米の漢字を崩すと「八」「十」「八」となり、このことから88の手間がかかるといわれている作物ですが、最近の米作りでは自動運転やドローン、IoTを活用したスマート農業など新しい方法が話題です。
一方では、まだまだ年配の方が昔ながらの米作りの工夫をし続けて頑張っている地域も多くあります。さすがに88回まで手間はかかりませんが、どのような工程があるのか簡単に説明します。
※この記事では、富山県を基準に執筆しています。生育は地域、気候、品種、栽培管理方法などにより異なります。
▼自動運転やドローン、スマート農業のことならこちらをご覧ください。
米作りの年間栽培カレンダー
地域や品種によって差が大きいので、私の住む富山県で栽培されているコシヒカリを例に、1年の米作りの手順を時事系列に沿って説明します。余裕をもって次の作業に移れるように、米作り年間栽培カレンダーを参考にしてあらかじめ計画を立てておきましょう。作業が多少遅れても植物は育ってくれます。安全第一をモットーに焦らず作業を進めてください。
米作り年間栽培カレンダー
月 | 主な作業 |
3月 | ・耕起や田植えなどの機械の点検 ・発注した資材の確認 |
4月 | ・ビニールハウス設置 ・育苗 ・土づくり |
5月 | ・除草対策 ・田植え ・病害虫の防除 ・水漏れ監視 |
6月 | ・溝切り |
7月 | ・追肥 |
8月 | ・収穫の機械の点検 |
9月 | ・収穫、出荷 |
10月 | ・暮起こし(田起こし) |
11月 | ・土壌診断 |
12月 | ・翌年の営農計画 ・資材の発注 |
3月の作業
富山県ではそろそろ雪解けの季節です。機械の点検や発注した資材の確認を行います。▼トラクターのメンテナンスのことならこちらをご覧ください。
4月の作業
苗の準備とともにトラクターを使った耕起作業も開始します。必要があれば土壌改良材も投入しましょう。▼トラクターのことならこちらをご覧ください。
ビニールハウス設置
田植えに向けて育苗を開始するので、ビニールハウスの設置も必要です。▼ビニールハウスの設置のことならこちらをご覧ください。
育苗
丈夫な苗を作ることができれば、農作業の半分が終わったといわれる「苗半作」という言葉があるほど重要な作業です。茎が太く、長さが短い、葉が立っている苗を目指しましょう。
播種
育苗箱に稲の種をまいていきます。芽出し
発芽した後、蒸気で加温する芽出し器に入れます。芽出しをせずにビニールハウスに育苗箱を並べて保温シートをかける場合もあります。
緑化
芽出し器から出した直後の苗は「もやし」状態なので、ビニールハウスに並べた直後に寒冷紗(かんれいしゃ)をかけるなどして徐々に環境に慣らしていき、上の写真のように緑化させます。土づくり
苗の準備も順調に進んでいるので、田植えができるようにトラクターを使って植え代(うえしろ)をつくりましょう。機械作業なので、事前の点検や操作方法の確認を行い安全に作業してください。
荒起こし
荒起こしのほかに「あらくり」など地域によって呼び名が変わります。前作の稲わらなどを地面に混ぜます。土質によって変わりますが、荒起こしの目安は13~15cm位です。
代(しろ)かき
起伏が少なく均一な地面を目指して、実際に苗を植え付けられる状態にすることです。トラクターの作業機を「代かきハロー」という作業機械に付け替えて行うことが多いです。5月の作業
いよいよ田植えの季節ですが、その前に雑草対策として田んぼの周辺に除草剤をまいておくと後々作業がスムーズになります。田植えが終わったら、農薬の散布や水漏れの監視などが必要です。
▼稲の除草剤のことならこちらをご覧ください。
田植え
いよいよ田んぼに稲を植えて育てる本田(ほんでん)管理という段階に入ります。田植え作業は最初くねくねと曲がりがちになりますが、しっかり植えていれば稲は元気に生えてきます。
病害虫の防除
天候などさまざまな環境条件によって稲に病害虫が発生します。こまめに圃場を巡回して異常があれば速やかに対応しましょう。▼病害虫対策のまとめ
6月の作業
稲の根の張りを確認し、さらに生育を促進させるために、地中で発生するガスを抜いて水はけを良くしてあげましょう。溝切り
植えてから1カ月ほど経ったら溝切りという作業を行います。溝切り機と呼ばれる機械を使用したり、田植え機にアタッチメントを付けたりして行います。7月の作業
7月は穂の赤ちゃんともいわれる「幼穂(ようすい)」ができる幼穂形成期から穂ばらみ期に入ります。追肥
生長の段階によって追加で肥料を施します。▼肥料のことならこちらをご覧ください。
生育診断
稲の生育診断を行い、適切な時期に適切な量を施すと品質、収量ともに向上します。8月の作業
稲刈りの準備として、機械や設備の点検を行いましょう。▼トラクターのメンテナンスのことならこちらをご覧ください。
9月の作業
稲刈りシーズンです。安全な作業を心がけましょう。収穫
稲穂が黄金に輝き頭が垂れるころ刈り取りのシーズンに入ります。コンバインの整備をしっかりして安全に作業を行いましょう。出荷作業
乾燥から貯蔵までの出荷の工程を簡単に説明します。乾燥
刈り取った籾を乾燥して含有水分を15%前後に調整します。含有水分は、出荷先や保存方法によって微調整しましょう。調整
収穫した稲の籾殻(もみがら)を脱穀します。脱穀したものは玄米に、精米して白米になります。籾柄を取り除き、小さな粒の米を分けます。最近は1.9mm以上が食用として好まれます。
袋詰め
保存、運搬用に紙袋に入れます。検査を受ける場合は検査用の袋を準備してください。検査
米穀検査を受けます。※個人的な譲受の場合は必須ではありません。
出典:農産物規格規程
平成十三年二月二十八日 農林水産省告示第二百四十四号(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0001439.html(2020年1月27日に利用)
貯蔵
お米の鮮度を保つために、出荷するまで専用の保冷庫への保存をおすすめします。せっかく育てたお米ですから、おいしく味わっていただきましょう。▼お米の保存のことならこちらをご覧ください。
10月の作業
暮起こし(田起こし)を行います。稲株を地面に混ぜて来年の堆肥にしましょう。▼堆肥や緑肥をすき込むことならこちらをご覧ください。
11月の作業
土壌診断を行い土の状態を確認しましょう。▼土壌診断のことならこちらをご覧ください。
12月の作業
翌年の営農計画をたて、資材を発注します。▼米のニーズや栽培品種など稲作のことならこちらをご覧ください。
米作り初年度は余裕を持った準備と作業計画が重要
米作り初年度は、年間栽培カレンダーを参考に余裕を持った準備や作業工程の計画を立てましょう。最初は地域の指導員にアドバイスをもらって、米作りに適した土づくりを行い、健康な苗を育てて、生育状態に合った適切な追肥を施しましょう。
稲の持つポテンシャルを最大限に活かすことができれば「おいしいお米」という品質面だけではなく、病害虫に強く手間もかからず、収量も増える米栽培が実現できるはずです。頑張ってください!