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- Akiko Isono
編集者兼ライター。家庭菜園・ガーデニング専門誌の編集に8年間携わり、現在は雑誌やムック、WEBを中心に、植物、農業、環境、食などをテーマとした記事を執筆。好きな野菜はケールとにんじん。…続きを読む
堆肥の働きや種類、効果的な使い方を説明しましょう。また、一部の堆肥は畑や庭でつくることもできます。その方法も解説します!
1. 堆肥とは?なぜ必要なの?
堆肥とは、家畜のふんや落ち葉、木の皮などの有機物を、微生物の力で分解・発酵させてつくる、土壌改良のための資材です。肥料とは違い、植物に直接栄養分を与えるものではありませんが、栽培前に土に混ぜ込むことで、フカフカの土にする働きがあります。では、土がフカフカになると、どんないいことがあるのでしょうか?
土は植物が根を張るための土台であり、水や空気、肥料分を供給する大事な役割を持っています。カチカチに固まった土では水や空気がうまく供給されず、植物は元気に育つことができません。
堆肥をすき込むと土の中の微生物がふえ、活発に働くようになります。微生物が有機物を分解する働きによって、土がフカフカにやわらかくなり、水や空気の通り道ができます。根がしっかりと張り、水や肥料の吸収もよくなます。これが、植物の成長には理想的な状態なのです。
2. 堆肥の種類と、それぞれの特徴
堆肥には大きく分けると「動物性」「植物性」があり、原料によって含まれる成分が少しずつ違います。市販されている主な堆肥の成分や特徴、使い方のポイントなどをまとめました。動物性堆肥
土をフカフカにする働きのほかに、野菜の成長に必要な栄養分も多少含み、肥料としての働きも期待できます。未熟な動物性堆肥はにおいがきつかったり、病原菌などが残っていて野菜の成長に悪影響を与えたりするので、しっかりと発酵が進んだ完熟のものを選びましょう。見分け方として、完熟した堆肥はサラサラとして湿り気が少なく、においも少ないのが特徴です。① 牛ふん堆肥
牛舎などで集められた牛ふんに細かく切ったわら、おがくずなどを混ぜ、切り返しながら数か月かけて発酵・熟成させたもの。草食性の牛のふんは繊維質が多く、植物性堆肥と同様、土壌改良効果が高くなります。肥料分は少なめですが、チッ素、リン酸、カリの3要素をそれぞれ1〜3%程度含んでいます。効き目が穏やかでにおいも少なく、家庭菜園では最も使いやすい堆肥だと言えます。② 鶏ふん堆肥
鶏ふんを発酵させたもの、高温で乾燥させたものなどがあります。チッ素、リン酸、カリのほか、石灰、カルシウム、マグネシウム、マンガンなどを多く含み、肥料効果が高い反面、土をやわらかくする効果はあまりなく、堆肥よりも肥料として使用されることが多いようです。肥料効果が早く表れますが、散布する量やタイミングを誤ると植物の根を傷めてしまったりするので、初心者は注意して使いましょう。③ 馬ふん堆肥
馬ふんにわらなどを混ぜ、切り返しながら発酵・熟成させたものです。あまりなじみがありませんが、土壌改良効果が高く、北海道などではよく使われているようです。牛ふん堆肥と同様、肥料分は少ないものの、植物性の繊維が多く含まれていて、通気性、保水性の高いフカフカの土になります。においがほとんど気にならず、家庭菜園にもおすすめです。植物性堆肥
木の葉や樹皮などを微生物の働きで分解・発酵させた堆肥です。肥料成分はあまり含まれませんが、土をフカフカにして、保水性や通気性を高めてくれます。発酵が不十分だと、病原菌や虫の卵が残っている可能性があります。動物性堆肥と同様、しっかり発酵したものを選ぶようにしましょう。① 落ち葉堆肥
ケヤキやクヌギなどの広葉樹の葉を集め、米ぬかなどを加えて発酵を促進して作られます。「腐葉土」とほとんど同じものですが、こちらはある程度葉の形の残った状態のものをさすことが多いようです。肥料分をあまり含まず、土の中の微生物をふやし、通気性や保水性を高めてくれる効果があります。材料が手に入りやすいので、スペースがあれば手作りも可能。作り方は後半でお伝えします。
② バーク堆肥
樹皮を粉砕し、米ぬかなどを加えて長期間発酵・熟成させた堆肥です。チッ素・リン酸・カリの3要素を微量に含みますが、肥料効果はあまりなく、主に土壌改良材として使用されます。微生物の働きを活発にし、通気性や保水性のよいフカフカの土にする効果があります。畑で使用するほか、栽培が終わったプランターの土に混ぜ、再生させるときにも使われます。③ わら堆肥
短く切った稲わらに米ぬか、鶏ふんなどを混ぜ、発酵させて作られる堆肥で、ほかの植物性堆肥と同じく、土壌改良効果が高いのが特徴です。稲に多く含まれるケイ酸の効果で、野菜が病害虫に強くなるとも言われています。
④ もみがら堆肥
米を精米したときに出るもみがらを原料に、米ぬか、鶏ふんなどを加えて作られます。もみがらを燻して炭化させた「もみがら燻炭」も、土壌改良材としてよく使われます。
3. 畑の土をフカフカに!堆肥の正しい使い方
野菜を育てるとき、堆肥はどのくらい必要なのでしょうか?効果的な使い方は?
