農薬はどうやって効くの?|殺虫殺菌剤編

害虫と病気を同時に防除できる「殺虫殺菌剤」を効果的に使用することで、農作業の時間短縮やコスト削減を目指しましょう。「殺虫殺菌剤」について、「水稲用」や「畑作用」などの種類やその特徴、散布時の注意点について詳しく説明します。


作物の葉に発生している害虫と病原菌に殺虫殺菌剤を散布しているイラスト

llustration:umi
病害虫対策のために「殺虫剤」と「殺菌剤」をそれぞれ購入して散布するよりも、害虫と病気を同時に防除できる「殺虫殺菌剤」を効果的に使用することで、農作業の時間短縮やコスト削減が可能になります。
本記事では農作物の栽培で使用される殺虫殺菌剤について、「水稲用」や「畑作用」などの種類やその特徴、散布時の注意点について説明します。

殺虫殺菌剤を上手に活用

メリットをイメージさせる手でOKサインを作っている画像
出典:写真AC
殺虫殺菌剤の最大のメリットは、作物を加害する害虫と病気を発症させる病原菌を同時に防除することができるという点です。しかし、どちらも防除してくれるからといって、やみくもに殺虫殺菌剤を使用してもいいというわけではありません。

発生状況や予察に合わせて殺虫殺菌剤を選ぶ

近年の異常気象や気候の変動などの影響で、地域や作物によっては病害虫の発生パターンが異なってきているというのが最近の傾向です。

殺虫殺菌剤の選択は発生の状況と地域の予察を参考に!

病害虫の発生状況や地域の予察を調べて、効果的で効率の良い病害虫対策を行いましょう。
※各県に設置された病害虫防除所において調査したものが、今後の発生予報として公表されているため参考にしてください。
出典:都道府県病害虫防除所(農林水産省)


殺虫殺菌剤の種類

いろんな剤型の殺虫殺菌剤のイラスト
llustration:umi
農業で使用される殺虫殺菌剤には「水稲用」の種類が多く、次いで「畑地用」があります。ここからは「水稲用」と「畑地用」の主な殺虫殺菌剤の種類についていくつか紹介します。

水稲用

収穫間近の水稲
出典:写真AC
水稲で大きな被害をもたらす主な病害虫は「いもち病」「紋枯病」「ウンカ」です。これらの防除を目的とした殺虫殺菌剤が使用されています。

水稲用殺虫殺菌剤の確認必須事項!
同じ水稲用の殺虫殺菌剤でも登録内容が「稲」「稲(箱育苗)」「湛水直播水稲」の場合、適用病害虫や使用量、使用時期などそれぞれ登録内容が異なることがあるので使用前にしっかり確認しましょう。

※水稲は苗を水田に植える「移植栽培」、水田に直接種を播く「直播栽培」に分けられます。「稲(箱育苗)」は移植栽培での播種から移植までの間、「湛水直播水稲」は直播栽培の播種時などに使用できるということを意味します。

▼移植栽培や直播栽培についてはこちらをご覧ください。

いもち病とウンカ類の防除に

殺虫殺菌剤:ビームエイトスタークルゾル
【剤型】水和剤
【有効成分(RACコード)】ジノテフラン(4A)、トリシクラゾール(16.1
【適用作物名】
【適用病害】いもち病
【適用害虫】ウンカ類、カメムシ類、ツマグロヨコバイ

【おすすめポイント】
いもち病菌に対しては、発病前から発病後の散布でいもち病のまん延を防止する長い残効性と耐雨性を持つ薬剤です。

殺虫殺菌剤:アミスタートレボンSE
【剤型】水和剤
【有効成分(RACコード)】エトフェンプロックス(3A)、アゾキシストロビン(11
【適用作物名】
【適用病害】いもち病、紋枯病
【適用害虫】ウンカ類、カメムシ類、ツマグロヨコバイ

【おすすめポイント】
稲以外に大豆にも登録(紫斑病、カメムシ類、マメシンクイガ、アブラムシ類)があります。殺菌成分「アゾキシストロビン」は、予防と治療の両方の効果をあわせ持ち、さらに浸透移行性も示します。

