

全面散布はもちろんのこと、片側散布も可能です。

・型式:CS123
・全長:930mm
・全巾:865mm
・全高:920mm
・重量:58kg
・適応トラクター:9.6〜14.7kw(13〜20PS)
・ホッパー容量:120L
・散布巾:5〜6m(大粒)


肥料散布機 MR101

散布量調整レバーが付いているので、肥料の量を簡単に調整できます。

・全長:1,600mm
・全幅:1,300mm
・全高:1,040mm
・重量:160kg
・タンク容量:90L
・能率:0.5a/h
・走行速度:前進3.0km/h、後進1.2km/h
・エンジン出力:2.3kw(3.1PS)
・散布巾:約0.6〜1.4m



実際に開発され流通している混合堆肥複合肥料

肥料
出典:写真AC
混合堆肥複合肥料の流通・販売はまだ少ないのが現状ですが、ここでは現在手に入る製品について紹介します。

エコレットシリーズ

JA全農と朝日アグリア株式会社が共同開発した混合堆肥複合肥料です。

エコレット808

・生産業者:朝日アグリア株式会社
・販売先:JA
・成分:N・P・K=8・10・8、豚ぷん堆肥約50%、有機態窒素1.5%
・規格:アグレット、20kg
※アグレットとは化成肥料と同等の形状をした球状の肥料
・特徴:バランスが良いのでさまざまな作物に使える。

エコレット866

・生産業者:朝日アグリア株式会社
・販売先:JA
・肥料成分:N・P・K=8・6・6、豚ぷん堆肥約50%、有機態窒素4.2%
・規格:20kg
・特徴:全窒素の約半分の有機態窒素を含み、特別栽培におすすめ。

エコレット一発647

・生産業者:朝日アグリア株式会社
・販売先:JA
・肥料成分:N・P・K=16・4・7、鶏ふん堆肥約29%、有機態窒素0.9%
・規格:20kg
・特徴:100日タイプの被覆肥料入りで肥効が続く。
参考:朝日アグリア株式会社

まどかちゃん

・生産業者:JAグリーンとちぎ
・販売先:JA
・肥料成分:N・P・K=10・10・10、堆肥30%
・規格:ペレット、15kg
・特徴:栃木県内の堆肥を使用し、有機質と無機質がバランスよく含まれている。
参考:(株)JAグリーンとちぎ
※エコレットシリーズやまどかちゃんの商品の取り扱いについては各JAに問い合わせてください

堆肥の需要拡大と施肥の省力化に期待!

期待
出典:写真AC
混合堆肥複合肥料は土づくりや施肥といった大変な作業を同時に行うことができるため、労力を省力化することが期待できます。また投入量も多く、施用が大変であったり、含まれる肥料分が一定ではなかったりと、使いにくかった堆肥を有効活用することができます。さまざまな企業や団体が開発を行っているものの、残された課題も多いのが現状ですが、混合堆肥複合肥料以外にも開発が進められており、今後期待される新しい肥料です。

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