サツマイモはイモ(塊根)や茎葉に病気が発生します。本記事では、圃場でよく見られる葉やイモ(塊根)に出ている症状から、病気を推測できるように、イモ(塊根)、茎葉に発生する病気の順に紹介します。
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サツマイモのイモ(塊根)に発生する病気
サツマイモのイモ(塊根)の症状から推測できる病気を紹介します。サツマイモのイモ(塊根)に病斑
サツマイモのイモ(塊根)に斑点などの病斑が出ている場合、病気に感染している可能性があります。黒斑病
【症状】
収穫後や土壌中のイモ(塊根)に発生します。はじめ緑を帯びた黒褐色の病斑が表面に現れ、病気が進むと2~3cmほどの濃い黒色で、表面がくぼんだ円形の病斑となります。病斑内部に毛のようなカビを生じることも特徴です。
ヒトや家畜に強い毒性のあるファイトアレキシン(抗菌性物質)を生成している場合があるので注意してください。
【予防と対策】
黒斑病 | 防除方法とおすすめの使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「アフェットフロアブル」「ジマンダイセン水和剤」はサツマイモ(かんしょ)には使用できません。
帯状粗皮(おびじょうそひ)病(サツマイモ斑紋モザイクウイルス強毒系統)
【症状】
収穫時のイモ(塊根)の表面にざらざらとしたしま模様のひび割れが生じ、帯状に変色します。
【予防と対策】
「モモアカアブラムシ」によって伝搬される「サツマイモ斑紋モザイクウイルス」の強毒系統が本病の原因です。
苗はウイルスフリー苗を使用します。ウイルスフリー苗の増殖時には、感染源となるアブラムシ対策を行います。
はさみやナイフの使用で伝染することもあるため、採苗時には次亜塩素酸ナトリウム(ケミクロンG)などを用いてこまめに消毒しましょう。
紫紋羽(むらさきもんぱ)病
【症状】
イモ(塊根)の表面に紫褐色の糸のような菌糸の束が、網目のようにからみつきます。症状がすすむと、菌糸束が密になってフェルト状になり、イモ(塊根)の内部まで軟化、腐敗することもあります。
【予防と対策】
病原菌に感染した植物、土壌が伝染源となります。被害にあったイモ(塊根)や茎葉は取り除きます。
pHが低い(pH6.0近辺)、開墾地など未分解の有機物が多く残る圃場で発生しやすいため、石灰などを施用して分解を促進します。
被害が発生した圃場では土壌消毒し、イネ科作物などでの輪作が効果的です。
▼土壌消毒についてはこちらをご覧ください。
黒あざ病
【症状】
イモ(塊根)の表面に暗褐色の不整形の病斑が生じます。症状が進むと、あざ状の病斑で全面を覆います。病斑はイモ(塊根)の表皮にだけ現れ、内部に進展せず腐敗もしません。
【予防と対策】
苗や種イモから伝染するため、病気の兆候がない苗や種イモを選別しましょう。
圃場の排水性が悪いと発生しやすいため、水はけの良い圃場づくりを心がけます。また土壌消毒も有効です。
サツマイモのイモ(塊根)に腐り
サツマイモのイモ(塊根)が腐った場合、病原菌に感染している可能性があります。軟腐病
【症状】
イモ(塊根)は暗褐色で水に浸したようになり、のちに軟化・腐敗します。湿度が高いとイモ(塊根)の表面に白色のくもの巣のような菌糸が生えます。
発病適温は30℃前後、主に貯蔵中に発生し、アルコール発酵した独特の芳香がします。
【予防と対策】
収穫時や貯蔵中、出荷時にできた傷口から病原菌が侵入して発病します。収穫後は速やかにキュアリングを行って感染を防ぎましょう。
※キュアリング処理について詳細は「サツマイモ|基本の育て方と本格的な栽培のコツ」の記事をご覧ください。
基腐(もとぐされ)病
【症状】
