有機農業の現状とは?自然栽培との違いやメリット・デメリットについて解説

有機農業に特別栽培、自然農法に無農薬…。農業にはさまざまな形があります。どの農法が何なのか、しっかりと理解していますか?ここでは、有機農業の現状やメリット・デメリット、各種農法との違いについて解説します。


野菜と○×

出典:写真AC
化学的に合成された肥料や農薬を使わず、環境保全にも配慮したサスティナブルな農業として、生産者だけでなく消費者からも注目される有機農業。「これから有機農業をはじめたいけれど、何をもってして有機農業とされるのかわからない」方も多いのではないでしょうか。有機農業と似た自然栽培との違いも気になるところです。

有機農業とはどのような農業なのか、その他の農法との違い、そして有機農業のメリットとデメリットについて解説します。

有機農業の定義と有機JAS認証

たい肥とトラクター
出典:写真AC
はじめに、有機農業の定義について見ていきましょう。

有機農業とは環境への負荷をできるだけ抑え土づくりも考える生産方法

有機農業とは、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本に、環境への負荷をできる限り抑えた農業の方法のことをいいます。有機農業を行う農業者は、自然の生態系の機能を生かし、環境の保全に気を配り農産物を栽培する必要があります。

有機JAS認証を受けた農産物だけが「有機」と表示できる

有機JASマーク
また、「有機野菜」「有機〇〇」と表示できるのは、有機JAS認証を受けて有機JASマークを貼ったもののみです。化学肥料や農薬を使わない農産品でも、有機JAS認証を受けていないものは有機と表示できない点に注意しましょう。


慣行栽培と有機農業の違い

農薬散布
出典:Pixabay
慣行栽培とは、農薬や化学肥料などを用いて生育促進・収量増加を目指す、現代に広く普及している栽培方法のことです。現在流通している農産物の多くは慣行栽培によって作られたもので、大きな圃場に大型機械を導入し、単一作物を大量かつ効率的に栽培できる栽培方法でもあります。

有機農業と特別栽培、無農薬、自然栽培・自然農法の違いは?

ケール
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農薬や化学肥料を使わない、あるいは低減した栽培方法を表す名称として、有機農業以外に特別栽培や無農薬、自然栽培・自然農法といった表示もあります。これらと有機の違いはどこにあるのでしょうか。

特別栽培は農薬・化学肥料の使用を抑えた栽培方法

特別栽培農産物は、節減対象農薬の使用回数および化学肥料の窒素成分量を慣行栽培の50%以下に抑えて栽培した農産物を指します。特別栽培農産物と表示できるのは、野菜・果実(加工品、きのこ、山野草等は対象外)または乾燥調製した穀類・豆類・茶などで、かつ不特定多数の消費者に販売されるもののみです。

特別栽培農産物は、減農薬・減化学肥料表示はできません。減農薬・減化学肥料の表示は、削減の割合や対象が消費者にわかりづらいことから、表示禁止事項とされています。

「無農薬」は表示禁止事項

バツサインを出す女性
出典:PIXTA
有機野菜と似たイメージを持つ言葉に、無農薬野菜があります。2003年5月に特別栽培農産物に係る表示ガイドラインが改正される以前は、同ガイドラインにおいても「無農薬」の表示が使用されていましたが、「消費者の優良誤認を招く」として以降使用されていません。

優良誤認と無農薬表示の実際

農薬不使用栽培の表示
撮影:AGRI PICK編集部
2003年5月以前の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインにおける「無農薬」とは、農産物を生産する過程において農薬を使用していないことが条件でした。
しかし消費者側から見ると、「土壌や圃場に残留農薬が一切ない」農産物と勘違いしやすい表示でもあります。

2002年に総務省が実施した「食品表示に関するアンケート調査」では、国際基準に準拠した厳しい条件をクリアしている有機表示よりも、無農薬表示のほうが優良であると誤認されているケースも少なくないことがわかりました。現在は、農薬を使用せずに栽培された農産物の場合、栽培期間中農薬不使用と言い換える必要があります。

自然栽培は自然の力を使う農法のこと

圃場
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自然栽培とは、肥料や農薬を使わず、土と植物が本来持つ力を引き出す栽培方法のことです。有機農業では、化学肥料などは使用しませんが、たい肥などの有機資材は使用できます。ところが自然栽培では、畜糞たい肥などの有機的肥料も使用しないのが一般的です。

自然農法も農薬や肥料を使用しない農法

自然農法も自然栽培と同じく、肥料や農薬を使用しない農法ですが、自然農法には流派が複数あり、自然農法に取り組む農業者によってやり方や信念はさまざま。
自然農法や自然栽培に共通する考え方に、むやみな施肥で作物を大きくしないというものがあります。作物は人間が育てるものではなく、育つものであるという考え方です。

