本記事では農薬散布後の基本的な散布液の扱い方や、散布器具の洗浄、使用済空容器の廃棄方法などについて紹介します。
散布液が余ったときの対応と農薬処理の方法
散布液を処理する際は、農薬使用者の安全を守るために必ず保護具を着用して行いましょう。▼農薬使用の安全確認のことならこちらをご覧ください。
基本的に散布液は使いきる!
農薬は計画的に購入し、圃場面積に合った農薬の必要量を正しく量り散布液を作ります。希釈した散布液は、残らないように使いきることが大前提なので、丁寧に作物の新芽や葉の裏までかけるようにしましょう。▼散布液の正しい希釈方法のことならこちらをご覧ください。
もし農薬の散布液が余ってしまったら?
薬剤がかかりにくそうな場所や、散布がムラになりやすい縮んでいる葉、新芽・側芽を散布液で洗うようにかけ直します。資材にも散布
ハダニやアザミウマ、アブラムシ、コナジラミなどが多発している場合は、支柱やマルチ、ビニールなどの資材にも散布しましょう。▼ハダニやアザミウマ、アブラムシ、コナジラミのことならこちらをご覧ください。
間違って多く散布液を作ってしまったら?
一度希釈してしまった散布液は、時間の経過とともに農薬としての効果が落ちてしまいます。たとえ間違って散布液を多く作り過ぎてしまっても、容器などで保管するのはやめましょう。土壌に散布
余った散布液は、周辺環境や今後の栽培に影響しないよう作物が植え付けされていない土壌に散布します。近くに住宅地があるような場所は避け、河川や池などに流入することがないように注意しましょう。散布器具の洗浄や点検、整備
散布に使用したタンクやホース、散布ノズルなどの器具を洗浄する際、油断して素手で作業を行うと、思わぬところに濃度の高い農薬が残っていることがあります。直接手で触れることのないように引き続き保護具を着用して作業しましょう。また、ほかの作物の周りや、近くに住宅地がある場所での洗浄はやめて、排水が河川や池などに流入しないよう注意してください。
散布後の器具の洗浄
農薬散布に使用した噴霧器のストレーナーやタンク、ホースなどには農薬や残りカスが付いています。散布後にしっかり器具を洗浄しなければ、次に散布する際に残った農薬が影響し、残留基準を超えてしまう恐れがあるので、散布器具の洗浄は毎回必ず行いましょう。※ストレーナーとは液体と固体の混合物を分離させたり、薬液中のごみなどをろ過する役割
ストレーナー
ストレーナーは取り外した後、ブラシなどを使用して水できれいに洗浄しましょう。薬液タンク
タンクの側面や底に残った農薬を水で洗い流します。水がきれいになるまで「水をためては捨てる」を繰り返しましょう。持ち上げなくても残った液を排出でき、四輪・テーラーに横積み可能なタンクもあります。
ホース、散布ノズル
洗浄し終わった薬液タンクにきれいな水を入れ、噴霧器を作動させてホースや散布ノズル内を洗浄します。散水ノズルの先から詰まりなく、きれいな水が出てくるまで行いましょう。散布器具の点検・整備
散布の後に散布器具を洗浄しながら点検、整備を行います。各部位のネジやボルトの緩み、脱落はないか確認し、変形や損傷部分があれば修理に出しましょう。ストレーナー
破損しているものや、長期間使用していて洗浄しても汚れが目立つストレーナーは新しいものに交換します。薬液タンク
薬液タンクに水分が残っているとタンクに負担がかかるため、よく洗った後は直射日光のあたらない場所に置いて乾かしましょう。ホース
劣化していないか、ネジ部やパッキンの損傷がないかを確認します。動力噴霧器、エンジン
規定量のオイルがあるか、オイルもれがないかを確認します。オイルが汚れている場合は交換しましょう。▼噴霧器のことならこちらもご覧ください。
付着した農薬の容器別除去方法
使用済みの空容器を廃棄する前に、必ず農薬が残っていない状態にします。容器に残った農薬の除去方法は、形状や性質によって異なるため確認しておきましょう。紙袋
散布液を作成する際、紙袋に入っている薬剤を使い切る場合は、袋をたたいて袋内部に付着した農薬が残らないように注意しましょう。中が洗える加工がしてある紙袋は、希釈用の水を少し入れ、ゆすぐようにして残った農薬を取り除きます。
農薬を取り除いた紙袋は一般のごみと混ざってしまわないように、農薬保管庫などに入れておきましょう。
▼農薬の保管を怠ったことによる誤飲などについてはこちらをご覧ください。
