有機農業(有機栽培)でも使用可能で家庭菜園にもおすすめな農薬の種類と病害虫防除のコツ

多様な生物の生育環境に配慮し、動植物由来の廃棄物を利活用して土壌生物を活性させ、農業生態系の健全性を促進する有機農業(有機栽培)において、使用が認められている農薬や、家庭菜園でも取り入れやすい天然由来成分で作られる農薬について紹介します。


有機農薬

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「有機〇〇」や「オーガニック〇〇」と表示されている農作物は、安全で健康に良いというイメージをほとんどの人がもっているのではないでしょうか。有機農業(有機栽培)は、多様な生物の生育環境に配慮しながら、資源を循環させ、健全な土壌で栽培を行う農業生産の方法です。また、2030年までに持続可能で、より良い世界を目指す国際目標とされている「SDGs」の達成に貢献することができる栽培方法でもあります。
本記事では、有機農業(有機栽培)において使用が認められている農薬について、また家庭菜園でも取り入れやすい食用にも使用される成分や、天然由来の成分から作られる農薬について紹介します。

有機農業(有機栽培)とは

有機栽培
出典:写真AC
有機農業(有機栽培)で使用する農薬の紹介の前に、まずは有機農業(有機栽培)や有機農産物について説明します。

有機農業(有機栽培)ってどんなもの?

有機農業(有機栽培)とは、多様な生物の生育環境に配慮しながら、動植物由来の廃棄物を活用したり、土壌に生息するミミズや微生物などを活性化させたりして農業生態系の健全性を促進し、強化していく全体的な生産管理システムです。

有機農業の定義のことならこちら


有機食品の認証制度(有機JAS認証)における有機農産物についてはこちら


有機農業(有機栽培)と無農薬栽培、減農薬栽培の違い

「無農薬栽培」は農薬を使用せずに行う栽培、「減農薬栽培」は農薬を減らして行う栽培ですが、誤解を与えたり明確な基準がなかったりしたことから「無農薬栽培」や「減農薬栽培」という表示は平成16年に禁止されています。
現在、表示が「特別栽培農作物」に統一され、「特別栽培農産物」は生産された地域の慣行農法と比べ節減対象の農薬使用回数が50%以下であり、かつ化学肥料の窒素成分量が50%以下のものと決められています。
参考:「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(農林水産省)

▼肥料の種類のことならこちらをご覧ください。

有機農業や特別栽培農作物のことならこちら




有機農業(有機栽培)・有機農産物に使用できる農薬と病害虫防除の方法

有機農産物 農薬
llustration:umi
続いては有機農産物の栽培で使用できる農薬や農薬以外で耕種的や物理的など総合的に病害虫を防除する方法について紹介します。

有機農産物の栽培で使用することがやむを得ないとされる化学合成農薬

化学農薬
出典:写真AC
有機農産物において、栽培時や種まきや植え付け前の2年間(多年生のものは一番初めの収穫前から3年間経過するまで)において化学合成農薬は使用できません。しかし、農産物に甚大な被害を与え、農薬を使用する以外に防除ができない場合には、使用が認められている農薬があります。ここでは有機農産物の生産においてやむを得ず使用が認められている農薬について紹介していきます。

▼農薬の種類のことならこちらをご覧ください。

主な化学合成農薬

有機農産物に使用できる化学合成農薬の有効成分には、硫黄、還元澱粉糖化物液剤(かんげんでんぷんとうかぶつえきざい)、性フェロモン剤、石灰硫黄合剤、炭酸水素カリウム水溶剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重曹、展着剤、銅水和剤などがあります。
参考:有機農産物の JAS 規格別表等資材の適合性判断基準及び手順書(農林水産省)
ITEM
イオウフロアブル
有機農産物に使用できます。粉立ちしないので薬剤調整がしやすく、汚れが少ないのが特徴です。

・内容量:1L
・有効成分:硫黄(52%)

