有機農業と聞いて、どのようなイメージを持ちますか?安心できる野菜、積極的に買いたいけれどちょっとお高めの野菜といった印象でしょうか。なぜ、人は「有機農業」と聞くとヘルシーで少し高級なイメージを持つのでしょう。オーガニックや特別栽培と表示された野菜と、有機野菜との違いも気になります。有機農業が注目される理由を有機農業の定義と特徴から紐解いていきましょう。
有機農業の定義とは?
改めて、有機農業とはどのような農業を指すのか、その定義を見てみましょう。有機農業は環境の健全性を強化する農業
有機農業とは、「農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システム(引用:農林水産省HP)」のことを指します。難しい言葉が並びますが、健全な土と水環境を促進するために、農薬(天敵昆虫などの生物農薬を除く)や化学肥料を使わず、たい肥などの有機肥料を用いる農業のことです。日本では、2006年に「有機農業の推進に関する法律」が策定され、化学的に合成された肥料や農薬を使用しないこと、遺伝子組み換え技術を利用せず、環境への負荷をできる限り低減した生産方法を用いる農業が有機農業であると定義されました。
有機農業推進法の成立・施行10年を記念して「有機農業の日」を制定
有機農業推進法が制定された12月8日は、有機農業の日です。農業の日委員会は、多くの人が農業の未来について考え、アクションを起こす「オーガニックデイ」キャンペーンを実施。オーガニック食材の調理やオーガニックをテーマとしたイベントへの参加を推奨しています。有機農業の日
そもそもオーガニックって何?
有機農業と似た言葉に、「オーガニック」があります。オーガニックを日本語に訳すと、「有機的」という言葉になります。では有機とは、改めてどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。有機物とは「生物に由来する物質」で、生物に由来しない鉱物や水が無機物とされています。砂糖や紙のように加工されたものでも、サトウキビや木といった生物由来の製品は有機物と分類できます。
農業における有機物とは、畜ふんたい肥や生ゴミたい肥、米ぬか、もみ殻など、有機肥料を主に指します。また「有機農業の日」では、オーガニックを「有機的な関係を築いていこうとするあり方」として、自然環境に優しくあること、自然の生き物を尊重していること、フェアであること、健康であろうとすることなどもオーガニックな行動としています。
有機食品であることを示す有機JASマーク
化学合成された農薬や肥料を使わず、有機的な栽培がおこなわれた有機農産物のなかでも、一定の要件を満たした食品にだけ付与できるのが有機JASマークです。このマークは有機JAS法に則って作られたものにのみ貼付が認められています。安全性の高い有機農業で作られた野菜や米などの食材を購入したいのであれば、有機JASマークの付いた商品を選びましょう。有機農業の現状と問題点
2010年時点で、有機農業に取り組んでいる農家の戸数は1万2千戸、うち有機JAS認証を取得して有機農業に取り組む農家は4千戸でした(平成22年度有機農業基礎データ作成事業報告書より)。これは、国内全体の耕地面積のわずか0.36%です。人にも地球にも優しい有機農業ですが、有機農業に取り組む農家があまり増えないのにはいくつかの理由があります。
有機農業は手間がかかる
有機農業の課題として挙げられるのが、労力です。化学的に合成された農薬や肥料を使わない有機農業では、除草作業も人の手によるものが主になります。あらゆる産業で人手不足が叫ばれる中、人の手を多く必要とする有機農業では、思ったように栽培面積を増やせない、収穫量を増やせないといった現状があります。有機農業日本一の町 熊本県山都町
このような現状の中、町を挙げて有機農業に取り組む事例もあります。日本の有機農業発祥の地といわれる、熊本県山都町では、国内の市町村で有機JAS認証を取得した生産事業者数NO.1を誇ります。消費者視点からの有機農業のメリット・デメリット
人を含め、生き物や自然環境に優しい有機農業。できるだけ有機農産物を口にしたいという方も多いのではないでしょうか。手間暇かけて作られる有機農産物を消費者から見ると、次のようなメリットとデメリットが浮かび上がってきます。安心して食べられる
有機農産物の最大のメリットは、安心して食べられる点にあります。農薬や化学肥料を使用した農産物も、都道府県ごとに定められた施肥基準等によって栽培されているため、それを食べたから危険ということではありません。しかし、化学的に合成された農薬や肥料を使用していない野菜なら、なお安心と感じられるでしょう。「持続可能な農業=時代に合った農業」のイメージ
持続可能な社会(持続可能な開発目標:SDGs)の観点から農業を見ると、農薬や化学肥料を使った大量生産では地球環境への負荷が気になります。誰もが安心して暮らせる世界を目指したいと考え、あらゆるものに対して地球環境への負荷を軽減するものを選択する方も増えています。有機農業は、自然の生態系や土壌・水の環境の健全化を強化する農業です。有機農産物を選び購入することが、地球のため、地球上に存在するすべての生物のための活動につながります。
価格が高く、すべての人が毎日食べるほどは生産されていない
一方で、有機農産物は価格が高く、すべての人が毎日食べるほどは生産されていないという事実もあります。安心して食べられる農産物を手にしたくとも、「欲しいものを欲しいときに購入できない」こともあるでしょう。誰もが有機農産物を手に入れられるようになるのは難しいのが現状です。生き物と環境に優しい有機農業・有機農作物との接点を増やそう
有機農業は自然や地球環境に優しく、かつ有機農業で育てられた作物は安心して食べることができます。農薬や化学肥料を使用した作物よりも少し値段が高く、流通量が少ないというデメリットもありますが、いつでも有機農産物を食卓に並べたいという方は、有機農業に取り組む農家から直接購入してみてはいかがでしょうか。<執筆>高橋 みゆき
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