展着剤とは
展着剤とは、殺虫剤や殺菌剤、除草剤などに代表される農薬の一種ですが、展着剤自体に殺虫・殺菌・殺草作用はありません。殺虫剤や殺菌剤、除草剤の効果を引き出し安定させるために用いるものです。▼農薬の種類や殺虫剤、殺菌剤、除草剤のことならこちらをご覧下さい。
展着剤の主な成分
展着剤の主成分は「界面活性剤」であり、これは食器用洗剤などに含まれているものと同じ成分です。また、機能を添加するために「ロウ(パラフィン)」を含むものや、「植物油脂」を含むものなどが販売されています。基本的には使用方法を守れば人体に影響が少ないものが使用されています。展着剤の必要性
植物の茎葉の表面は、「クチクラ層」という細かな毛やワックスなどで保護されているため、ただ農薬を散布しただけでは、作物によって水滴となって流れ落ちてしまい長く植物上に残留することができません。また、農薬などの水滴は通常丸い粒となって作物表面に付着しますが、これが乾いた後に白い汚れとなって作物の商品価値を落としてしまいます。展着剤は、このような水滴をつくらせないよう作物表面に均一に薬剤を行き渡らせる効果があります。
▼農薬の効果的な散布方法のことならこちらをご覧ください。
展着剤の3つの分類と使い分け方
展着剤は、農薬と一緒に使用するだけで全てにおいて効果が高まるというものではありません。間違った使用をしたり、作物や農薬に合わない展着剤を加用してしまっては十分な効果が得られません。展着剤の成分や効能を知って選ぶこと、また使用時期や濃度を守ることが重要です。
展着剤の種類
展着剤は、その成分と機能によって大きく3つに分類されます。使い方によって、効果の発現が変わってくるので、それぞれの機能とおすすめ使用方法を紹介します。1. 一般展着剤
農薬が植物の表面で濡れ拡がる性質を高めることによって、葉などの表面を薬液でむらなく覆います。一般展着剤は薬液の付着むらが原因で、農薬の効果ある場合に加用効果が認められます。一方、固着剤や機能性展着剤のように作物に成分が残る性質が無いため、降雨で流れ落ちることから使用はやや難しい場合もあります。
2. 固着剤
主に「ろうのパラフィン」などの成分によって作物に農薬を強く固着させて残効性や耐雨性などを高め、農薬の付着量を多くすることができます。固着剤は散布間隔を長くとりたいとき(散布回数を少なくしたいとき)や、梅雨期間中や台風での大雨に備える場合など(湿度が高い状態や降雨時に発生しやすい病気予防)で、効果を発揮します。
▼台風対策のことならこちらをご覧ください。
3. 機能性展着剤
通常の展着剤成分に、さらに機能が付加している展着剤のことです。アプローチBIなど浸透性のある展着剤は、薬剤を植物内に染み込ますことにより薬剤の効果向上(難防除病害虫には特におすすめします)、残効性の長期化(散布回数の軽減)などの効果があります。
作物の濡れ性とは
作物には「濡れ性」というものがあり、農薬がうまく葉の表面に広がるかどうかに関係します。この濡れ性の違いによって、展着剤を加用した方が良いものと、加用する必要がないものに分かれます。濡れ性が良い
薬効面での展着剤の必要性は薄いですが、果菜類や果樹など収穫物に汚れをつけたく無い場合は、一般展着剤など汚れを軽減する展着剤を使用します。濡れ性が良い作物
キュウリ、トウモロコシ、インゲン、果樹(ナシ、ミカン、カキ、モモ)など▼キュウリやトウモロコシ、インゲンの育て方ならこちらをご覧ください。
濡れ性が良い作物に使用する展着剤
一般展着剤(ダイン、ブレイクスルーなど)濡れ性が中程度
展着剤を加用すると、農薬の効果が高まります。濡れ性が中程度の作物
トマト、イチゴ、メロン、ナスなど▼トマトやイチゴ、ナスの育て方ならこちらをご覧ください。
濡れ性が中程度の作物に使用する展着剤
一般展着剤(ダイン、ブレイクスルーなど)濡れ性が悪い
水を弾きやすく、農薬が付着しにくい作物のため、機能性展着剤や固着剤をおすすめします。濡れ性が悪い作物
キャベツ、ネギ、サトイモ、イネ、ムギ、ダイズなど▼キャベツやネギ、サトイモ、イネ(米)、ダイズ(エダマメ)の育て方ならこちらをご覧ください。
濡れ性が悪い作物に使用する展着剤
固着剤(アビオン−Eなど)、機能性展着剤(アプローチBI、スカッシュなど)薬剤に展着剤を用いた正しい散布液の作り方
殺虫剤や殺菌剤、除草剤などの薬剤に展着剤を加えて散布液を作る際、じつは混ぜる薬剤の順番があります。基本的な散布液の作り方について説明します。※一部の展着剤には、農薬より先に入れることを推奨されていないものもあるので、使用前にラベルの注意事項をご確認ください。
1. タンクに水を貯める
農薬を作成するタンクやバケツに水を貯めます。タンクに水を貯めるときの注意点
先に展着剤を入れて、上から水を入れてしまうと泡立ってしまうので注意しましょう。2. 展着剤を入れる
展着剤を入れてよくかき混ぜます。3. 農薬を入れる
最後に農薬を入れます。農薬を数種類混用する場合の入れる順番
溶けやすい順に液剤→乳剤→水溶剤→フロアブル剤→顆粒水和剤(WDG・DFも同様)→水和剤とします。▼農薬を希釈して作る散布液のことならこちらもご覧ください。
展着剤使用の注意点
展着剤は使用方法によっては、薬害の発生が起こることもあります。使用方法には十分に注意します。登録を守る
展着剤は「農薬」であり、商品によっては適用作物や適用農薬名が限られているものがあります。使用に当たってはラベルを良く読み適正に使用してください。農薬との相性
展着剤によっては相性のよくない農薬があります。また農薬によっては、展着剤を入れると危険なもの、または展着効果がすでに入っているため展着剤が不必要なものがあります。使用時には展着剤と農薬の両方の表示ラベルをよく読み、混用には十分に気をつけましょう。使用条件
適用農薬の使用上の注意事項に、薬害の生じやすい作物、気象条件などが記載されている場合は遵守します。作物の幼苗期、高温時など薬害の生じやすい条件下での使用は、特に注意が必要です。▼使用後の散布液の処分方法や農薬による事故を防ぐことならこちらをご覧ください。
展着剤を上手に使って、薬剤散布の効果アップ
展着剤はさまざまな種類が発売されているため、農薬の種類や栽培する作物、生育段階に合った展着剤を選ぶことが、効果的な農薬使用の秘訣です。機能の異なる展着剤の性質を知って、最適な展着剤を選び、作物や梅雨時期など場面ごとに使い分け、農薬の効果をアップさせて品質の良い作物を育てましょう。