▼予防・治療や浸透移行性のことならこちらをご覧ください。

殺虫殺菌剤:スタウトダントツ箱粒剤08
【剤型】粒剤
【有効成分(RACコード)】クロチアニジン(4A)、イソチアニル(P3
【適用作物名】
・適用病害:いもち病
・適用害虫:イネミズゾウムシ
【適用作物名】湛水直播水稲
・適用病害:いもち病
・適用害虫:イネミズゾウムシ
【適用作物名】稲(箱育苗)
・適用病害:いもち病、白葉枯病、もみ枯細菌病、穂枯れ(ごま葉枯病菌)、内穎(ないえい)褐変病、苗立枯細菌病、苗腐敗症(もみ枯細菌病菌)
・適用害虫:ウンカ類、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ、イネヒメハモグリバエ

【おすすめポイント】
稲に対して高い安全性を持つ殺虫殺菌剤で、移植栽培(育苗)の播種時や本田への移植時、直播栽培の播種時と広く使用できます。


いもち病とそのほか病害虫の防除に

殺虫殺菌剤:Dr.オリゼフェルテラ粒剤
【剤型】粒剤
【有効成分(RACコード)】クロラントラニリプロール(28)、プロベナゾール(P2
【適用作物名】
・適用病害:いもち病
・適用害虫:イネドロオイムシ、イネミズゾウムシ
【適用作物名】稲(箱育苗)
・適用病害:いもち病、もみ枯細菌病、白葉枯病、内穎褐変病
・適用害虫:イネドロオイムシ、イネミズゾウムシ、イネヒメハモグリバエ、コブノメイガ、ツマグロヨコバイ、フタオビコヤガ、ニカメイチュウ、イネツトムシ

【おすすめポイント】
育苗箱にも処理が可能で、移植時には薬剤を側状処理できるため作業軽減におすすめです。


畑地用

畑作で栽培されているナス
出典:写真AC
畑地用の殺虫殺菌剤は、うどんこ病や灰色かび病、葉かび病などの各種かび病、コナジラミ類やアブラムシ類、ハダニ類などの害虫の防除を主とした薬剤です。害虫に対しては物理的に気門を封鎖して効果を発揮するものが多くみられます。また畑地用の殺虫殺菌剤には使用回数制限がない薬剤もあるため、作物によって長期栽培になる場合はうまくローテーションに組み込み、使用回数制限がある薬剤を効率良く使えるようにするとよいでしょう。
畑地用といっても野菜や花き、果樹など適用する作物が多いので、ここではトマト、キュウリ、イチゴに登録のある殺虫殺菌剤を例に紹介します。

▼うどんこ病や灰色かび病、葉かび病についてはこちらをご覧ください。
▼コナジラミ類やアブラムシ類、ハダニ類についてはこちらをご覧ください。

トマトの各種かび病・害虫の同時防除

殺虫殺菌剤:サンヨール

ITEM
サンヨール
・内容量:500ml
・有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ビスエチレンジアミン銅錯塩[Ⅱ](20.0%)


【剤型】乳剤
【有効成分(RACコード)】ドデシルベンゼンスルホン酸ビスエチレンジアミン銅錯塩(Ⅱ)(M1
【適用作物名】トマト(※1)
【適用病害】うどんこ病、葉かび病、灰色かび病
【適用害虫】コナジラミ類、アブラムシ類、ハダニ類
(※1)それ以外の適用作物、病害虫などについては登録内容をお確かめください。

【おすすめポイント】
作物や病原菌への浸透性を持つため展着性(※2)があり、耐性菌も発生しにくい薬剤です。

(※2)展着性とは、植物体を濡れやすくして有効成分を広がらせ付着しやすくすることです。
▼展着剤についてはこちらをご覧ください。

殺虫殺菌剤:サンクリスタル乳剤

ITEM
サンクリスタル乳剤
・内容量:500ml
・有効成分:脂肪酸グリセリド(90%)