そんな疑問にお答えしましょう!
散布量
製品によって成分が多少異なるので、パッケージに記載されたとおりにまくのが基本です。牛ふん堆肥や馬ふん堆肥、落ち葉堆肥をはじめとする植物性堆肥の場合、1㎡当たり2〜3kgが目安です。初めて野菜を育てる場所や、特に土がかたくなっている場所では、やや多めにまいてもかまいません。散布方法
①堆肥の散布は、野菜の種まきや植えつけの2週間ほど前に行うのがベスト。まず、栽培する区画の土を軽く耕し、石や植物の根などがあれば取り除いておきましょう。また、堆肥の散布前に土壌酸度を測り、必要に応じて酸度調整を済ませておきます。
②必要な散布量を測り、区画全体にまんべんなく堆肥をまいて、クワで土となじませるようによく耕します。目安として、30cmくらいの深さまで耕せればOK。
③畝立てをして、このまま2週間ほどおいてから、種まきや植えつけをします。マルチングする場合は、マルチを張って2週間おきます。
4. 身近な材料でローコスト!昔ながらの「踏み込み堆肥」の作り方
落ち葉や稲わらが大量に手に入れば、堆肥を自作することもできます。菜園の片隅などでもできる、「踏み込み堆肥」の作り方を紹介しましょう。
成功のポイントは、微生物の働きを活発にするために、空気と水分をきちんと補うこと。
資源をむだにしない、エコな野菜作りをめざす方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
①木の板と角材などを組み合わせ、四角形のワクを作ります(ワクの大きさは材料の量やスペースに合わせます)。ワクの下部は土に埋め込みます。堆肥作り専用のワクも市販されているので、手軽に始めたい人はこちらがおすすめですよ。
②落ち葉や稲わらは、ワクの容量の5倍程度集めます。落ち葉堆肥に適しているのは、ケヤキ、クヌギ、ナラなどの葉です。マツやスギなどの針葉樹や、イチョウ、サクラなどの葉は、水分や樹脂分が多く堆肥には利用できません。
③落ち葉や稲わらを枠の中に敷き詰め、水をまいて足で踏みかためます。水は踏んだときにしみ出るくらい、たっぷりとまきましょう。これを繰り返して、20cmほどの高さにします。
④落ち葉の高さが20cmほどになったら、発酵を促進するために米ぬかや油かすなどの有機物を表面にまき、さらに上に土を5cmほどのせます。
おすすめの油粕・発酵促進剤など
⑤❸〜❹を繰り返し、ワクの縁まで積み重ねていきます。一番上に土をのせたら、雨が入らないようにブルーシートやビニールで全体をしっかり覆います。風で飛ばないように重しものせておきましょう。
⑥2週間に1回を目安に、スコップやフォークで全体を切り返します。これは、微生物が活動するのに必要な酸素を供給するための作業。内部の温度が50度ほどに上がり、ホカホカと温かくなれば、微生物が働き発酵がうまく進んでいる証拠です。
⑦水分が少なく乾いているようなら水を足し、水分が多すぎる場合は土をまいて、発酵が続くように調整しながら、数か月切り返しを続けます。
⑧季節や材料にもよりますが、堆肥になるまでは約半年ほど。落ち葉の形がなくなり、持ち上げたときサラサラとくずれるようになったら完成です!
5. よい土がおいしい野菜をつくる!
フカフカのよい土で育てれば、野菜は元気に、そしてよりおいしくなります。堆肥の種類や使い方をマスターして、土づくり名人をめざしましょう!
【AGRI PICKチャンネル】
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