展着剤の使い方|農薬散布効果アップのコツ

農薬散布を行う際に、混ぜて使用する展着剤。現在では展着効果が高まった、さまざまな種類の展着剤が販売されています。ダインやスカッシュ、ブレイクスルーなどのおすすめの展着剤の種類と効果、選び方について、栽培初心者にもわかりやすく説明します。


濡れた葉

出典:写真AC
農薬散布を行う際に、混ぜて使用する展着剤。現在では展着効果が高まった、さまざまな種類の展着剤が販売されています。展着剤の種類と効果、選び方について、栽培初心者にもわかりやすく説明します。

展着剤とは

展着剤とは、殺虫剤や殺菌剤、除草剤などに代表される農薬の一種ですが、展着剤自体に殺虫・殺菌・殺草作用はありません。
展着剤は、殺虫剤や殺菌剤、除草剤の力を引き出し、安定させるために用いるものです。

展着剤の必要性

水滴
出典:写真AC
植物の茎葉の表面は「クチクラ層」という、細かな毛やワックスなどで保護されているため、作物によっては普通に農薬を散布しただけでは水滴となって流れ落ちてしまい、長く残留できません。
また農薬などの水滴は通常丸い粒となって作物表面に付着しますが、これが乾いた後に白い汚れとなり、作物の商品価値を落としてしまいます。
展着剤は、このような水滴を作らせずに、作物表面に均一に薬剤を行き渡らせる効果があります。

展着剤はとりあえず入れておけば大丈夫?

展着剤は、農薬と一緒に使用するだけで全てにおいて効果が高まるというものではありません。
間違った使用方法をしたり、作物や農薬に合わない展着剤を加用してしまっては十分な効果が得られません。
展着剤の成分や効能を知り、選ぶこと、また使用時期や濃度を守ることが大事です。

展着剤の安全性

展着剤の主成分は界面活性剤であり、これは食器用洗剤などと同じ成分です。
また機能を添加するために、ロウ(パラフィン)を含むものや、植物油脂を含むものなどが販売されています。基本的には使用方法を守れば人体に影響が少ないものが使用されています。

展着剤の3つの分類と使い分け方

植物 葉 濡れる
出典:写真AC
展着剤は、その成分と機能によって、大きく3つに分類されます。
使い方によって、効果の発現が変わってきますので、それぞれの機能とおすすめ使用方法を紹介します。

1. 一般展着剤

農薬が植物の表面で濡れ拡がる性質を高めることによって、葉などの表面を薬液でむらなく覆います。
一般展着剤は薬液の付着むらが原因で、農薬の効果ある場合に加用効果が認められます。
一方、固着剤や機能性展着剤のように作物に成分が残る性質が無いため、降雨で流れ落ちることから使用は難しい場合があります。

おすすめ一般展着剤

適用範囲が広く家庭菜園でも使いやすい
薬害が起こりにくく、ほとんどの野菜で使用できる展着剤です。
容量が小さく価格も安価なため、家庭菜園でも使いやすくなっています。

ITEM
ダイン
散布薬剤を虫や葉に付きやすくします。
散布した薬剤が植物や病害虫にむらなく付着するので薬剤の効果が高まり、雨露による流亡も軽減します。
ほとんどの農薬と混用可能です。
散布液1L当たり0.1〜0.3ml(2〜6滴程度)と、極少量加えるだけで効果があります。

・内容量:100ml
・有効成分:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル・リグニンスルホン酸カルシウム

シリコンを含み葉の表面でパッと広がる
撒いた瞬間に葉の表面に薬剤が広がり、乾きやすいのが特徴です。
均一に広がるので、作物表面に水滴が残りにくく、薬剤による汚れも軽減されます。

ITEM
ブレイクスルー
植物表面上の散布保持力が増強されることで速やかに、かつ広範囲に広がり、植物表面を均一に濡らします。
汚れ軽減効果に優れ、汚れの気になる場面の使用に最適です。
散布後の薬液の乾きが早く、展着剤の中でも特に速乾性が高いです。

・内容量:500ml
・有効成分:ポリオキシアルキレンオキシプロピルヘプタメチルトリシロキサン(80.0%)、ポリオキシアルキレンプロペニルエーテル(20.0%)

2. 固着剤

主にろうのパラフィンなどの成分によって作物に農薬を強く固着させて、残効性や耐雨性などを高めます。また農薬の付着量を多くすることができます。
固着剤は散布間隔を長く取りたいとき(散布回数を少なくしたいとき)や、梅雨期間中の大雨に備える場合など(湿度が高い状態や降雨時に発生しやすい病気予防)で、効果を発揮します。


おすすめ固着剤

雨天時期の病気予防に
パラフィン系展着剤の中でも多くの作物に広く利用できます。さらに有機 JAS 栽培および特別栽培でも使用できるメリットがあります。
無機銅剤および有機銅剤への加用効果に優れています。

ITEM
アビオンーE
パラフィンを主成分とした展着剤です。
適期防除が可能で、混用する農薬(殺菌剤や殺虫剤)の効果を十分に引き出すことができます。

・内容量:500ml
・有効成分:パラフィン(24.0%) ほか(※乳化剤、水 76.0%)

