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- AGRI PICK 編集部
AGRI PICKの運営・編集スタッフ。農業者や家庭菜園・ガーデニングを楽しむ方に向けて、栽培のコツや便利な農作業グッズなどのお役立ち情報を配信しています。これから農業を始めたい・学びたい方に向けた、栽培の基礎知識や、農業の求人・就農に関する情報も。…続きを読む
「ぜひ挑戦したいけれど、やり方が分からない!」という人のために、今回は観葉植物のプロに「挿し木・挿し芽・葉挿し」の方法について詳しく聞きました。それぞれステップごとに、画像と共に分かりやすく解説していきます!
挿し木・挿し芽・葉挿しについて観葉植物のプロに聞きました
白田 仁さん
ボタニカルショップ「NEO GREEN 渋谷」オーナー。NHK「趣味の園芸」テキストで、園芸ダイアリーの観葉植物を担当し、執筆・監修を2年間務める。そのほか、インテリアグリーンに関する本の監修も多数。店舗で扱う植物は、全て自身の目で厳選し、鉢合わせしたもの。植物とかわいらしいネコ達との暮らしが垣間見れるインスタグラムは必見!
HP:http://www.neogreen.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/neo_green/
NEO GREEN 渋谷
あわただしい現代生活を送る都市生活者に向け、グリーンポットを提供。観葉植物をよりインテリアに取り入れやすいよう、「景色をつくる」鉢合わせを追求しています。「NEO GREEN 渋谷」では、 ほっこりかわいらしい「どんぐりポット」から、マニアックな多肉・観葉植物まで、さまざまな植物に出合うことができます。
ADDRESS:東京都渋谷区神山町1番5号グリーンヒルズ神山 1階
OPEN:12:00-20:00
TEL/FAX:03-3467-0788
E-MAIL:[email protected]
定休日:月曜日(祝祭日にあたる場合は火曜日)
白田さん監修の記事をチェック!
挿し木・挿し芽・葉挿しとは?
挿し木・挿し芽・葉挿しは、植物の枝や茎、葉を切り取って土に挿し、発根させて株を増やす方法のこと。種をまいて育てる実生株のように、遺伝子が変異することがないため、親株と全く同じクローンを一度にたくさん増やせるのがメリット。また、手軽に行うことができるうえ、成功率も高く、短い期間で株を増やすことができるのも特長です。挿し木は、バラ、桜、アジサイなどの花木を増やすのによく使われる手法ですが、観葉植物でも有効な手段です。病気などで弱ってしまった株の更新にもおすすめの方法です。
挿し木・挿し芽・葉挿しはどう違う?
挿し木は樹木タイプの植物、挿し芽は草花やつる性植物など茎が柔らかいタイプの植物、葉挿しは葉から発根する一部の観葉植物や多肉植物を増やすときに使われる呼称です。ちなみに、挿し木・挿し芽・葉挿しのために切り取った枝や茎、葉のことを「挿し穂」といいます。
挿し木・挿し芽・葉挿しに適した時期は?
各植物の生長期に行います。旺盛に生育する期間であるため発根が早く、失敗も少なくなります。まずは挿し木・挿し芽・葉挿しに必要なものを準備!