ITEM
Zボルドー
糸状菌病害から細菌性病害まで幅広い病害に効果を発揮する薬剤です。

・内容量:500g
・有効成分:塩基性硫酸銅(58.0%)


ITEM
カリグリーン
うどんこ病やさび病、灰色かび病などに防除効果があります。
うどんこ病などには高い治療効果を発揮する薬剤です。

・内容量:250g
・有効成分:炭酸水素カリウム(80.0%)

ITEM
粘着くん液剤
殺虫成分として化学成分を含まず、食用デンプンの一種を使用した薬剤なので環境にやさしいのが特徴です。
幅広い作物で収穫の前日まで使用でき、物理的に効果を発揮するので、 薬剤抵抗性が発達しない薬剤です。

・内容量:1L
・有効成分:ヒドロキシプロピルデンプン(5.0% )


▼性フェロモンなどの誘引剤、展着剤についてはこちらをご覧ください。

天敵などの生物農薬

自然界に存在する昆虫や微生物を利用して病害虫の防除を行うため環境に優しい農薬です。

天敵製剤

害虫の天敵となる昆虫を利用した農薬です。

▼天敵製剤についてはこちらをご覧ください。

微生物農薬(微生物防除剤)

病原菌や害虫から植物を守る微生物を選抜した農薬です。自然界に存在している微生物を利用しているので、農薬に対する耐性菌や抵抗性害虫の出現が低く、化学農薬の効かなくなった耐性菌、抵抗性害虫にも効果があります。

▼薬剤抵抗性のことならこちらをご覧ください。

【BT剤】
自然界に多く存在しているバチルス チューリンゲンシス(BT菌)の殺菌力を利用する微生物剤で、チョウ目やハエ目、コウチュウ目の幼虫に有効です。

ITEM
ゼンターリ顆粒水和剤
従来のBT剤に比べ、散布液を調整する際に粉立ちしないため扱いやすく、 他剤抵抗性の発達したコナガやヨトウムシ、ハスモンヨトウに対しても高い効果を発揮する薬剤です。

・内容量:100g
・有効成分:バチルス チューリンゲンシス菌の生芽胞および 産生結晶毒素(10.0%)


【バチルス剤】
バチルス菌(バチルス ズブチリス:Bacillus subtilis)は、葉などに散布すると病原性糸状菌(カビ)のすみかを奪い、野菜などの灰色かび病やうどんこ病などの病原菌に感染しにくくします。

ITEM
ボトキラー水和剤
病気が発病する前に散布し、定着させることで病気の発生を予防します。

・内容量:500g
・有効成分:バチルス ズブチリス芽胞


▼微生物剤についてはこちらをご覧ください。

農薬だけに頼らず総合的に病害虫を防除する方法

防虫ネット
出典:写真AC
有機農産物では使用できる農薬が限られているため、病害虫が発生しにくい環境整備や資材の活用などを組み合わせて総合的に防除を行う必要があります。