3. 機能性展着剤

通常の展着剤成分に、さらに機能が付加している展着剤のことです。
アプローチBIなど浸透性のある展着剤は、薬剤を植物内に染み込ますことにより薬剤の効果向上(難防除病害虫には特におすすめします)、残効性の長期化(散布回数の軽減)などの効果があります。

おすすめ機能性展着剤

安価で効果の安定した人気の機能性展着剤
浸透効果が特に重要になる治療剤や殺虫剤を散布するときにおすすめです。一般展着剤よりも濃い濃度で使用でき、薬害が出にくいです。

ITEM
アプローチBI
植物表面を濡らす力に加え、植物中に薬剤を染み込ませる力を備えた機能性展着剤です。
薬剤の粒子をより細かくし、植物葉面のクチクラ層や害虫の気門に染み込ませることができ、その結果病原菌あるいは害虫に対する薬剤の到達及び浸透も増強され効果が上がります。
※スルフェン酸系、ジチアノン系、キノキサリン系、ストロビルリン系、アニリド系薬剤には薬害を生じる恐れがあるので本剤を添加しないでください。

・内容量:500ml
・有効成分:ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル(50.0%)

ダニなどの難防除害虫に
主成分であるソルビタン脂肪酸エステルは食品添加物として、日常私たちが食べているパン、アイスクリーム、バターなどの乳化剤成分として使用している身近な成分です。
この成分が農薬と混ざり、油滴状に乳化して害虫の体を包み込みます。

ITEM
スカッシュ
主成分に食品添加物を用いた機能性展着剤です。
特にハダニ、アブラムシ類、うどんこ病などの防除困難な病害虫に対し、殺虫剤・殺菌剤への加用で薬効を安定して向上させます。
農薬の粒子はあまり細かくしない代わりにクチクラ層を軟化しながら浸透して行きます。
※スルフェン酸系、ジチアノン系、キノキサリン系、トリアジン系、ストロビルリン系殺菌剤には薬害を生じる恐れがあるので本剤を添加しないでください。

・内容量:500ml
・有効成分:ソルビタン脂肪酸エステル(70.0%)、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(5.5%)

作物の濡れ性とは

葉 濡れ性
出典:写真AC
作物には「濡れ性」というものがあり、農薬がうまく葉の表面に広がるかどうかに関係します。この濡れ性の違いによって、展着剤を加用した方が良いものと、加用する必要がないものに分かれます。

濡れ性が良い

薬効面での展着剤の必要性は薄いですが、果菜類や果樹など収穫物に汚れをつけたく無い場合は、一般展着剤など汚れを軽減する展着剤を使用します。

・作物
キュウリ、トウモロコシ、インゲン、果樹(ナシ、ミカン、カキ、モモ)など
・展着剤
一般展着剤(ダイン、ブレイクスルーなど)


濡れ性が中程度

展着剤を加用すると、農薬の効果が高まります。

・作物
トマト、イチゴ、メロン、ナスなど
・展着剤
一般展着剤(ダイン、ブレイクスルーなど)


濡れ性が悪い

水を弾きやすく、農薬が付着しにくい作物のため、機能性展着剤や固着剤をおすすめします。

・作物
キャベツ、ネギ、サトイモ、イネ、ムギ、ダイズなど
・展着剤
固着剤(アビオン−Eなど)、機能性展着剤(アプローチBI、スカッシュなど)


正しい展着剤と農薬の作り方

計量
出典:写真AC
展着剤や農薬には、混ぜる順番があります。基本的な作り方について説明します。
※一部の展着剤には農薬より先に入れることを推奨されていないものもありますので、使用前にラベルの注意事項をご確認ください。

1. タンク水を貯める

農薬を作成するタンクやバケツに水を貯めます。
先に展着剤を入れて、上から水を入れてしまうと泡立ってしまうので注意しましょう。

2. 展着剤を入れる

展着剤を入れてよくかき混ぜます。

3. 農薬を入れる

最後に農薬を入れます。
農薬を数種類混用する場合は、入れる順番は、溶けやすい順に液剤→乳剤→水溶剤→フロアブル剤→顆粒水和剤(WDG・DFも同様)→水和剤とします。

展着剤使用の注意点

注意点
出典:写真AC
展着剤は使用方法によっては、薬害の発生が起こることもあります。使用方法には十分に注意します。

登録を守る

展着剤は「農薬」であり、商品によっては適用作物や適用農薬名が限られているものがあります。
使用に当たってはラベルを良く読み適正に使用してください。

農薬との相性

展着剤によって、相性のよくない農薬があります。
また農薬によっては、展着剤を入れると危険なもの、または展着効果がすでに入っているため、展着剤が不必要なものがあります。
使用時には展着剤と農薬の両方の表示ラベルをよく読み、混用には十分に気をつけましょう。

使用条件

適用農薬の使用上の注意事項に、薬害の生じやすい作物、気象条件などが記載されている場合は遵守します。
作物の幼苗期、高温時など薬害の生じやすい条件下での使用は、特に注意が必要です。

展着剤を上手に使って、薬剤散布の効果アップ

野菜
出典:写真AC
展着剤はさまざまな種類が発売されているため、農薬の種類や栽培する作物、生育段階に合った展着剤を選ぶことが、効果的な農薬使用の秘訣です。
機能の異なる展着剤の性質を知って、最適な展着剤を選び、作物や梅雨時期など場面ごとに使い分け、農薬の効果をアップさせて品質の良い作物を育てましょう。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。