挿し木・挿し芽・葉挿しに挑戦する前に、まずは必要なものを用意しましょう。初心者向け!そろえておくべき基本のアイテム
用土
挿し木や挿し芽、葉挿しには、水はけが良く、雑菌の少ない用土が適しています。初心者は、市販の専用配合土を使用すると安心です。鉢・プランター
鉢やプランターは小ぶりのものでOK。用土を入れる前に、ゴロ土や鉢底石を入れておきましょう。鉢底穴から用土が流れ出てしまうのを防ぎ、排水性も高めてくれます。発根剤(ルートン)
発根のスピードを早め、活着も良くする発根剤。使用することで、挿し木や挿し芽が成功する確率もぐんとアップします。初心者に特におすすめなのは、粉状の発根剤「ルートン」。何もつけないよりも約2倍の早さで根が出ます!はさみ
親株から挿し木・挿し芽用の枝や茎を切り取ったり、葉挿し用の葉を切り分けたりするのに必要。断面の繊維をつぶさないように、切れ味の良いものを使いましょう。ピンセット
挿し穂や葉を挟んで持つのはもちろん、用土に穴を開けて挿すときにも活躍します。上級者向け!あると便利なおすすめアイテム
赤玉土(小粒)
雑菌が少なく肥料分のない赤玉土も、挿し木・挿し芽・葉挿しの用土として使えます。できるだけ細かい粒のほうが挿しやすく、安定します。水の湿り気具合もひと目でわかるので、水やりの管理もしやすくなるのもメリット。発根剤(メネデール)
こちらも定番の発根剤「メネデール」。液状なので、たくさんの挿し木や挿し芽を行いたいときに便利です。発根を促進させるほかにも、弱った株の栄養剤としても使えます。カッター
挿し穂の断面を広げるために、斜めに切るときに使用します。はさみが届きにくい、混みあった枝を切り取るときにも便利です。剪定ばさみ
太めの枝や茎を切るときには、剪定ばさみが必要になります。おすすめの剪定ばさみはこちらの記事で紹介しています!
観葉植物の挿し木の方法|ゴムの木でチャレンジ!
今回は、ゴムの木(フィカス)を使って挿し木のやり方を解説します。挿し木に利用する部分は、生長により長く伸び過ぎた枝。見た目のバランスも悪くなっているので、剪定も兼ねて挿し木を行います。ゴムの木は、切断面から白い樹液が出てくるため、作業をする際は新聞紙などを敷いて床をカバーしましょう。
ゴムの木(フィカス)の育て方はこちらの記事で!
Step1. 枝を切り取る
ゴムの木は枝が太く固いため、剪定ばさみでカットします。切り取る場所は基本的にどこでもOKですが、全体のバランスを見ながら、新芽を出したいところでカットしましょう。切り残した部分は、時間が経つと枯れ込んで、見た目が美しくなくなってしまいます。そのため、葉柄の付け根のすぐ上(5~10mmほど残す)で切るのがおすすめです。
Step2. 古い部分の切除&挿し穂作り
挿し木は、若い部分からのほうが発根しやすくなります。茶色くなった木化した古い部分は切り取りましょう。また、切り取った枝が長い場合は、2~3節ごとに切り分け挿し穂にします。今回は、ゴムの木の枝を3分割にしました。
Step3. 切断面を斜めにカットする
新しい根は切断面から出てきます。切断面が大きいほど根を形成する部分がたくさんできるため、カッターで斜めにカットして面を広げましょう。水の吸い上げも良くなる効果も!Step4. 葉を小さくカットする
植物は、葉から水を蒸散する性質があります。挿し木の成功率を上げるために、大きな葉は1/2~2/3の大きさになるように、はさみでカットしましょう。小さな葉は付け根から切り取ります。Step5. 挿し穂の切断面を洗浄する
ゴムの木の場合、切断面から白い樹液が出てきます。この樹液がついたままだと、発根が阻害されてしまうため、水でざっと洗いながしましょう。Step6. 発根剤(ルートン)を塗付する
切断面に発根剤を塗付します。今回は「ルートン」を使用しました。ルートンは粉末タイプなので、切断面を水で濡らしておくと付きが良くなります。発根剤についての詳しい情報はこちら!
Step7. 挿し穂を用土に挿す
挿し穂を用土に挿していきます。このとき、挿し穂の上下を間違わないように注意しましょう。ゴムの木は、葉が上向きに生えているので見分やすいです。白田仁さん
切断面につけた発根剤が取れないように、あらかじめピンセットで穴を開けてから挿しましょう。
3本の挿し木ができました。1本だけでももちろんOKですが、成功率は100%とはいえないため、複数あるほうが保険になります。
Step8. たっぷり水やり
今回は用土に赤玉土(小粒)を使いました。赤玉土の場合、最後にたっぷり水をやり、粉を鉢底穴から流出させます。これは、粉が残っているとその後の水やりで固まってしまい、水はけが悪くなるためです。Step9. 発根までの管理
発根するまで、風通しが良く、適度な明るさがある場所で管理しましょう。直射日光は避けてください。発根日数の目安は、発根剤未使用では通常3週間~1カ月、発根剤を使用した場合は2週間ほどになります。発根したかどうかの確認ですが、しばらくは触らずに我慢。1カ月ほど経ったら、挿し穂を軽く引っぱってみましょう。抵抗を感じたら、根が出ています!
