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ガーデナー
宇田川 佳子「Myu GardenWorks」代表。グリーンアドバイザー、クリスマスローズ協会理事、ガーデニング・園芸講座講師。 有機栽培による、ガーデンデザインやメンテナンスなどのコンサルタントを務める。 ■著書 『はじめての小さな庭のつくり方』(新星出版社) 『フロントガーデン―家を飾る小さな庭つくり』(農山漁村文化協会)…続きを読む
シクラメンについて
ギリシア語の「キクロス(螺旋)」がシクラメンの名前の由来ですが、これは原種シクラメンの種(たね)の周りに花茎がくるくると巻き付く様子から名付けられました(原種シクラメンの中には花茎が巻きつかないものもあります)。シクラメンの草丈は品種によりますが10~50cmほど。
原産地では球根で育つため夏の高温乾燥時期に休眠し、気温が下がる秋以降、降雨によって休眠から目覚めて花を咲かせ、また翌年の夏まで生育を続けます。
シクラメンの園芸種は「ペルシクム」という原種から品種改良されたものが広く流通しています。
花色は赤やピンク、白が定番ですが品種改良により種類が増えています。
植物名 | シクラメン |
別名 | ブタノマンジュウ |
和名 | カガリビバナ |
学名 | Cyclamen persicum |
英名 | Cyclamen |
科名 | サクラソウ科 |
属名 | シクラメン属 |
原産地 | 地中海地方 |
シクラメンの種類
シクラメンの種類は、園芸種と原種に大別されます。園芸種シクラメン
園芸店で販売されているシクラメンの多くは園芸種です。一重咲きから八重咲き、花弁がフリンジのように咲くものや花色も豊富に揃います。原種シクラメン
原種シクラメンは、自生地である地中海の半日陰で涼しい乾燥した環境で生き抜いてきたことから、園芸種より屋外で育てやすい特徴があります。株も年々大きくなり、品種によっては30~40年と長く育てることも可能です。シクラメンを育てる前に
シクラメンは冬場の園芸の代表格で耐寒性に優れてはいるものの、やはりある程度の暖かさがあることで花付きが良くなります。鮮やかな花を楽しむための育て方をチェックしていきましょう。シクラメンを育てる環境
シクラメンは、風通しの良い、半日陰を好みます。高温多湿に弱いので特に真夏の直射日光の当たる場所は避けましょう。20℃前後が最も生育旺盛になるため、15~20℃位の環境で育てます。
室内でシクラメンを育てるのに適した環境とは
日光が当たる窓辺が適していますが、真夏の直射日光は室内でも葉焼けの原因となることも。レースのカーテン越しや窓辺近くのテーブルの上で育てると良いでしょう。また、室温が5℃以下になる場所や25~30℃を超えるなど極端な環境下に置くのはNG。冷暖房の風が直接当たるところも避けましょう。
屋外でシクラメンを育てるのに適した環境とは
真夏の直射日光が当たらず、冬は霜が降りない場所が適しています。準備するもの
シクラメンの苗の大きさに合わせた鉢を用意します。土は通気性、排水性の良いもの。
ガーデニング初心者の方には花付きが良くなるように、始めから肥料などが配合されたシクラメン用の土も販売されています。
シクラメンの苗の選び方
シクラメンは葉が球根を覆うように生えています。株元が傷んでいないか確認し、葉の数と蕾(つぼみ)が多い苗を選びましょう。屋外でシクラメンを育てたい方には、比較的耐寒性が強いガーデンシクラメンや原種シクラメンの苗がおすすめです。
▼シクラメンの品種についてはこちらをご覧ください。
シクラメンの育て方
シクラメンの育て方のポイントを紹介します。鉢植え
耐寒性の弱い園芸品種は室内で育てます。鉢ごと適した環境に移動できるので、湿度や温度管理がとても簡単です。
シクラメンの植え付け時期
暑さが落ち着く9~10月が適期です。シクラメンの植え付け手順
地表から2cm(もしくは球根の1/3)ほどシクラメンの球根の頭を出して植え付けます。地植え
ガーデンシクラメンや耐寒性のある原種シクラメンは、真夏の直射を避けた比較的日当たりのよい場所で育てます。シクラメンの植え付け時期
屋外で育てる場合も、9~10月が植え付けの適期です。シクラメンの植え付け手順
鉢植え同様、根を崩さずに植え付け、球根の頭を地表より2cm(もしくは球根の1/3)ほど出して植え付けます。シクラメンの水やり
植え付けてから苗が土に活着するまでの間は、鉢植え、地植え共に水切れしないように気を付けましょう。活着後は土の表面が乾いたら、花や葉、球根の上部に水がかからないように水を与えます。
湿度が高い状態は好まないので水のあげ過ぎに注意しましょう。
また、底面給水がある場合は常時5~8分目まで水を張ります。その際、満杯にはせず、空気の通り道を付くことが大切です。
シクラメンの肥料
花が咲いている間、月に2回ほど液肥をあげますが、与え過ぎは根腐れの原因になるため花の最盛期であっても週1回に留めます。シクラメンの病害虫
多湿環境で病気にかかったり、虫が付くことがあります。病気
