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薬剤抵抗性を持たせない!農薬の効果的なローテーション散布


今現在使用している農薬を長く、そして効果的に使用するために、また作用性の異なる農薬を選ぶためにはどのようなことに注意すればいいのかなど、病害虫に薬剤抵抗性を持たせない効果的な「ローテーション散布」について説明します。

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umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。…続きを読む

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手に持った作物の苗

出典:写真AC
病害虫を防除する手段として使用される農薬に対して、害虫や病原菌が薬剤抵抗性を持ってしまうことがあります。その結果、薬剤が効かない、または効きにくくなるため、農薬散布も無駄な行為になってしまいます。
「使用していた農薬が効かなかったら、新しい薬剤を使用すればいい」と思うかもしれませんが、栽培作物に対して同じ作用性を持つ種類の農薬を選んでしまうと、結果的に薬剤に抵抗性を持った病害虫が増えます。
では、現在使用している農薬を長く、そして効果的に使用するために、また作用性の異なる農薬を選ぶためにはどのようなことに注意すればいいのかなど、病害虫に薬剤抵抗性を持たせない効果的な「ローテーション散布」について説明します。

作用性の異なる薬剤を選ぶことが重要

ローテーションを意図する折り紙で作った矢印
出典:写真AC
ローテーション散布とは作用性の異なる薬剤を順番に散布することです。つまり、病害虫に薬剤抵抗性を持たせないために、作用性が同じ農薬を連続して使用しないということです。

農薬の作用性

例えば、殺虫剤「アルバリン顆粒水溶剤」と「スタークルメイト液剤10」のように商品名の異なる農薬がありますが、どちらも「ジノテフラン」という同じ有効成分を含んだ薬剤です。これらをローテーションで散布しても、作用性が同じなので病害虫が抵抗性を持ちやすくなってしまいます。

アルバリン顆粒水溶剤

カメムシ類、コナカイガラムシ類、コナジラミ類、ハモグリガ、アブラムシ類など広範囲の害虫に優れた効果がある殺虫剤です。

・容量:500g
・有効成分:ジノテフラン(20.0% )

スタークルメイト液剤10

カメムシ類・ウンカ類・ツマグロヨコバイに効果があります。

・容量:500ml
・有効成分:ジノテフラン(10.0%)


これが「使用していた農薬が効かなったら、新しい薬剤を使用すればいい」とはいえない所以です。
では、ローテーション散布のために生産者が農薬を用意する際、どのような点に注意して選択すればいいのか、薬剤の異なる作用性について説明します。

RACコードから作用性を調べる

農薬ラベルでRACコードや有効成分の確認
Illustration:umi
RACコード(作用機構分類)とは同じ作用性ごとにつけられた農薬のコード番号で、「1A」などのように数字やアルファベットであらわされています。同じ作用性であれば同じRACコード、異なる作用性であればRACコードも違います。
上の図のようにRACコードは、農薬ラベルや製品チラシなどに表示されていますが、農薬によって記載されている箇所が異なります。

有効成分から作用性を調べる

じつはRACコードはすべての農薬に記載されているわけではありません。わからない場合は農薬ラベルや製品チラシに記載された有効成分から、その薬剤がどの作用性を持つグループなのか調べなければなりません。その際、有効成分が異なっていても作用性が同じ農薬があるため、有効成分の違いだけで判断しないようにしましょう。
参考:「殺虫剤の作用機構分類(IRAC による)」「殺菌剤の作用機構分類(FRAC による)」農業工業会

▼農薬の種類のことならこちらをご覧ください。

基本のローテーション散布

農薬ラベルや製品チラシに記載されたRACコード、または有効成分から作用性を把握してローテーション散布を行います。

ローテーション散布の例

ベンフラカルブ、レピメクチン、アセタミプリドのローテーション散布
Illustration:umi
上図の例のように、最初に使用するのはRACコードが「1A」、次に「6」、最後に「4A」というようにローテーション散布を行い、同じ作用性の農薬が続かないように計画を立てます。
また、同じ作用性の農薬を続けて散布しないというだけでなく、異なる作用性の農薬をローテーション散布することで、さらに病害虫が薬剤抵抗性を持ちづらくなります。

▼薬剤抵抗性についてはこちらをご覧ください。

2つの効果的なローテーション散布のポイント

虫眼鏡を持ってさまざまな事柄を知ろうとする気持ち
出典:写真AC
効果的なローテーション散布のために欠かせない2つのポイントについて説明します。

1. 地域ごとの薬剤抵抗性の情報を知る

栽培している作物や使用される薬剤が地域によって異なるため、病害虫の薬剤抵抗性においても違いが生じます。そのため、各々の地域で薬剤抵抗性を持っている病害虫の種類を把握しておくことが大切です。

各地域の普及所や指導機関

薬剤抵抗性を持つ病害虫については、各地域の普及所や指導機関などに問い合わせすることをおすすめします。
また、薬剤抵抗性を持った病害虫が発生した場合、病害虫防除所から特殊報が出されることがあるので、定期的に情報を確認しましょう。

参考:「都道府県病害虫防除所」(農林水産省)

▼露地栽培やハウス栽培での効果的な農薬散布についてはこちらをご覧ください。

2. 天敵に影響の少ない薬剤を使用する

農薬の中には、天敵に影響を及ぼす種類があります。そのことを知らずに薬剤を散布することで、天敵が減少してしまいます。その結果、今まで天敵によって抑えられていた病害虫は農薬の効果が切れた途端増えてしまいます。これでは計画通りにローテーション散布を行っても、病害虫対策として失敗に終わってしまうことがあるので注意しましょう。

▼天敵や天敵の住処となるバンカープランツのことならこちらをご覧ください。

効果を持続させる農薬散布

自然にすくすくと生長する植物
出典:写真AC
農薬による病害虫の防除は、作物を栽培する上で必要な手段の一つです。さらに農薬の作用性を理解してから行うローテーション散布は、病害虫に薬剤抵抗性を持たせないためにとても重要です。栽培地域ごとの薬剤抵抗性を持った病害虫の情報や、天敵に影響が少ない薬剤を使用することによって、ローテーション散布をより効果的なものにしましょう。
また、農薬以外の物理的・生物的な防除を組み合わせながら、病害虫に薬剤抵抗性を持たせない・持つことを遅らせることで、農薬を長く効果的に使用していきましょう。

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