【剤型】乳剤
【有効成分】脂肪酸グリセリド(※3)
【適用作物名】トマト(※1)
【適用病害】うどんこ病
【適用害虫】アブラムシ類、コナジラミ類、ハダニ類、トマトサビダニ
(※3)脂肪酸グリセリドは、毒性が極めて弱いことなどのことから有害でないと認められる基準値設定不要農薬です。

【おすすめポイント】
有効成分は食用油脂なので収穫前日まで使用でき、使用回数にも制限がありません。


キュウリのうどんこ病・コナジラミ類の同時防除

殺虫殺菌剤:モレスタン水和剤

ITEM
モレスタン水和剤
・内容量:500g
・有効成分:キノキサリン系[6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート](PRTR・2種)(25.0%)


【剤型】水和剤
【有効成分(RACコード)】キノキサリン(M10
【適用作物名】キュウリ(※1)
【適用病害】うどんこ病
【適用害虫】コナジラミ類

【おすすめポイント】
施設栽培では散布だけでなく、くん煙や常温煙霧も可能です。ちなみにキュウリではくん煙と常温煙霧の使用が可能で、適用病害名はうどんこ病です。

▼ハウス栽培において省力散布法であるくん煙や常温煙霧についてはこちらをご覧ください。

イチゴのうどんこ病・害虫の同時防除

殺虫殺菌剤:オレート液剤
ITEM
オレート液剤
・内容量:1L
・有効成分:オレイン酸ナトリウム(20.0%)


【剤型】液剤
【有効成分】オレイン酸ナトリウム(※4)
【適用作物名】イチゴ(※1)
【適用病害】うどんこ病
【適用害虫】コナジラミ類、アブラムシ類
(※4)オレイン酸(食品添加物にも指定され動植物油に含まれる不飽和脂肪酸)ナトリウムは、人の健康を損なうおそれのないものとして厚生労働大臣が対象外物質として暫定的に定めています。

【おすすめポイント】
害虫に対しては気門封鎖、うどんこ病に対しては細胞膜を破壊して効果を発揮します。オレート液剤も使用回数に制限がありません。

参考:独立行政法人農林水産消費安全技術センター「農薬登録情報提供システム」

殺虫殺菌剤を使用する際の注意点

男の子が注意を促しているイラスト
llustration:umi
殺虫殺菌剤を使用する前には薬剤に含まれる有効成分やRACコードを確認し、同じ系統の薬剤が連続しないようにローテーション散布を行いましょう。系統の違う薬剤をローテーション散布することで病害虫に薬剤抵抗性を持たせにくくすることができます。
また作物ごとに同じ有効成分を含む農薬が使用できる回数(総使用回数)が決まっていますが、水稲用の殺虫殺菌剤は複数の有効成分が含まれているため、含まれる有効成分に注意し総使用回数を超えないようにする必要があります。
農薬を使用する際には薬剤の登録内容をしっかりと確認し安全管理に気を付けて散布を行いましょう。

▼薬剤抵抗性やローテーション散布についてはこちらをご覧ください。
▼農薬の安全に使用するためにはこちらをご覧ください。

病害虫の発生状況を確認して、薬剤を使いわけよう!

青空に向かって双葉が元気に生育している様子
出典:写真AC
殺虫殺菌剤は殺虫剤と殺菌剤の両方の成分を含むので、使用する際には両方の有効成分を確認し、病害虫が薬剤抵抗性を持たないよう同じ系統の薬剤を続けて使用しないようにする必要があります。また病害虫を同時に防除できる殺虫殺菌剤を予防的に使用することで時間短縮や経費を削減し効果を発揮することができるので、殺虫殺菌剤をうまくローテーションに取り入れて防除を行いましょう。

紹介されたアイテム

サンクリスタル乳剤
モレスタン水和剤

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umi
umi

農業資材メーカと農協にて6年間勤務。農家への栽培技術(農薬・肥料・栽培システムなど)の普及を担当。役立つ情報を初心者の方にもわかりやすくお伝えします。

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