本記事では、化学農薬における殺虫剤が害虫の体のどのような部位、行動に影響を与えるのか、さまざまな殺虫剤の特徴について説明します。
▼化学農薬以外の殺虫剤「生物農薬」についてはこちらをご覧ください。
殺虫剤(農薬)はどのように害虫の体内に入るのか?
接触剤
食毒剤
浸透移行性剤
「浸透移行性」と「浸達性」はどう違うの?
浸透移行性は植物体内へ移動しますが、浸達性とは葉の表にかかった薬剤の有効成分が葉の裏へしみ込むことをいい、植物体内へは移動しません。
誘殺剤
物理的防除剤
害虫の体内に入った殺虫剤はどのように作用するか?
神経系に作用
有機リン系(1B)、カーバメート系(1A)など薬剤の種類によって神経系のどこに作用するかが異なります。このとき、同じRACコードの薬剤を連用すると薬剤抵抗性が発生しやすくなるため、作用の違う薬剤を使用してローテーション防除を行いましょう。
※RACコード(作用機構分類)とは同じ作用性ごとにつけられた農薬のコード番号で、異なる作用性であればRACコードも違います。
▼薬剤抵抗性についてはこちらをご覧ください。
▼RACコードやローテーション防除についてはこちらをご覧ください。
神経系に作用する主な薬剤の一例
分類 | RACコード | 薬剤の一例 |
有機リン系 | 1B | オルトラン、マラソン |
カーバメート系 | 1A | オンコル、ラービン |
合成ピレスロイド系 | 3A | アディオン、トレボン |
ネオニコチノイド系 | 4A | アクタラ、アドマイヤ― |
呼吸を阻害
害虫は呼吸によって取り入れた酸素をエネルギーに変えて利用しますが、この過程を阻害するがこのタイプの薬剤です。呼吸を阻害する主な薬剤の一例
分類 | RACコード | 薬剤の一例 |
電子伝達系Ⅰ阻害剤 | 21A | サンマイト、ハチハチ |
電子伝達系 | 25A | ダニサラバ、スターマイト |
成長を抑制
「昆虫成長抑制剤(IGR)」と呼ばれる成長を抑制する薬剤は、成虫には直接的な殺虫効果のないタイプで、幼虫の脱皮や変態など発育の進行に異常を起こしたり、産卵やう化を阻害して害虫の数を減らしたりします。
効き方はゆっくりですが残効が長いのが特徴の薬剤です。
成長を抑制する主な薬剤の一例
分類 | RACコード | 薬剤の例 |
キチン合成阻害 | 15 | マッチ、カスケード |
脱皮促進作用 | 18 | マトリック、ファルコン |
殺虫剤の効き方を知ることで農薬をより効果的に!
例えば、使用する薬剤が「接触剤」であれば、薬剤が害虫に接触しなければ意味がありません。また、成長を抑制する「昆虫成長抑制剤(IGR)」を成虫の防除に使用しても、直接的に殺虫駆除することはできません。それぞれの薬剤の特徴を知って効果的な防除を行いましょう。