症状からわかるホウレンソウの病気


ホウレンソウは茎葉や株全体、根、苗に病気が発生します。本記事では圃場でよくみられる葉や株、根に出ている症状から病気を推測できるように、茎葉、株全体、根、苗に発生する病気の順に紹介します。

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rinko

農学部大学院にて植物病理学の修士号を取得。 農協、農業資材メーカーで合わせて約10年間、農家へ栽培技術指導、病害虫診断業務を担当。現場で得た経験と知識で正確な情報をお伝えします。…続きを読む

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ホウレンソウ栽培のイラスト

Illustration:rie
栽培しているホウレンソウの生育が思わしくない、葉に斑点が出たり、株が萎(しお)れたりしている、そんな場合は病原菌に感染しているかもしれません。病気は早期に発見し対策をとれば重症化を防ぐことができます。
ホウレンソウは茎葉や株全体、根、苗に病気が発生します。本記事では圃場でよくみられる葉や株、根に出ている症状から病気を推測できるように、茎葉、株全体、根、苗に発生する病気の順に紹介します。

▼ホウレンソウの栽培方法についてはこちらをご覧ください。

▼植物の病気についてはこちらもご覧ください。

ホウレンソウの茎葉に発生する病気

ホウレンソウの葉や茎の症状から推測できる病気を紹介します。

ホウレンソウの茎葉に病斑(斑点やカビ)

ホウレンソウの葉に斑点やカビが出ている場合、病原菌に感染している可能性があります。まずは病斑の形、色、特徴を確認しましょう。

べと病

べと病におかされたホウレンソウの茎葉
Illustration:rie
 円形~不整形
 淡黄色~淡褐色〜淡紅色
特徴 葉裏に霜状のカビ

【症状】
はじめは葉の表に淡黄色のぼんやりとした斑点ができ、後に拡大して葉全体が淡黄色~淡紅色の病斑になります。病斑の裏面には灰色~灰紫色の霜状のカビが生えます。
【予防と対策】
べと病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「ジマンダイセン水和剤」「STダコニール1000」「アミスター20フロアブル」はホウレンソウに使用できません


斑点病

斑点病におかされたホウレンソウの茎葉
Illustration:rie
 円形~不整形
 褐色
特徴 病斑に緑黒色のカビ

【症状】
褐色の小さい斑点が葉の表面に生じて、中央がやや凹んだ大型の病斑に拡大し緑黒色のカビが生えます。被害が激しいと葉が黄化し、枯死してしまいます。
【予防と対策】
病気が発生した葉を取り除きます。雨など水滴の跳ね返りで発病が助長されるので、畝にマルチや敷きわらを敷くと効果的に防除することができます。

▼マルチについてはこちらもご覧ください。

炭疽病

炭疽病におかされたホウレンソウの茎葉
Illustration:rie
 円形~不整形
 灰白色~褐色
特徴 病斑に黒い粒

【症状】
葉に灰白色~褐色の円形~不整形で輪郭のはっきりとした病斑が生じ、茎では褐色のややへこんだ病斑をつくります。また、病斑の中心部分に黒い粒(胞子塊)が多数見られます。
【予防と対策】
炭疽病(炭そ病)の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「アントラコール顆粒水和剤」「ジマンダイセン水和剤」「ゲッター水和剤」「アミスター20フロアブル」はホウレンソウに使用できません


斑点細菌病

斑点細菌病におかされたホウレンソウの茎葉
Illustration:rie
 円形~不整形
 黄色~褐色
特徴 病斑周囲にぼんやりとした黄色い模様

【症状】
葉にはじめ黄色から茶褐色の針の穴程度の小さな円形、または不整形の斑点が現れ、徐々に拡大して融合し、大型の病斑が作られます。
【予防と対策】
斑点細菌病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「ジーファイン水和剤」はホウレンソウには使用できますが、ホウレンソウの斑点細菌病の適用はありません「オリゼメート粒剤」「カッパーシン水和剤」はホウレンソウに使用できません


ホウレンソウの株に発生する病気

ホウレンソウの株全体の症状から推測できる病気を紹介します。

ホウレンソウの株の生育異常

ホウレンソウの葉が縮れて株の生育が抑制されている場合、病原菌に感染している可能性があります。

モザイク病

モザイク病におかされたホウレンソウの株 
Illustration:rie

【症状】
濃淡のはっきりとしたモザイク状に葉の色が抜けて、縮れる、よじれる、サイズが小さくなるなどの症状が現れます。株は萎縮し、生長が抑制されます。
主にアブラムシ類によってウイルスが媒介がされます。
【予防と対策】
モザイク病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「モスピラン・トップジンMスプレー」はホウレンソウに使用できません