茎に近いイモ(塊根)の「なり首」部分から黒色~暗褐色に変色し腐敗します。
【予防と対策】
病原菌は土壌中の病原菌に感染した植物で越冬・伝染するため、感染した植物は圃場外で処分します。
種イモは消毒するなど病原菌に感染していない健全なイモを使用します。また土壌中の病原菌密度を減らすため、輪作や土壌消毒も効果的です。
サツマイモの茎葉に発生する病気
サツマイモの茎葉の症状から推測できる病気を紹介します。サツマイモの茎葉に病斑(斑点やカビ)
サツマイモの茎葉に斑点やカビが出ている場合、病気に感染している可能性があります。まずは病斑の形、色、特徴を確認しましょう。斑紋モザイク病
【症状】
葉の葉脈の間に黄色い斑点が生じ、周囲が紫色になります。
【予防と対策】
イモ(塊根)に発生する病気の、帯状粗皮病(サツマイモ斑紋モザイクウイルス強毒系統)と同様に、「モモアカアブラムシ」によって伝搬される「サツマイモ斑紋モザイクウイルス」の強毒系統が本病の原因です。苗はウイルスフリー苗を使用し、増殖時には感染の源となるアブラムシ対策を行います。
はさみやナイフの使用で伝染することもあるため、採苗時には次亜塩素酸ナトリウム(ケミクロンG)などを用いてこまめに消毒しましょう。
サツマイモの茎葉に萎れ
サツマイモの茎葉に萎れがみられる場合は病気の可能性があります。つる割病
【症状】
葉は下葉から黄化して、症状が進むと株が萎れて枯死します。
茎の地際部分に縦に亀裂が入り、茎の繊維質が目立ちます。茎を切断すると維管束の部分が褐変しています。
【予防と対策】
感染したサツマイモから作った苗にもつる割病が伝染します。育苗した苗に症状がみられなくても、圃場に定植してから発病することもあるので、病原菌に感染していない種イモを使用しましょう。特にサツマイモ品種の「ベニコマチ」はつる割病に極端に弱いため、栽培する際は注意してください。
つる割病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
立枯病
【症状】
つるの生育が抑制され、葉が黄色~紫紅色になって萎れます。症状が進むと枯死してしまいます。
根は褐色に腐敗し抜け落ち、イモ(塊根)の表面にも円形の黒い病斑ができます。
【予防と対策】
立枯病の原因と対策|防除方法と使用薬剤(農薬)
※上記リンク先の記事で紹介されている「ベンレート水和剤」にはサツマイモ(かんしょ)において立枯病の適用はありません。また「リゾレックス粉剤」「タチガレン液剤」「オーソサイド水和剤」「リゾレックス水和剤」はサツマイモ(かんしょ)には使用できません。
サツマイモは、病気以外の生理障害・害虫などの要因も併せて対策
サツマイモの生育が悪い原因は病気だけとは限りません。曇天が続いたことから起る日照不足、雨や台風などの荒天、肥料や水の過不足などが原因で発生する生理障害でも元気を無くしてしまいます。また、コガネムシ類やハスモンヨトウ、ナカジロシタバといった害虫の被害を受けても生育が悪くなります。
上記の病気を一例として、生理障害や害虫被害などそのほかの要因も併せて考えながら対策を行いましょう。
※生理障害とは、育てる植物に適さない温度、光、土壌の状態や栄養による障害などによって生長が阻害されること。
▼生理障害のまとめ
▼サツマイモの害虫のことならこちらをご覧ください。
サツマイモで発生しやすい養分の欠乏・過剰症状
生理障害の中でもサツマイモの栽培で起こりやすい養分の欠乏症状について紹介します。ホウ素欠乏
イモ(塊根)の表皮がサメ肌になったり、丸いもが多くなる、内部が褐変するなどの症状が現れます。葉やつるの生育にはあまり影響せず、イモ(塊根)の肥大期に現れやすい症状です。▼ホウ素欠乏のことならこちらをご覧ください。