瓶や缶、プラスチック
農薬を使い切る際は、瓶や缶、プラスチックの容器内に1/4程度の水を入れてふたをし、よく振り混ぜて洗うように取り除きます。3回ほど繰り返したら水気を切って廃棄に出すまで安全に保管しておきます。揮発性農薬(クロルピクリンなど)が入った缶
揮発性農薬(クロルピクリンなど)が入った缶の場合は、残った液の処理だけでなく、臭いを抜く作業が必要です。▼クロルピクリンを使った土壌消毒のことならこちらをご覧ください。
1. 缶に残った液の処理
周囲に臭気の影響を及ぼさない場所を選んで小さなくぼみを作ります。 使用済みの缶の口栓をはずしたら、缶の中の残った液が出やすいようにまっすぐ逆さにしてくぼみに立て、倒れないように缶の周りに土を寄せておきます。2. 残臭処理
1~2日で缶に残った液は無くなりますが、そのまま缶を立てて中の臭気も抜いていきます。 1カ月後、缶をひっくり返して上向きにし、臭いを確認します。まだ臭いが残っていれば、さらに1週間缶を逆さにして完全に臭いがなくなるまで待ちましょう。 臭いが無くなったら残臭がないことを業者が確認できるように口栓を外したまま産業廃棄物として廃棄します。エアゾル
必ず火気のない風通しがよい屋外で作業します。中身が残ったままごみに出すと、火災や破裂事故につながることがあるため、必ず中身を空にして処分しましょう。1. 残った中身の処理
近くに火気がある場所、静電気によって引火することがあるので、必ず火気のない風通しがよい屋外で噴射音がなくなるまで中身を出して空にします。このとき、周囲に飛散しないようティッシュや新聞紙などに吹き付けましょう。2. 缶が空になったか確認
中身が空になっているかどうか缶を振って確認します。中身が残っているとチャプチャプと液体が残っているような音がします。3. ガス抜きをする
ガス抜きキャップが装着されているものは、使用方法に従ってガス抜きをします。キャップが装着されていない場合は、容器に不用意に穴をあけると内容物が噴出して危険なので、ボタンを押してガスを完全に出し切りましょう。▼エアゾルなど農薬の剤型についてはこちらをご覧ください。
素材別空容器の廃棄物処理と産廃依頼先
廃棄する農薬の空容器の処理が事業系一般廃棄物なのか、それとも産業廃棄物になるのかを把握して、市町村または都道府県知事などの許可を持った業者に委託しなければ、生産者自身が無許可、不法投棄となってしまい懲役や罰金が発生する可能性があります。家庭園芸用農薬処分
家庭菜園などで使用する農薬の空容器は、農業用とは処分方法が異なる場合があるため、それぞれの市町村に確認し処分を行ってください。
容器の素材別の廃棄物処理
農薬を除去した空容器は素材によって処理方法が異なります。紙の場合
事業系一般廃棄物として処理します。紙をベースにアルミなどが貼り付けてある場合ははがしてそれぞれ廃棄するか、素材の大半を占める方(紙類またはプラスチック類)に分別しましょう。エアゾール缶の中身を処理する際に飛散防止で使用したティッシュや新聞紙も、紙と同様に処理しましょう。
プラスチック類、缶などの金属類、ガラスの場合
容器がプラスチック類、缶などの金属類、ガラスは産業廃棄物として処理します。廃棄の依頼先
地域によって廃棄を依頼する先も違うため必ず確認しておきましょう。市町村や地域共同で回収している場合
農薬の使用済み空容器を市町村や地域共同で回収・処分している場合は、定められた方法に従って処分します。事業者自身(農家など)が処理を委託する場合
農薬の使用済み空容器は許可を受けた廃棄物処理業者に処理を委託します。産業廃棄物処理業者は全国産業資源循環連合会のHPから確認できます。
https://www.zensanpairen.or.jp/federation/about/member/(出典:全国産業資源循環連合会 )
散布作業後の農薬の処分に責任を持つ!
農薬は扱い方を誤ると中毒事故を引き起こしたり、水産動植物へ悪影響を及ぼしたりしてしまいます。そのため農薬を使用する際は、散布が終わった後の片づけまでしっかりと責任を持って行う必要があります。残った農薬の扱いや取り除き方、空容器の廃棄には薬剤の性質や容器の形状によって異なるため、それぞれに合った処理や廃棄の仕方をしっかりと把握し、安全に配慮して行いましょう。