挿し木ができる観葉植物・できない観葉植物について
挿し木ができる観葉植物
ゴムの木(フィカス)、パキラ、クワズイモ、ポリシャス、コルジリネ、ユッカ、シェフレラ、エバーフレッシュ、アロエ、ドラセナなどの樹木タイプの観葉植物育て方はこちらの記事で!
挿し木ができない観葉植物
テーブルヤシやシュロチク・カンノンチクなどのヤシ類、アジアンタム・ネフロレピス・ヒカゲヘゴなどのシダ類、バナナなど育て方はこちらの記事で!
観葉植物の挿し芽の方法|ポトスで挑戦!
次にトライするのは、ポトスの挿し芽。床に着くほど長く伸びてしまったので、剪定を兼ねて挿し芽を行います。ポトスの育て方はこちらの記事で!
Step1. 茎を切り取る
全体のバランスを見ながら、切り戻したい箇所でポトスの茎をカットします。茎を長く残すと、枯れ込んで美観が損なわれてしまうため、葉柄の付け根の上を5~10mmほど残すように切り取ると、見た目もきれいに保てます。今回のポトスのように、ハンギング仕立てで下垂している場合は、葉柄の付け根の下5~10mmの辺りでカットしましょう。Step2. 挿し穂の用意
長かったポトスの茎を切り取りました。このままでは長過ぎるので切り分けて、挿し穂を作っていきます。今回のポトスは節の間が長いため、一節分の長さになるように切り、挿し穂にします。節の間が短い場合は、3~4節ぐらいの長さにカットすると良いでしょう。
Step3. 余分な部分を切除する
挿し穂を作る際、余分な部分はカットします。ポトスは気根も利用して挿し芽にしますが、用土に挿さない地上部の気根は取ってしまいましょう。ポトスは葉柄の付け根周辺から根が出ますが、気根からも発根するため利用すると成功率も上がります。用土に挿す下の気根はそのまま残しておきましょう。
Step4. 葉を小さくカット
葉から水分が蒸散するのを防ぐため、大きめの葉は半分ほどにカットします。小さめの葉はそのままでOK。Step5. 発根剤(メネデール)をつける
挿し穂の切り口に発根剤を塗付します。今回の挿し芽には「メネデール」を使いました。茎が細いため、容器にそのまま挿し込んでたっぷりと浸します。Step6. 挿し穂を用土に挿す
挿し穂を1本ずつ用土に挿していきます。挿し穂についている気根が折れないように、ピンセットなどで穴を開けてから挿しましょう。用土に挿す際は、挿し穂の上下を間違わないように注意してください。特に今回使ったポトスのように、下垂しているものは間違いやすいです。「親株についていた方を下」という風に意識すると間違いにくくなります。
3本の挿し芽ができました。挿し木と同じように、挿し穂は複数本あったほうが安心できます。
最後にたっぷり水やりしたら終了です!
ちなみにポトスは水挿し(水差し)でも発根させることができます。水耕栽培(ハイドロカルチャー)に興味がある人はぜひ試してみてください。
水耕栽培(ハイドロカルチャー)の方法はこちらの記事で!
Step7. 発根までの管理
発根するまで、風通しが良く、直射日光の当たらない明るい半日陰で管理しましょう。発根するまでの日数の目安は、発根剤未使用では通常3週間~1カ月、発根剤を使用した場合は2週間ほどになります。
挿し芽ができる観葉植物・できない観葉植物について
挿し芽ができる観葉植物
ポトス、ぺぺロミア、ピレア、ホヤ、シッサスなどのつる性の多年草や、モンステラ、フィロデンドロン(つる性タイプ)などのサトイモ科の観葉植物育て方はこちらの記事で!
挿し芽ができない観葉植物
アジアンタム、ネフロレピス、ヒカゲヘゴ、ビカクシダ(コウモリラン)などのシダ類、茎が立ち上がらないつる性植物、オリズルラン、カラジウム、カラテア、シンゴニウム、ストレリチア、アスパラガス、チランジアなど育て方はこちらの記事で!