▼アブラムシのことならこちらをご覧ください。

ホウレンソウの株の萎れ

ホウレンソウの株が萎れている場合、病原菌に感染している可能性があります。

萎凋病

萎凋病におかされたホウレンソウの幼苗 
Illustration:rie

【症状】
下葉が黄化、萎れるなどの症状が現れ、やがて株全体も萎れて枯死します。根は細くなり茶色に変色します。
【予防と対策】
夏場の高温期に発生しやすい病気です。病原菌は土壌に生息するので、前作の残りの作物は圃場外で処理し、連作は避けて土壌の消毒をおすすめします。また、酸性土壌で発生しやすいため、ホウレンソウ栽培に適するpH6.5~7.0に矯正することも効果的な対策です。

▼連作障害や土壌消毒についてはこちらをご覧ください。

▼pH測定についてはこちらをご覧ください。

    立枯病

    立枯病におかされたホウレンソウの株 
    Illustration:rie

    【症状】
    感染すると根は褐色に腐敗し、下葉から黄化して葉は枯れ上がります。茎がくびれ、葉は倒伏しやすくなります。
    【予防と対策】
    立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
    ※上記リンク先の記事で紹介されている「ベンレート水和剤」はホウレンソウには使用できますが、ホウレンソウの立枯病の適用はありません「リゾレックス粉剤」「リゾレックス水和剤」はホウレンソウに使用できません


    株腐病

    株腐病におかされたホウレンソウの株
    Illustration:rie

    【症状】
    下位葉から黄化すると、地際部分の茎が倒れやすくなります。中心の葉が腐るように枯れることもあります。
    【予防と対策】
    夏場の高温期に発生しやすい病気です。病原菌は土壌に生息するため、前作の残りの作物は圃場外で処理し、連作を避け、土壌消毒することをおすすめします。


    ホウレンソウの苗に発生する病気

    ホウレンソウの苗の症状から推測できる病気を紹介します。

    ホウレンソウの苗が腐る、萎れる

    ホウレンソウの苗が腐ったり、萎れてしまったりする場合、病原菌に感染している可能性があります。

    苗立枯病・株腐病・根腐病

    ホウレンソウ 病気全般の特徴 苗
    Illustration:rie

    【共通の症状】
    根が褐色に腐敗し、地際部がくびれるなどして倒伏しやすくなります。苗を引っ張るとすぐに土から抜けてしまいます。
    【苗立枯病の予防と対策】
    苗立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
    ※上記リンク先の記事で紹介されている「タチガレン液剤」「GFベンレート水和剤」はホウレンソウには使用できますが、ホウレンソウの苗立枯病の適用はありません「リゾレックス粉剤」「リゾレックス水和剤」はホウレンソウに使用できません
    【株腐病・根腐病の共通の予防と対策】
    株腐病は夏場の高温期に、根腐病は春と秋に降雨が多いと発生しやすい病気です。株腐病・根腐病の病原菌は土壌に生息するため、前作の残りの作物は圃場外で処理し、連作を避け、土壌消毒することをおすすめします。


    病気以外の生理障害・害虫などの要因も併せて対策

    ホウレンソウの生育が悪い原因は病気だけとは限りません。曇天が続いたことから起る日照不足、雨や台風などの荒天、肥料や水の過不足などが原因で発生する生理障害でも元気を無くしてしまいます。
    また、アブラムシ類やメイガ、ヨトウムシ類といった害虫の被害を受けても、生育が悪くなります。
    上記の病気を一例として、生理障害や害虫被害など、そのほかの要因も併せて考えながら対策を行いましょう。
    ※生理障害とは、育てる植物に適さない温度、光、土壌の状態や栄養による障害などによって生長が阻害されること。

    生理障害のまとめ
    ▼ホウレンソウに発生する害虫のことならこちらをご覧ください。

    ホウレンソウで発生しやすい養分の欠乏・過剰症状

    生理障害の中でもホウレンソウの栽培で起こりやすい養分の欠乏症状について紹介します。

    カルシウム欠乏

    ホウレンソウの葉が丸まり、やがて茶色く枯れる症状(チップバーン)は、カルシウム欠乏によって発生します。
    土壌のカルシウムが欠乏しているほかにも、土壌水分が少なかったり、肥料がうまく吸収できなかったり、また肥料のバランスが悪かったりする場合などで発生します。

    ▼カルシウム欠乏についてはこちらをご覧ください。

    症状から病気を推測し早めの対策!

    ホウレンソウは主に土壌に生息する病原菌から病気が発生することが多いため、なるべく連作は避けて、土壌消毒などで土中の病原菌の密度を減らす工夫をしましょう。葉が柔らかく、根がまだか弱い幼苗期に発病すると持ち直すことは難しく、そのまま枯れてしまいます。病気の初発を見逃さず、特徴的な症状から病気を早期に発見して、手遅れになる前の早めの対策を心がけましょう。

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