湿度が高い環境下では病気にかかりやすくなります。比較的低温で灰色かび病に、気温が高い環境では細菌に感染して軟腐病になることがあります。また、葉や茎が黄色く変色してしまう萎凋病(いちょうびょう)にも注意が必要です。害虫
シクラメンホコリダニの食害で生長点付近の葉や花が変形したり、ヨトウムシやナメクジが花を食べてしまうことがあります。シクラメンの花摘みと葉組み|冬の管理方法
長い間シクラメンの花をたくさん咲かせるためには、花摘(つ)みと葉組みが欠かせません。シクラメンの花摘み
花を付ける植物は、種(たね)を作るときにとても力を使います。枯れ始めた花が種を付ける前に摘(つ)み取ってあげることで、長い間花芽を付けることができるので、この花摘みの作業は欠かせません。
また、枯れた部分を早めに取り除いてあげることで病気も防ぎます。
シクラメンの花摘みの方法
花弁の開きが弱くなり、色があせてきたものから摘み取ります。株を傷めないように根元を抑えながら、枯れてきた花の根元近くを手で摘んでひねるように軽く引っ張ると簡単に取り除けます。一緒に枯れてきた葉も取ってあげましょう。
ハサミを使用する際に病原菌が入ってしまうことがありますので、なるべく手で摘み取りましょう。
シクラメンの葉組み
葉組みはシクラメンの花芽の形成にとても大事な作業です。株元に光を当てることで花付きを良くして葉柄が徒長するのを防ぐことができます。シクラメンの葉組みの方法
葉を中心から外側に向け、花茎を中心に寄せるようにして株元に光を当てます。葉組みを頻繁に行なっている株は、全体の見た目も整い、花付きも良く育ちます。シクラメンの夏越し|夏の管理方法
球根植物のシクラメンは、翌年以降も花を咲かせる多年草です。花の咲かない夏を乗り越えて、次の冬にもまた花を楽しむことができます。シクラメンの夏越しには、葉を枯らし球根のみの状態で管理する「休眠法」と、葉を穏やかに生育させる「非休眠法」があります。
シクラメンの夏越し「休眠法」のコツ
球根を乾燥させて休眠状態にします。4月ごろ蕾の数が減ってきたら、水やりの回数を減らして徐々に乾燥させ、葉が枯れたら取り除きます。
休眠法の夏越しに適した場所
9月上旬ごろまで、風通しが良く雨の当たらない涼しい日陰で乾燥させます。休眠法の夏越し中の水やり
乾燥させた球根には、一切水をあげなくて大丈夫です。休眠法の夏越し中の肥料
水やり同様、休眠している球根には肥料はあげません。シクラメンの夏越し「非休眠法」のコツ
ゆっくり生育させながら夏を越す方法です。湿度の管理には気を付けなければなりませんが、休眠法よりも次のシーズンに花を付けるタイミングが少し早いようです。非休眠法の夏越しに適した場所
高温多湿を好まないため、鉢植えは軒下などの雨や真夏の直射日光が当たらない場所で管理しましょう。非休眠法の夏越し中の水やり
土の表面が乾いたら、葉や球根上部に水がかからないように注意して与えます。万が一途中で葉が出てこなくなったら、そのままゆっくり乾燥させて休眠法に切り替えましょう。
非休眠法の夏越し中の肥料
非休眠法といっても、通常夏はシクラメンの生育が落ち着く休眠期のため施肥は控えめに。2週間に一度程度の液肥でかまいません。鉢植えシクラメンの植え替え
株が大きくなってきたら一回り大きな鉢に植え替えてあげましょう。シクラメンの植え替え時期
植え付け時期と同じ9~10月が適切ですが、特に夏越しを休眠法で行った球根のみのシクラメンは、9月初旬には植え替えを済ませましょう。シクラメンの植え替え
植え付けと同じように球根を深く植え過ぎないのがポイントです。用意するもの
一回り大きな鉢と新しい土を用意します。植え替え手順
鉢から株を取り出したら、根元を崩さずに新しい鉢へ移します。植え付けと同じように球根を地表から2cm(もしくは球根の1/3)ほど出して植え付け、葉や球根上部に水がかからないように水を与えます。
シクラメンの花の楽しみ方
お庭やお部屋でシクラメンの花を楽しみましょう。切り花
シクラメンは花数が多いので、鉢植えだけでなく切り花としてもお部屋に飾ることができます。きれいに咲いているシクラメンを花摘みのときのように株の根元を抑えてひねりながら抜き取りましょう。
抜き取った花柄の端から1cm弱位切ってから水に付けると吸水が良くなります。
寄せ植え
シクラメンは花びらの形や花色もさまざまな品種が出ているので、寄せ植え花材としてもおすすめです。湿気がたまらないよう株同士の間隔をあけて植え付けます。
寄せ植えの際は色や形だけでなく、シクラメンと性質が似ている植物を選ぶことで元気に育てられます。
(キンギョソウ、ハツユキカズラ、プミラ、コニファー、アリッサムなど)
シクラメンを枯らさず長く育てよう
シクラメンは、温度と湿度の管理に気を配れば元気に生育し、上手に夏越しできれば翌年もお気に入りの花を楽しむことができます。園芸種は種類も多く、花色や咲き方、葉の模様などがたくさん楽しめ、原種は園芸種よりも比較的耐寒性もあり育てやすいことから、長年育てられ大きな株になる品種もあります。
皆さんも冬場に鮮やかな彩りをみせてくれるシクラメンを育ててみましょう!