農薬を希釈する前の確認事項
農薬は農作物の病気や害虫の防除に効果がある一方で、適切に使用しなければ商品となる農作物に薬害が出るだけでなく、環境や人体にも悪影響を与えてしまいます。うっかり農薬取締法に違反しないためにも注意すべきことを再度確認しましょう。▼農薬散布前の確認事項についてはこちらをご覧ください。
農薬ラベルで確認する項目
農薬のラベルには、下の表のように適用作物の適用病害虫に対して、農薬の希釈倍率や使用液量が表示されています。適用作物名 | 適用病害虫 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 | 総使用回数 |
かぼちゃ | うどんこ病 | 1000倍 | 100〜300L/10a | 収穫7日前まで | 3回 | 散布 | 3回 |
希釈倍率
用意する薬剤の量を計算するために必要なのが「希釈倍率」です。希釈の濃度が高くなれば薬害の発生や適用外使用となり、濃度が低いと農薬の効果が出ない、病害虫に抵抗性や耐性を発生させるなどの要因になります。
使用液量
10aあたりの使用液量・使用量で「散布量」「散布液量」と記載されることもあります。使用する圃場に必要な散布液量を計算するために必要な数値です。表示された量よりも多く散布してしまうと、作物に薬害を発生させる可能性が高まるだけでなく、適用外使用になってしまいます。
▼農薬を効率良く、適正に使用することならこちらをご覧ください。
圃場の広さから散布液量・希釈倍率で必要な薬量を計算!
農薬の登録ラベルに記載されている散布量・散布液量は10aあたりで記載されています。※10aは約300坪、約1反。
1. 圃場の広さから散布量・散布液量を計算
(例)「散布量:300L/10a、使用する圃場面積:1000坪」の場合、1坪あたりの散布量を計算してから、使用する圃場の面積に換算するとわかりやすくなります。10aは約300坪のため散布量は300L/300坪、ここから1坪あたりの散布液量を計算します。
300L÷300坪=1L/坪
使用する圃場の面積が1000坪なので、1坪あたりの散布液量を掛け合わせます。
1L/坪×1000坪=1000L
つまり、使用する圃場面積が1000坪の場合、1000Lの散布液量が必要です。
2. 希釈倍率と散布量・散布液量から薬量を計算
次に散布液の調整に必要な薬量を計算します。(例)散布量は1000L、希釈倍率が1000倍の場合
1000L(散布量)÷1000倍(希釈倍率)=1L(薬量)
薬量は1Lになります。
散布液を作成する際は、タンク内に農薬1L(薬量)を入れ、水で希釈して1000L(散布量)にするので、希釈に必要な水量を量ることはありませんが、計算するとすれば、希釈に必要な水量は1000L(散布量)から1L(薬量)を引くので999Lとなります。
計算不要!農薬希釈早見表を活用
使用する 薬量(g,ml) | 散布液量(L) | |||||||||
1 | 5 | 10 | 50 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1,000 | ||
希 釈 倍 率(倍) | 50 | 20 | 100 | 200 | 1,000 | 2,000 | 5,000 | 10,000 | 15,000 | 20,000 |
100 | 10 | 50 | 100 | 500 | 1,000 | 2,500 | 5,000 | 7,500 | 10,000 | |
250 | 4 | 20 | 40 | 200 | 400 | 1,000 | 2,000 | 3,000 | 4,000 | |
500 | 2 | 10 | 20 | 100 | 200 | 500 | 1,000 | 1,500 | 2,000 | |
750 | 1.3 | 6.6 | 13.3 | 66.6 | 133.3 | 333.3 | 666.6 | 1,000 | 1,333.3 | |
1,000 | 1 | 5 | 10 | 50 | 100 | 250 | 500 | 750 | 1,000 | |
1,500 | 0.6 | 3.3 | 6.6 | 33.3 | 66.6 | 166.6 | 333.3 | 500 | 666.6 | |
2,000 | 0.5 | 2.5 | 5 | 25 | 50 | 125 | 250 | 375 | 500 | |
3,000 | 0.3 | 1.6 | 3.3 | 16.6 | 33.3 | 83.3 | 166.6 | 250 | 333.3 |
上の例と同じ条件で農薬希釈早見表を見てみると、「散布液量は1000L」で「希釈倍率が1000倍」なので、「使用する薬剤は1,000ml」というのが一目でわかります。ちなみに、先ほど計算したときの薬量は1Lでしたが、上の農薬希釈早見表では使用する薬剤の単位は「ml」です。「L」や「ml」など早見表に記載されている水量や薬量の単位を間違えないようにしましょう。
無料アプリ「農薬希釈くん」を活用して簡単算出!