物理的防除法

1. 熱を利用した防除
▼土壌の消毒やハウスの蒸し込みのことならこちらをご覧ください。
▼イネの温湯消毒のことならこちらをご覧ください。

2. 光を利用した防除
▼光防除のことならこちらをご覧ください。

3. 資材を利用した防除
▼防虫ネットのことならこちらをご覧ください。

耕種的防除法

1. 病気になりにくい抵抗性品種や接ぎ木苗の利用
▼病気になりにくい接ぎ木苗のことならこちらをご覧ください。

2. 連作障害の回避
▼連作障害のことならこちらをご覧ください。

3. 生育環境の整備
▼土壌の微生物を増やす土づくりのことならこちらをご覧ください。

生物的防除法

天敵や微生物だけでなく、それらのすみかとなる「バンカープランツ」、作物の生育を良くする「コンパニオンプランツ」などを活用することで病害虫を防除する方法です。

▼バンカープランツやコンパニオンについてはこちらをご覧ください。


家庭菜園での有機栽培におすすめな農薬と病害虫の防除のコツ

コツ
出典:写真AC
家庭菜園での有機栽培に使用しやすい農薬と農薬以外に有効な病害虫防除のコツを紹介します。

家庭菜園での有機栽培に使用できるおすすめ農薬

家庭菜園で使用する農薬は、植物に直接散布できるスプレータイプや、使い切りやすい小量タイプの農薬がおすすめです。

食用にも使用される成分から作られた農薬

ITEM
ベニカマイルドスプレー
食品成分から生まれた殺虫殺菌剤です。
さまざまな野菜やハーブなどで収穫前日まで使え、使用回数の制限もありません。

・内容量:1,000ml
・有効成分:還元澱粉糖化物

天然由来の成分を使用した農薬

ITEM
アーリーセーフ
有効成分の脂肪酸グリセリドは、天然物(ヤシ油)由来のものです。
野菜類などのハダニ、アブラムシ、コナジラミ、うどんこ病の防除に効果を発揮し、収穫前日まで使用できます。

・内容量:100ml
・有効成分:脂肪酸グリセリド


ITEM
パイベニカVスプレー
有効成分のピレトリンは、天然の殺虫成分(除虫菊エキス)です。
キャベツやコマツナなどの葉を食害するアオムシなどの害虫や、アブラムシ類、コナジラミ類など吸汁被害を及ぼす害虫にも効果的です。

・内容量:1000ml
・有効成分:ピレトリン


ITEM
STゼンターリ顆粒水和剤
有効成分は自然界にいる天然微生物(BT菌)由来。
アオムシやヨトウムシ、ハマキムシなどチョウ目害虫に効果があります。

・内容量:20g
・有効成分:バチルス チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素

忌避剤の活用

現在、有機農業や有機農産物に対して、木酢液やニームを病害虫の防除目的で使用することはできませんが、家庭菜園においては植物の生育を助け、病害虫の防除が期待できるものとして使用することができます。

木酢液

アブラムシ類や土壌に生息するセンチュウ類などの害虫を忌避させる効果が期待できます。

▼木酢酢の効果や使い方についてはこちらをご覧ください。

ニーム

ニームに含まれるアザジラクチン(アザディラクチン)の成分が、害虫を忌避させたり害虫の生長や生殖を抑制したりする効果があるといわれています。

▼ニームオイルの効果や使い方についてはこちらをご覧ください。

農薬以外で病害虫を防除するコツ

家庭菜園で心がけたい病害虫を防除するコツを説明します。

病害虫が発生しにくい環境づくり

風通しが悪く、作物周辺の湿度が高い状態であると病害虫は多発するため、できるだけ雨による泥はねを防ぎ、風通しの良い場所で栽培しましょう。種まきや植え付ける際は、株間を広くとり、作物の生長とともに整枝するなどして、不要な枝葉を取り除くように心がけましょう。

▼雨による泥はねを防ぐマルチのことならこちらをご覧ください。

環境に負担をかけない有機栽培で家庭菜園でもSDGs!

環境
出典:写真AC
病害虫の防除対策のために使用する農薬を、有機栽培でも使用可能な農薬に変えることで、自然に負荷をかけることなく、多様な生物の生育環境に配慮しながら、健全な土壌で栽培することができます。農薬以外にも物理的、耕種的防除方法など総合的な防除(IPM)によって、さらに環境への負担を減らしていきましょう。

家庭菜園においても、病害虫の発生をいち早く発見できれば、農薬散布の回数や使用量も最小限に抑えることができます。ぜひ、日頃から作物を観察するように心がけましょう。また、従来の栽培方法から有機栽培に切り替えることで、個人でも少なからずSDGsに貢献することができます。身近なところから少しづつでも環境に配慮し、未来のために家庭菜園でもSDGsを実現してみましょう。

紹介されたアイテム

イオウフロアブル
ゼンターリ顆粒水和剤
ボトキラー水和剤
ベニカマイルドスプレー
アーリーセーフ
パイベニカVスプレー
STゼンターリ顆粒水和剤

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。

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