観葉植物の葉挿しの方法|サンセベリア&ベゴニアで紹介!
葉挿しができる観葉植物の種類は少ないですが、代表的なものでは「サンセベリア」や「ベゴニア」があります。今回は、その2種類の株を使って、葉挿しの方法を説明します。ちなみに、サンセベリアの斑入りの品種は、葉挿しにすると斑がなくなってしまいます。斑が入ったまま増やしたい場合は、株分けすることをおすすめします。
葉挿しの仕方|サンセベリア編
まずは、どの葉を葉挿しに使うかチェック。見た目のバランスを崩さないよう、できるだけ目立たない葉を使うようにしましょう。矢印で示したような長い葉は残しておくと美観を保てます。サンセベリアの育て方はこちらの記事で!
Step1. 葉を切り取る
切り取っても目立たないよう内側にある葉を選び、はさみで地際から切り取ります。サンセベリアの葉は固いので、剪定ばさみがおすすめ。Step2. 葉を切り分けて挿し穂を作る
葉を10cmほどの長さに切り分けます。あまり短く切ってしまうと、葉の体力がなくなって発根しづらくなるので注意しましょう。5枚の挿し穂ができました。切り分ける際、葉の上下がわからなくならないように、気をつけてください。上下を逆に挿してしまうと、発根できずに枯れてしまいます。サンセベリアの葉は、先端以外は「幅の広いほうが上」と覚えておきましょう。
Step3. 発根剤(ルートン)をつける
挿し穂の切断面に発根剤を塗付します。今回は「ルートン」を使用しました。切断面が湿っているため、そのままでも良く付着します。Step4. 挿し穂を用土に挿す
挿し穂がグラグラしないように、3~4cmの深さで用土に挿します。挿し床(用土)が乾いていれば、そのまますぐに挿してしまってOK。その代わり、10日ほどは水やりを控えましょう。Step5. 発根までの管理
発根するまで、風通しが良く、直射日光の当たらない明るい半日陰で管理しましょう。発根するまでの日数の目安は、発根剤未使用では通常3週間~1カ月、発根剤を使用した場合は2週間ほどになります。
葉挿しの仕方|ベゴニア編
ベゴニアは、木立性・根茎性のタイプであれば葉挿しで増やせます。どちらも葉挿しのやり方は同様。株姿が崩れないように、バランスを見てカットする葉を選びましょう。ベゴニア(宿根性)の育て方はこちらの記事で!
Step1. 葉を切り取る
よく生長した成葉を選び、カッターで切り取ります。葉柄を残すと、枯れ込んで見た目が悪くなるので付け根部分でカットしましょう。Step2. 余分な部分を切除する
葉挿しに葉柄は必要ないため、付け根から切除します。Step3. 葉を切り分けて挿し穂を作る
葉挿しは葉脈から発根するため、太い葉脈を残して葉を分割し、挿し穂を作ります。3枚の挿し穂ができました。葉は分割し過ぎると、発根のためのエネルギーが足りなくなってしまいます。挿し穂はある程度の大きさになるように切り分けましょう。
Step4. 挿し床(用土)の準備
ベゴニアの葉は薄く柔らかいため、あらかじめ用土を水で湿らせておき、挿しやすくします。Step5. 挿し穂を用土に挿す
挿し穂の断面に発根剤をつけたら、ピンセットなどで溝を掘り、挿し穂を挿していきます。挿し穂が倒れない程度の深さに植え付けましょう。Step6. ベゴニアの葉挿しが完了!
挿し床は、直射日光の当たらない明るい半日陰で管理しましょう。ムレに弱いため、風通しの良い場所に置くとベターです。また、発根するまで水切れしないように注意してください。受け皿に水を張り、腰水にしておくと管理が楽になります。発根しているか気になるところですが、しばらくは挿し穂には触らないようにしましょう。1カ月ほど経ったら、軽く引っ張ってみてください。抵抗を感じたら発根している証拠です!
葉挿しができる観葉植物・できない観葉植物について
葉挿しができる観葉植物
サンセベリア、宿根性ベゴニア、カランコエ、ぺぺロミア、エケベリア、セダム、クラッスラなど育て方はこちらの記事で!