圃場面積や液量から薬量を計算してくれるアプリもあります。※iPhone用もAndroid用もアプリは無料ですが、ダウンロードや利用時のパケット通信料がかかります。
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農薬希釈ための正しい計量方法と散布液調整の手順
農薬ラベルに記載された登録内容を確認し、必要な水量や薬量がわかったら、注意事項を確認したうえで安全に散布液を作成しましょう。薬剤作成時の注意事項
1. 農薬散布時と同様に、散布液を作成する際も保護具を着用する。
2. 薬剤を量り終えたら、その都度容器にふたをする。
3. 必要な散布量を調整し、過不足のないようにする。
4. 希釈液をかき混ぜる際、液が跳ね返らないよう注意する。
液体農薬の計量と散布液の作り方の手順
圃場の広さに合った散布液量と希釈に必要な水量・薬量を計算しても、正確に量らなければ散布液の希釈濃度自体が変わってしまうので、薬剤を正しく量ることはとても重要です。農薬の剤型や量に合った計測器具を使いましょう。▼農薬の剤型のことならこちらをご覧ください。
液体農薬の正しい量り方
メスシリンダーやスポイトを使用して量ります。最初から農薬を一気にメスシリンダーに注ぎ込むのではなく、やや少なめに入れてスポイトで確実に目的の量にしていきます。メスシリンダーは水平な場所に置き、液面の高さに目線を合わせて読み取りましょう。
液体農薬の散布液の作り方
1. メスシリンダーやスポイトで薬量を量ったら、散布に使用するタンクに入れる。2. 散布に必要な水量になるようにタンクに水を入れる。その際、メスシリンダーやスポイトに農薬が残らないようにすすいだ水もタンクに入れる。
3. タンクにふたをし、ゆすって混ぜる。
メスシリンダー使用時の注意点
とても倒れやすいので、農薬を入れたら倒さないように注意しましょう。
粉剤や粒剤の農薬の計量と散布液の作り方
計量スプーンやはかりを使用して量ります。粉剤や粒剤の農薬の正しい量り方
はかりは水平な場所に置き、カップなどの容器に薬剤を入れて量ります。あらかじめ薬剤を入れる容器の重さを量っておきましょう。はかりがない場合は計量スプーンで代用!
計量スプーンで代用する場合、農薬の安全シート(SDSまたはMSDS)に記載されている比重(1mlあたりの重さ)から計算することができます。
(例)比重:0.4の場合、薬剤の1gの薬量は
1g÷0.4(農薬の比重)=2.5ml(薬量)となります。
計量スプーンの小さじが5mlなので、薬剤1gは計量スプーン小さじ1/2杯となります。
※比重はかさ密度や見かけ比重などで記載されている場合があります。農薬の安全シート(SDSまたはMSDS)は各農薬メーカーの商品ページから見ることができます。
農薬が粉の場合の散布液の作り方の手順
1. あらかじめカップなどの容器をはかりにのせた状態で農薬を量り、容器を除いた重さが必要な薬量になるようにしておく。2. 1に水を入れかき混ぜて溶かす。
3. 2を散布に使用するタンクに入れ、容器に農薬が残らないようにすすいだ水もタンクに入れる。
4. 散布に必要な水量になるように、タンクに水を入れる。
5. タンクにふたをし、ゆすって混ぜる。
農薬が粉剤の場合の注意点
溶かす際にダマにならないようにしっかりかき混ぜましょう。
動画で散布液の調整方法を確認
農薬の正しい使い方「散布液の調整」の動画も参考にしてみましょう。https://www.jcpa.or.jp/user/movie.html(出典:農業工業会 https://www.jcpa.or.jp/)
▼農薬の力を引き出し安定させる展着剤のことならこちらをご覧ください。