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本記事では、有機農業(有機栽培)において使用が認められている農薬について、また家庭菜園でも取り入れやすい食用にも使用される成分や、天然由来の成分から作られる農薬について紹介します。
有機農業(有機栽培)とは
有機農業(有機栽培)ってどんなもの?
有機農業(有機栽培)とは、多様な生物の生育環境に配慮しながら、動植物由来の廃棄物を活用したり、土壌に生息するミミズや微生物などを活性化させたりして農業生態系の健全性を促進し、強化していく全体的な生産管理システムです。有機農業の定義のことならこちら
有機食品の認証制度(有機JAS認証)における有機農産物についてはこちら
有機農業(有機栽培)と無農薬栽培、減農薬栽培の違い
「無農薬栽培」は農薬を使用せずに行う栽培、「減農薬栽培」は農薬を減らして行う栽培ですが、誤解を与えたり明確な基準がなかったりしたことから「無農薬栽培」や「減農薬栽培」という表示は平成16年に禁止されています。現在、表示が「特別栽培農作物」に統一され、「特別栽培農産物」は生産された地域の慣行農法と比べ節減対象の農薬使用回数が50%以下であり、かつ化学肥料の窒素成分量が50%以下のものと決められています。
参考:「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(農林水産省)
▼肥料の種類のことならこちらをご覧ください。
有機農業や特別栽培農作物のことならこちら
有機農業(有機栽培)・有機農産物に使用できる農薬と病害虫防除の方法
有機農産物の栽培で使用することがやむを得ないとされる化学合成農薬
▼農薬の種類のことならこちらをご覧ください。
主な化学合成農薬
有機農産物に使用できる化学合成農薬の有効成分には、硫黄、還元澱粉糖化物液剤(かんげんでんぷんとうかぶつえきざい)、性フェロモン剤、石灰硫黄合剤、炭酸水素カリウム水溶剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重曹、展着剤、銅水和剤などがあります。参考:有機農産物の JAS 規格別表等資材の適合性判断基準及び手順書(農林水産省)
▼性フェロモンなどの誘引剤、展着剤についてはこちらをご覧ください。
天敵などの生物農薬
自然界に存在する昆虫や微生物を利用して病害虫の防除を行うため環境に優しい農薬です。天敵製剤
害虫の天敵となる昆虫を利用した農薬です。▼天敵製剤についてはこちらをご覧ください。
微生物農薬(微生物防除剤)
病原菌や害虫から植物を守る微生物を選抜した農薬です。自然界に存在している微生物を利用しているので、農薬に対する耐性菌や抵抗性害虫の出現が低く、化学農薬の効かなくなった耐性菌、抵抗性害虫にも効果があります。▼薬剤抵抗性のことならこちらをご覧ください。
【BT剤】
自然界に多く存在しているバチルス チューリンゲンシス(BT菌)の殺菌力を利用する微生物剤で、チョウ目やハエ目、コウチュウ目の幼虫に有効です。
【バチルス剤】
バチルス菌(バチルス ズブチリス:Bacillus subtilis)は、葉などに散布すると病原性糸状菌(カビ)のすみかを奪い、野菜などの灰色かび病やうどんこ病などの病原菌に感染しにくくします。
▼微生物剤についてはこちらをご覧ください。
農薬だけに頼らず総合的に病害虫を防除する方法
物理的防除法
1. 熱を利用した防除▼土壌の消毒やハウスの蒸し込みのことならこちらをご覧ください。
▼イネの温湯消毒のことならこちらをご覧ください。
2. 光を利用した防除
▼光防除のことならこちらをご覧ください。
3. 資材を利用した防除
▼防虫ネットのことならこちらをご覧ください。
耕種的防除法
1. 病気になりにくい抵抗性品種や接ぎ木苗の利用▼病気になりにくい接ぎ木苗のことならこちらをご覧ください。
2. 連作障害の回避
▼連作障害のことならこちらをご覧ください。
3. 生育環境の整備
▼土壌の微生物を増やす土づくりのことならこちらをご覧ください。
生物的防除法
天敵や微生物だけでなく、それらのすみかとなる「バンカープランツ」、作物の生育を良くする「コンパニオンプランツ」などを活用することで病害虫を防除する方法です。▼バンカープランツやコンパニオンについてはこちらをご覧ください。
家庭菜園での有機栽培におすすめな農薬と病害虫の防除のコツ
家庭菜園での有機栽培に使用できるおすすめ農薬
家庭菜園で使用する農薬は、植物に直接散布できるスプレータイプや、使い切りやすい小量タイプの農薬がおすすめです。食用にも使用される成分から作られた農薬
天然由来の成分を使用した農薬
忌避剤の活用
現在、有機農業や有機農産物に対して、木酢液やニームを病害虫の防除目的で使用することはできませんが、家庭菜園においては植物の生育を助け、病害虫の防除が期待できるものとして使用することができます。木酢液
アブラムシ類や土壌に生息するセンチュウ類などの害虫を忌避させる効果が期待できます。▼木酢酢の効果や使い方についてはこちらをご覧ください。
ニーム
ニームに含まれるアザジラクチン(アザディラクチン)の成分が、害虫を忌避させたり害虫の生長や生殖を抑制したりする効果があるといわれています。▼ニームオイルの効果や使い方についてはこちらをご覧ください。
農薬以外で病害虫を防除するコツ
家庭菜園で心がけたい病害虫を防除するコツを説明します。病害虫が発生しにくい環境づくり
風通しが悪く、作物周辺の湿度が高い状態であると病害虫は多発するため、できるだけ雨による泥はねを防ぎ、風通しの良い場所で栽培しましょう。種まきや植え付ける際は、株間を広くとり、作物の生長とともに整枝するなどして、不要な枝葉を取り除くように心がけましょう。▼雨による泥はねを防ぐマルチのことならこちらをご覧ください。
環境に負担をかけない有機栽培で家庭菜園でもSDGs!
家庭菜園においても、病害虫の発生をいち早く発見できれば、農薬散布の回数や使用量も最小限に抑えることができます。ぜひ、日頃から作物を観察するように心がけましょう。また、従来の栽培方法から有機栽培に切り替えることで、個人でも少なからずSDGsに貢献することができます。身近なところから少しづつでも環境に配慮し、未来のために家庭菜園でもSDGsを実現してみましょう。