自然農法も自然栽培とほぼ同じ理念をもつ農業手法ですが、自然栽培というとプロの農家が、自然農法は家庭菜園にて実施されていることが多いようです。


有機農業の現状・事情

箱に詰められた野菜
出典:写真AC
農林水産省の調べによると、「有機農業の生産面積は緩やかに増加しているものの、国内の耕地面積の0.5%に過ぎない(2017年推計)」ことがわかっています。

有機農業の生産面積と農家数

2017年時点の推計では、有機農業の生産面積は2万3千ha、農家数は2010年時点で1万2千戸でした。これは日本全国の耕地面積のわずか0.5%、総農家数から見ても0.5%ととても少ない数値です。

しかし、有機農業に取り組んでいる農家の平均年齢を見ると、半数が60歳未満と全体の農業者に比べて7歳ほど若いという特徴があります。また新規就農希望者の約3割が有機農業での就農を希望していることから、今後も少しずつ有機農業を行う農家が増えていくと考えられます。

参考:有機農業の推進について|農林水産省

有機野菜の販売価格は慣行栽培の約1.5倍になる場合も

値段
出典:写真AC
有機JASマークを添付した有機野菜の2015年の販売価格は、慣行栽培の野菜の約1.5倍です。
同じ年の有機農産物の格付け実績を見ると、野菜が7割、米が1割とそのほとんどが野菜です。県別有機JAS圃場の面積は、北海道が全国の4分の1を占めてトップとなっており、鹿児島、熊本と続きます。

「有機農業が盛んな地域で、さまざまなノウハウを学びながら新規就農したい」なら、北海道、鹿児島、熊本の事例などを参考にしてみましょう。


有機農業のメリットとデメリットは

タマネギとラディッシュ
出典:写真AC
環境に負荷をかけず、化学的に合成された肥料や農薬をも使わないことから消費者にも一定の人気がある有機野菜。しかし、それを栽培するとなれば、メリットだけでなく、有機農業ならではのデメリットがあることも確かです。

有機農業のメリット

有機農産物を生産するメリットはいくつかあります。まず、「有機農業の現状・事情」の項で述べた通り、「競合が少なく慣行栽培の農産物よりも価格が高い」のは大きなメリットといえるでしょう。
しっかりと販路を築き上げれば、安定した収入を目指せるかもしれません。有機JAS認証を受けた農産物を使ってブランド化して、さらに6次化すれば、事業拡大・収益拡大も期待できます。

また、「SDGs(持続可能な開発目標)」に注目が集まる昨今、現在の利益だけでなく将来の地球環境にも貢献できる可能性のある有機農業は、サスティナブルで社会貢献度の高いビジネスとも考えられます。

有機農業のデメリット

有機農業のデメリットとして、まず考えられるのが「慣行栽培よりも手間がかかる」点です。いくら販売価格が高くとも、労力に見合わなくてはコスト高になってしまいます。
また化学的に合成された肥料や農薬を使用しないため、生育は慣行栽培よりも比較的遅く、収量も少ない可能性があります。

大きな圃場で同じ作物を一度に作る慣行栽培とは違い、少量多品目栽培の農家も多く、さまざまな作物の栽培についての知識・ノウハウも求められます。
有機栽培のメリット ・競合が少ない(有機栽培を行う農家が少ない)
・慣行栽培の農産物よりも販売価格が高い
・有機JAS認証を取得してブランド化し、販路を確保・拡大できる可能性
・さらに6次化でオリジナリティを出し事業と収益の拡大を狙える
・持続可能なビジネスとして社会や地球環境に貢献できる
有機栽培のデメリット ・慣行栽培よりも栽培に手間がかかる
・慣行栽培よりも生育のスピードや収量が劣る可能性
・少量多品目栽培ではさまざまな作物に対する栽培の知識やノウハウが必要

経営規模や将来を考えて自分なりの栽培方法を見つけよう

たくさんの野菜
出典:Pixabay
農業にはさまざまな形があり、一般的な正解も不正解もありません。自分の経営規模や将来目指したいビジョンを見据えて、これからどのような農業を行っていくのか考えてみましょう。

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高橋 みゆき

北海道在住のフリーライター。北海道の畑作農家に生まれ、高校卒業後に農業協同組合に入組。JAでは貯金共済課の共済係として、窓口にて主に組合員の生命保険・損害保険の取り扱いをしていました。退組後、2013年まで酪農業に従事。現在はスマート農業に興味津々。テクノロジーを活用した農業についてお伝えしていければと思います。

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